【特別企画】

これまでにない、新時代のゲーム体感! 「DEATH STRANDING」先行レポート

鬼才・小島秀夫監督が世に放つ、完全新作を一足お先にプレイ!

11月8日 発売予定

価格:
通常版 6,900円(税別)
スペシャルエディション 7,900円(税込)
コレクターズエディション 20,900円(税込)
デジタルデラックスエディション(DL版のみ) 9,612円(税込)

 E3でタイトルと映像の発表がされてから約3年。「メタルギアソリッド」シリーズでお馴染みの小島秀夫氏が独立後に手掛ける初の完全新規タイトル、「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」が11月8日についに発売となる。

 これまで様々な情報が公開されてきて、アクションゲームということだけは漠然と把握しているが、一体どんなゲームなのかは具体的に掴めていなかった。しかし今回、実際の製品版と同じバージョンのものを先行プレイする機会を得て、かなり駆け足ながらエンディングまでプレイした。

 本稿では、基本となる世界観やゲーム性、筆者がプレイして感じた「DEATH STRANDING」の魅力を語っていく。ストーリー部分についてのネタバレは避けてはいるが、事前情報一切無しで本作を楽しみたい人は注意していただきたい。

敷居の高さを超えた先にある、自由度の高さ

 本作の舞台は、「デス・ストランディング」と呼ばれる現象によって分断されてしまった世界。引き裂かれて孤立してしまった人類を救うため、伝説の配達人「サム・ポーター・ブリッジズ」が世界を繋ぎ、アメリカを復活させるのがこのゲームの目的だ。

人類の存亡は、1人の配達人に託された

 ゲームは配達物を届けるため、サムがバイクで駆けるムービーシーンから始まる。曇天の空から降り出す雨。サムの髪の一部に雨の雫が落ちると、その部分が白髪に変わっていく。デス・ストランディング後の世界で降る雨は「時雨」と呼ばれており、生物に何らかの影響を及ぼすようだ。冒頭では謎が謎を呼ぶ展開が続く。この物語にグイグイと引き込む見せ方も、小島監督ならではの映画的な作りである。

時雨を浴びたカラスは、バタバタと地に落ちていく。一体何が起きているのか……

 ゲームの基本の流れは、配送センターからミッションを受注。各地に荷物を届けながら、「カイラル通信」と呼ばれるネットワークで北米大陸を繋げていくことで物語が進んでいく。

 冒頭はオープンワールドの広大なフィールドに半ば投げ出される形でゲームが始まる。従来のゲームであれば、他のアクションゲームで培った下地が活きるのである程度直感的にプレイできるのだが、本作の手触りは少し違っていた。

 最初に触ったときは、ただ坂を下っていこうとするだけで転倒を何度も繰り返した。初めは何でこんなにも転げ回るのか困惑したが、本作では急斜面を進む際や大荷物を運んで移動する場合、転倒しないようにL・Rボタンでサムの重心のバランスを取って行動しなければならないのだ。サムが背負っているセンサーを発動させれば、安全な平地か足を取られる荒れた道かを判別でき、安全なルートを進むことができる。移動1つ取っても、本作ならではの独特なゲーム性が際立っている。

美麗な映像で広大な大地が広がっている
初めのうちは操作が分からず盛大にコケまくり、サムのボヤきを延々聞かされた
センサーで地形の安全性が確認できる。青い点が安全なポイント、黄色は注意、赤のポイントは危険地帯

 過去のインタビューで小島監督は、「僕らのターゲットは、色々な車に乗っている人たちです」と語っていた。これは車に例えた話で、すなわち色々なアクションゲームを経験したユーザーに向けた作品ということなのだが、プレイしてみてその言葉の意味に合点がいった。

 本作独自のゲームシステムに加え、操作の複雑さや説明の少なさなど、アクションゲームをあまりプレイしたことがないユーザーにはかなり敷居の高い作りになっている。よく言えば玄人向け、悪く言えば万人向けではない。“荷物を届ける”ということが軸になる本作の仕様上、単純に敵を撃って倒すだけのアクションゲームに比べて、ゲームとしての派手さや爽快感は薄く、プレイしてすぐに面白さがダイレクトに伝わってくる作品ではない。

 アクションゲームはそこそこ通ってきたつもりの筆者だったが、初めはまさに手探り状態のプレイで、面白さを感じる余裕すらもなかった。しかし、プレイしながらじっくり噛み砕いてゲーム性を理解していくと“本作の見え方がガラリと変わる”。

 荷物を配達するルートが定められていないことに最初は苦戦したが、それは逆にいうと“どんなルートでも良い”ということ。ワールドマップを見て、緩やかな道や、梯子やロープなどのアイテムを使ってショートカットできる最短ルートを考えて効率よくミッションをクリアできるようになるとかなり面白くなってくる。自由度が高く、遊び方が指示されない分、自分の考えが想定通りに進んだときの達成感は強い。

