【特別企画】

ついにその魅惑の世界が明らかに! 「サイバーパンク2077」ファーストインプレッション

出自で変わる展開、システム、サイバーな世界観、序盤の魅力をたっぷり紹介

発売日:11月19日予定

価格:
通常版 7,980円(税別)
コレクターズエディション:29,800円(税別)

 「サイバーパンク2077」の最新情報を伝える配信番組「Night City Wire」が6月26日午前1時に放送され様々な最新情報が明らかになった。先日本作の発売が11月9日に延期されてしまい失望した人は少なくないと思う。しかし今回の最新情報でその作品の魅力、ゲームとしての新しさと世界観の面白さが明らかになり、期待は否が応でも高まっただろう。

 今回、弊誌ではこの「Night City Wire」に先がけゲームをプレイすることができた。物語の始まり、これまでE3などで触れられてきたゲームの冒頭部分であり、主人公Vが本作の鍵を握るインプラント「Relic」を前にするまでの部分を体験できた。物語として本格的に始まる前の段階であるが、プレイ時間としては4時間以上、たっぷりと触れることができた。

ナイトシティでの冒険をたっぷり楽しめた

 もうずっとナイトシティにいたい、プレイしたところですら選択をやり直し違う展開が見たい、もっとフィールドをチェックしたい、何よりも物語の先を知りたい。強くそう思った。「サイバーパンク2077」は、人間の肉体と機械が融合するSF世界、まさに"サイバーパンク"という言葉に憧れを持つ人の夢が実現したようなゲームであり、オープンワールドRPGとしてとても魅力的なゲームだ。

 本稿ではゲーム序盤で体験できるゲーム要素を紹介していきたい。キャラクターの"出自"によって変わるオープニング、様々な技能、ハッキングやスキルを駆使する戦闘、オープンワールド探索の楽しさ、そして世界観。さらに序盤で見ることができたサイバーパンクならではのゲーム性にも触れていきたい。

 序盤の展開など物語の要素にも触れるので、ネタバレは嫌だ、何も前情報を入れずにプレイしたい、という人は注意して欲しい。筆者が今回できたのはあくまで序盤であり、ここをベースにゲームの本編ではどうなっていくかとても期待が高まった。筆者が体験した部分の情報を得ても、ゲームの楽しさは全く減ることはない、ということだけは確かである。

ライフパスによって変わる立ち位置、様々なプレイスタイルが可能なシステム

 まずはキャラクター作成と序盤の展開、ゲームシステムを語っていきたい。キャラクター作成では外見も細かく設定できるが、「サイバーパンク2077」のキャラクター作成の面白さは、「ライフパス」という項目にある。

 このライフパスで主人公Vの"出自"が変わるのだ。選択できるのは3つで、「ストリートキッド」を選ぶとVは生粋のナイトシティの住人となる。Vにとってこの街は生まれ育った街で、街に知り合いも多い。「ノーマッド」は街の外からの住人で、人々からはよそ者として扱われる。そして「コーポレイト」はナイトシティに進出した日本企業「アラサカ」の社員となる。

 このライフパスによってゲームのスタートが全く異なってくる。相棒・ジャッキーとの出会いが違うのだ。ゲーム本編の流れはほぼ同じで、プレイ体験としての"違い"は相対的に見ればそれほど変わらないかも知れないが、選択肢などで違いが出てくる。プレーヤーが最初に触れる部分でもあるため、主人公Vに対する印象も大きく異なってくる。

ストリートキッドを選ぶと、ジャッキーはいきなり同じ車を狙う敵として現われる

 今回筆者はストリートキッドを選んでみた。行きつけのバー、街の顔役にも気に入られ、街の警官もVのことを知っている。ジャッキーとはある仕事で突然出会うこととなる。敵対者としての出会いだったが、共に窮地を脱し、同じ街の住人だとわかると、ジャッキーは親しげになる。こうしてジャッキーを相棒にナイトシティでの冒険が幕を開けるのだ。

