インタビュー

「キングダムカム・デリバランス II」プレビュー&インタビュー【TGS2024】

風俗、歴史、価値観……。“リアルな中世“を実感できるアクションRPG

【キングダムカム・デリバランス II】

2025年2月12日発売予定

価格:8,091円

 「キングダムカム・デリバランス II」は、15世紀のチェコの西部・ボヘミアを舞台にしたオープンワールドアクションRPGだ。主人公は鍛冶屋の息子・ヘンリー。彼は両親を殺され、復讐のために故郷を出て冒険を繰り広げる。本作はPS5/Xbox Series S|X/PCで2025年2月12日に発売を予定しており、価格は8,091円。前作はDMM Gamesがパブリッシャーだったが、今作は開発のWarhorse Studiosが販売も行う。

 チェコのデベロッパーであるWarhorse Studiosが制作する本作は2018年に発売された「キングダムカム・デリバランス」の続編となる。歴史学者を監修に加え、チェコの中世の歴史、風俗に徹底的にこだわりつつ、幾筋にも分岐する自由度の高いストーリーと、迫力の戦闘システムを実現した前作は話題を集めた。「キングダムカム・デリバランス II」はさらにこの方向性を突き詰め、開発者が思い描いた世界を実現させたという。

【Kingdom Come: Deliverance II Gameplay Teaser】

 今回、TGS2024のためにスタッフが来日、会場近くの場所で発売前の本作のプレゼンテーションが行われた。ゲームの概要を聞き、実際にクエストの一部をい遊ぶことができた。さらにWarhorse Studios PRマネージャーのTobias Stolz-Zwilling氏に話を聞くことができた。「キングダムカム・デリバランス II」の魅力を紹介していきたい。

今回インタビューやプレゼンテーションを行ったWarhorse Studios PRマネージャーのTobias Stolz-Zwilling氏と、コンセプトアーティストの川谷久海氏

中世ヨーロッパの世界や風俗を再現、注目は写本文化の「コデックス」システム

 最初に行われたのは本作のプレゼンテーション。ゲームの特徴をZwilling氏が、さらにアートの特徴を本作のコンセプトアーティストの川谷久海氏が紹介した。川谷氏は留学がきっかけでチェコに住むようになり、開発チームに参加しているという。チェコの歴史を学びながらデザインを行っているとのことだ。

 「キングダムカム・デリバランス II」は前作から数日後の物語としてスタートするが、前作をプレイしていなくても楽しめる。プレーヤーは鍛冶屋の息子・ヘンリーとしてチェコ西部のボヘミア地方を冒険していくこととなる。彼は両親を殺されすべてを失った人物だ。

前作「キングダムカム・デリバランス」は中世ヨーロッパを冒険するするアクションRPGとして高い評価を得た。今作はそのコンセプトを受け継ぎさらにパワーアップさせている
「キングダムカム・デリバランス II」は主人公ヘンリーの視点を通じ、史実を基にしたストーリーが展開する
中央の若者がヘンリー、右が親友。背後の塔に手紙を届ける、これだけわかってれば、プレイ可能だという

 Zwilling氏はゲームのイラストを指し「最も重要なことを説明します」と語り、イラストに描かれた中央の男が「ヘンリー」、右側の黄色い鎧を着ているのが「親友」、そして背後に見える塔に「手紙を届ける」。この3つだけ覚えておけば、ゲームをしっかり楽しめるとのことだ。本作はメインストーリーに加え多彩なサブクエストが用意されており、会話システムにより細かくストーリーが分岐していく。プレイ時間は普通にプレイしても80時間、分岐を楽しめば100時間を越える体験が待っているとのこと。

 「キングダムカム・デリバランス II」は「中世の世界を再現」、「壮大な歴史ドラマ」、「没入型アクションRPG」という3つの要素が柱になる。中世の世界の再現には歴史学者の徹底した監修により、当時のチェコの世界をできるだけ細かく再現している。当時の建物、人々の風俗、服装、当時の法律や人々の生活、価値観などをすべて再現している。「本作はシミュレーションではなくビデオゲームです。しかしそれでも当時の世界を完全再現することに挑戦しています」とZwilling氏は語った。

