【特別企画】

【新春特別企画】2019年はリビングテレビが最良なマルチエンターテイメント環境に

今年の主戦場はHDMI2.1搭載の8K/4K/HDR/120Hzモデル。果たしてPS5はVRRに対応するのか!?

1月6日~11日開催

会場:Las Vegas Convention Center他

 1月8日~11日の日程で開催された世界最大規模のエレクトロニクスショウ、CES2019。家電製品が一堂に会したエキシビジョン会場には、今年も最新モデルのリビングテレビが展示されていた。

ソニーの8K LCD「Z9G」は最強ゲーミングテレビとなるか!?

 CES2018のモニタートレンドレポートで触れたとおり、昨年までに、放送波、レコーダー、伝送路と、テレビにまつわる今世代の規格はおおむね固まっている。

 日本の放送では、4KはQFHD(2160p/3,840×2,160)、8KはFUHD(4320p/7,680×4,320)での放送となることから、既存の地上波デジタル放送(1125i/440×1080)と比較すると、大幅な解像度向上となるほか、フレーム周波数30Hz、フィールド周波数60Hzのインターレース方式から、初めてフレーム周波数60Hzのプログレッシブ方式に移行し、一部の番組はHLG方式によるHDRで放送されている。

 Blu-rayディスクやレコーダーのほうはUltra HD Blu-ray規格で4K UHD(QFHD/2,160p/3,840×2,160)、60Hzと規定する。乱立するHDR方式にはHDR10を必須、DolbyVisionとPhilipsをオプションとすることで決着した。その後、HDR10+が登場して、こちらにも対応する機器が登場している。転送データ増に対応するために、伝送路のほうも進化した。HDMIが2.0から2.1へと進み、最大転送レートは14.4 Gbpsから42.6 Gbpsへと大幅に引き上げられている。

 こうした流れのなか、昨年のCES2019では、今後5年、10年と使うには、惜しいところであと1歩足りないリビングテレビが散見された。特に伝送路であるHDMI2.1 の策定が遅れて、パネル側もソース側も準備ができているのに、それらをつなぐ部分が立ち遅れるという事態に陥っていたのだ。CES2019では、こうした部分がクリアされ、2019年モデルのリビングテレビは、晴れて次世代のマルチエンターテイメント視聴環境になったと言える。

 そこで本稿では、2019年モデルの進化のポイントをまとめるとともに、今まさに始まったばかりの4K/8K衛星放送や従来の地上波放送、4Kで先行するUHD BDやNetflixなどのVoDといった映像視聴、コンソールゲームやPCゲーム、テレビに内臓されるAndroidスマート機能、スマホ連携といったインタラクティブなエンターテイメントに完全対応する“使える”リビングテレビをご紹介していきたい。

【4K/8Kが当たり前の世界に】

2019年モデルでリビングテレビは最新規格に完全対応

 2019年の新モデルの傾向として、リビングテレビの主たる用途が、放送番組やビデオグラムといった映像コンテンツの視聴にあることから、進化として最も分かりやすい2Kより4K、4Kより8Kといった解像度を重視していることが挙げられる。各メーカーとも、フラッグシップは120Hz駆動する8K解像度のもので、有機EL(OLED)での商品化が困難なメーカーでも、液晶(LCD)で8Kを実現したものを訴求している。

 パネル性能、特にHDR対応については、最大輝度1000NITS以上を達成しているテレビもみられることから、HDR信号を受容可能なだけでHDR対応と称するには輝度レンジがやや不足してものから、ずいぶんと本格的にHDR映像が出力できるテレビへとシフトが進んだ。

 ただし、色域が拡大していることを、PC向けモニタのようにカラースペースに対する準拠度として定量的に表現しても、一般大衆には難解で訴求にならないためか、はたまた比較可能な状態に置くことに販売上の不都合があるからか、HDR対応度の情報公開には消極的だ。小難しいかっこいいキーワードとしては映像処理エンジン(またはチップ)の名称を訴求するにとどめて、各社一様に情緒的で定性的な表現でアピールしている。

