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【特別企画】2018年、ゲーミングモニターは4K/120Hz超時代に突入!

CES 2018ゲーミングモニターvs.4K/8Kテレビのトレンドひとまとめ

1月7日~1月12日開催

会場:Las Vegas Convention Center(アメリカ、ラスベガス)

ソニーBRAVIA A8Fの65インチは4KHDRの有機ELテレビ

 CES出展製品のうち、ゲーマーのみならず、誰しも一様に関心のあるデバイスといえば、今も昔も“家電の花形”であるテレビだろう。トレンドがモバイルやカーエレクトロニクスにシフトするなか、コモディティ化したテレビは製品としての新鮮味を失って久しいが、それでもなお毎年新製品が登場している。

 コモディティ化は、PC用のモニター同様で、さほどモノを気にしなければ、高止まりしているゲーミングPCと比較して、信じられないような安価で手に入る。モニターは必要ないな、と思ってもマルチモニターのひとつにでもするか、と割り切ってしまえるくらいの低価格ぶりだ。

 2020年の東京オリンピックを前にして、本年2018年からは、ディスプレイ装置であるテレビとPCモニターの双方に、いよいよ本格的に“買い替え”の機運が高まりそうだ。本稿では、CES出展社の製品をご紹介しながら、ディスプレイ技術の現況をおさらいするとともに、今後の商品選択のポイントをまとめていきたい。

4K/8K/HDR時代の到来を機にテレビが大きく進化

SAMSUNGの「The Wall」はMicroLEDと呼ばれる小型LEDのアレイを配置した巨大なディスプレイで146インチサイズ

 テレビとPCモニターを、イメージを表示する装置として捉えれば、両者に本質的な差異はない。事実、ブラウン管時代の太古の昔より、入出力インターフェイスを合わせることさえできれば、PCの出力をテレビに表示することができた。

 では、大きな違いは何だったかというと、放送波の視聴が主目的であるテレビには、当たり前にテレビ放送波のチューナーを内蔵し、SD解像度であっても、リビングに設置されることを前提に、大画面化を目指してきたのに対し、PCモニターは、不要なチューナーは内蔵せず、デスクトップで使用する特性上、大画面化はほどほどに解像度やリフレッシュレートを引き上げ、高精細化を進めてきたところにある。

 1インチあたりの表示可能な情報量は、常にPCモニターが先行してきたため、精密な作りが要求され、当時のPCモニターはテレビと比較して高価だった。

 ところが、デジタル放送時代に入り、放送波のフォーマットがフルHDないしは擬似的なフルHDを実現したことから、テレビは720pHD解像度を経て、今では当たり前に1080pフルHD解像度を備えるようになっている。放送波のみならず、光記録メディアでも、フルHD解像度の映像フォーマットで格納可能になった。DVDの5倍以上のデータ容量を持つブルーレイディスクに規格が収束したこともあり、フルHD化が加速したと言えるだろう。

 現在でも、より多くの情報量の表示が必要な用途向けに、PCモニターには、テレビ向けのフルHDと異なる解像度、異なるアスペクト比を持つ機種が多数存在するが、その反面、テレビがフルHD化したことで、液晶パネルに量産効果が出て、テレビと同一解像度のフルHDのPCモニターは低価格化を続けている。

 近年いよいよディスプレイ装置としてテレビとPCモニターの差異が埋まったと言えるのは、一般的な用途における両者の画面解像度が同じになったということに起因する。

【SUMSUNGのAIで8K化する技術デモ】


液晶テレビの高輝度化に用いられているテクノロジの進化はLGの解説が分かりやすい。LGは自社のNanocellがSAMSUNGなどの量子ドットより進んでいると主張

 SDからのアスペクト比の変更や解像度の向上が、誰の目にも良くわかる画質向上のひとつの軸であったため、一般的なコンシューマのなかには、解像度の向上(というより高精細化、高密度化)によって、高解像度イコール高画質と表現する人もいるが、画質を決定する要素は他にもある。

 具体的には、ゲーマーが重視するフレームレート、ディスプレイが表示することができるカラースペース(色空間)、近年にわかに注目を集めているダイナミックレンジが、要素として挙げられる。また、画面の物理的なサイズに加え、画面サイズと解像度との兼ね合いで得られる精細度(ppi/dpi)も、視聴時の印象を左右する大きな要素だ。