 歴史性と共に本作がこだわっているのが「没入感」。素晴らしい物語が描かれた本に夢中になるように、「キングダムカム・デリバランス II」はプレーヤーを夢中にさせてくれるゲーム感覚に注力している。メインストーリーは歴史に基づくものだが、サブクエストは当時の風俗や、人々の生活を感じさせるものだという。

本作のコンセプト
前作からパワーアップした要素

 物語の舞台はボヘミア。「キングダムカム・デリバランス II」は前作の2倍の大きさを持ち、大きく分けると2つのマップで構成される。1つは森などの町から外れた自然の地形、2つめは当時の大きな都市となる。前作の舞台から10kmと離れていない地域が舞台となる。時代設定は15世紀の中世。前作からは数日しかたっていない。

 そして戦闘は前作の臨場感を受け継ぎつつ、パワーアップしている。特に剣での攻防はどう受け流すか、どう切りつけるか、突き刺すか、より自由度が増し、激しい剣劇を楽しめる。一方で戦闘が苦手な人のためには斧やハンマーといった武器も用意されている。これらはよりシンプルに戦え、同じくらい強いとのこと。

 ここからは川谷氏にバトンタッチ。「キングダムカム・デリバランス II」のアートのこだわりが語られた。川谷氏が担当するコンセプトアートはゲームに登場するキャラクターの服装、持ち物などを細部まで考証し、デザインをしていく。そして環境、建物や道の形状、地形、植物相などすべてを当時の世界がどうだったかを資料を元に作り上げていく。チェコには壁画も多く、また旗や商店の看板などにも独特の意匠が見られる。これらも再現している。

 「キングダムカム・デリバランス II」での注目の1つがコデックス(写本)。中世には"コデックス職人”がいて、人々の風俗や言い伝え、実際に起きた物事などをわかりやすく絵にする人達がいた。その絵は印刷ではなく手書きで描かれ、文章の挿絵として様々な記録がされた。

 ゲームではクエストをクリアするなど様々な条件を満たすとコデックスが解放されていく。このイラストも川谷氏が担当している。川谷氏は当時の絵の雰囲気を再現しようと見よう見まねで書いたのだが、「雰囲気は似てるけどなんか違う」と歴史監修スタッフにダメ出しされまくり、当時の絵柄を自分の中に取り入れるのに時間を費やした。最終的に「君もすっかり中世のコデックス職人だ」とお墨付きをもらったとのこと。

中世ヨーロッパを再現するため徹底した考証を行っている
こだわりの「コデックス」、当時の風俗や歴史をより深く知ることができる
このイラストは川谷氏が手がけたもの。当時の絵柄を自分の中に取り入れるのには苦労したが、開発を進めていき歴史スタッフから「君はコデックス職人だ」と認められたという

 「コデックスはゲームの大きな特徴です。物語の面白さ、ゲームのエキサイティングな戦闘システムもウリですが、コデックスは知的好奇心を満たしてくれ、当時の生活、社会を知ることができます。どのくらい考証が成されているかも伝わると思います。ゲームのプレイを通じて学校では学ぶことができないような小さな歴史のディテールをゲームの世界で生活しながら学ぶことができるんです」と川谷氏は語った。

ドイツからの剣士を助けるデモプレイ

 プレゼンテーションの後、開発中の「キングダムカム・デリバランス II」を触ることができた。今回は「メンハルト」という剣士にまつわるクエストだ。ボヘミアでは"剣術同盟"という剣を教える組織がある。メンハルトはこの街の剣術同盟を立ち上げるべくドイツから来たのだが、この街には地元の剣術使いによる同盟が既にあって、トラブルが起きている、というのが背景だ。

 「キングダムカム・デリバランス II」は1人称視点のアクションRPGだ。クエストは主人公・ヘンリーとメンハルトの出会いから始まる。自分の剣術をアピールしたいメンハルトは「稽古を付ける」という名目で、ヘンリーを挑発、決闘を挑んでくる。

 本作の大きな特徴が「会話システム」。会話には幾つも選択肢があり、戦いを回避することも、受けて立つことも、相手を激高させ剣を抜かせることも可能だ。細かい分岐で物語が全く別な展開を見せるのを楽しむこともできる。なお、本作は日本語吹き替えになっており、臨場感たっぷりだ。