【LG 8K NanoCell TV】

 筆者が昨年モデル最大の懸念点として挙げたHDMI2.1への移行について、8Kモデルはすべて2.1となっている。8K/60Hzの伝送には、たとえSDRであったとしてもHDMI2.1の帯域幅が必要なことから、HDRをもサポートするテレビでこれは当然のことだ。4Kテレビの場合、HDMI2.0世代では、SDRであれば60Hz伝送可能、HDRの場合はYCbCr色圧縮4:2:2なら伝送可能という状況であったが、2019年の高価格帯モデルにHDMI2.1端子が搭載されることによって、この問題は解消している。

 HDMIが2.1に移行したことで、ゲーミングを含めて、4K/60Hz/HDRのみならず、8K/120Hz/HDRまでの、あらゆる映像ソースの伝送に問題がなくなったことになる。ただし、8Kでは60Hz以上のリフレッシュレートではHDMI2.1でも帯域幅が不足することからDSC(Display Stream Compression)方式による色圧縮が必要になる。もっともこの状況はDP1.4でも似たようなもので、8K/60Hzでは同等、8K/120HzではDSCに加えてYCbCr4:2:2色圧縮を行わなければならない分、DP1.4のほうが画質は劣る。

 2019年モデルでやや残念なのは、4K/8Kチューナーの搭載状況だ。12月1日から正式に放送が始まった日本では、4K/8Kチューナーの搭載が待った無しの状況だが、少なくともグローバルに販売されるモデルにはこれらのチューナーは搭載されない。現時点では、コストを押し上げるだけであるため、現行のように外付けのチューナーでしばらく対応する。あるいは、日本向けモデルのみに搭載するとか、4K BDレコーダー等に内臓されているチューナーに委ねるといった選択が取られるのだろう。アメリカや欧州での放送開始がみえればテレビへの搭載も本格化するだろうが、現時点では先が見えない。

コンソール版のFreesync「VRR」に注目

 そんななか、ゲーマーがリビングテレビを選択する際に、気に留めておきたいキーワードがひとつある。VRR(Variable Refresh Rate/可変リフレッシュレート)がそれで、映像信号を送出するGPU側から受容するディスプレイ装置側にシグナルを送り、リフレッシュレートを適宜変更するテクノロジだ。

 テレビ画面の更新サイクルは、テレビ放送が始まったときから、60Hz、つまり1秒間に60回の書き換えを行なうと定められており、AフレームとBフレームを交互に表示して合計で60Hzを実現するインターレス方式で映像を表示していた。これは現在の地上波デジタル放送でも同じで、解像度こそ向上したが、この方式に変化はない。

 1080iとか1080pといった表現をする際、末尾のiはこのインターレス方式を示す。1080iであれば1080の半分の540の水平ラインを1/60ずらした状態で1/30間隔で書き換えて秒間60フレームを実現している。これに対して、全捜査線を同時に1/60間隔で書き換える方式をプログレッシブ方式という。DVDやBDといったメディアではプログレッシブ方式が採用されている。

 テレビがブラウン管から液晶モニタになって、ディスプレイ装置の側から見ると、インターレス方式の信号でもプログレッシブ方式の信号でも、実はあまり変わらなくなった。液晶モニタには走査線がなく、全画素を同時に書き換えるためだ。現代のテレビは、すべて60Hzで画面の書き換えを行なっている。倍速駆動や4倍速駆動をうたったテレビは、パネルの性能を活かして、前後のフレームから生成した中間フレームや動きをシャープにするためのブラックフレームを、120Hzや240Hzといった高周期で表示しているが、それはあくまでテレビ側が単独で行なっている映像をより美しく見せるための工夫だ。

 PC用のモニタは、テレビとは関係なく発達してきたことから、このリフレッシュレートは60Hzを超え、80Hz、100Hz、120Hz、144Hz、240Hzと高周期になっている。画面を書き換えるサイクルが頻繁であるほど、画面内の表示が更新される際のアニメーションは滑らかになり見やすくなることから、一般にリフレッシュレートは高ければ高いほど良いとされている。

 一方で、このリフレッシュレートは周期の多寡はともかく、常に一定の周期に固定されてきた。つまり60Hzのモードなら1秒間に60回、144Hzのモードなら1秒間に144回と、この書き換えサイクルはずっと固定で変化することはない。