 現在進行中のディスプレイの次世代への移行は、やはり誰の目にもわかりやすい解像度の向上から始まった。4K、8Kでは、フルHD解像度から、それぞれ縦横のピクセル数が2倍、4倍、ピクセル総数がそれぞれ4倍、16倍となる。ピクセル数の増加に対して、画面サイズの大型化が格段に進んでいるわけではないため、結果的に高精細化が達成されることになる。例えば、フルHDで50インチのテレビで視聴していた場合、4Kで同一サイズのテレビに買い替えた場合は2倍の高精細に、67インチで1.5倍、100インチに至ってようやく同じ精細度ということになる。

【Panasonicが公開した4K/HDR有機ELテレビFZ950】

 画質要素のうち、カラースペースについては、以前はあまり語られることがなかったが、液晶モニターのダイナミックレンジ向上と加色フィルタの改良に伴って、表示可能な色域が広がり、認知が進んだ。PCで暗黙的に選択されているカラープロファイル「sRGB」や、印刷を視野に入れたカラープロファイル「Adobe RGB」は、ディスプレイに送出することができるカラースペースを示している。

 放送波では、SDのNTSC世代には、BT.601(Rec.601)カラースペースが採用されていた。HD世代になってsRGBと同一カラースペースのBT.709(Rec.709)になり、4K/8K世代ではBT.2020/BT.2100(Rec.2020/Rec.2100)カラースペースが採用されることが決まっている。

 世代が進むごとに、より幅広い色域が表示できるようになってきているという理解で間違いはないのだが、いずれの世代でも、規格で定義されているカラースペースと、物理的に製造されるディスプレイとの間には、実際に表現可能な色域に差があるというところがややこしい。カタログスペックに、Adobe RGBカバー率、Rec.709/sRGBカバー率、Rec.2020/Rec.2100カバー率を明記した製品は、ディスプレイの色再現性を重視して選択する際の指標になる。

 また、画像や動画のソースデータ、PCやUHD BDプレーヤーといった出力装置、モニターやテレビといった表示装置のうち、下流に至るほどより広いカラースペースを有している分には問題ないが、狭いカラースペースであった場合、印象を損なわないようにトーンマッピングしてから下流に渡すかしないと色味が変化してしまう。いずれの場合でも、出力装置、表示装置双方での対応がないと、せっかくソースに広色域で格納がされていても表現できないことに変わりはないから、ディスプレイの色再現性が低いことは以前から潜在的に問題があった。ちなみに最終出力面を紙と位置付けた場合、紙とインクで表現できるカラースペースは、おおむねディスプレイより狭いから、あまり問題にはならない。

LGのNanocell技術による高輝度化の従来比デモ

 ディスプレイが表示可能な輝度は、現在NITS(nit)という単位で表記されることが多い。以前はcd/m2と表記されることが多かったもので、表記が異なっていても、このふたつの単位が意味するところは同じものだ。

 従来のスタンダードダイナミックレンジ(SDR)のディスプレイで、最大100NITS(最大200~300NITS程度の輝度が出せるものも存在する)、現時点までに発売されているハイダイナミックレンジ(HDR)のもので、最大400~600NITS程度が主流になっている。BT.2100で規定されているHDRの最大輝度は1,000NITS以上なのだが、実際に製造されているディスプレイが表示可能な輝度は、カラースペース同様に機種によって異なっており、必ずしも規格を満たすものではない。現時点で最大級の高輝度を達成している民生用テレビは、CES2018にプロトタイプが参考出展されたソニーの「X1 Ultimate」を搭載した8Kテレビの10,000NITSだと思われる。

 では、最大輝度1000NITS以上を満たさないものはダメなのかというと、そんなことはない。室内の照明を消し、他の光源の影響を排除した視聴環境では、400NITS程度のHDR対応ディスプレイでも十分に感動的で、ダイナミックレンジの拡大が心象に与える影響は大きい。

【SONY X1 Ultimate搭載8Kテレビ】
プレスカンファレンスでの発表の模様
左が8KHDRで10,000NITSの最新プロトタイプで、右がLED液晶テレビの現行機。写真ではどうしても白が飽和してしまい残念

 HDR対応ディスプレイを選択する際に、もうひとつ考慮しなければならない事項に、LED LCD(液晶)とOLED(有機EL)といったパネル素材による特性の対比がある。LEDをバックライトに採用した液晶ディスプレイでは、LEDのおかげで輝度の高い部分の階調表現が得意なのに対して、液晶の特性上輝度の低い部分の階調表現が苦手だ。平たく言うと、“液晶は白トビしないが、黒ツブレする”ということになる。

