レビュー
「キングダムカム・デリバランスII」レビュー
過去の世界に入り込む錯覚。生々しく幅広い“男の生き様”アクション
2025年2月4日 01:00
- 【キングダムカム・デリバランス II】
- 2月12日発売予定
- 価格:
- 通常版:8,090円(Steam/Epic Games Store)
- ゴールドエディション:10,790円(Steam/Epic Games Store)
- 通常版:7,590円(PS5/Xbox Series X|S)
- ゴールドエディション:9,790円(PS5/Xbox Series X|S)
リアルな世界観が魅力のファンタジーアクション「キングダムカム・デリバランスII」の発売日である2月5日まであと僅かとなった。前回は序盤のストーリーや基本操作について簡単に触れたレポートをお届けしたが、本稿ではより深い体験に基づいたレビューをお送りする。
前回のプレビューの続きを今回ガッツリとプレイしていたのだが、とにかく遊べる要素がてんこ盛りで、時間を忘れて遊び続けてしまうほどのめりこんでしまう面白さだ。魅力的なサブクエストが豊富に用意されているほか、プレイ中に役に立つスキルの数々や、レベルが上がると強化できるパークなども盛りだくさんだ。そこで今回は、本作に盛り込まれた魅力の数々を紹介するとともに、本作を楽しむ上で意識しておきたいポイントなどについて語っていきたい。
本作は史実に基づいたリアルな世界観が特徴で、実際のゲームプレイでもそのテイストは随所に感じられる。戦闘のシビアさや空腹、寝不足、出血など生々しい状態異常の数々、村人たち同士の他愛のない会話、街で発生した相談事や結婚式など祝いの席でのダンスや会話など、当時の中世ヨーロッパで実際に行なわれていたであろう出来事がゲームを通して、リアルなビジュアルとFPS視点による没入感、簡易的な操作で追体験できる。
加えて故郷を滅ぼされて、今を必死に生きている主人公のヘンリーという人となりもゲームを通じて各所で理解できるようになっている。例えば女性との会話がぎこちなかったり、街の人とのやり取りにもどこか素朴さが感じられる。リアルさを重視しながらも、ゲームとして違和感なく遊べるような仕掛けが各所に用意されており、中世ヨーロッパの歴史だけでなく、1人の男の生き様が感じられる重厚な物語が楽しめる仕上がりとなっている。
様々な役割を演じるのが楽しい「ロールプレイ」を満喫しよう
これまでに何度も触れている通り、本作はリアルな世界観が特徴だ。そのため、本作をプレイする際には、プレーヤー自身もヘンリーになりきるつもりで、ある程度ヘンリーの行動方針を決め、その方針に則って行動していくロールプレイを行なうのがオススメだ。というのも、本作では行動の会話の選択肢がとにかく幅広く、プレーヤーの頑張り次第でどのようなロールプレイも行なえる仕組みが用意されているからだ。
今回の筆者のロールプレイはとにかく人には優しく悪には厳しく、でも身内には結構甘いという、比較的流されやすい人情派プレイという感じになった。ゲームをプレイしているうちに感じたヘンリーの性格を考えると、これが最もリアルなヘンリーではないかと考えたからだ。しかし、本作をガッツリと遊んでいるうちにこのシステムならもっと多くの可能性が秘められていると感じたのだ。
例えば、正義の名のもとにとにかく悪即斬な偏った正義の味方プレイも楽しめるし、戦闘は一切行なわず、殺さずを貫くプレイも不可能ではなさそうだ。また、スキルを活かして薬売りになって荒稼ぎするプレイや、深夜に民家に侵入するコソ泥プレイ、ギャンブルで生計を立てるギャンブラー生活プレイなども可能なので、どのような方針でプレイするか決めてゲームを進めると、より深みにはまったプレイが楽しめること請け合いだ。
こうした方針を決めたロールプレイを楽しむことで、まるで過去の世界で自身がヘンリーとなって生きているような気持ちでゲームが楽しめるだろう。なお今回のレビューでは、ロールプレイを楽しむためのポイントを中心に語っていくため、メインストーリーについては、前回のプレビュー以降のエピソードについては触れずに話を進めていく。
基本は走り込み?移動は全てダッシュでGO!