 PCの画面に描画される内容が処理負荷の軽い時代は、これで特に問題はなかった。ところが、複雑な3DCGをGPUが描くようになってからは、1/60という短い時間では画面の内容を描ききれないようになった。そこでGPU側ではダブルバッファ、トリプルバッファと今現在表示する画面の内容を保持しながら、裏で次やその次の画面の内容を描く仕組みが導入されていったが、この副作用で入力内容が表示に反映されるまでの遅延が生じるようになった。

 さらに、バッファを使用していても描画が間に合わない場合は、次の画面内容の準備中に画面のリフレッシュタイミングが来た時に、描画途中の画面を出して美しくない画面を出してしまうのか、描画が終わるまではすでに描き終わっている画面を2回でも3回でも出して動きが止まったように見える状態を許容するのかを選択しなければならない問題が残った。

 前置きが長くなってしまったが、この問題を解決するのが可変リフレッシュレートであり、GPUの処理負荷に伴うフレームレートの低下に応じて、画面の書き換え自体も低下させてしまいましょう、という技術がVRRだ。NVIDIAが提唱してモニタ側に専用のプロセッサを搭載するものをG-SYNC、AMDが提唱してもともとVESAのリフレッシュレート制御仕様を応用して規格化したものをFreesyncという。

 FreesyncはVESAのDP(DisplayPort)1.2aの仕様に取り込まれA-Sync(Adaptive-Sync)となり、HDMI2.1の仕様にも取り込まれGame Mode VRRとなった。この可変リフレッシュレートの仕組みを使うと、GPU側から動的にモニタのリフレッシュを制御して、次の画面の準備ができた段階でリフレッシュをかけることができるため、次の画面を描いている最中に更新を余儀なくされたり、同じ画面の内容を2回3回と表示するため見かけ上ゲームが止まったと感じさせることもなくなる。

 可変リフレッシュレート自体は諸問題を解決する素晴らしいものだが、可変リフレッシュレートを意味するVRRという言葉の使われ方が少々やっかいで、PC向けの可変リフレッシュレート技術である、NVIDIAのG-SYNCやAMDのFreesync、DP1.2a以降でAMDのFreesyncを取り込んだ策定されたDP規格のA-SYNC(Adaptive Sync)、HDMI2.1に盛り込まれたGame Mode VRR、これらをすべてひっくるめてVRRという略称で称したり、G-SYNCを除くAMDのFreesyncに端を発するテクノロジの総称として用いたり、HDMI2.1でもって実現されるGame Mode VRRのみをVRRと呼称したりと、歴史的経緯と規格の乱立で大変よくわからない状況になっている。

 ここでは、Microsoftが2018年春に実施したアップデートで「Xbox One X/S」に導入したリフレッシュレートを可変させるようにディスプレイ側をコントロールする技術をVRRと呼称する。このMicrosoftのVRRもFreesync由来であり、伝送路に必ずしもHDMI2.1は必要ではなく、HDMI2.0でPC用モニタ、またはリビングテレビと接続しても動作するのが特徴だ。理屈の上では、本質的にはDP、HDMIといった伝送規格の違いやそれぞれのバージョンに依存するようなものではなく、解像度x色深度xリフレッシュレートがサポートされる範囲内なら動作しても不思議ではない。よって、HDMI2.0接続であったとしても、1080pや1440pならHDRでも最大120Hzで「Xbox One X/S」から出力できることになる。

 あとは出力装置側が対応していればよいわけで、Freesyncに対応するPC向けディスプレイならVRRは問題なく動作する。リビングテレビでは、昨年のCES2018でSamsungが発表したQLED TVがVRRに(そしてFreesyncにも)いち早く対応を果たしている。「Q6FN」(49インチを除く)、「Q7FN」,、「Q8FN」、「Q9FN」、「NU8000」(49インチを除く)、「NU8500」であればファームウェアのアップデートを経て、VRRが動作する。今般のCES2019では、他にもソニーやLGがこのVRRをサポートしたリビングテレビを出展しており、いよいよリビングテレビとゲーミングモニタの垣根が下がっている。

 対するソニーのPS4のほうはというと、現状ではVRRに対応していない。AMDのAPUを採用し、ほぼPCと変わらないアーキテクチャとなったPS4世代なら、VRRやFreesyncに対応しても良さそうなものだが、現時点では沈黙を保っている。2018年モデルまでのソニーのリビングテレビがVRRに対応していなかったからなのか、HDMI2.1端子の搭載が予想されているPS5でGame Mode VRR対応を果たすつもりなのか、その理由はわからない。今後の対応についてもめぼしい情報は得られなかった。