 対して有機ELディスプレイでは、発光原理の特性上、高輝度を出すのが苦手なのに対して、低輝度の階調表現に優れている。これも平たく言うと、“有機ELは、眩しい白は出ない代わりに、陰部分にもちゃんと色が乗る”ということになる。

 テレビの場合、どちらの方式においても、ハードウェアの改良に加えて、プロセッサによる“絵作り”で、長所を伸ばして短所に目が行かなくしたり、苦手部分を補ったりしているが、どうしてもメカニズム特性は残るようだ。このあたりは、実際に視聴して好みの“絵作り”がなされているかで選択するしかないだろう。なお、特性上レイテンシが少ないからか、一般的なテレビだけでなく、ゲーミングモニターの場合でも、有機ELのものには、120Hz駆動を超える製品が登場していないことにも注意が必要だ。

ゲーミングモニターは4K/120Hz超時代に突入

ASUSのPA27UQは期待の4K/144Hz/HDRモニターだ。写真は同画面サイズでHDRをサポートするがWQHD解像度で60HzのPA27AC

 リフレッシュレートに関しては、やはりテレビよりPCモニター、とりわけゲーミングモニターにアドバンテージがあると言えるだろう。ご存知のとおり、総じて応答性能を向上させ、プレーヤーの入力の結果がディスプレイにフィードバックされるまでのディレイを最小にする工夫がなされているのが、ゲーミングモニターの最大の特徴だ。

 フルHDやWQHD(2,560x1,440)解像度の信号であれば、入力インターフェイスがディスプレイポート(DP)接続であろうがHDMI接続であろうが、ゲーミングモニターと銘打った現行製品であれば、ほぼ120/144Hzのリフレッシュレートに対応し、いくつかの製品ではフルHDで240Hzに対応する。

 加えて、ゲーミングモニターのなかには、NVIDIAの「G-SYNC」や、AMDの「FreeSync」といった、グラフィクスボード側からフレームレートを動的にコントロールする可変フレームレート技術に対応するものもある。

 では、このNVIDIAの「G-SYNC」やAMDの「FreeSync」対応ゲーミングモニターを、テレビとして使うことに意義はあるのだろうか。ここで改めて考察してみたい。

 まず、PCに搭載されているグラフィクスボードがNVIDIA「GeForce」シリーズやAMDの「Radeon」シリーズだとして、PCゲームプレイ時のフレームレートがGPUが主導する最適なものになるのは間違いない。非対応モニターでV-SYNCを待たないで画面を更新する設定をしているときのように、GPUの描画が間に合っていないフレームの内容が中途半端に表示されることもなく、V-SYNCを待つ設定のときのように同一内容のフレームが複数回表示されてしまうこともない。PCゲームプレイ環境としては、現状もっとも素晴らしい。

【NVIDIA 65インチ4K120HzHDR G-SYNCモニター】
本レギュレーションに基づいてASUS、Acer、HPからリリース予定

 他のコンテンツではどうか。例えば、フルHD/60Hzの映像ソースをHDMIから直接入力した場合、テレビに搭載されているような画像処理エンジンを介さないため、基本的には一切“絵作り”が行なわれず、ストレートに表示される。

 ゲーミングモニターに4K/60Hzの表示性能がある場合、大きく下回る解像度での表示ではもったいないから、ソース映像をAVアンプや、UHD BDレコーダー、PS4 Proなどにネットワークを介して渡してあげれば、アップサンプリング、つまり“絵作り”が行なわれてからモニターに入力されることになる。この際、ことフレームレートに関してはAV機器によって60Hzを超えてサンプリングされることはないし、HDMI2.0の制限から、色に関してはYCbCr 4:2:2やYCbCr 4:2:0へのダウンサンプリングは避けられない。

 他方、あらゆる映像ソースをネットワークを介してPCのソフトウェアプレイヤーで再生する環境を構築した場合、PCのソフトウェアの次第では、前述のHDMI接続機器を活用したアップサンプリングよりも良好な結果が得られる可能性がある。具体的にテストしてみないと確かなことは言えないが、PCとの接続がDP1.3以降で行われていれば、PC側で4K/120Hz/HDRにアップサンプリングしたものを、カラーを劣化させることなくモニターに伝送して表示することが可能なはずだ。

