【特別企画】
“善人面の極悪人プレイ”が「キングダムカム・デリバランス」を熱くする!
糞投げも死体漁りもいとわない! 残忍さで成り上がる騎士道物語
2019年7月18日 00:00
- 7月18日 発売
- 価格:
- 8,834円(税込、通常版)
- 12,550円(税込、限定版)
「キングダムカム・デリバランス」における主人公ヘンリーは、「どう考えてもただの善人にはならない」。そう思ったのが本記事のきっかけである。というのも、ヘンリーの境遇があまりに重々しいものだからだ。
仕事を怠けて酒を飲み明かし、暇を見つけては友人と悪だくみ。小さな村の、少しやんちゃなだけの青年。それがゲーム開始直後のヘンリーなのだが、実に平和だった村は突然襲撃され、焼き払われ、ヘンリーの両親ともども皆殺しにされたことで、人生は一気に地獄へと変わる。
ヘンリーは命からがら逃げ延びるものの、生きる希望を失い、代わりに絶望とトラウマをたっぷり抱える。残されたのは「復讐」の2文字。ヘンリーは周囲と激突しながら兵隊への参加を志願し、現在のチェコがある、15世紀中世ボヘミアの戦乱世界へと身を投じていくこととなる。
本作は一人称視点のオープンワールドRPGで、走ることや素手でのケンカ、そのほか様々な行動がヘンリーの成長へと繋がっているのが特徴だ。自由度は高く、行動によって周囲からの評価が善人になったり悪人になったりする。成長させる方向性も自由で、話術を得意にしたり、とにかく筋肉を鍛えたりと色々できる。
ゲームは各地のクエストをこなして進行するため、素直にプレイするなら、人々の願いを叶えたり、困りごとを解決しながら評判を上げ、騎士としての名声をゼロから築いていくことになるだろう。でも……と筆者は思う。
絶望の淵にあるヘンリーが、そんなに物事を素直に受け入れられるだろうか。ストーリーでも少し描かれるが、ヘンリーは、一旦思い込んだら言うことを聞かないところがある(後述)。そこで想像したのは、ドラマ「ハウス・オブ・カード」のフランクのような、野望のために手段を選ばない男だ。
「ハウス・オブ・カード」のフランクは、自身が大統領になるために周囲の人間を騙し、罠に嵌め、時に容赦なく殺す。一方でいいことを言っておきながら、その裏ではまったく違うことをしている。そんな冷酷無比な男である。ヘンリーは、同じような空気を存分にまとっているのだ。
そこで思いついたのが、周囲の評価をなるべく下げないで「善人」のまま、やってることは「極悪人」というロールプレイ。これを意識したことで、「キングダムカム・デリバランス」が非常に深みのある体験になった。特に最序盤はどのように進むのか、合わせてご紹介したい。
糞を投げて協力者を得る
プレイを始めて最初の極悪イベントは、平和なスカリッツ村で起こる糞投げイベントだろう。現政権を批判する鼻持ちならないドイツ人、ドイッチュの家の外壁を糞まみれにする。「塗りたての壁をもう一度塗ってやるだけだぜ」などとモラルの欠片もない会話を友人と交わしつつ、実行するものだ。
会話では参加を拒否する選択肢も出るのだが、こうした策略には全力で乗る。「やらない」という選択肢はない。なぜならその後の思惑があるから。
糞を投げても誰の得にもならないし、衛兵は呼ばれるしでいいことは全くないのだが、でも友人からの評判は落とさなくて済む。そして今度は、ヘンリーが友人たちに頼み事をする番だ。
実は、家を出る際、ヘンリーの父から「借金の取り立て」を仰せつかっていた。取り立て相手はクネシュという体格のいい酔っぱらいで、ヘンリーが説得しても相手にされない。実力行使で拳で叩きのめしてもいいのだが、ここは友人との協力戦が有効だ。
クネシュへの交渉に一度失敗した場合、糞投げイベント後の友人たちとの会話に「クネシュを襲撃する」選択肢が登場する。これを実行し、4人で袋叩きにしたら、鍵を渡されて彼の仕事道具を獲得。道具を売り渡せば、借金回収に成功というわけだ。友人さえ目的のために利用する、極悪人への第一歩である。
恩を仇で返すスタイルで城を脱出
続く極悪イベントはタルムバーク城でのこと。タルムバーク城は、ヘンリーが村の襲撃から逃れてなんとかたどり着いた味方勢力の場所。「危ないからしばらく隠れてろ」と命令されるのだが、ヘンリーは「両親を埋葬しに絶対に村に戻る」と思い込む。
このミッションの目的は、「封鎖された城からどうにかして外に出る」だ。方法としてはいくつかあって、まず橋から飛び降りること。最速の解決手段だが、追手がかかるデメリットがある。
次は、盗みなどの犯罪が見つかって、連行されること。牢獄ではなく、囚人として外に放り出されるので目的は達成される。ただし犯罪者のレッテルを貼られるので、あまりスマートとは言えない。
中でもより極悪人らしいのは、門番を説得する方法だ。門番に根気よく話を聞くと、「兵士と同じ格好をしていれば、通してやらないこともない」と言ってくる。ではどうするのか。手っ取り早く済ませるために、人気のない場所で兵士を後ろから襲ってノックアウトし、服装を奪うのである。
死にかけの命を救ってくれた城の兵士に対し、自分のエゴのために恩を仇で返すスタイル。しかし周囲に知られていないので、評価が下がることもない。悪人プレイは、この背徳感がたまらないですね!