 しかし、今回発表されたソニーの8Kブラビア「Z9G」がVRRに対応していることと、競合する「Xbox One X/S」への対抗という意味で、筆者は2019年中にVRRそのものか、それに近しい可変リフレッシュレートに対応してくる可能性が十分にあるとみている。

 ひとつ注意してほしいのは、ここでいう可変リフレッシュレートは、PS4 Proに搭載されているブーストモードとはまったく異なるということだ。ブーストモードは、ゲームが可変フレームレートを採用していた場合、PS4 ProのGPUパワーでフレームレートを向上させる機能だ。映像シグナルの伝送サイクルであるリフレッシュレートとは別の話で、引き上げられるフレームレートはPS4 Proが送出できる60Hzまでのフレームレートに限られる。60Hz未満のフレームレートしか出ていない場合、同一内容のフレームがディスプレイ側に送出される一方、仮にゲームグラフィクスの負荷的に60FPSを超えるフレームレートでフレームバッファへの描画が完了したとしても、リフレッシュレートの限界である60Hzサイクルを超えてフレームレートが向上するということはない。

全部入り8K LCDプレミアモデルで高付加価値を訴求するソニー

 先ほど紹介したソニーの最新フラッグシップ8K LCDリビングテレビ「Z9G(98/85V型)」は、ソニー初のコンシューマ向けに販売される8Kリビングテレビだ。前年モデルの「Z9F」までは4Kテレビであったことから、画面サイズが拡大し解像度が縦横2倍になったことに対する満足感は高い。OLED版のフラッグシップ「A9G」は4K解像度にとどまっているが、これは大型OLEDパネル調達の問題があるからだと考えられる。

 従来からソニーのリビングテレビ「BRAVIA」シリーズには、ゲームモードなる機能が搭載されてきた。これの意味するところは、リフレッシュレートは一定周期の固定でありながら、映像処理エンジンによる絵作りをほどほどに遅延を最小化して表示する、というものだ。同様の機能は東芝の「REGZA」シリーズにも搭載されており、つい1年2年前までは(そして今でも)、国内ではこのふたつのブランドの評価が高かった。

 4Kモデルでは、従来より「4K X-Reality PRO」という名称でプロファイル参照しながらスケーリングやHDRトーンマッピングのテイストを調整する機能を搭載している。この「X-Reality PRO」は8Kの「Z9F」を含めて2019年モデルすべてに継承されている。

 上記のように、従来から存在するゲーム体験をリッチにしてくれる機能に加えて、「Z9F」は前述したVRRをサポートしており、テレビ側のリフレッシュレートが「Xbox One X/S」によって制御され可変する。実際に「Z9F」側でリフレッシュレートをコントロールしているのは「X1 Ultimate」プロセッサだというので、同プロセッサを搭載する他の製品でもVRRが動作するのかとブースで質問してみたところ、「他の機種ではVRRは動作しない」、という回答だった。今後の対応についても、可能性はあるだろうが現在のところ予定はないということで、VRRが動作するのは「Z9G」だけということになる。

 後で気がついたことなのだが、回答してくれた技術系の担当者がVRRの定義をHDMI2.1のGame Mode VRRと考えていた可能性もある。「Z9G」は8Kテレビであることから、必然的にHDMI2.1端子が搭載されており、HDMI2.1のGame Mode VRRに対応するのは、順当なところだろう。

 一方で、同じく今般発表された4K OLEDテレビ「A9G」にも「X1 Ultimate」プロセッサとHDMI2.1端子は搭載されているのだが、こちらはVRRに対応していない。ごく自然に考えればLCDとOLEDという差こそあれ、最大120Hzをサポートする両者を区別してVRR対応する、しないを変える必然性はないように感じる。さらにいうなら、アコースティックマルチオーディオを搭載した4K LDCの「X950G」も、やはり「X1 Ultimate」プロセッサを搭載している。HDMI端子は2.0か2.1か不明ではあるものの、「Xbox One X/S」が実現しているように、VRRのHDMI2.0での動作は不可能ではないはずだ。

