インタビュー

Tobias Stolz-Zwilling氏と松本卓也氏に聞く!「Kingdom Come:Deliverance」インタビュー

松本氏「キーワードは『本物』です」

2019年春 発売予定

 DMM GAMESは、東京ゲームショウ2018での発表会において、「Kingdom Come:Deliverance」や「Assetto Corsa Ultimate Edition」などの日本語バージョンを発売すると発表した

 なかでも「Kingdom Come:Deliverance」は中世を舞台にしながらも、"中世モノ"にありがちな魔法やドラゴンといったファンタジー要素を排したリアル志向のオープンワールドRPG。既に発売されているバージョンでは日本語非対応となっていたが、DMM GAMESによってテキストはもちろん、すべてのボイスを日本語にローカライズしたバージョンがプレイステーション 4/PC向けに2019年春に発売される。

 TGSの会場ではステージで登壇したWarhorse StudiosのTobias Stolz-Zwilling氏とDMM GAMESの松本卓也氏に、「Kingdom Come:Deliverance」について、そして日本語バージョンについてお話を伺うことができた。本稿ではこちらの内容を紹介する。

Warhorse StudiosのTobias Stolz-Zwilling氏(左)とDMM GAMESの松本卓也氏(右)
【「Kingdom Come: Deliverance」日本語トレーラー】

「ボヘミア」を忠実に再現した「Kingdom Come: Deliverance」


――本日はよろしくおねがいします。改めて「Kingdom Come: Deliverance」のポイントをご紹介いただけますでしょうか。

Tobias氏:重きを置いているポイントは「歴史的背景に忠実であること」、「リアリティを追及していること」、「重厚なストーリーを用意していること」の3点です。

 「Kingdom Come: Deliverance」では中世、15世紀くらいのロケーションをそのまま追体験できます。主人公は架空の人物ではありますが、忠実に当時の舞台と歴史を再現していますので、「ドラゴン」が出てきたリ魔法を使ったりということはなく、中世に繰り広げられていた"剣を用いた戦い"も含めて、妥協なくリアリティを追求しています。

 15世紀のヨーロッパでは、剣が主な武器となっていました。しかし、銃が出てきた途端にいわゆる「Knight」と呼ばれるような役割がなくなってきたんですね。「Kingdom Come: Deliverance」ではそうして銃が出てきたことによって失われていく前の世界を忠実に再現しています。


――「中世」の歴史が忠実に再現されているのですね。では舞台設定はなぜボヘミアなのでしょうか?

Tobias氏:1番簡単な答えとしては、僕たちのスタジオがチェコのプラハにあるからです。もともとチェコはボヘミアが支配していた土地でした。丁度その歴史的な背景や地形的なサイズも含め、ボヘミアというのは大きすぎず小さすぎず、魅力的に感じてもらえる要素があるようないいサイズだったというのもあります。

 日本の戦国時代で例えると、全体をカバーしようと思ったら非常に大きなサイズになってしまいますが、1つの国を2つの勢力が争うところまでフォーカスを絞れば、実現が可能だと思います。これと同じことですね。1つの場所に絞るというのは難しかったですが、物語や実際の背景が大きすぎても入り切りませんし、ちょうどいいサイズで踏み切る必要がありました。

 また、舞台が地元であるということの実質的なメリットもあって、今でも残っている歴史的な建物などに実際に行って、取材をしたり写真を撮ったり、舞台を再現するということに凄く役立ちました。

――中世の「リアルさ」とボヘミアという「舞台」、制作の際はどちらがはじめの立脚点になったのでしょうか?

Tobias氏:まずは「リアルで面白いゲームを作ろう!」というところから始まりました。ディレクターが色々と調べていたときに、僕たちの地元がいい題材になるということに気づいたので、そこから更に調べを進めていきました。


――「リアルさ」を追求した結果、地元であるボヘミアにフォーカスすることになったのですね。続いてはゲームのDLC展開について伺いたいのですが、1本目の「From the Ashes」に続くDLCはどのようなものになりますか?

Tobias氏:2本目のDLCは「ハンス・カポン」が恋い焦がれる女性「カロリーナ」との関係を主人公がサポートしていく「The Amorous Adventures of Bold Sir Hans Capon」です。ハンス・カポンは始めは相当"イヤなやつ"で、主人公と仲が悪いんですが、クエストを進めていくと友達になることができます。そうなった状態であればいつでもこのDLCをプレイすることができます。こちらは10月初旬から中旬にかけて配信予定です。

 続く3本目は「Band of Bastards」。王の指示のもと、盗賊たちと戦うストーリーです。5時間分ほどのクエストが新たに用意されて、地図上で示された場所で盗賊やそのボスと戦うものになります。最後のDLCは「A Woman's Lot」で、こちらはある女性に関するストーリーが展開される予定で、詳細や配信時期に関してはまだ未定です。また、「A Woman's Lot」では共に戦ったり、番犬として活躍してくれるコンパニオンとして犬が追加されます。


DLCのロードマップ。現在は1本目の「From the Ashes」が配信中だ

KickStarerでのストレッチゴール。ゴールのほとんどを達成する勢いで、ローンチ前から注目のタイトルであったことがわかる

――先日は「Hardcore Mode」が無料アップデートとして追加されましたが、有料のDLCと無料アップデートはどのように分けているのでしょうか?