 この後の展開はどのライフパスを選んでも同じになるが、このオープニングは大きく異なってくる。コーポレイトではジャッキーは同じアラサカの社員、他では見られない企業の社員としての雰囲気を味わうことができる。ノーマッドは街の外からスタート。ジャッキーとは仕事の仲間として出会うという。そこからVとジャッキーはコンビを組み、ナイトシティで様々な仕事をこなしていく、というわけだ。このオープニングでは戦闘や成長などの要素はない。それらはプレーヤーが体験する最初の"仕事"で覚えていくこととなる。

ストリートキッドは地元の警察官とも知り合いだ

 ここから時間は少し飛ぶ。Vとジャッキーは腕利きの女性ネットランナー「T-バグ」と共にある仕事をする。1人の巨大企業の女性社員が行方不明になったというのだ。この女性の行方をT-バグが突き止める。彼女は本来は強力な"保険"に入っており、危険に合えば専門チームが救助に来るはずなのに、それも来ない。ジャッキーとVは"実行部隊"として女性社員を捕らえている闇クリニックへ侵入することとなる……。

 このミッションは実質的なチュートリアルで、ミッションの前には仮想空間での模擬戦闘訓練もできる。簡単な戦闘、近接戦闘、ステルス、そしてハッキング。「サイバーパンク2077」は1人称視点のRPGであり、FPS感覚の銃撃戦ができる。そして近接戦はかなり凝っている。スタミナ、ブロック、強攻撃などの要素があって、これらを覚えていくと戦闘に大きな幅が出せそうだ。ステルスもうまく活用すると非常に強い。背後からグラップルで一撃で気絶させたり、不意打ちの攻撃でボーナスを得られる要素もある。

射撃戦はFPSの感覚でできる

 そしてハッキングだ。Vはハッキングの能力を上げることで様々な機器を遠隔操作することができる。モニターを誤作動させて敵の気を引いたり、カメラをハッキングすることで自分の場所から見えない情報を得ることもできる。ハッキング能力が上がると相手を錯乱させたり、オブジェクトを爆発させることも可能だ。また、ネットワークへ侵入する際や、特殊なプログラムのアップロードには、文字列を見越して選択していくというミニゲームをクリアする必要があり、行なうことで様々な恩恵が得られる。

 この他、装備には「アタッチメント」がある。ライフルには銃口の先につけるフラッシュハイダーや上部に接続するスコープといった部品がある。これらは店から購入することも可能だが、敵の武器からも奪える。武器の中にはこういったアタッチメントを元々つけているものがあり、これらを取り外して他の武器に付け替えることが可能だ。アタッチメントだけでなく性能そのものを上げる強化用パーツもある。また、武器や装備そのものにもレアリティがあり、性能の高いモノを入手できる。性能が高い装備に、良いアタッチメントをつけてパワーアップさせていくのである。

視界を変えてハッキングできるものを探す

 ミッションをクリアしていくと経験値を得てVはレベルアップする。得られるポイントは能力値とパークのポイントがある。能力値は「肉体」、「反応」、「知力」、「技術」、「意思」の5つ。これらのポイントを上げていくことでVは強力になっていく。技術が高いと専門的な知識のところで会話が増えたりするし、肉体が高ければより多くのものが持ち運べる。

 これら能力値に紐付いているのがスキルである。ハンドガンや近接攻撃、ハッキングなど様々なスキルを活用することでスキルが上昇し、各アクションスキルがより効果的に使える様になる。自分のプレイスタイルがそのまま得意分野になっていくのだ。

 そして各スキルの下にパークツリーがある。パークにはアイテムの持ち運ぶ量、照準のしやすさ、ハッキングが有利になるなど様々なボーナスがあり、自分のプレイスタイルを考えて成長させていく事となる。筆者は射撃などを考えて反応能力値を高めのステータスにしたが、敵からの装備品を積極的に集める傾向があったので、持ち運びの量を多くするパークを取った。パークは非常に多く、ポイントは限られているため、成長させる要素はかなり迷いそうだ。