ゲームのスクリーンショット。当時の服装、装具、布や革などの素材、身分による違いなど細かい歴史考証がされている
15世紀のチェコの人々の暮らしがしっかり表現されている
都市。ぬかるんだ地面や建物など、雰囲気が素晴らしい

 また戦闘はアクション性が強いのが楽しい。相手の剣に合わせ防御と攻撃を行っていく。攻撃と防御は左右のトリガーに割り振られているので、直感的に戦える。位置取りも重要だ。メンハルトとの決闘は敵の攻撃を受け流した直後に攻撃するというのが有効だった。よりシステムを理解すると斬る方向を変えたり、突くといったより高度な戦い方が可能なようだ。

 剣を手に持ち敵の剣に合わせ防御と攻撃を行うというのは、実際に剣で戦っているかのような臨場感が味わえた。戦い中に敵が話しかけてきたり挑発することもできるようだ。敵のモーションや防御したときの剣の震えなど演出にもこだわりが感じられる。「剣のアクション」は本作の大きなウリだと感じた。

 街の雰囲気、人々の服装、建物や道の描写も注目だ。人々の服装はデザインや素材までしっかり考証しているのが伝わってくる。道はぬかるんでおり歩くとびちゃびちゃと泥を踏んでいるのは音を通じてわかる。建物の描写や、光の雰囲気など当時の建物がどうだったかがわかると同時に、日本人である筆者にとって強い"異国情緒"がある。

 人物の衣装、特に布や鎧には強いこだわりが感じられる。また時間によってNPCの行動は変化するのだが、寝ているときと行動するときの服装がきちんと違う。FPS視点で中世の街を歩く、というのは筆者にとって「The Elder Scrolls V: Skyrim」の体験を思い出させた。もちろんグラフィックスは本作の方が進化しており見栄えが良いのだが、それ以上にレンガのテクスチャや道の様子、人々の服装など細かいところに考証がされていると感じた。「Skyrim」はファンタジー世界であり、「キングダムカム・デリバランス II」は史実をモチーフにしているのでベクトルは異なるのだが、「本当に中世の街にいるような雰囲気」を確かに感じられると思った。

ステルス。敵の目をかいくぐり目的を達成する。今作でパワーアップした要素だという
主人公の行動が物語を変化させていく
ステータス画面。スキルを取得させて育てていくことで個性が強まる

 ストーリーラインとメカニズムもこだわりを感じる。剣での決闘を始めたヘンリーとメンハルトを見つけ、街の剣術同盟のメンバーが2人を取り囲む。メンバー達はこの行為を糾弾しメンハルトを追放しようとする。どう行動するかはプレーヤーに委ねられているがうまく言葉を運ぶことでメンハルトを擁護し、剣術同盟を退けることができる。

 この一件で信用を得たヘンリーはメンハルトから1つの提案をされる。剣術同盟はメンハルトを恐れ、誰が街の剣術指南にふさわしいかそれを決める決闘に応じない。彼等を決闘の場に引きずり出すには道場内の「ギルドソード」を教会に立てかけ、「決闘に応じる」という印を見せる必要がある。ヘンリーに建物から剣を盗み出し、剣を立てかけて欲しい、というのだ。

 受諾すると盗みに入るというクエストが始まる。ここではステルスミッションとなる。面白かったのは見つかった場合でも賄賂をはらえば見逃してもらえること。今回は建物に入る際に見つかってしまったが、無事この手で切り抜け、剣を盗み教会に立てかけることができた。そして町の人に「決闘を受ける」というサインが掲げられてしまった以上、街の剣術同盟は逃げるわけにはいかない。しかし最後の嫌がらせとして剣術同盟はメンハルトに3対3の決闘を申し込む。メンハルトは弟子と2人しかいないからだ。そして、ヘンリーは言う。「私が3人目だ」。

 こういったストーリーは幾つものプレーヤーの選択で成立する。会話の選び方、剣術同盟への侵入の仕方。見つかった場合的を殺すかどうか、行動でストーリーは変わってくる。プレーヤーの選択で物語が大きく変化することが本作の大きな魅力だという。

歴史を学びしっかり考証されたコンセプトアート

 Zwilling氏は最後に「この剣術同盟のクエストは今後決闘シーンに続きますが、非常に長いものになります。この後はトーナメントとなっていきます。選択した言葉で展開は大きく変わってきますし、ギルドソードを盗るときに捕まっていたらそもそもクエストが途中で中止になります。剣を盗んだとき目撃者がいない場合はすんなり決闘にいきますが、見つかった場合剣術同盟が優位になります。こちらはアーマーなしで戦うという不利な条件を押しつけられてしまいます。本作はこのように展開が変わる。そういう面白さを感じて欲しいと思います」と語った。

“中世ヨーロッパ版サムライストーリー”を楽しんで欲しい!

