【特別企画】

ゲームライフをより楽しく、より快適にするゲーミングモニターの選び方講座

解像度?フレームレート?ゲーミングモニター選びのポイントをお伝えします!

 今季はPC、コンソールを問わず大作ラッシュだ。「Forza Horizon 4」などのレースゲーム、「バトルフィールド V」や「Fallout 76」などのFPS、「アサシン クリード オデッセイ」や「ヒットマン2」、Nintendo Switchでは「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」が発売されたばかりだし、「レッド・デッド・リデンプション 2」も満を持して発売された。

 新作はゲーム内容そのものはもちろん、「どのプラットフォームでプレイするか」、PCであれば「どれだけのスペックが必要か」など気になるところは多数ある。しかし一方で、それを表示する液晶モニターについて意識されることはあまりない。中には「モニターなどケーブルを繋いで絵が出ればそれでいい」と考える人もいるかもしれないが、実はモニターのクオリティひとつでゲーム体験が大きく変わってくるだけではなく、身体の疲労感の軽減にも繋がるのだ。また、ゲーミング液晶といえばPCで使うものというイメージもあるかもしれないが、プレイステーション 4やXbox One、Nitnendo Switchなどのコンソール機でも、ゲーミングモニターを使う多大なメリットが存在する。

ゲームを最高の環境で楽しむためには、ゲーミングモニターの性能が必要不可欠だ

 とはいえ、いざモニターのスペックを眺めてみると、「解像度」や「リフレッシュレート」、「HDR」などなど専門用語がズラリと並んでおり、そもそも単語の意味がわからなかったり、直感的に良し悪しが理解しにくい部分が沢山あることと思う。そこで今回は最新ゲーミングモニターのスペックを読み解き、ベストな1台を導くためのノウハウを紹介しよう。

難しそうな単語が並ぶモニターのスペック表。ここで確認するべきところと、その意味を解説していく

具体的な製品レビューはコチラ!

BenQ「EW3270U」レビュー
AOC「C32G1/11」レビュー

何はなくとも「解像度」と「サイズ」

 ゲーミング液晶選びで最初に考えるべきは液晶の解像度とパネルサイズだ。今のゲーミング液晶はフルHD(1,920✕1,080ドット)がベースラインで、そこからWQHD(2,560✕1,440ドット)、4K(3,840✕2,160ドット)と上位モデルにつながっていく。一方パネルサイズは大小様々だが、23~24インチと27インチの選択肢が多く、さらに最近は32インチのような超大型といえるサイズも発売されている。

 解像度とパネルサイズ、どちらが大事かだが、ゲームの快適度を考えるならまずパネルサイズをチェックしよう。小さければ広い範囲を1度に見渡しやすくなり、大きければ映像の没入感や迫力が増す。解像度が同じならパネルサイズが大きい方が小さな文字やキャラクターが大きく表示されるので視認性が上がる。

写真は11インチのノートPCと24インチのモニターに「レインボーシックス シージ」の画像をフルHDで表示したもの。解像度は同じでも、パネルサイズの違いでこれほどの違いが現われる。また、小さい文字やキャラクターも大きい液晶の方が見やすくなるので、場所の許す限り大きな液晶を使いたいところ

 パネルサイズは価格、そして“置き場所”にも関わってくるので慎重に考えたい。自分が考える設置場所に置いた時、眼や頭を大きく動かさないと見えないほど大型だと疲れてしまうので避けたいところ。

 人間の視野は中心から左右に15度ずつ、つまり水平方向に30度の範囲が有効視野とされ、眼の動きだけで素早く情報を取得できる領域だ。さらにその外側、左右30度ないし45度までの領域(水平方向に60度~90度)は眼球と頭の運動を無理なく動かせ、効率よく情報を取得できる安定注視野と言われている。つまり液晶の前に座ったとき、液晶表示領域の左右の端が、自分の安定注視野に収まっていれば、無理なく隅々まで見えるということになる。

