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曲面パネルで勝つ!! リフレッシュレート144Hz、応答速度1msのハイスペックモニターAOC「C32G1/11」レビュー
2018年12月26日 14:00
数年前に登場した曲面パネルを採用する液晶ディスプレイは、一見したところ"キワモノ"にも思えるが、実は近距離でディスプレイを使うPC用のパネルとしては非常に理にかなっている。とくにゲーム目的の場合、その没入感は非常に高く、ゲームの世界にダイブする感覚を味わえるのだ。
そんな曲面パネルの採用に加え、144Hzという高リフレッシュレートを誇るAOCのゲーミングモニター「G1」シリーズ。ラインナップとしては23.8インチ、27インチ、31.5インチの3つが用意されているが、今回は31.5インチサイズのパネルを採用した「C32G1/11」の実機を借りることができたので、使用感を含めたレビューを行なっていこう。
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ゲームへの没入感の高い大型湾曲パネルを採用
AOCは1967年に設立された台湾に本社を置くディスプレイメーカーだが、実はそのルーツはさらに古く、1934年にアメリカで設立された家電メーカーにまで遡る。現在では、アジア太平洋地域のディスプレイ市場で大きなシェアを握っており、日本市場への浸透も進み店頭で製品を見かけることも多くなった。
そのAOCから2018年12月に発売されたのが31.5型の大型曲面パネルを採用したゲーミングモニター、G1シリーズの「C32G1/11」だ。さて、まずは仕様を見ながらどんな製品なのかを紹介していこう。
項目 | 性能 |
---|---|
画面サイズ | 31.5型フルHD(1,920×1,080ドット) |
パネル方式 | VA(ノングレア) |
走査周波数 | 垂直:50~144Hz |
視野角 | 縦178°、横178° |
応答速度 | 1ms |
輝度 | 250cd/m2 |
コントラスト比 | 3000:1、80,000,000:1(スーパーハイコントラスト時) |
入力インターフェース | DisplayPort×1、HDMI×2、D-sub 15ピン×1 |
チルト角 | 上方23°、下方5° |
サイズ(W×D×H) | 713.11×244.86×530.34mm |
画面サイズは31.5型で、PC用としてはかなりの大型パネルを採用している。「C32G1/11」の大きな特徴として曲面パネルを採用しているため、画面が使用者を緩く包み込むような形状だ。パネルは解像度がフルHDで1,920×1,080ドット、VA方式を採用している。
VA方式とは液晶パネルの駆動方式のことで、市場ではTNやIPS方式などといった、ほかの駆動方式で動作するパネルも存在している。なかでもVA方式は正面から見た場合の引き締まった黒の表現が得意で、コントラストもTNやIPSに比べて高めに出せる傾向にある。
本機のコントラストも3,000:1と高めの数値となっているほか、視野角は178°。さらに曲面パネルは中央のユーザーに向けて画面が湾曲する作りになっているので、VAパネルが演出するコントラストの高い美しい映像を、視界一杯に楽しめる仕様となっている。
144Hzの高速リフレッシュレートに対応しているのも本製品の大きな特徴だ。リフレッシュレートというのは、画面の書き換えの速度のことで、144Hzの場合は、1秒間に144回の画面の書き換えができることになる。一般的な液晶ディスプレイは60Hz前後のリフレッシュレートで、本製品はその倍以上。詳しくは後述するが、リフレッシュレートが高くなることでよく”ヌルヌル”と表現されるような、滑らかな画面移動を堪能することができるのだ。加えて応答速度は1msと、残像感なくゲームプレイを楽しめるスペックを備えている。
本体の大きさは幅が713.11mm、奥行き244.6mm、高さが530.34mm。チルト機能を備えているので、画面を見る位置にあわせて上下の向きの微調整も可能となっている。
高リフレッシュレートの効果のほどは
では実際の使用感はどうなのだろうか。ここでは、「C32G1/11」をテストするため、CPUにIntel Core i7-5820K、GPUにNVIDIAのGeForce GTX 980を搭載したPCを用意した。また、実際にプレイするゲームは発売されて間もない「バトルフィールドV」だ。
「バトルフィールドV」は第二次世界大戦を舞台に、当時の武器や兵器を用いた戦闘が楽しめるFPSだ。シングルプレイのキャンペーンのほか、最大64人で大規模な戦闘を行なうマルチプレイモードもあり、日夜多くの戦いが繰り広げられている。この「バトルフィールドV」をプレイして、最初に高リフレッシュレートについて、チェックしていってみよう。