 ゲームの要素はかなり複雑で、序盤はスキルなども少ない上にシステムの理解も足りないので、どうしても硬直したプレイスタイルになってしまう。ハッキングの効率的な方法や有効な戦い方、さらには接近戦にこだわるとか、ステルスに特化するなど、様々な試行錯誤を経て自分の遊び方を確立する。「サイバーパンク2077」はそういったゲームだと感じた。

サイバーウェアを強化することで高い位置から不意がつけたり、近接武器の「マンティスブレード」等が使える

 そして「繰り返し」も楽しそうだ。Vの性別も変え、ライフパスを変え、プレイスタイルを変えてプレイしたら、全く別な風景が見えてくるのがはっきりわかる。本作は非常にボリュームのあるゲームで、1階のプレイはかなりの時間がかかるのは序盤ですでに実感できた。しかしプレイスタイルを変えてストーリーの選択も変えてやってみたい、随所でそう強く思わせるのだ。このゲームだけひたすらプレイする、そういう楽しみ方が似合うゲームだと感じた。

多彩な展開、選択肢の多さが本作の魅力

 「クエスト中に様々な選択肢が与えられる」。その要素を見せつけてくれるのが、「回収」というクエスト。ジャッキーが大物フィクサーである「デクス」から声を掛けられたという。フィクサーというのは様々な仕事の仲介人。彼らの信用を得られればデカイ仕事が舞い込んでくる。デクスは有名なフィクサー。ジャッキーは有頂天だ。

 デクスは一筋縄ではいかない人物だ。すぐに大きな仕事を任せず、Vを"テスト"する。それがこの「回収」というクエストだ。回収する物資は軍事企業・ミリテクのボット。このボットはギャングの"メイルストローム"がミリテク社から強奪した物資の1つだ。デクスは金を払ってこのボットを買ったが、メイルストロームで権力抗争があり、新しいリーダーがボットの受け渡しを渋っているという。

本作に登場するキャラクターは誰もが油断ならない人物ばかり

 クエストではいくつもの選択肢が与えられる。この強奪事件から犯人を追っているミリテクのエージェントの「メレディス・スタウト」。彼女に会うかどうかが1つの選択肢だ。彼女はボットを手に入れるためさらに金を払えと助言しミリテクのクレジットチップを差し出してくる。これは実はトラップなのだ。Vの技術が高ければそれが見抜ける。

 メイルストロームへはギャングの案内でリーダーに会いに行くことも、いきなり戦いを挑むこともできる。新しいリーダーのロイスと交渉することも、戦う事も、メレディスのチップを使うこともできる。選択によっては襲撃してきたミリテクと戦う場合もある。プレーヤーの選択肢で展開が大きく異なるのだ。ミリテク内でも権力闘争があるし、行動次第でメイルストロームの以前のリーダーに貸しを作ることもできる。

 筆者はちょっと色々うまく行かない感じだった。メレディスと会ったはいいが、彼女のチップの受け取りは拒否したし、一度目は会話の選択肢を誤り、なすすべもなくメイルストロームのボスに殺されてしまった。会話を打ち切っていきなり攻撃ができる、ということも気がつかなかった。

選択と行動でクエストの展開は変化する

 結局正面からメイルストロームと戦う事となった。チュートリアルで学んだハッキングもうまく活用できず、ひたすらマッチョに銃撃で進んでしまった。ジャッキーの援護があるから乗り切れたが、もっとスマートにできたよなあと感じた。うまく行けばミリテクとメイルストロームを戦わせて漁夫の意を得られただろうか? 色々な想像もふくらむクエストだ。この選択肢の多さ、展開の多彩さは1度で終わらせるのはもったいない。次はもっとうまくやりたい。

当人の意識しない情報を盗み取るBD、そして楽しいオープンワールド要素

 体験できたゲーム要素で強く印象に残ったのが「BD(ブレインダンス)」だ。これは人の記憶を抜き取りそれを検証することができるツール。性刺激の追体験など娯楽目的での使用が一般的だが、情報屋は違う。その人間が意識していない情報すら抜き取り、そこから目的の情報を得るのだ。