 結論としては、HDMI2.0の帯域幅によって制約を受けてしまうばかりか、モニター側で“絵作り”ができないゲーミングモニターとAV機器の組み合わせが、最も残念な結果になりそうだ。次がテレビとAV機器を接続した場合で、テレビ側で“絵作り”を行う分、ゲーミングモニターより良好な結果が得られそうだ。最も良好な結果になると考えられるのが、DP1.3以降で接続するゲーミングモニターとPCをメディアプレーヤーにした場合で、あらゆるソースにおいて、定量的に高品質な結果を得られる可能性がある。

 ただし、この差は、テレビを含む家電AV製品に搭載されているHDMI端子が、HDMI2.0であることに起因しているため、2018年から2019年にかけてHDMI2.1を搭載した製品に置き換わっていくことで、すぐに解消していくと思われる。

 一般的に、PCのツールをかき集めて組み込みAV機器と同一かそれ以上の品質を得るには、たいへん手間がかかる。どうしても今「G-SYNC」や「FreeSync」対応ゲーミングモニターを購入するというのなら、その環境での映像視聴はゲームに飽きた時の補助的なものと割り切って、ゲームプレイ環境とは別に映像視聴用の環境を整えるのがお勧めだ。しかも、そのタイミングはHDMI2.1に置き換わった後がいい。

 なお、最新のゲーミングモニターとしては、HDMI2.1に先行する新規格DP1.4を採用し、4K解像度で144Hzまでリフレッシュレートを高めたAcer「XB272-HDR」とASUS「PG27UQ」が2018年の2Qには登場する予定だ。4K解像度で240Hzをサポートする製品は存在しないが、DP1.4とHDMI2.1の浸透とともに、2019年か遅くとも2020年には登場すると予想される。

【LGのPC用モニターラインナップ】

テレビの買い替えはHDMI2.1搭載モデル以降がベスト

中国本土のメーカーCNCのブース。今後中国勢の台頭は必至

 対してテレビの方は、現世代のBT.709はフルHD解像度で24/25/30/50/60Hz(1080i/1080p)、次世代のBT.2020では4K/8Kで24/25/30/50/60/100/120Hz、BT.2100ではフルHD/4K/8Kで24/25/30/50/60/100/120Hzが定義されている。よって、BT.709準拠のテレビならPCと接続した際に60Hzの表示が可能、BT.2020/BT.2100準拠なら60Hzはもちろんのこと120Hzの表示が可能になっていないと仕様を満たしていないことになる。

 ところが、PC以外のソースでは120Hz出力可能な機器が存在しないことに加えて、HDMI2.0bまでは帯域幅不足のため4K120Hzをサポートしていないことから、現状販売されているBT.2020/BT.2100準拠の4K/8Kテレビでは、4K解像度120Hzでゲームをプレイすることはできない。

 フルHD解像度120Hzの入力であれば、HDMI2.0bのサポート範囲内であるから、インターフェイス的には問題ないはずだが、BT.2020はフルHD解像度については規定しておらず、BT.2100への準拠を明示している発売済の製品はほとんどない。ソニーや東芝製の一部の機種では問題なく動作することが報告されているものの、多くの機種ではフルHDに解像度を下げても120Hzで正常動作するかどうかは、やってみないと分からない部分ではある。

 少なくとも、倍速駆動を謳ったものならパネル性能的には問題ないはずだから、HDMIで問題なく伝送されたフルHD120Hzの入力を素直に表示してくれても良さそうなものだが、入力信号を検出する段で120Hzを規格外として受け付けないものや、たとえ受け付けたとしても正しく表示できない機種もある。画像処理の段で60Hzの入力があったものとして、2回に1回はフレームを破棄してしまい、わざわざ改めて60Hzを倍速化したものを表示する可能性もある。

 ただし、今後発売されるHDMI2.1を搭載するBT.2020/BT.2100準拠のテレビなら、4K/8Kで120Hzをサポートするようになるはずだ。しばらくはこれもやってみなければ分からないという状態が続くと予想されるが、ソフトウェア的な対応はともかく、2018年から遅くとも2019年にはハードウェア的にHDMI2.1を搭載して4K/8K/120Hz動作しうるテレビが登場するだろう。