Tobias氏:基本的にストーリーが追加されるものは有料でやらせていただいて、「Hardcore Mode」のように遊びの幅を広げるものは無料です。「Kingdom Come: Deliverance」は「KickStarter」から始まったタイトルなので、バッカー(出資者)に対するお礼という側面もあります。

 ちなみに、次のDLCとともに無料アップデートで追加される「Tournament!」は週1回「ラッタイ」という街で開催されるトーナメント大会で、純粋に腕を競うため、自分のものではなくて用意された武器で相手と戦うシステムになります。試合に勝つとここでしか手に入らない武器なども手に入ります。また、現状ではどのような形になるかは未定ですが、今後は公式でModのサポートなどもしていきたいと思っています。

松本氏「日本のお客様に"本物"をお届けしたい」

――ここからは松本氏に伺います。DMM GAMESが「Kingdom Come: Deliverance」を日本語化することになったきっかけを教えてください。

松本氏:今年の2月に英語版が出た時に、真っ先にSteam版を購入してプレイして、立ち上げた瞬間「本物だな」と思ったんです。ただ、英語だとストーリーがよくわからなかった(笑)。発売時にはTwitchでの視聴者数も非常に多かったですし、かなり盛り上がっていたのですが、正直ちょっと置いていかれた感じがあったんですね。なので、これはぜひ日本語でプレイしたいなと思ったのがきっかけです。

 そこにちょうど川島(DMM GAMES川島重徳氏)のところに「Kingdom Come: Deliverance」を日本で出さないかという話が舞い込んだんです。「是非に」ということでビジネスの話になっていきました。英語の音声だけではもったいない、絶対に日本語音声があったほうがいい、ということで、日本語もフルボイスで入れることにしました。

 「Kingdom Come: Deliverance」のキーワードは「本物」です。トビー(Tobias氏)は今回が初めての来日で、直接会うのはこれが初めてなんですが、色々と話しているなかで自信というか、確信に変わりました。彼は「ボヘミアを作り上げた」と言いますが、僕は日本のお客様にこの"本物"を早くお届けしたいですし、僕自身早く遊びたいです。実は日本語版で遊ぶために一旦プレイを止めているので、先程ストーリーの話が出てきてちょっとショックを受けています(笑)。


――テキスト、ボイスも含めたフルローカライズというと、ものすごい作業量になりそうな印象がありますが。

松本氏:RPGをローカライズするときはテキストの文章量から大体ボイスはこれくらい、カットシーンはこれくらい、というのを推測するんですが、このタイトルはその比率がおかしいです(笑)。例えば村人が何人かいるとして、演じ分けで若干異なっているとはいえ、セリフのテキストのベースそのものは同じなんですよね。ただし、ボイスオーバーが人数分入っていたりするので、テキストのボリュームよりもボイスの比率が遥かに重いんです。

 会話の選択肢も非常に多くて、ハンス・カポンのDLCなんかだと選択肢が8つあったりするんですよ。普通は4つか5つとかだと思うんですが、「なんじゃそのゲーム!」みたいな感じです(笑)。それだけに、日本語ボイスが聞き所だと思います。

 実は文章量をカウントする前にフルボイスでやることを決めてしまっていたので、後でボイスの文章量を聞いて倒れそうになりました(笑)。でも、日本語化そのものは熱心な有志の皆さんがMODで進めていたりもするので、我々がやるからにはそこを超えていかなければならない。どう超えられるかというのは全て挑戦ですよ。


「台本の量はこんな感じだよ」と写真を見せてくれたTobias氏。テキスト量は100万語を優に超えるという

――先ほどTobias氏よりDLCなどのお話もありましたが、英語版と同じタイミングで遊べるようになるのでしょうか?

松本氏:2つ目のDLCまでは確実に発売と同時に出せると思います。続くDLCは英語版の開発スケジュール次第ですね。ローカライズの仕組み自体はできているので、マスターアップがいつになるかによります。もしズレるとしても、できるだけ早く新しいものが遊べるようにしていきます。

――最後にお2人から、ファンに向けてコメントをお願いします。

Tobias氏:「Kingdom Come:Deliverance」は、中世の世界やその時代の人たちがどのように戦っていたかという、もう失われてしまったその時代のことをリアルに追体験できるタイトルです。本当に本格的な中世やヨーロッパが好きな人は、絶対にこのゲームをプレイしたほうがいいです!

松本氏:魂を込めてローカライズをしておりますので、申し訳ありませんが、あと数カ月お待ち下さい。これは、本当に凄いRPGで、こんなRPGはプレーヤーとしても、開発者としても開発したことがないほどの「本物」です。お楽しみにお待ち下さい。

――本日はありがとうございました。