安定注視野に液晶の左右を収めるためにはどの程度液晶表面と眼を離せばよいかを示した図。安定注視野を狭めの水平方向60度とした時、24インチ液晶(表示領域横531mm)と眼をおよそ460mm離せばこの範囲に収まる。27インチ液晶(横598mm)ならばおよそ518mmだ。ただかなり乱暴な計算である点はご容赦頂きたい
縦横比が21:9と横長になっている「ウルトラワイド」な液晶も存在する。横方向のサラウンド感が高いためオープンワールド系やフライト&レースシム系との相性は抜群だ。だがコンソール機では画像が単純に左右に伸びるか左右に黒帯が入るなど、やや特殊な製品ゆえの制約もある。なお、画像はMSI「Optix MAG341CQ」

 自分の求める製品の置き場所があることを確認できたら、次は解像度を検討しよう。解像度が高ければそれだけ画面に表示できる情報量が増える。特にPCに接続する場合は、解像度が高ければウインドウを並べて表示しやすくなったり、または文字表示が見やすくなるなどの恩恵が得られる。1モニターでゲームのほかに動画や写真編集も……と考えているならフルHDよりもWQHDや4Kがオススメだ。

 ゲームにおいても解像度は重要な意味を持つ。解像度を上げればゲーム画面の“ドット感”が解消されるからだ。特に「Forza Horizon 4」のようなレーシング系、「Far Cry 5」のようなオープンワールド系ゲームで風景の美しさも堪能したいなら、解像度は高い方がよい。

「Forza Horizon 4」でフルHD(左)と4K(右)表示を比較してみた(画質は“ウルトラ”に固定)。細部の造形はもちろん、遠景のクオリティーが上がっていることがわかる
「Far Cry 5」で同様にフルHDと4Kの比較。こちらも解像度を上げることで画面のキレがアップしている
ゲームの解像度を上げなくても、ブラウザ(Chrome)上の表示のために高解像度液晶を買うメリットはある。フルHD(左)より4Kでスケーリングを効かせたもの(右)の方が小さな文字も見やすい

 しかし解像度を上げるとゲーム画面のドット数が増えるぶん描画負荷も高くなる。フルHDを1とすればWQHDは1.7倍、4Kは4倍のドットがあるので、PCにおいてはスペック(特にビデオカード)が低いとフレームレートが著しく低下する。「Rainbow Six Siege」や「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(以降PUBG)」のようなeスポーツ性の高いゲームでは、フレームレートを稼ぐために解像度を上げないプレーヤーも多い。ただ「PUBG」は解像度を上げると、壁のシミと他プレーヤーの姿を見分けやすくなるので、4KまではいかなくともWQHDまで上げるのは効果があると考えてよいだろう。

「PUBG」の解像度における見え方の違い。フルHD(上)と4K(下)。明らかに遠くの建物などがハッキリ見えるが、「PUBG」は描画も重いため4Kでは遊びにくいというジレンマが

 一方でPS4やXbox One、Nintendo Switchなどのコンソール機ではフルHD出力が基本となる。そのためコンソール機で使うことを前提とするなら、解像度はフルHDがファーストチョイス。ただし、PS4 ProやXbox One Xなどの上位機種では4K解像度を扱うことができるので、4K対応ハードとゲームを持っている(あるいは購入予定)ならば、美しく高精細なグラフィックスでその世界観をフルに楽しむため、4K環境の導入を検討したい。特に「RDR2」こと「レッド・デッド・リデンプション2」は現状コンソール専売のため、この雰囲気にどっぷり浸りたいなら4K環境は非常にオススメだ。

PS4 Proで「RDR2」を遊んだ時の違い。上がフルHD、下が4K。フルHDを超えた4Kモニターでプレイすることで、世界はぐっとリアリティーを増す

 大は小を兼ねる的に考えると4K液晶が映像美も堪能できて良い……となるが、ゲーミング液晶ではその考え方はとても危険だ。4K液晶は次に解説する“リフレッシュレート”というスペックがネックになることが多いからだ。

