【特別企画】

いよいよ発売される「ファルコム・アーリー・コレクション For X68000」とは一体何なのか

理不尽な難易度も、最終的にはパソコン雑誌とプレイヤーがwin-winの関係になった「ロマンシア」

 最初は「ドラゴンスレイヤーJ.R.」として登場したものの、後に「ドラゴンスレイヤー3」に格上げになったのが、「ロマンシア」だ。当初の正式タイトルは「ロマンシア Dragon Slayer J.R. ファンフレディ王子のおどろくべき旅」とあり、パッケージには「太陽の神殿」と同じく“New Type Adventure Game”と書かれていた。

当時の広告を見てみると、確かに“ドラゴンスレイヤーJ.R.”と表記されているのが分かるだろう。写真は、「ログイン」1986年11月号より

 この時期はまだ“ゲームは難しければ難しいほど良い”という雰囲気があり、本作もご多分に漏れず、理不尽な難易度だったと言える。ヒントも少なく、雑誌広告に「こんなの有りか?!」といったキャッチコピーが描かれるほどで、とにかく難しさが詰め込まれた作品として仕上げられていた。

 見た目はRPGっぽいものの、付けられたジャンル名は「掟破りのニュータイプRPG風味アクションアドベンチャー」。キャラクターが成長するといった、よくあるRPG要素は含まれていない。ゲームはサイドビュータイプのアクションアドベンチャーとして進行し、プレイヤーは主人公のファン=フレディ王子を操作し、仕掛けられた謎を解きながらロマンシア王国の王女セリナを助け出すことが当面の目的。とはいえ、サブタイトルに「ドラゴンススレイヤー」とあることからも分かるように、最後にはドラゴンとの対決が待っているお約束もあるのだ。

オープニングではファンファーレの後、ファン=フレディ王子とセリナ姫が登場する。その可愛らしい見た目とは裏腹に、難易度は理不尽の一言だった

 ゲーム中は、主人公を動かしてキャラクターの真下で上(8)キーを押せば会話ができたり、場合によってはアイテムをもらえたりする。しかし道中はほぼノーヒントのため、たとえアイテムを入手したとしても使い道が分からず、無駄に消費してしまうことを前提に有効な使用方法を探す、という方法で正答を地道に探求していかなければならなかったのだ。

ゲームが始まると、ファン=フレディ王子が2等身キャラクターで登場。彼を操作して、フィールドをあちこち巡り謎を解いていく。制限時間もあるので、のんびりと遊ぶわけにもいかないのだ

 これを繰り返して正しい攻略方法を見つけるという仕組みだったこともあり、購入した1ユーザーが自力でクリアするのは非常に敷居が高かった。しかも、かろうじてコンティニュー機能は搭載していたもののセーブロードは行えず、ハマりに陥った後ではコンティニューしても無駄で、結局は最初からやり直すことに……。

例えば、とあるアクションを採ると天界にいけるのだが、ここで薬を持っていなければハマりとなり、やり直すことに
一部のアイテムは使用する際にMPを消費するのだが、MPが0の時に使ってしまうとアイテム自体が消滅してしまう。持てる数には限りがあるので、いらなくなった時にはこうして消してしまえばいいのだが、まだ使う必要がある時にこれをやってしまった場合はハマりとなり、リセットボタンを押すしかなくなる。もっとも、アイテムが必要だと分かるのは後になってから、ということが多かった

 そこで役立ったのが、各出版社から発売されていた雑誌での攻略記事。前年の1985年に発売された「ザナドゥ」では、攻略記事を掲載することでパソコン雑誌の売り上げが軒並み伸びたという話がある。「ロマンシア」のようにヒントが極端に少ないゲームではなおさらで、ユーザーは攻略情報を求めて雑誌を購入し、またパソコン雑誌は「ロマンシア」の情報を掲載することで売り上げがアップするという、お互いにWin-Winの関係が築けたのだ。そのため、自力でエンディングを見るには敷居が高かったものの、雑誌などでヒントを入手してクリアした人は意外と多かったかもしれない。

さまざまなパソコン雑誌に攻略法が掲載されていたこともあり、ユーザーとしてはありがたかった。写真は、角川書店(当時)から発売されていた月刊誌「コンプティーク」1986年12月号での攻略記事

 ただし序盤に関しては、マニュアルに都築和彦氏によるヒントが散りばめられたマンガが掲載されていたので、これを読めば手も足も出ない、という事態には陥らなかった。逆に、きちんとチェックしておけば、「ザナドゥ」と違いカルマを溜めることが重要、というのもわかるようになっているのだ。

マニュアルのマンガをきちんと読めば、序盤くらいは正しく進めることができた。当時は、マニュアルなんてそっちのけでプレイしていた人も多かっただろう

 なお、本作にも「太陽の神殿」と同じく、非常にクオリティの高いBGMが収録されている。ゲーム開始直後に流れるオープニングミュージックやロマンシア王国でのポップなメロディ、アゾルバ王国へ入った時の少々おどろおどろしいBGMにクリア後のエンディング曲など、どれもが素晴らしい楽曲ばかりだった。

 また、技術的な面でも目を見張るところが多く、一度ゲームが起動してしまえばフロッピーディスクを取り出しても遊べた(=オンメモリでプレイできた)点や、ちょっとやそっとキャラクターが重なってもちらついたりしない重ね合わせ処理の素晴らしさ、さらにはパソコンとは思えないスムースなスクロールなど、感心させられる部分が多々あった。

重ね合わせ処理やスクロールのスムースさなど、技術的には素晴らしい部分が多かった

 「ロマンシア」は、「ザナドゥ」に続きメディアミックス展開が行われていたことも特徴だ。雑誌「コンプティーク」では、1987年1月号から1年3カ月にわたりマンガが連載されたが、ここでの主人公はゲーム本編で“囚われの姫君”だったセリナだ。

マンガ「ロマンシア」が初めて掲載された号。セリナ姫が主人公という、ゲームとはまったく違う設定で物語が始まる