本作の魅力の1つとしては、自身が行なう行動がそのままレベル上げの作業に直結する事になるため、必死に生きていたらいつの間にか強くなっていたという無意識のレベリングが面白い。これも、ロールプレイを加速させるポイントのひとつだろう。
本作では人との交渉を行なう事で話術、敵と戦う事で戦闘の技術、薬を生成することで錬金術、と何かしらの行動を行なうことで、それぞれの行動に関連したステータスやスキルの経験値が蓄積され、レベルが上がる仕組みだ。
移動についても同様で、走って体力を消耗することで、体力がどんどんと鍛えられていき、気が付けばタフなボディを手に入れられる。そこで、ゲーム序盤での移動は常に「走る」事を心掛けるというのがポイントの1つだ。これにより体力やスタミナが強化されるので、ゲームを進めていくうえでより有利に立ち回れるようになる。
本作のマップは一見すると非常に広大に見える。しかし、実際に走り回ってみると、もちろん広いのだが、絶望的に広いという感じでもないので、思っていたよりもはやめに目的地に到着する。ある程度体力が上がってきたらファストトラベルを利用するのも効率的だが、目的地までの移動はひたすら走ることで体力向上にも繋がるし、マップ内の実際の地形を身体で覚える事にも繋がるため、日々走り込みで体力を増やしていきたい。
もちろん、馬に乗る事で馬術のスキルが向上できるので、こちらを鍛えたい場合には、ガンガン馬に乗って馬術を磨くのもアリだ。このように同じアクションを繰り返す事で、ヘンリーの各スキルは上げられる。
加えて、各地のNPCたちの中にはクエストを終えた後に再度話しかけると有料でスキルを学べる先生になるキャラクターも存在する。最初はお金が全くないが、どうにかお金を稼ぐことで、こうしたNPCたちから物事を学び、スキルレベルを上げることも可能だ。また、商人などからスキルを上げるための本を購入して読むことでもスキルは向上できる。
レベルが上がると、パークポイントが獲得でき、スキルレベルに応じた特殊な効果を発揮できるパークも獲得できるようになる。本作のパークはかなりきめ細やかで、ステータスの各項目ごとに用意されているほか、非戦闘技術のスキル、戦闘スキルについては個々の武器ごとのスキルなどにもパークが用意されており、その量はかなり膨大だ。
一方で、それぞれ獲得できるスキルには限度がある。内容を吟味して、良かったり、ロールプレイに沿うようなものを選ぶといいだろう。
たとえば、前述のように走り込みで体力を鍛えていると、「マラソン走者」というダッシュ時の速度が向上するパークや、ダッシュ時のスタミナ消費が減少する「疲れ知らずの走者」などのパークが獲得できるようになる。これらを獲得しておくと、フィールドの移動がかなり快適になるので、ダッシュが好きな人にはオススメだ。森や草原をダッシュで駆け抜けるのはかなり気持ちいい。
また、本作には重量制限があるため、これについても「荷馬」や「雄牛のごとく」などのスキルを取れば上限を上げられる。旅を快適にするためにも、個人的にオススメしたいスキルだ。
バトル上達はプレーヤー自身が実践あるのみ
本作のバトルはとにかく体で覚えないと全く勝てない(こちらもプレビュー記事参照)。普通のRPGでは、レベルさえ上げればどんな強敵でもどうにか立ち向かえるようになるのだが、リアル志向の本作においては、レベルをどれだけ上げてもプレーヤー自身の戦闘の腕がなければ盗賊相手に簡単にやられてしまう。
もちろん本作の場合は、全ての戦闘を交渉のみで乗り切るというロールプレイも面白そうではあるが、やはり騎士の物語なので、殺しても害のない盗賊などは戦闘でボコボコにしてやりたい。そのために必要なのは、やはり実戦だ。
本作の戦闘はプレーヤーの熟練度がそのままゲームに反映されるため、プレーヤーの熟練度が上がっていくと、ステータスなどのデータ以上にゲーム内で自身の成長が感じられるところが面白い。特に相手の動きを読み切って、攻撃を受け流し、反撃を決めてそのまま押し切れるようになってくると、かなり爽快なのだ。
もしどうしても戦闘に慣れにくいという場合は、後述するセーブ機能を利用する手もある。簡単に言えば、戦闘状態に突入する前にセーブを行なっておき、以降は同じ相手と繰り返し戦闘を行なうことで、プレーヤー自身の戦闘スキルを上げる訓練を行なう方法だ。同じ相手と戦闘を繰り返せるので、プレーヤー自身の戦闘の熟練度がかなり向上するというわけだ。
このように本作の戦闘はどれだけゲーム内データのスキルを上げようとも常に緊張状態が付きまとうが、この緊張感が癖になるし、中世の時代のリアルな戦闘が味わえる。特に多人数の相手との戦闘では、全ての相手の動きを視界に入れられるように距離を離して、注意しながら行動する事になるため、その緊張感は1対1の戦闘よりもかなり大きくなる。
