【特別企画】
「サイバーパンク2077」、街を眺め世界観にしびれる「ナイトシティそぞろ歩き」
歓楽街、巨大なビル、貧民街にギャングの根城……その“存在感”を味わおう!
2020年12月10日 00:00
- 発売日:12月10日予定
- 価格:
- 通常版 7,980円(税別)
オープンワールドは“散策”こそが楽しい。優れたオープンワールドRPGやアクションは非常に多彩な景色を見せてくれ、その散策の楽しさを増してくれる。
その地域にはどんな人が住んでいるのか? 生活は苦しいのか? それとも裕福なのか? 寒いのか暑いのか? 現実の世界そのまま様々な人々の生活が見えてくる。「サイバーパンク2077」の場合は1つの大きな街「ナイトシティ」がその舞台となる。
アラサカやミリテクといった国家よりも力を持つ巨大企業がその威容を誇示する巨大ビル。移民がその文化を融合させ独特の景色を作っている外国人街。街の膨大な電力をまかなう発電所に、労働者達がひしめく貧民街。ナイトシティは現実そのままに様々な人々の生活圏を描写している。
そして「サイバー」である。空を飛ぶ車、どぎついネオン。街ですれ違う人達の多くは身体を人工のものに置き換えている。コンビニの店員や露天商、クリニック、闇医者、密売屋、用心棒に犯罪者、様々な人がちょっと現実とは違う。ただ街を歩くだけでつま先から頭の天辺まで「サイバーパンク2077」の世界に浸りきることができる。
今回の特別企画「ナイトシティそぞろ歩き」は気の向くまま心向くままこのナイトシティを散策し各地の風景を紹介したい。裕福な人達の豪遊、粗野だが魅力的な屋台の風景、荒野に作られたプラント。迷い人を獲物にするならず者に、日々の小さな幸せで満足している人達……。本当に「サイバーパンク2077」は世界の表現が魅力的だ。多くの人がちゃんと生きているように感じられる。その描写の凄さを感じて欲しい。
「サイバーパンク2077」はその世界に大きな魅力がある。GAME Watchではライターが思い入れをたっぷり語るレビューに加え、“サイバーパンク”という文化を掘り下げた特別企画も掲載している。併せて読んでいただきその世界に浸っていただきたい。ゲームを遊んでからも面白い読み物である。
多彩な顔を持つナイトシティのいくつかの地域を歩いてみる
ナイトシティはアメリカの北カリフォルニアに位置する、人口は500万人の都市。実際の大きさは北の端から南の郊外まで10kmほどだ。移民も多く、街は様々な文化が入り交じっている。観光業も盛んで、年間900万人もの観光客が訪れるという。
時代としては西暦2077年、現実の我々の世界とは異なる進化を遂げた未来世界である。車は空を飛び、人々の多くが身体を人工部品に置き換えるなど科学は飛躍的進歩を遂げているが、大多数の人々の生活は苦しく、犯罪も絶えない。日本企業のアラサカや、アメリカの軍事企業ミリテクなど企業が国家を超えた権力を持っている。
このナイトシティは6つの地域と郊外から形成される。スタートであるワトソン地域、華やかな雰囲気の「ジャパンタウン」を含めた都会的な雰囲気が楽しめる「ウエストブルック」、貧しい人達が暮らす「サントドミンゴ」など各地域でナイトシティの表情は大きく変わる。そして各地区はさらに細かくブロックでわかれている。郊外には食料などを生産するプラントや大きな工場がある。
「サイバーパンク2077」では序盤ではナイトシティの北側の「ワトソン地域」しか散策できない。それでも街は複雑で色んな風景を見ることができるほか、豊富なサブクエストもあり、メインストーリーそっちのけでナイトシティを歩き回るという人も少なくないだろう。
オープンワールドの単純な面積としては島全体や、大陸を旅できるゲームよりは小さいが、その密度が凄まじい。路地裏、建物の中、ギャング達がいる危険な地域に、様々な娯楽施設、企業のトップが君臨するオフィスなど、全てが独特のリアリティを持って描写されている。
プレーヤーはメインストーリーやサブクエストを進めていく中でより深くナイトシティを知っていく。しかし、まずはとにかく気ままに散策してみることをオススメしたい。各地域は闇のカジノがあったり、面白いNPCがいたり、見応えのある看板など思わず興味が惹かれるものがたくさんある。