 放送波では、半分の水平解像度を持つABフィールドを60Hz周期で1ライン置きに交互に表示して、30Hzで1フレームを実現するインターレース方式が、解像度が向上した今でも続いており、記録メディア再生機でも、2002年ごろからようやく60Hz周期で1フレームの内容をすべて送出するプログレッシブに移行したというくらい、テレビを取り巻く世界ではリフレッシュレート向上に対して消極的だ。

 これは、かつてのブラウン管が液晶とは異なり、1ピクセルに相当する箇所の発光時間が短くリフレッシュ時のフリッカーが目立たないという、放送波の伝送帯域が足りないことをカバーしうる特性を持っていたことに起因する。また、ソースが光学的に撮影されたものであれば、おのずとブラー成分が含まれていることから、リフレッシュレートが低くても、十分滑らかに見えることも背景にある。

 放送波の帯域幅は今も限られており、現行のデジタル放送では最大で24Mbpsしかない。フルHDの4倍の解像度を持つ4K放送では、最大35Mbpsと1.5倍程度まで拡大された帯域幅を利用するが、MPEG-2(H.262)比で約4倍の圧縮が可能なH.265でエンコードしても、依然としてリフレッシュレートを2倍にする余地はない。

ゲーミングに最適な製品が今夏~2019年初頭かけて続々登場か

中国TCLはSAMSUNGに先んじて2014年に量子ドットテレビを発表したほどの実力メーカー

 ここまで見てきたように、テレビとPCモニターは、基本性能の大部分を同様としながらも、それぞれに尖った部分を持たせることで、似て非なるデバイスとして市場の棲み分けがなされている。モニターでは、余計な“絵作り”を行わずシンプルに書き換えの高速化を実現しているのに対し、テレビでは、内蔵されたプロセッサが“絵作り”を行なうことで、高画質化することを優先している。

 では、先ほどのゲーミングモニターの考察とは想定する条件を変えて、テレビやBDの視聴とPCゲームのプレイの両方に使用するが、スペックは4K解像度60HzSDRで十分、とした場合、テレビとPCモニターではどちらを選択すれば良いのだろうか。この条件ならテレビでもPCモニターでも選択肢は豊富にある。一般的には、部品構成がシンプルなPCモニターの方が、テレビより価格が安いため、支出の削減を最優先にするならPCモニターを購入した方が良いだろう。ただし4K60HzをHDMI2.0で伝送したときの色の劣化については留意してほしい。かならずDPを使ってPCと接続したいところだ。

 ゲームをプレイするのはほとんどコンソール機で、PCではあまりゲームをプレイしない人や、PCでもかなりの時間ゲームをプレイが、720pのHD解像度に落としても60FPS以上のフレームレートを維持できないPCの人、シューターや格闘ゲームをほとんどプレイせず、オンラインゲームやRPGを好む人には、ゲーミングモニターは必要ない。価格のこなれた普通のPCモニターを購入するのが一番お財布に優しい。

 ところが4K120Hz以上でPCゲームをプレイしたいなら話は別で、現状ではゲーミングモニター以外に選択肢がない。ただし製品のリリースはこれからで144Hzを求めるなら半年、240Hzを求めるならさらに半年~1年は新機種の登場を待つことになる。

【SAMSUNGのビジネスPC用モニター】

 反対に、どんなソースに対しても動画の滑らかさやダイナミックレンジの最適化といった“絵作り”を積極的にして欲しい場合には、テレビを購入した方が良いだろう。

 地デジ放送やBlu-rayディスクなどの映像ソースの場合、ひとたび視聴が始まれば、視聴者からのコントロール入力に対するシビアな即応性を実現する必要はなく、極端な話、現実のリアルタイムな時間軸に対して数秒遅れたとしても大勢に影響はない。実際には、10数ミリ秒~数ミリ秒にとどまるのだろうから、こと映像視聴用途に限って言えば、全く問題ないと言っていい。

 テレビ側から見れば、PCからのゲーム画面の出力も映像ソースの一種であり、必ずしもすべてが完璧に美しいとは言えないゲームシーンに対して、常に一定の“絵作り”が行われるのは考え方によっては好都合だ。多少お財布に余裕のある人なら、あらゆる機器を接続して統合的に視聴するための1台として、テレビを買うのはトータルで考えてコストパフォーマンスが良いだろう。

 ただし、HDMI2.1に更新されていない現世代のテレビでも、4K解像度のPCからの出力を、色信号を劣化させずに表示することができない。DPという代替手段を持たないテレビの方が、PCモニター以上にHDMI端子の更新を待った方が良さそうだ。