こうした緊張感の中で、うまく立ち回って少ないダメージで敵との戦闘を終えた時の爽快感は従来のRPGでは味わえない達成感がある。何よりプレーヤー自身の戦闘スキルが上がることが、そのままゲーム内のキャラクターの成長として感じられるのが本作の戦闘の面白さの1つと言える。
リアルな世界に隠された救済措置
本作は史実を元にしたリアルな世界設定やアクションが特徴だが、ゲーム体験そのものがあまりに辛くならないよう、救済措置的なシステムも組み込まれている。そのひとつが、セーブ機能だ。
本作のセーブはベッドなどの寝床で就寝時に発生するセーブに加えて、オートセーブも用意されている。クエストの会話終了時などに自動で発生するようになっており、フィールドなどでうっかり死んでしまった場合も、最新のセーブポイントからやり直しができる。そしてもう一つ、このセーブ機能をどこでも使えるようにする不思議な薬として、アイテム「救世主のシュナップス」がある。
これが手元にあると、いつでもどこでもメニューを開いて「セーブ」を選ぶだけで、「救世主のシュナップス」を1つ消費して簡単にその場でセーブが行なえる。特定条件下では使用できない場合もあるが、危険を察知したら戦闘やイベントが始まる前にこのアイテムを使えば、その数だけ戦闘やイベントのやり直しできるので、最適な結果を得ることが可能になるのだ。
本作はリアル志向のゲームではあるが、このようなところで遊びやすさのバランスが取られている。アクションなどが多少苦手な人でも、本作を楽しめるゲームとして成立させているわけだ。
ただし1点だけ、本作の交渉については能力値がほぼすべてで、ランダム要素は限りなく少なく感じる。交渉の選択肢をあれこれ試すためにセーブを行なうのは有効だが、交渉に失敗した選択肢について、何度もトライして成功させようと試みるのはあまり有効ではなさそうだ。
また、本作の馬や犬については、いつでもどこでも口笛を吹くことで簡単に呼び出すことができる。特に馬については口笛一つ吹くだけで、あっという間に駆けつけてくれる。いささかリアリティに欠けるようにも見えるが、そのことによってロールプレイはそこまで妨げられない。
このように、本作は史実を元にしたリアルな世界観が特徴ではあるが、何でもかんでもリアルにしすぎてゲームとして破綻することはなく、ほどよいリアルさが味わえるゲームとして洗練されており、それはプレイし続けるほどに実感できるようになっている。
豊富なサブクエストの数々!どれもボリューム満点
本作はメインクエスト以外のサブクエストの数がとにかく多い。こうしたサブクエストは勿論、プレイしなくても先に進められるが、これらをプレイする事で、中世の時代の人々の心情や考え方が多少なりとも理解できるほか、スキルの向上にも繋がるし、さらにはお金が稼げたり、特殊なアイテムが手に入る場合もある。
サブクエストについては、とにかく会話できる人とあちこちで遠慮なく会話していくことで発生する。街の中以外にも街道の移動中、怪我をして倒れていた狩人に助けを求められるなど、発生条件は様々。しかも、サブクエストはどれもメインクエストに勝るとも劣らない魅力的なエピソードばかりなので、なるべく多くプレイしてほしいところだ。
全てを語るときりがないが、個人的に胸が苦しくなったのは、序盤で死の淵をさまよったヘンリーたちを救ってくれた老婆のボゼナ(こちらもプレビュー記事参照)のその後のサブクエストだ。
物語を進めてから再度ボゼナに会いに行き、旅立ちの際に貰ったお金を返しにいくと、そこで相談事を持ちかけられる。同じく世話になった娘のパブレナが街に出たきり戻ってこないというのだ。
初見では原因に全く見当がつかないため、ヘンリーの会話時の選択肢の中に「逃げたんじゃないのか?」などと出てきても、あんないい娘が老いた母親を置いて逃げ出したりしないだろ、などと思っていた。
が、実際に街で調査してみると、思いっきり若い男と逃亡しようとしていたことがわかる。な、なんてこった……! しかも若い男の方は殺されており、その犯人を追うというサスペンスのような展開になっていく。
ボゼナが過去に街で何をしたのかなどの情報を入手しつつ、事件の真相をたどると、大本の原因は地主のヤケシュが過去の事件からボゼナを嫌っていた事だと分かる。色々あって犯人であるヤケシュの使用人を捕まえたり、パブレナを拉致して逃亡したもう1人の使用人を追跡し、殺されそうになっていたパブレナを救出したり。
やっと解決できそうだということで、穏便に話し合いでケリをつけ、犯人に法の裁きを受けさせようとしていたら、解放されたパブレナが使用人を後ろから強襲してあっさりと殺してしまう。何やってんだ、お前!