「リフレッシュレート」はPCゲーマーの生命線

 もしゲームをPCでプレイするなら、解像度の次に考えるべきはパネルの「リフレッシュレート」だ。これは1秒間に映像が何回描き変わるかを示したもので、一般的な液晶は60Hz、1秒間に60回描き変わる。つまり最大60fps表示できる。ちなみに現行コンソール機はPS4 ProやXbox One Xなどの上位機種でも60fps以上は出さない設計が基本になっているので、リフレッシュレートは特に気にする必要はない。

 しかしPCの場合、画面のリフレッシュレートは60Hz以上を選択できる。具体的には144Hzや165~185Hz、240Hzに高めることができるのだ。60Hzを除いて1番普及している144Hzの液晶でも、60Hz液晶の2倍以上の頻度で画面を更新できる。リフレッシュレートを上げるといわゆる"ヌルヌル感"と呼ばれるように画面移動が滑らかになり、素早い動きの視認性が向上する。そのため、特に素早い動きをするeスポーツ性の高いゲームでトップを目指すなら、高リフレッシュレートは必須機能といってよい。

 下の動画は「Overwatch」のBotプレイの様子を録画し、それを30fps/60fps/144fps化したものだが、液晶のリフレッシュレートが活きる状況だとこのような違いが出る。30と60fpsの違いは一目瞭然だが、144fpsに慣れると60fpsも物足りなくなることだろう。

【「オーバーウォッチ」フレームレート比較】
リフレッシュレートの違いを動画になおすとこんな感じになる。リフレッシュレートが高いほど素早い動きが見やすくなるのだ

 ここで間違えやすいのが、リフレッシュレートが高い液晶を使っているからといっても、実際に画面に表示されるフレームレートが高くなる訳ではないということだ。リフレッシュレートが144Hz出せる液晶を使っていても、PC側のグラフィックス性能が低ければ意味がない。144Hzのスペックをフルに活かすには、PC側も144fps出力できなくてはならない。PCのグラフィックス描画性能が60fps程度が限度なら、144Hz液晶のスペックを活かしきることはできないということだ。

 つまり、高リフレッシュレート液晶を買うなら、まずPCのグラフィックス描画性能が十分に高いものである必要がある。PCのスペックとゲームのフレームレート関係の話はあまりにも膨大なので割愛するが、最近のゲームならベンチマークモードを使うことで、そのゲームにおける描画性能を知ることができるはず。ゲームの画質設定を落とせば劇的にフレームレートが改善されることが多いので、まずは試行錯誤してみるとよいだろう。

PC版「Forza Horizon 4」のようにベンチマーク機能を持ったゲームが最近増えてきた。画質設定や解像度を調整して、液晶のリフレッシュレートになるべく近いフレームレートが出るように調整すると良いだろう
ゲーム側に「フレームレート制限」と呼ばれる機能が実装されている場合もある。高フレームレートを出すと消費電力も発熱も増えるが、この機能でフレームレート上限を設定すればどちらも低く抑えることができる。高リフレッシュレート液晶を買ったら、この設定の上限も上げておこう

 高リフレッシュレート液晶が効くのは、前述の通りPCゲームの中でもeスポーツ性の高いタイトルとなる。「Counter-Strike: Global Offensive(以下、CS:GO)」や「レインボーシックス シージ」、「フォートナイト」はグラフィックスの描画負荷が比較的軽く、程々のスペックのPCでも高フレームレートが出しやすい。一方で「オーバーウォッチ」や「PUBG」は画質設定とPCのスペック次第、といったところだろう。

 ただ高リフレッシュレートの性能を完全に引き出せなくても、60fpsより上のフレームレートがコンスタントに出せていれば高リフレッシュレート液晶の恩恵はある程度得られる。例えば自分のPCがあるゲームで90~120fps出せるとしよう。さすがにリフレッシュレート165~240Hz級の液晶は少々もったいないかもしれないが、60fpsは余裕で上回れるので60Hz液晶で使うのはもったいない。つまり144Hz液晶を選ぶのが良いと言える。