死体漁りで底知れない背徳感を味わう
城を脱出した後は、焼けた家々と死体が転がるスカリッツ周辺の虐殺エリアへと引き返すこととなる。ヘンリーは死体を見て思わず「なんでこんなことに……」とつぶやくのだが、同時に死体からアイテムを拾うこともできる。悲しみながら死体漁りをする狂人感が、どんどんクセになっていく。
村に帰ると、村の青年ビシェクが肉屋の犬に吠えられている場面に遭遇する。ビシェクは襲撃を生き延びたようだ。しかし肉屋は死んでおり、犬は主人を守るように吠えていて、「こいつ肉屋の死体を漁ろうとしたな」とすぐにわかる。この時点ですでに死体漁り仲間なのだが、「やめろ! 犬は主人を守ろうとしているんだ」などと正義漢ぶることができる。
正論を吐いたり殴ったりして息子を追い払い、次にすることはもちろん肉屋の死体漁り。そこそこのお金と食料が手に入るのだが、この時のヘンリーの「大丈夫だ、俺を知ってるだろ? それにお前のご主人はもうこれを使わないから」と犬に言い訳するセリフは極悪人プレイを意識していなくても本当に怖くてゾクゾクする。さっきまで言っていたことと行動がまるで別人である。この辺りから、会話をするヘンリーの目が怖い怖い。
墓掘りもなんのその! 汚い仕事もへっちゃらヘンリーが誕生
その後には「借金を返す代わりに墓を掘って指輪を奪ってこい」というこれまた悪ーい頼まれごとをするのだが、それくらいは慣れっこなのでもちろんOKしていく。すると死体から指輪は見つからず、どうやら死刑を執行した処刑人が指輪を持っているとわかる。
この処刑人、戦闘能力がめちゃくちゃ高く、正面からの突撃はあまりに無謀。うまくおびき出して、その隙に道具箱を「ロックピック」して開けるのがよさそうだ。弱かったら殺してもいいんだけどね。ただこの処刑人、お金を払えばヘンリーにスキル「犬使い」の訓練をしてくれるとも言う。この段階では殺すことを考えず、利用する価値もありそうだ。すべては自分が成り上がるために。それだけを考えて極悪人は生きていく。
ちなみにこの「ロックピック」、要は鍵を開けるミニゲームで、「Fallout」シリーズをイメージするとわかりやすいかと思う。ただし、難易度がかなりの激ムズ設定だ。
PS4でプレイする場合、鍵穴のスイートスポットを右スティックで探り当て(マークが金色に変わる)、そのまま左スティックで鍵を回して開けていく。鍵を回せばスイートスポットの位置もズレていくので、左スティックを回しながら右スティックも微妙に動かしていかなければならない。
このスティックの動かし加減がかなりセンシティブで、本来なら「多少手間はかかるがトライするとそれなりに報酬がある」くらいでちょうどいいはずが、今すぐパッチで改善してほしいレベルで難しい。あくまで個人の見解だが、トライする際は念頭に入れておいてほしい。
泥臭くてリアルなドラマが「キングダムカム・デリバランス」の魅力!
「キングダムカム・デリバランス」の世界は、魔法や特殊能力などのファンタジックな要素は一切ない。頼れるのは自分の頭脳と肉体のみで、その分泥臭くてリアルなドラマが進行する。強い者は君臨し、弱い者は弾かれる。厳しく、命の価値の低い暗黒世界を生き延びるためには、聖人君主でいる方が難しいのだ。
本作では夜になると辺りは暗くなり、月明かりがない夜はまともに見渡すこともできない。不便だが、襲撃にはもってこいの環境が整うわけだ。もし、誰かから何かを盗みたいとしたら……。悪人ならきっと、一計を案じるだろう。
本稿で述べてきた内容は、本作の最序盤にあたるものだ。もちろんどんな遊び方をするのもプレーヤーの自由なのだが、筆者的には“善人面の極悪人プレイ”がかなりしっくり来ている。二枚舌、三枚舌を使って、殺す時は慈悲なく殺し、奪う。そうしてヘンリーがバシバシ世の中を上り詰めていけば、かなりいい感じのピカレスクロマンが誕生するように思う。冷酷無比な騎士道成り上がり物語。ぜひ一度、試していただきたい。
Published by DMM GAMES, © 2019 and developed by Warhorse Studios s.r.o., Kingdom Come: Deliverance(R) is a trademark of Warhorse Studios s.r.o.
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