 要するに、2019年モデルの新しい付加価値としてVRRを位置付けていくのか、2018年モデルの「X1 Ultimate」プロセッサ搭載製品を含めて提供していくのかは、ソニーの“決めの問題”ということなのだろう。あくまで推測ではあるが、PS4によるVRRサポートが実現しないのであれば、ソニー製テレビは対応を明言している「Z9G」以外、このままVRRには対応しないものと考えられる。2019年モデルの発売を控える今、2018年モデルを含めてX1 Ultimate」プロセッサ搭載テレビをアップデートしたとしても、旧製品の需要掘り起こしにそれほど役に立つわけでもないだろうし、ライバルである「Xbox One」のみにベネフィットを与える理由もないからだ。

 その一方で、PS4がVRRに対応するというのなら話は別である。ソニーのデバイスに対するエンドユーザーのロイヤリティを維持するという意味で旧モデルを含めて実施する意義はあるし、2019年モデルならなおのこと、発売後にファームウェアアップデートをしてでも、対応する価値はある。だとすると、とりわけ4K OLEDの新製品「A9G」のVRR対応は可能性が高いように思われる。

 現世代のコンソールゲームプラットフォームの覇者が、たとえ1機種だけだとしても自社のテレビで他社のコンソール機のみに受益させておくとは思えないことから、VRRに対応する「Z9G」のリリースは、PS4および将来のPS5プラットフォームのVRR対応の布石に感じられてならない。

【ソニー 8K MASTER「Z9G」】

リビングテレビのVRR対応を一気に加速させたLG

 CES2019でもっともリビングテレビでのゲーミングに力を入れているように見えたのはLGだ。日本ではなかなかブランドイメージが確立せず、苦戦を強いられているLGだが、液晶と有機ELパネルの製造双方ともに高い技術力を有しており、かつての日本メーカーのように部品レベルの製造から完成品の販売に到るまで、ほぼすべて自社グループで垂直統合を果たしているメーカーだ。

 今回のCES2019に出展されたリビングテレビのうち、LGのテレビがもっともイノベーティブで、もっとも輝きを放っていたのは間違いないだろう。自社だけが生産できる大型OLEDという強みを活かし、8K/120Hz製品を他社に先駆けて投入してきた。「OLED88Z9PUA」がモデル型番で「LG SIGNATURE OLED TV Z9」というブランド愛称が付けられている。ソニーの「Z9F」同様、全部入りのフラッグシップモデルで、もちろん「α9 Gen2」プロセッサやHDMI2.1端子を搭載する。

 LGの2019年モデルでは、8Kの「OLED88Z9PUA」以外にも「α9 Gen2」プロセッサを搭載する全4K OLEDテレビ、加えて4K NanoCell LCDテレビの「SM9X」と「SM8X」にもHDMI2.1端子を搭載しており、VRRに対応する。

 LGにはPC用のゲーミングモニタとして、これまでにFreesyncやG-SYNCに対応したモニタを多数リリースしてきた実績がある。そういったことからも、LGのリビングテレビならゲーミング目的に使用しても何の問題もないだろうという安心感もある。

【LG「α9 Gen2」プロセッサ】

 もうひとつ、ゲーミングを快適にしてくれるという意味で触れておきたいLGの最新リビングテレビがある。「OLED65R9PUA」がそれだ。「LG SIGNATURE OLED TV R」というブランド名末尾の「R」が指し示す通り、Rollable、つまり巻き取り式のテレビだ。

 来場者の多くが、舞台のせり上がりのように、分かりやすくて動きの大きいギミックに目をみはるとともに、LGの曲面OLED技術の実用化の一端として、この新しいリビングインテリアの提案を受け取っていた。

 これが単なるこけおどしのギミックや、インテリアに対する遊び心で終わるも一過性のものなら気にも留めないのだが、筆者が本製品に注目したのは、実用的にも優れていると感じたからだ。

 ご存知のように、リビングテレビは低価格化に伴う大型化によって、どんどん設置場所が限られてきている。長方形のリビングルームでテラス窓が短辺側にレイアウトされている場合、窓からの光の差し込みを避けるとすると、長辺にそった状態でやや窓から離れた場所がテレビの設置位置ということになる。さらに反対側の長辺の壁に沿ってカウチをI字かL字型に配置し、その前にリビング用のローテーブルを配置して視聴位置を設ける。他の家具との兼ね合いで、テレビ、カウチ、テーブルのセットが多少前後左右に移動することはあるだろうが、おおむね典型的なリビングの家具レイアウトということになるだろう。