「CS:GO」や「Rainbow Six Siege」は高リフレッシュレート液晶が非常によくマッチするゲームだ。描画負荷も軽いので高リフレッシュレート液晶のスペック限界まで攻めやすい
「バトルフィールド V」のマルチプレイも高リフレッシュレート液晶が有効なゲームだが、「CS:GO」などに比べると描画が重いため、PCスペックをある程度高くしないと60Hz液晶とあまり変わらない、という結果になる
「ソウルキャリバーVI」のPC版のように、コンソール機と同様の60fps制限がかかっているタイトルもある。こうしたゲームではリフレッシュレートの高さよりも、高リフレッシュレート液晶の持つ応答速度の速さの方が重要になるだろう

 また、高リフレッシュレートの液晶は高解像度のものほど製品も高額になる。特に4Kはリフレッシュレート60Hzが標準といってよいだろう。4Kで144Hz液晶も一応存在しているが、液晶だけでハイスペックPCが買えるので、万人にはオススメできない。高リフレッシュレート液晶はフルHDやWQHDから選択しよう。

ASUSTeK「PG258Q」は応答速度1ms、リフレッシュレートは240Hzという超高速液晶だがパネルサイズは24.5インチフルHDと小さめ。ゲームの画面をボヤけず高速表示することに特化したゲーミング液晶である
ASUSTeK「PG27UQ」は希少な4Kでリフレッシュレート144Hzに対応する究極のゲーミング液晶だ。量子ドット採用や最大輝度1,000nitのHDR10対応、AdobeRGB99%カバーなど、欲しい機能は全部盛り込んであるが、実売価格は25万円前後ととてつもなく高価。かつ流通量も少ない

「応答速度」と「フリッカーフリー」

 液晶の最大の弱点は表示を切り替えるよう信号を入力しても、それが実際に変化するまでわずかなタイムラグがある、ということだ。このタイムラグが「応答速度」と呼ばれるもの。ドットの色がある色から別の色に変化する時間のことだが、特に液晶のスペック比較では「GtoG」の応答速度が重視される。

 GtoGとは“グレーtoグレー”あるいは“中間調”とも表記されるが、液晶は白と黒以外の中間調から中間調へ表示を変える時が1番動作が遅くなる。このGtoGの数値が大きいほど動きの速い映像の輪郭がボヤけたり残像が出やすくなるのだ。つまりゲーミング液晶なら応答速度は極力短い方がよい、ということになる。

 応答速度は製品によりピンキリだが、最近のゲーミング液晶ではGtoGで4ms(ms:ミリ秒)以下が普通、最短で1msを切るものもある。気楽にゲームするなら応答速度は5msもあれば十分だが、トップを狙うようなプレイスタイルなら、ぜひとも応答速度の短いものを選びたい。

 応答速度とは別に、動く物体の見やすさを向上させる要素もチェックしておこう。それが「フリッカーフリー」と呼ばれるものだ。液晶内部にある光源、いわゆるバックライトの明るさは、LEDを明滅させる頻度を変化させることで実現している。常時点灯している風に見えても実際は明滅しているという点で言うと、白熱灯より蛍光灯に近いものがある。

 このバックライトの明滅(フリッカー)は人間に肩こりや頭痛といった悪影響を与えることが示唆されているほか、フリッカーは高速な動きが見づらくなる原因でもある。もっと具体的に言えば、動きまわるキャラの輪郭が、フリッカーにより滲んだように見える、というもの。応答速度が遅いことによる滲みとフリッカーによる滲みは切り分けにくいが、輝度を100%にすれば明滅の"滅"の頻度が1番少なくなるため、フリッカーはほとんど出なくなる。

 だが輝度100%でゲームが長時間できるか?というとそうもいかない。最近の明るい液晶モニターを輝度100%で使うと、早晩眼が辛くなってくるはずだ。フリッカーフリーとは、つまり輝度を丁度いい塩梅に暗くしても高速移動する物体が見やすく、かつ疲れにくくなる機能といえる。

フリッカーが出ているかどうかは液晶の前でUSB扇風機を回し、羽根がどう見えるかチェックするとよい。フリッカーフリー非対応液晶だと左のように羽根の形がぼんやり見えるが、フリッカーフリーだと右のように見えるはず。部屋の照明が影響することもあるのでそこは注意しておこう(画像はBENQの検証動画より)