 プレゼンテーションの最後はインタビューだ。Zwilling氏はインタビューで本作の魅力を力を込めて語ってくれた。

――最初にお聞きしたいのは、前作から「キングダムカム・デリバランス II」になってどのようなところがパワーアップしたのか、ということです。

Zwilling氏:すべてです。「II」になってようやく私たちが作りたいと考えた作品がようやく実現したと感じています。前作は私たちにとってはじめてのゲーム制作で、まだ経験が足りず試行錯誤が多かったです。人数も少なく、開発規模も小さかった。前作のヒットで開発規模という制限はなくなり色々なところに予算が掛けられるようになりました。

 コンバット、ステルス……ダイスミニゲームまですべての要素にスタッフをきちんと配置できしっかりと作れています。前作で物足りなかったところがしっかりしていると、前作をプレイした人は感じてくれるはずです。皆さんからのフィードバックも活かしています。

本作の魅力を語るZwilling氏

 前作のコンバットシステムは「最初がハードルが高いが、マスターすることで面白くなる」というバランスでした。このためわかりにくいという声も多かったです。「II」ではより自然に戦闘を学べ、そして極めることができます。戦うスタイルもプレーヤー次第です。攻撃一辺倒から、防御に徹するまでプレーヤーの性格に合わせて効率の良い戦い方ができます。戦いの奥深さは前作同様で、よりやりやすくなっています。

 デモプレイでのあなたの戦いは見事でした。あなたは前作をやったことがないと言っていましたが、うまく敵の攻撃を受け流し的確に攻撃を加えていた。次はタイミングに合わせて攻撃や防御の方向を工夫することですね。戦闘時に見える星のインターフェースに合わせて攻撃を行うことで自分がどう武器を振るか変化をさせることができます。こういったコツを学んでいけるのが「II」の面白さなのです。

 剣は奥深く迫力のある戦いが楽しめますが駆け引きが複雑なところがあります。もっとシンプルに戦ってストーリーを楽しみたいという人には斧やハンマーがオススメです。こちらは攻撃手段がシンプルですが威力は剣と同じくらいある。「II」はより多くの人のプレイスタイルに対応したゲームなのです。

――先ほどの剣術同盟のメンバーの剣がそれぞれ違うデザインだったのがびっくりしました。デザインにおいては剣は特にこだわりポイントなのでしょうか。

Zwilling氏:コンセプトアートチームは当時の風俗、服装、身分や財産の違いで人々の服装が異なることをきちんと表現しています。剣に関しても、色、形、装具、材質、描かれた紋章などで違いを出しています。メンハルトはドイツのフランクフルトの剣士が持っていた装備を参考に設定しています。

――ほかにも「II」で特にチェックしてもらいたいポイントはどこでしょうか?

Zwilling氏:私が一番好きなのはやはりストーリーです。日本にはサムライの物語があると思いますが、「キングダムカム・デリバランス II」は、「ヨーロッパ版サムライストーリー」といえる物語になったと思います。すべてを失った主人公が旅に出て様々なことを体験していく。剣を学び復習をしていくという展開は、日本の方々にも共感いただけると思います。

 主人公のヘンリーはヒーローではなくどこにでもいる普通の若者です。しかしそんな青年が極端な状況に立ち向かわなくてはならなくなる。この展開はこれまでのゲームや映画ではなかったと思います。

――ユーザーへのメッセージをお願いします。

Zwilling氏:「オッス、オラ、トビー!」、まず皆さんに“こんにちは”と言いたいです。日本の皆様に本作を気に入って欲しいと思っています。「キングダムカム・デリバランス II」は前作から積み上げたすべてのものを込めました。中世ヨーロッパはどんな世界か? 本作で感じて欲しいです。

――ありがとうございました。