 「OLED65R9PUA」は、このセットのテレビの定位置を変えるポテンシャルを持っていると思う。もし、テレビをリビングテーブルのすぐ前、つまり部屋の真ん中であっても配置することができるなら、それは追加予算なしでテレビを大型化するのと同じことだ。普段の視聴距離が4~5メートルだとして、それが半分の2~2.5メートルになるのだとすれば、臨場感は相当変わってくる。既存のテレビであれば、リビングテーブルの前についたてのように設置するなど、到底無理な話だが、普段は画面を収納しておくことができる「OLED65R9PUA」なら、大胆な場所に設置することが可能だ。ケーブルの取り回しや音場との兼ね合いといった問題がないこともないが、まずはリビングテレビの定位置は部屋の長辺の壁際という固定観念を崩したことを評価したい。

【LG SIGNATURE OLED TV R「OLED65R9PUA」】

Samsungのゲーミング対応は早くも失速か

 なお、リビングテレビのゲーム重視の方向に逆行する残念な話題もある。2018年にFreesyncとVRRへの対応で先行したSamsungは、CES2019に出展した2019年モデルのリビングテレビでは対応を取りやめている。さんざん確認したが、VRRに対応していた2018年モデルの展示すらないとのことだった。可変フレームレートを求めるコアなゲームユーザーはPCや「Xbox One」をゲーミングモニタに接続していて、リビングテレビに接続するような一般的なユーザー層には求められていないという判断なのか、固定フレームレートで受け取った映像を、テレビの映像処理エンジンで倍や4倍にフレーム補完する機能をウリにしているリビングテレビの付加価値の方向性と相性が悪いからなのか、確かな理由はわからないがSamsungはリビングの住環境とPCでの作業環境を区別して考える方向のようだ。

HDMIブースでデモを行なっていたSamsungのVRR対応2018年モデル

 一方で、モデル名未定ながら「Q950」シリーズとしての投入が予想される最新8K QLEDテレビには、HDMI2.1が搭載されているという情報もあることから、リビングテレビのゲーム対応機能が完全に消えたというわけでもなさそうだ。このあたりは実際に2019年モデルのラインナップが確定するのを待ちたい。

 CES2019のブース展示から、ゲーミングにふさわしいリビングテレビをピックアップしてみたがいかがだっただろうか。昨年はHDMI2.1策定が遅れてしまった関係で実際に搭載した製品がないという状況だったが、必然性のある8Kテレビを中心に、今年はついにHDMI2.1端子を搭載する製品が発表された。すこし微妙な状況なのが4Kテレビで、4K解像度での伝送は、HDRの色深度でも60Hzはもとより120HzであってもYCbCr 4:2:0色圧縮を行えば伝送できてしまうことから、コストとライセンス料の関係で、廉価な製品ではHDMI2.0に留まる製品も多いとみられる。

 採用が進まないという話では、USB-Cへの移行も同じような状況にあると言える。HDDの接続等でいかに家電ユーザーがUSBデバイスに慣れているとしても、またスマートフォンやノートPCを中心にいかにUSB-Cの普及が進んでいるとしても、家電でのUSBの位置づけはストレージとのデータ伝送手段のままだ。少なくとも現時点では、テレビに積極的にDPやUSB-C端子を搭載して、多彩なデバイスから映像信号を受け取れるようにしていこうという機運は見られない。テレビに対しては、今後もPCやモバイルデバイスといったテレビに接続する、ソースデバイス側でHDMIに適合させる工夫をしていくことになりそうだ。

 2019年モデルのリビングテレビを、映像視聴に加えてPCとコンソールゲームの両方をプレイする、マルチゲーミング、マルチエンターテイメント環境にするというのは、まだわずかな制約はあるものの、HDMI2.1端子を搭載した高価格帯のプレミアモデルなら特に問題ないところまできている。とはいえ、近頃の家電製品はいよいよ難解であり、テレビにとってゲームは2番手3番手の位置付けであることも考慮にいれておく必要があるだろう。テレビ発売から時間が経っていても、スペックやアップデート情報をよく調べて、無駄な高い買い物をしないよう気をつけたい。