パネルの方式は悩みの種

 液晶を選ぶ上では「パネルの方式」も重要だ。液晶内部の構造の違いから、据え置き型液晶のパネルは「TN」、「VA」、「IPS」の3種類に大別できる。この3種類の方式の違いをざっくり解説すると、以下のようになる。

TN(Twisted-Nematic)方式

長所:応答速度最速で安価。高リフレッシュレート液晶に多い。
短所:斜めから見た時に映像の見た目(輝度や色味)の変化が避けられない。

VA(Vertical Alignment)方式

長所:応答速度はTNに次ぐ速さ。黒を表示させたときの締まりは最強。
短所:斜めから見たときに白っぽくなる。相対的に製品数が少ない。

IPS (In Plane Switching)方式

長所:斜めから見ても見た目の変化が少ない。発色も良好。
短所:高リフレッシュレートの製品が少なく、応答速度も若干長め。

 三者三様といったところだが、発色&色変化を重視するか、応答速度やリフレッシュレートの速さを重視するかが選択の軸となるだろう。少々発色が悪くてもゲーム寄りの高スペック製品を安価に手に入れたいならTNを中心に見るのが良い。逆に動画や写真を見る頻度が高く、画質を重視したい人、あるいはハードの制限上、60hz以上の高リフレッシュレートを必要としないコンソール機主体のゲーマーであればIPSやVAも良い。ちなみに応答速度が長くなりがちなIPSの中でも高速&高リフレッシュレートの液晶もないわけではないが、それなりに高額になる。

 ちなみに、TN方式のネックである「見た目の変化」については、実際に店頭でデモ機を見るのが1番だ。昔のTN方式はナナメから見ると肌色が青く見えるレベルの製品もあったが、現行製品ではやや黄色が被る程度。そもそも自分がゲーム中に液晶をナナメから見ることはあまりない、ということを覚えておきたい。

今のTN方式はナナメから見ると色味が黄色っぽく変化する。ただ実際ゲームで遊んでいて体も一緒に動く人でもない限り、ここまで色が変わる体験をするのは難しいだろう
IPS方式だと少し暗くなる程度で色味そのものは変化しない。ダラッと横になってゲームや動画を楽しむ、みたいなフリーダムスタイルのゲーマーはこちらが向いている

 映像を表示するという点においてIPSは今のところ1番欠点の少ない製品だが、応答速度とリフレッシュレートだけはTNが有利だ。発色が少々劣っていても勝ちを拾いにいきたいならTNが正解だし、ゲームの映像美を堪能したければIPSが正解だ。VAはちょうどその中間くらいの性能になり、特に黒の表示が得意だ。最後は好みの問題になるので、財布と自分の魂が納得する方を選ぼう。

「入力端子」を侮ることなかれ

 ゲーミング液晶を買う時にもうひとつ確認しておきたいのが映像入力端子の種類と数だ。今の液晶は安い製品でも複数入力をサポートしているが、どういった機器を何台接続したいか、よく考えてから購入すべきだ。

 一般的に現行のコンソール機はHDMI出力が必須なので、PS4とXbox、Nintendo Swithも……と複数のコンソール機を外付けのセレクターを使わずにスマートに接続したいなら、HDMI入力の数が必要だ。

 一方PCは少し前はDVIで液晶と接続するのが一般的だったが、今はHDMIかDisplayPortを使うようになっている。この流れを反映して、今どきの液晶はHDMIかDisplayPortのみになっているケースが多い。特に4K、あるいは高リフレッシュレートのゲーミング液晶の場合、信号伝送の関係でDVIは搭載しない製品の方が圧倒的に多い。特に144Hz以上の高リフレッシュレート液晶を使う場合は、DisplayPortでないと性能を活かせない点に注意が必要だ。

液晶側の入力端子に何が何個あるかは必ず確認しておこう。HDMIをDisplayPort、またはその逆に変換するケーブルは存在するが、配線が複雑になる上に機材の相性問題も出やすくなるのでオススメはできない

ゲーミング液晶の付加価値とは?