様々な道具を駆使して、自分だけのルートをじっくり考えるのも面白い。

間接的だが強く感じる、人と人との繋がり

 本作のテーマである“人との繋がり”は、ゲームのシステムとしてもうまく落とし込まれている。カイラル通信を接続してオープンとなった場所では、世界中のプレーヤーが辿ってきた足跡やメッセージなどが残されている。他にも、別のプレーヤーが設置した橋やロープなども自分のマップに反映され、みんなが利用できるようになっているのだ。

 他のプレーヤーにアイテムをシェアすることもできる。シェアボックスというアイテムボックスに物を入れておけば、全てのプレーヤーがその中からアイテムをもらうことができる。重量オーバーで持ちきれないアイテムや不要なアイテムをここに入れておくことで誰かの役に立つのだ。

 履いていた靴が壊れたり、梯子やロープを切らしていたときにシェアボックスの中に入っていると非常に助かる。助けてもらったプレーヤーには「いいね」という評価を感謝の気持ちとして送ることができる。いいねをもらうことで得をするようなことは特に無いのだが、他人の役に立っているということが感じられるのはシンプルに悪い気はしない。

 ゲーム中で他プレーヤーの姿を見ることはできないので直接的なコミュニケーションは取れないが、同じ空間にいる人たちの存在を確かに感じることができる。これまでにない本作ならではの新しいオンラインの形といえるだろう。

標識など、他のプレーヤーがそこを通った痕跡が残っている。声を掛けると稀に返事が返ってくることも

 「メタルギアソリッド」シリーズなどと同様に、戦闘がメインのゲームではないが、サムを襲う敵はフィールドのそこら中に存在している。プレイしていて1番よく遭遇したのが、配達症候群という症状に侵された元配達人の集団「ミュール」だ。サムを発見すると執拗に追いかけてきて荷物を奪っていくという厄介なやつらだ。逃げるのに必死になっていて、配達物を盗まれていることに気付かず、届け先で物が無いことが発覚するという失態を犯したこともある。

 盗まれたアイテムはミュールの拠点に持ち帰られているので、潜入して取り返さなければならない。アイテムを取られると回収するのに骨が折れるので、自信がなければミュールがいそうな場所は多少遠回りしてでも近寄らないのが無難だ。

ミュールは数でこちらを襲ってくる。アイテムを取られたら倒して回収するのだ

 イベント、またはランダムでフィールドの天候が変わり、冒頭でも触れた時雨が降ってくることがある。雨のときはかなり危険で、目には見えない謎の怪物「BT」が出現するようになる。目で見ることはできないが、BTもサムのことは見えておらず、音や気配でこちらを察知して襲い掛かってくるのだ。

 サムが背負っているセンサーの反応で、BTの位置や距離を感知することができる。これを頼りに、息を止めるなどのアクションを駆使して極力見つからない様に進んでいかなければならない。

 BTに発見されると、地面の一面がタールの海に包まれ、思うように動くことができなくなってしまう。そのままBTに捕まると「キャッチャー」と呼ばれる巨大な敵の元に連れていかれてしまう。キャッチャーを武器で撃退するか、一定の距離まで離れれば、襲い掛かる地獄から抜け出すことができる。BTが出現したときの恐怖感や、捕まってしまったときの絶望感など、BTの脅威をプレーヤーに強く感じさせる表現はさすがの一言。この感覚は多くのプレーヤーに味わってもらいたい。

亡者のごとく、タールの中へ引きずり込むBT。振りほどいて逃げなければ、キャッチャーの元へ連れ去られる
キャッチャーとの戦闘では、他のプレーヤーが現れて支援アイテムをくれることも

 本筋のストーリーを進める以外にも、やり込み要素が用意されている。フィールド上には配達途中の荷物が落とし物として落ちていることがあり、荷物の宛先へ届けてあげることや、他のプレーヤーに荷物を託すことができるのだ。代行で荷物を届ければサムの配達人としての評価が上がり、さまざまな称号が得られる。最高の称号を目指して配達稼業に没頭するのもなかなかに楽しい。

サブミッション的な落とし物配達は、不思議と没頭してしまうほどの楽しさがある

 今回、「DEATH STRANDING」をプレイしてきたが、グラフィックスは歴代のPS4タイトルの中でもズバ抜けて高く、小島監督が描くストーリーもどんどん先が気になる展開の連続。止まることなくノンストップでエンディングまでプレイしてしまった。

 間違いなく良作ではあるのだが、両手放しで誰にでも勧められるゲームではないと感じた。本作の独特な世界観やゲーム性はかなりアクが強く、とても人を選ぶタイトルというのが正直な感想である。だが、それらを飲み込めたときにはこのゲームの虜だろう。本作を気になっている人は、自分の目で、肌で、「DEATH STRANDING」という作品を感じ取ってもらいたい。