ストーリーを進めるのも良い。キャラクターをひたすら鍛えるために戦闘を繰り返してもいい。その中で筆者が「ナイトシティそぞろ歩き」で提案したいのは目的も決めずぶらぶらとナイトシティを歩くことだ。ナイトシティの人々の表情、建物の細かい所、何気なく置かれたアイテム……そこにはドラマが、歴史が、そこに住む人々の生活が描写されている。実際の人が住む地域を歩いているような様々なドラマが込められているのだ。そのドラマをぜひ感じて欲しい。
今回は4つの地域を実際に歩いてみて、見ることができた風景をレポートしていきたい。皆さんもゲーム内でたっぷりこの世界を探索してみよう。
アジアテイスト豊富なワトソン地域、下町感溢れる活気が魅力
ワトソン地域はナイトシティ北部の広大な地域。リトルチャイナを中心に活気に溢れた場所だ。“ナイトシティ生まれ”を自認する者達が住む場所でもある。かつてはナイトシティの中心だったが、今では治安の悪い地域となってしまっている。
ワトソン地域はゲームのスタート地域。プレーヤーに「ナイトシティはこういう場所だ」と印象づける、個性豊かな地域となっている。中心地域である「リトルチャイナ」は東アジアの街の雰囲気が濃い。建物の中に商店主が店を構えていたり、屋台が建ち並ぶ地域がいくつもある。
リトルチャイナの東の「カブキ」は川の多い裏通りのように薄暗い地域。北の「ノースサイド」には巨大な原子力発電所の施設や、工業地帯がある。この地域は治安が悪く、「メイルストローム」といったギャングが市民達に暴行を働いている場面をよく見かける。このためVの仕事は多い。序盤から様々な依頼が寄せられるだろう。
特徴的な場所はいくつもあるが、V達にとっての憧れの場所「アフターライフ」は外せないだろう。ビッグな仕事人達がひいきにしている店。50年前の伝説のロッカー「ジョニー・シルヴァーハンド」の名を冠したカクテルもある。Vや相棒のジャッキーにとっては「夢のスタート地点」と呼べる場所だ。
もう1つ、「紺碧(こんぺき)プラザ」というホテルも特徴的だ。名前の通り日本企業が経営している格式あるホテルで、従業員は全員が身体を金メッキで覆っている。人体改造が積極的な世の中ならば、仕事のために身体すら変えるのか、という“この世界”ならではの価値観を感じられる場所とも言えるだろう。
こういった描写が、独特の価値観・テーマで作られた“この世界の常識”を主張し、プレーヤーを異世界に飲み込んでいく。現実とは異なる、しかし独特のリアルな世界に没入できる。散策の楽しさは細かい所の作り込みを味わうことで、この世界の“出来の良さ”を実感できるところにある。
ウエストブルックは、華やかな歓楽街と、裏の顔も持った場所
ウエストブルックはナイトシティの東部にある。地域の東側は丘になっており、いくつかの工場以外は開発されていない。一方西側のジャパンタウンは華やかな繁華街になっている。ワトソン地域は生活感があるが、こちらは洗練されていてまさに“大都会”というイメージだ。
ウエストブルックで興味が惹かれるのは「ジャパンタウン」だ。ここは非常に華やかでおしゃれな雰囲気のある看板が立ち並んでていて、リトルチャイナのような雑多さは感じられない。「桜花マーケット」というLEDで桜を表現したようなサイバーな感じの屋台街や、巨大な立像などもあり、この地域のエピソードや成り立ちが気になるところ。
地域の南にあるチャーターヒルは椰子の木が植えられた高級住宅街。洗練され落ち着いた雰囲気があるが、実は下水道からカジノに入ることができる。華やかな表の顔の裏で、かなり怪しい場所もありそうだ。
東側の「ノースオーク」は丘の上にいくつかの工場があるだけなのだが、治安は非常に悪い。特に「インパラオートマティック」はナイトシティに賃料を払わず従業員達が不法占拠し、入り口には進入しようとした者達の死体が転がっている。どんなドラマが展開するかとても楽しみな場所である。
ナイトシティを牛耳る巨大企業・アラサカが君臨するシティセンター
ナイトシティの中央部に位置するのがシティセンター。面積としては余り大きくはないが、重要な地域である。今や国よりも支配力を持つアラサカやミリテクといった巨大企業の拠点なのである。