 「解像度」、「パネルサイズ」、「リフレッシュレート」、「応答速度」、そして「パネルの種類」でゲーミング液晶はかなり絞り込めてくるが、プラスアルファであると良い機能を紹介しよう。

HDR

 近年の液晶モニター界隈で話題となっているのが「HDR」、いわゆる“ハイダイナミックレンジ”対応だ。液晶が表示できる明るさの幅は人間が知覚できる明るさの幅よりずっと狭いため、どんなに頑張ってゲーム画面を作ろうと、コントラストの乏しい画面しかできない。

 だがHDR液晶だと普通の液晶よりもずっと表現できる明るさの幅が広いため、よりコントラスト感の高い、リアルな空気感を持った映像が楽しめる。液晶のHDR規格はいくつかあるが「DisplayHDR 400」、「同600」、「同1000」や「HDR10」という規格があり、非常にわかりづらい。だがHDRで重要なのは最大輝度の高さ。HDRに対応したUHD BDをフルスペックで楽しむには最大輝度1,000nit(カンデラ表記のこともある)が必要だが、ゲーミング液晶で1,000nit対応の製品は前出の「PG27UQ」しかない。500nit程度のHDR 10液晶が今の所のベストプラクティスと言えるだろう。

LG電子製「32UD99-W」。HDR 10対応で最大輝度は500nit、さらに4K対応とゲームの映像美を堪能したい人のための液晶といえる
「Far Cry 5」をHDR液晶「PG27UQ」で表示させたところ。上の通常時に対し、下のHDR有効時は地面の明るい部分がクッキリ出ている。ただ写真には写りにくいので、実機で判断して頂きたいところ

湾曲

 液晶モニターは平面である、というのは半分正しく、半分は誤りだ。最近のゲーミング液晶は“湾曲”に徐々にシフトしつつある。これは液晶表面が緩やかな弧を描くように凹み、普通の平面液晶よりもサラウンド感を向上させたものだ。包み込むという性質上27インチや32インチクラスの製品、あるいはウルトラワイドなモニターでの採用例が多い。さらにこれを3連にすれば、極上のサラウンド環境の出来上がりだ。

 この湾曲というスペック自体は没入感という雰囲気を稼ぐとともに、画面の端が視界の内側に入り込んでくるような構造となるため、視界の端の情報を視線を変えずに把握することができるというメリットもある。

弊誌でもレビューを行なったBenQ「EX3200R」は31.5インチのパネルを1800Rという緩やかなカーブに沿って湾曲させたフルHDゲーミング液晶だ。リフレッシュレートは144Hz、応答速度も4msとそこそこ優秀なスペック

同期機能(G-SYNCまたはFreeSync)

 液晶の映像が描きかわる頻度はリフレッシュレートであると解説したが、このリフレッシュレートにPCやコンソール機側が合わせて映像を送出するのが一般的なやり方だ。リフレッシュレートと送出される映像のフレームレートが合っていれば万事OKだが、描画の重いシーンなどでフレームレートが下がると少々面倒になる。

 60Hz液晶の場合1フレーム約16.67秒で描画処理を終えていれば60fps表示になるが、もし16.67秒を超えてしまった場合、前のフレームの絵をそのまま使い回すことになる。ABCDE……と映像が表示されるはずがBで遅れが発生するとABBDEとなるので、見た目にはもたつき、専門的に言うところのスタッター(Stutter)として現われる。

 映像を送出する側がリフレッシュレートを無視して(専門的にはゲームやドライバー側で「垂直同期を無効にする」)映像を液晶に送ればカクつきは発生しなくなるが、今度は画面が中途半端に更新されてしまうティアリング(Tearing)が発生しやすくなる。ティアリングが発生すると画面が水平方向に分断されたように見えたり、チラついて見えたりするので非常に見づらい。ティアリングはフレームレートがモニターのリフレッシュレートより高くても低くても発生する可能性がある。

ティアリングが発生した瞬間。画面が水平に分断されている

 そこでこの映像送出と液晶表示のサイクルを見直し、1フレーム書き換わったタイミングで液晶側も更新をかけるというのがゲーミング液晶の付加価値のひとつである同期技術となる。言い換えればこれまでリフレッシュレートが固定だったものを可変レートにする訳だ。