さらにボゼナの元に連れて帰ると、そのことは感謝されつつも、さらなる依頼としてヤケシュを暗殺してくれというとんでもない依頼を持ちかけられる。あの優しかったボゼナ婆さんはどこにいっちまったのさ……。
その後、ヤケシュを暗殺するかボゼナと和解させるように説得することで、一連のサブクエストは終了となる。今回筆者は、ヤケシュを説得して無理矢理和解させる選択肢を取ったのだが、何とも胸が苦しく、後味の悪い事件だった。
ここに至るまでにも様々な選択肢があり、もちろんパブレナを見捨てるのもいいし、言われるがままに恩人のボゼナの願いを聞き届けて、ヤケシュをブチ殺しても構わない。逆に、ヤケシュ側についてボゼナを裏切るのもアリだろう。このように、メインクエストとは無関係のサブクエスト1つとっても、かなり深みのあるエピソードとして仕上がっている。ヘンリーの人生を堪能し、人々の人生を目撃するためにも、時間が許す限りはこうしたサブクエストを堪能しながらメインクエストを進めることをオススメしたい。
中世ヨーロッパの世界に異世界転生!
「キングダムカム・デリバランスII」の体験は他のゲームで言えば、西部劇をモチーフにしたオープンワールド「レッドデッドリデンプション2」とテイストが非常によく似ている。
メインの移動手段が馬だったり、大自然の中を駆け巡る爽快感、しかし魔法のような奇跡は起こせず、己の腕を磨いて世界を歩き回る感覚はとてもよく似ている。
もちろん戦闘時の難易度の違いや、狩りのしやすさ、そもそもの画面づくりやシステムはまったく異なるため、相違点の方が多いような気がするが、過去の時代にタイムスリップして、過去の世界で生きているような錯覚を起こす不思議な感覚がある。こうした体験を楽しめる点については、同一のタイプのゲームと言える。
今回のレビューでは、本作ならではのユニークなポイントについてピックアップして紹介してきたが、ここで語り切れなかった要素もまだまだ色々とある。例えば「ダイス」と呼ばれるさいころを使用したゲーム内ギャンブルは、非常にシンプルなルールながら、運の要素に加えて、各所で手に入る、いかさまが可能なサイコロを使用することで、さらにスコアを高める事もできる。とにかくやれることがあちこちで見つかるので、メインのクエストが全く進められず、日々嬉しい悲鳴をあげている。
また本作では錬金術による薬の作成や、これらで使用する素材集め、商人との売買のやり取りなど、簡略化しても良さそうな要素の数々をあえて自分自身の手で操作する必要がある。とにかく手間がかかる事の多い本作だが、こうした手間こそが、過去の世界に生きるヘンリーを実際に肌で感じるという、本作ならではの味を出している。
こうしたロールプレイが好きな人にとって、本作は最高のゲームと言える。中世ヨーロッパの騎士や農民たちのリアルな生活の一部を追体験したい人は是非、本作を手に取ってユニークなロールプレイで中世世界を生き抜いてみてはいかがだろうか。