シティセンターはアラサカや、ミリテクなど巨大企業のビルが立ち並ぶ場所。非常に華やかさがある地域ではあるが、企業ビルに入り口は見当たらず謎めいている。駅が封鎖されていたり、何かの事件が起きているようだ。
隣のダウンタウンもあまり人のいる雰囲気ではないが、フィクサーがいるライブハウスなどもあり、探索すれば楽しめそうだ。薬品を販売しているところは歯医者の雰囲気があって、Vのような人間は警戒される。
警備レベルも高く近寄りがたい場所だが、実はキャラクター作成の「ライフパス」で「コーポレート」を選ぶことで、アラサカ社員としてプロローグを進めることができる。その後のプレイでは中々見ることができないアラサカの“内部”を見ることができる。コーポレートのプロローグは見ておきたいところだ。
アブナイ雰囲気が楽しい、無法者達のすみかサントドミンゴ
サントドミンゴはナイトシティの南東部の大きな地域。モックスとタイガークロウズという2つのギャングが争う危険な地域だ。
サントドミンゴは、「アロヨ」と「サンチョ・コロナド」の2地域からなる。ブラジルの無法地帯がイメージとのことだが、アメリカのLAのメキシコ系や黒人地域を思わせる独特の生活感がある。ただ住人の何人かは非常に強力なギャングメンバーで、異邦人にはとても危険な場所であることが感じられる。
アロヨは生活感のない巨大な工業地帯で再開発のために建物が撤去されているところが多い。一方サンチョ・コロナドは生活感はあるのだが、巨大な観覧車が倒壊したままになっていたり、市からの恩恵は少なそうだ。サンチョ・コロナドの外縁にはギャングの拠点もあった。
今回ちょっと面白かったのが、気まぐれで塀の先をのぞいたところ指名手配犯を発見。前方に気を取られているので近づいたのだが何とロボット兵器との戦闘を始めた。どちらも現在の筆者のキャラクターではとても太刀打ちできないが、何とか漁夫の利が狙えるかな、と試してみたが、一撃で倒されてしまった。動画でその様子を撮っているので、是非最後まで見て欲しい。
筆者の大好きな映画に「トゥルーマン・ショー」がある。TVドラマのセットの作り物の世界でただ1人だけそれを自覚せず、自分の人生がTVドラマとして実況されていることを知らない男の話で、彼の視界から外れたところはTVや映画のセットそのまま、何も作られていない。空や建物はみな書割だ。しかしトゥルーマンにとっては全ては確かにある現実なのだ。
「サイバーパンク2077」はゲームである。その世界は架空のものであるし、プレーヤーはそれを自覚している。しかしすれ違う人、路地裏でふと見た景色、丘の上から見るナイトシティの夜景……全てが「サイバーパンク」というテーマによってアレンジされながら、圧倒的なリアリティを持ってプレーヤーに迫ってくる。そして「良くできてるなあ」と感心させられるのだ。
ナイトシティを散策するのはとても楽しい。現実の街と同じように地域には似たような生活の人達が集まり、独特の文化圏を形成している。似たような建物やオブジェクトでも地域や配置の仕方で大きく変わり、その場所の人々の生活が確かに感じられる。ナイトシティは架空の街であり、ゲームの中にしか存在しないが、多くの開発者が現実の街を研究し、歴史やバックボーン、住む住人を考えて作り上げ、独特のリアリティを獲得している。
そしてやはり路地裏が楽しい。本筋には関係ない人の何気ない会話や、ゴミが集まる場所、真面目な生活をしている人や怪しい人……そういった細かい描写はゲームのメインストーリーだけを追っていると気がつかず、通り過ぎてしまうものかも知れないが、開発者がふとした思いつきで配置していたり、実は強くこだわっていたり、そういう“細部”の積み重ねが世界の重厚さ、散策する楽しさを与えている。
この散策はメインストーリーをより楽しくしてくれる。各キャラクターの生活様式や、その物語が展開する地域的背景を実感することで、メインストーリーがさらに説得力を持つ。ストーリーを進めて早くクリアして満足、という人もいるとは思うが、筆者はやはり目的もなしに地域を探索し、世界の隅々まで探索して欲しい。ナイトシティはそこに住んでいる人の息吹が感じられる非常に力を込めて作られた街だ。この世界の“深さ”をじっくり感じて欲しい。