 Vがテストとして体験したのはコンビニ強盗の記憶。犯人の男は店の裏で"相棒"から銃を受け取ってその銃で店に押し入り、金を奪って逃げる。しかし店から出る寸前何者かに背後から撃たれ、死ぬ。BDを使うことで男の視点だけでなく、彼を第3者の視点から眺めることができ、さらにコンビニのカウンターにあったモニターから防犯カメラの映像まで見ることができた。

人の脳から情報を抜き取りそれを検証することができる「BD(ブレインダンス)」。記録者を外から眺め、様々な情報が得られる

 最後に「オープンワールド要素」に触れておきたい。本作では広大なナイトシティを自由に動き回れる。今回のバージョンでは車だけだったが、製品版ではもちろん道ばたのバイクなどにも乗れるという。

 乗り物に乗ると広大な街を走り回れる。繁華街、裏路地、巨大企業のビジネス街、ギャングの領域……これらは様々なクエストを体験する中で筆者にとって慣れ親しんだ場所になるはずだ。どこに品揃えのいいマーケットがあるか、武器はどこで手に入るか、よく行くサイバーウェアクリニックはどこか、プレイを重ねることで本当に"街の住人"になれる。それこそがオープンワールドRPGの楽しさだろう。

 今回体験できたのは街中でのイベントだ。助けを求める声がしたり、マップ上のマークが起点となり、ギャングのアジトや⼀般⼈が襲われている場面に出くわす。こちらからアクションを起こせば戦闘開始。遠くからライフルで狙撃したり、ステルスやハッキングを活用すればもっとうまく戦えると感じた。フィールドでのイベントの敵は全体的に強く、彼らを駆るにはもう少しパワーアップが必要だと感じた。

 以前話を聞いた肉体強化を行なうギャング「アニマルズ」だろうか? 日本刀を振りかざし、加速移動で迫ってくる敵に対して、必死で逃げながらアサルトライフルで撃退した。倒して得た日本刀は赤熱化のアタッチメント付きなのか抜くと刀身が赤く輝く。こう言うところが楽しくてたまらない。

フィールドは非常に広大だ。どんなドラマが待っているか、ワクワクさせられる

 最後に感想をまとめたいと思う。「サイバーパンク2077」は筆者が小説やTRPGで憧れたサイバーパンクそのままの世界だ。頽廃的で犯罪的、危険で恐ろしく、ギラギラして、暗い、サイバー都市を歩き回り、世界に浸れるRPGだ。剣と魔法の「ウィッチャー」の次に、この世界を出してくるのは、本当に面白い。

 登場人物全てが腹に別の想いを持ってそうなうさんくささ、油断のできなさがいい。フィクサーに限らず、企業エージェント、傭兵、チンピラ、誰もが欲望を持っており、ある者は隠し、ある者はむき出しにしている。誰も信用できない世界で、明るくて享楽的なジャッキーは強く印象に残る。これらを雰囲気たっぷりの日本語音声で楽しめるのもいい。声優達の熱演がこのゲームの楽しさを引き立てている。街の雑踏、通行人の会話、何気ない酒場の馬鹿話、フルローカライズだからこそ、これらが重要な意味を持つ。

 これらを体験した上で、やはり本作の最大の魅力は「ストーリー」だというのは断言できる。Vはこの後「レリック」を手にし、ジョニー・シルバーハントと出会う。今回、まさにその最初のクライマックスに向かうその瞬間を目にできたのだ。ジャッキー、デクス、アラサカ……すごいことが起きる。Vやジャッキーは知らないが、筆者はそれを知っている。その"本当の始まり"に向け、これまで断片的だった事象が音を立てて組み合わさっていく。このゾクゾクする感じは、やはり最高だ。もう全てを捨ててでもこの先をプレイしたい、そう思わせる体験会だった。

 「サイバーパンク2077」はすごいゲームだ。E3、東京ゲームショウ、これまで提示されていた要素がようやく実際のゲームとして触ることができ、そのしっかりした手応えにうれしくなった。ここからさらに磨き込まれ、よりプレイしやすく各要素をしっかりと体験できる。今すぐこの世界に没頭できないのは本当に残念だが、発売を心待ちにしたい。