 現在同期技術にはNVIDIA陣営の「G-SYNC」、AMD陣営の「FreeSync」の2種類があり、ゲーミング液晶側も製品ごとに対応・非対応が分かれている。

 まずG-SYNCはGeForce系ビデオカード(GTX 650Ti BOOSTより新しいもの)が必要なのでPC専用の同期技術だ。液晶内部に専用基板が必要なぶん製品が高価だが、高リフレッシュレート液晶での採用例が非常に多く、かつFreeSyncよりも低フレームレート時(30fpsまで)でもしっかり追従してくれるのでフレームレートが激しく変動する環境で威力を発揮する。DisplayPort接続が必須というのも大きなポイントだ。

 これに対しFreeSyncはRadeon系ビデオカードと組み合わせて使う。G-SYNCと違い専用回路が少ないため、低価格ゲーミング液晶を中心に採用例が多いが、反面高リフレッシュレートでの採用例は少ない。安価なFreeSync対応液晶だとリフレッシュレートが90Hz程度のものも珍しくないが、60Hzよりマシな程度なので劇的な効果は期待できないからだ。さらに低フレームレート時の追従性も45fpsまでと、G-SYNCにやや劣る。

 しかしFreeSyncはHDMI接続でも効果を発揮する、Xbox One Sにも対応するなどG-SYNCより制約面が緩い。PCのビデオカードの条件は公式情報を見て頂きたいが、G-SYNCに比べると複雑なのでこちらも注意だ。

 G-SYNCもFreeSyncは有効にすることでスタッターやティアリングが解消され、1ランク上の滑らかさが堪能できる。特にティアリングが発生しなくなるので画面の視認性も向上する。体験するまではわからないが、1度体験すると外したくなくなる付加機能といえる。

まとめ:全部入りはかなり高価。プレイスタイルやタイトルに応じて、必要な機能を絞っていこう

 4KでIPSで高リフレッシュレートでHDRで……とゲーミング液晶に欲しいスペックを全部盛り込んだ製品も存在するが、まだまだ高価で気軽に手を出せる製品ではない。だからこそ自分に最適なゲーミング液晶にたどり着くには、自分の環境や目的をしっかり決めておく必要がある。

 まずPCゲーム派は「勝ちを目指す」か「映像美を堪能する」かの2択だ。「勝ちを目指す」ならフルHDでよいので高リフレッシュレート液晶が必須。発色が良くても勝てるわけではないのでTNの方がコスパが良い。「映像美を堪能する」なら大型パネルで、PCがハイスペックなら4Kも視野にいれたい。IPSパネルかつHDR対応なら完璧だが、とりあえずはIPSで応答速度速めのものでも十分に映像美を堪能できるだろう。

 コンソール機の場合も似ているが、高リフレッシュレート液晶を考えなくてよいので選びやすいだろう。また、液晶テレビよりも入力端子が充実していたり、画質設定や色味の調整が細かく行なえたり、なにより同じ位のスペックの液晶テレビよりも安く購入できるというメリットもある。スペックそのものも解像度からパネルの種類まで、ゲームにより適したものを豊富なラインナップの中から自由に選べるので、快適でより楽しいゲームライフのため、是非ゲーミングモニターの導入をオススメしたい。

 液晶モニター選びの世界には、まだ細かい機能や用語が沢山あるが、ことゲーム目的ならここまでの用語をしっかり理解すれば"地雷"を踏む危険はぐっと下がる。ゲームを動かす本体が最新でも、黄ばんだ年代モノの液晶では台無し。最新ゲームをより楽しむために、モニターも新調してみてはいかがだろうか?

【今後レビュー予定のモデル】
4K HDRに対応し、31.5型の大型パネルを備えたBENQの「EW3270U」。スペック的にはPS4 ProやXbox One Xなど上位コンソール機でグラフィックスを堪能するのに向いたモデルだ(12月19日レビュー掲載!
144Hz対応、応答速度1ms、そして31.5型の湾曲液晶を採用したAOCの「C32G1/11」。こちらはFPSを始めとしたeスポーツタイトルに適性がある(12月26日レビュー掲載!