【特別企画】
いよいよ発売される「ファルコム・アーリー・コレクション For X68000」とは一体何なのか
2022年2月25日 00:00
「ドラゴンスレイヤー」。RPGがまだマイナーだった時代に登場したニュータイプRPGだった
そんな時代背景を踏まえながら、ここからは「アリコレ」に収録されている3タイトルのオリジナル版を、1作品ずつ見ていこう。
最初に取り上げるのは、「前代未聞麻薬的爽快遊技」のキャッチコピーを引っさげて登場した「ドラゴンスレイヤー」だ。パッケージにはキャッチコピーとして“A new type real time role-playing game by Falcom”とあり、当時としてはまさに“ニュータイプ”のゲームだった。
「ドラゴンスレイヤー」シリーズといえば、ファルコムのプログラマ木屋善夫氏の手がけた一連の作品のことを指し、パソコンでは本作以外に「ザナドゥ」、「ザナドゥ シナリオII」、「ロマンシア」、「ドラスレファミリー」、「ソーサリアン」、「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」、「ロードモナーク」が挙げられる。コンソール機では、PCエンジン向けに「風の伝説ザナドゥ」を手がけているので、氏の名前はパソコンユーザー以外でも知っている人も多いだろう。
その木屋氏は、「ドラゴンスレイヤー」シリーズ2作目となる「ザナドゥ」で、国内パソコン用ゲームとしては40万本という売上を記録する。以降に手がけた作品も軒並みヒットし、数多くの雑誌などに取り上げられ“スタープログラマ”と呼ばれることになった。ユーザーにとっても「木屋氏の作品は、買えば間違いなく楽しませてくれる」であり、そのネームバリューがいかほどだったかが伺えるだろう。
なお、木屋氏のデビュー作は「ドラゴンスレイヤー」ではなく、SFシミュレーション「GALACTIC WARS 1」。2作目に、国産RPG最初期作品のうちの1本「ぱのらま島」を手がけているので、「ドラゴンスレイヤー」は3作目となる。
そんな木屋氏が産み出した「ドラゴンスレイヤー」はこの時期、「夢幻の心臓」シリーズと「ハイドライド」シリーズと共に、国産3大RPGと呼ばれた「ドラゴンスレイヤー」シリーズ作品のデビュー作として登場した。
余談ではあるが、木屋氏の「ドラゴンスレイヤー」に対し、当時もう1人のファルコム在籍プログラマである井上忠信氏が手がけた「ドラゴンスレイヤー」が、アスキー(当時)から発売されていた月刊誌「ログイン」に、「井上のドラゴンスレイヤー」として掲載されている。その井上氏は後に、「アトリエ」シリーズで有名になる株式会社ガストにて、常務取締役を務めることとなった人物だ。
ゲームのルールはシンプルで、ステージ中央に配置された主人公を操作してフィールド内を探索・成長させ、ドラゴンを見つけ出して倒し、その後マップ上に散らばったクラウン4つを回収してHOUSE(家)に持ち帰ればステージクリアとなる。
ゲーム開始直後の主人公は、敵と数回戦っただけでゲームオーバーになってしまうほど弱い存在。そこで、まず必要となるのが剣だ。まずは剣をフィールドから見つけ出して装備することで、やっと最弱モンスターと戦えるようになる。しかし、それでも戦闘回数を重ねると、あっという間にHIT POINT(HP)が減ってしまう。回復するには、スタート地点にあった家に入らなければならないのだが、その時点での経験値(EXPERIENCE)と同等ポイントまでしか戻らない。これを解決するには、あちこちで見つけられるコインを集めて持ち帰ること。こうすれば、1コインにつきHPが500増えるため、一時的に経験値以上にHPを上げられるのだ。
なお、本作にはレベルという概念はないため、敵を倒したところで経験値はアップするものの腕力(STRENGTH)は上がらない。戦いを有利に運ぶには、パワーストーンを見つけて家に回収する必要があるのだ。これもフィールド上で見つけられるほか、宝箱の中からも発見できる。ところが、宝箱を開けるにはカギが必要となるため、今度は広いマップから鍵を探し出す作業が必要に……。
こうして主人公をパワーアップさせていくと、経験値が一定値を越えるごとに新たな魔法が使えるようになっていく。これを利用したり、フィールドに落ちている指輪を装備してブロックを動かすなどして探索し、マップ上のどこかにいるドラゴンを探し出せば、いよいよ対決の時きたる! 何とかして三つ首ドラゴンの首をすべて切り落とせば、近くにあった宝箱からクラウンが4つ出現……するのだが、目的のブツをゴーストが持ち去ってしまうのだ。今度は、広大なマップから4つのクラウンを求めて探し回り、すべて家に持ち帰ることが目的に。達成できればフェーズ1クリアとなり、マップ構成が変わったフェーズ2が始まる。
RPGとしては若干分かりづらい部分があるのは、まだこなれていない時代だったということもあるだろう。実際にプレイしてみると、今時のRPGは序盤に弱い敵と地道に戦闘を重ねていけば何とかなるのに対し、「ドラゴンスレイヤー」はある程度計算した行動を取らないとすぐにゲームオーバーになってしまう融通の利かなさが見られる。このあたりが分かりやすくなり、RPGがより浸透していくのは、84年12月に発売される「ハイドライド」からかもしれない。































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