【特別企画】

いよいよ発売される「ファルコム・アーリー・コレクション For X68000」とは一体何なのか

その魅惑の中身と、収録ソフトが発売された当時の背景を解説する

【ファルコム・アーリー・コレクション For X68000】

2月26日発売予定

価格:8,800円

対応機種:シャープ X68000シリーズ

必要メモリ:1MBytes

メディア:5インチまたは3.5インチフロッピーディスク1枚

各種マニュアル入

 三月うさぎの森のゲーム販売部門「BEEP」は2022年2月26日、X68000向け新作ソフト「ファルコム・アーリー・コレクション For X68000」を発売する。この作品には、日本ファルコムの名作タイトル「ドラゴンスレイヤー」、「太陽の神殿」、「ロマンシア」の3本が収録されており、 1987年3月 にシャープから発売されたパーソナルワークステーションX68000シリーズにてプレイすることが可能だ。なお、それら3本の移植元となったのは、PC-8801シリーズまたはPC-8801mkIISRシリーズ対応版の同名タイトルとなる。

 「ドラゴンスレイヤー」、「太陽の神殿」、「ロマンシア」は、昨年発売された「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」に収められていたタイトル「Ys」そして「Ys II」よりも、1~数年ほど前に発売されていた作品となる。そのため、知らない人も意外に多いかもしれない。せっかくなので、ここでは「ドラゴンスレイヤー」「太陽の神殿」「ロマンシア」が発売されていた時期のパソコン事情と共に、それら3作が発売されていた時代背景などもあわせて解説していこう。

【ファルコム・アーリー・コレクション For X68000】
5インチフロッピーディスク
3.5インチフロッピーディスク

ゲームメーカー各社がパソコンで群雄割拠していた1985年前後

 ゲームの紹介に入る前に、オリジナルゲームが発売された当時の時代背景から見ていこう。「ファルコム・アーリー・コレクション For X68000(以下アリコレ)」に収録されている作品の中で一番古いタイトルは、1984年に発売された「ドラゴンスレイヤー」だ。そんな1984年のパソコン事情と言えば、数多くの国内メーカーが自社パソコンを発売し、群雄割拠を繰り広げていた時代となる。

【レビューに使用したX68000】
本作の動作対象機種である、パーソナルワークステーションX68000シリーズのうちの1機種、1991年に登場したX68000XVI。マンハッタンシェイプと呼ばれるツインタワーの外見を持ち、随所にエッヂの効いたデザインを採用している。採用しているCPUは、IntelでもAMDでも、ましてやARMでもなく、モトローラのMC68000(クロック16MHz)。搭載メモリは2Mbytesとなっている。なお、1987年に発売された最初のX68000には、「グラディウス」が付属していた

 NECは前年の1983年に、フロッピーディスクドライブを2台内蔵させたモデルを含めた、PC-8801シリーズの最新機種PC-8801mkIIを発売。シャープと富士通は1984年に、フロッピーディスクドライブを2基まで内蔵できるX1Turbo(シャープ)、FM-77(富士通)をそれぞれリリースしている。その他のメーカーも、ソニーはSMC-777C、日立はMB-S1といったハードを登場させていただけでなく、新たにMSX規格に則ったMSXパソコンがカシオや松下、三菱といったさまざまなメーカーから市場へと送り込まれていた。

【当時のパソコン達】
あまり見る機会がないと思われる、この当時のパソコンを撮影してみた。これは、NECのPC-8801mkII。この時期は、PC-9801シリーズはまだまだ高嶺の花で、ゲームを遊ぶには98ではなく88という時代だった。メモリを64Kbytes搭載していて、画面解像度は640×200ドットの8色表示。価格は、ディスクドライブ2基搭載モデルが275,000円だった
こちらは、シャープのX1Turbo。写真に写っている、FDDを2基搭載したモデルの価格は278,000円だ。メインメモリは64Kbytesだったが、解像度は640×400ドットで8色表示が可能など、PC-8801mkIIよりも性能では上をいっていた
富士通のFM-77。この時代に3.5インチFDDを採用した、数少ないハードだった。価格は、228,000円(ディスクドライブ2基搭載モデル)。メインメモリは64Kbytesで、画面解像度は640×200ドット8色表示が可能だった
ソニーがMSXパソコン前に発売していたSMCシリーズの最新機種SMC-777C。3.5インチFDDを1基搭載し、4096色中16色の表示ができた。価格は168,000円と安かったが、残念ながら主流にはなれず。メインメモリは64Kbytesを搭載していた。SMCは、SONY MICRO COMPUTERの頭文字を取ったもの
日立も、MSXパソコンの前に独自ハードをリリースしていた。その最後となったのが、このMB-S1。同クラスのパソコンと比べると処理速度は速かったが、ソフトが少なかったのが仇に。メモリは1Mbytes搭載、解像度は640×200ドットで8色表示ができた。写真の、ディスクドライブ非搭載モデルの価格は128,000円だが、後に登場したディスクドライブ2基搭載モデルは298,000円
こちらは、カシオのMSXパソコンPV-7。わずか29,800円という低価格で市場へと投入され、人気を博した。メモリは8Kbytesでカートリッジスロットも1つという、最低限のスペック

 そんな時代のパソコンは、CPUの速度が4MHz(MHzは、現代CPUの単位Ghzの、約1/1000)で、内蔵メモリは64Kbytesが主流。画面解像度は640×200や640×400ドットで、出せる色数が8色や16色というのが相場だった。特にメモリに関しては、64ギガバイト積んでいる今時のパソコンと比べると、その容量はたったの1/100000。フロッピーディスクの容量も、この時期は約320Kbytesというのが一般的だった。分かりやすくするために320GBの容量があるSSDと比較すると、こちらも1/1000000という少なさ。それが、1985年前後のパソコンだった。

当時使われていたフロッピーディスクを並べてみた。左から8インチ、5インチ、3.5インチ、3インチとなる。この時期に主に使われていた5インチフロッピーディスクは、320GBのSSDと比べて1/1000000という容量だが、それでもなんとかなった時代だった

 音に関しても、今のPCであれば録音した音楽を流すことさえ簡単だが、当時のパソコンはそこまで表現力が豊かでは無かったので、出せても8オクターブ3重和音がほとんど。NECのPC-8801mkIIにいたっては、ブザー(BEEP)音という仕様だったため、他社製パソコンのようにはBGMを奏でることができなかった。

 しかしその翌年、1985年にNECが発売したPC-8801mkIISRは、それまでのPC-88シリーズと違って画面描画が早くなり、FM音源と呼ばれるハードを搭載したことで、音楽方面での表現力も一気に豊かになった。以降、キラーソフトの登場などもあり、PC-8801mkIISRをメインターゲットとしてソフトをリリースするソフトハウスも増えていくこととなる。

 「ドラゴンスレイヤー」が生まれた84年、そして「太陽の神殿」「ロマンシア」が誕生した86年は、そんなパソコンたちが国内市場を賑やかに沸かせていた時期だった。

パソコンの勢力図を書き換えた、NECのPC-8801mkIISR。アリコレに収録されているタイトルは、主にこの機種向けに発売されていた作品を元にX68000へと移植されている。搭載メモリは64Kbytesで、画面解像度が640×200ドット。512色から8色を選んで使えた。価格は、ディスクドライブ2基搭載モデルで258,000円