まず、人の目には残像と言う現象が起きるため、静止画の連続映像を見ることで、動いている絵、すなわち動画として認識することができるようになっている。一般的には30fps(frames per second)程度であれば普通に動画として認識することができ、60fpsでは激しいアクションを伴うゲームなどでもなめらかに画面が動くように感じることができる。これを超える144Hzの高リフレッシュレートではさらになめらかに動作するということになるが、実際60fpsとどれほど違うのか。結論から言うならまったく違う。
「バトルフィールドV」では、視点を短時間で大きく動しつつ、そんな中でも正確なエイム(敵に照準を合わせる動作のこと)を要求されることが多い。移動中にいきなり後方から攻撃を受けた際には、その方向へ振り返り索敵を行なう必要が生じるし、建造物の中のクリアリング(敵がいないかを確認するため、部屋の中などを見回すこと)では、素早く視点を動かしながら、敵の存在を確認したりする。目まぐるしく移動する画面の中にあっても、高リフレッシュレートの「C32G1/11」であれば、視点の移動中に目に入ったものを認識することができるようになる。このため、瞬間的な対応が適切に行なえるようになったのだ。
この効果は、画面が上下にスクロールするWebブラウザなどでも簡単に確認することができる。144Hz設定ではホイールなどで素早くスクロールしても流れていく情報がよく目に入るようになるので、結果的にスクロール中でも情報を認識することができ、スクロールをやめたいところでピタッと止めることができる。ゲームはもちろん普段のPCの操作でも効果を感じることができるので、どんな場面でもストレスなくPCを使うことができるようになるだろう。実際これは1度体験するともう戻れなくなるほど快適なので、是非1度体験してみていただきたい。
曲面パネルによる画面の端の情報認識
次に曲面パネルについてだが、やはり普段使っている平面のパネルとは感覚がかなり変わる。モニターを中央正面から見た場合、平面のモニターではモニターの中央部分と左右の端では多少とはいえ目との距離が変わってしまう。一方で曲面パネルの場合は頭部の位置にもよるが左右の端も目から均等の距離になるので、自然に視界の端の情報が目に入ってくる。
この効果も「バトルフィールドV」のプレイ中に顕著に感じることができる。というのも、画面の端で動く物体に気が付きやすくなったのだ。FPSはそのゲームの性質上、先に敵を発見した場合は大きなアドバンテージを得ることになる。このように索敵が重要になるゲームでは、画面の中心を見ながらも画面の端まで意識しておかなくてはならない。曲面パネルでは、この画面の端まで意識するということがしやすくなっている。具体的には遠距離からスナイパーに狙われているときには、スコープが太陽光を反射し小さく光るのだが、画面の隅でも遠距離のスナイパーなどに気が付きやすくなるという効果があった。
さらに言うなら、包み込まれるような曲面パネルによる没入感の向上も大きい。「C32G1/11」では31.5型の大型パネルと相まって視界全体がゲーム画面になるような妙な錯覚を覚えるほどだ。「バトルフィールドV」では特に戦闘機に搭乗した時の操作画面で効果を感じることができ、コクピット視点での空中戦をより楽しむことができた。見た目にはちょっとした湾曲でしかないが、その小さな湾曲から得られる効果は非常に大きい。
ちなみに、32型前後の大型パネルの中には4K解像度のディスプレイも多いが、本製品ではフルHDまでの対応となっている。もちろん高解像度化で情報量が増えることによるメリットは大きい。しかし、ゲーミングモニターとしては、フルHDで十分と考えることもできる。というのも高負荷のかかる3Dゲームは、4K解像度で高品位な描画設定を行なうとフレームレート(1秒間に描画できる回数)が大きく下がってしまう。4K解像度はHDやフルHDの4倍の情報量となってしまうため、非常に負荷が大きいのだ。
本製品の特徴でもある144Hzという高リフレッシュレートを活かすという意味では、140fps前後の描画性能を持ったPCを用意せねばならないが、現在のハイエンド環境でも4K解像度で140fpsを維持できないゲームタイトルも存在している。実際、今回のテストで利用した「バトルフィールドV」の場合、フルHDでも描画設定を落とさなければ140fps以上で動作させることはできなかった。
FPSにおいて最も基本かつ重要なのは「相手を視認した瞬間、的確に頭を撃ち抜くこと」、そして「高速かつ正確なクリアリング」だ。常に目まぐるしく視点を動かし、高速で動く視界のなかでも情報をきちんと伝えてくれる144Hzを現実的なPC環境で維持するためには、ある意味ではフルHDでがちょうどいいとも言える。そうした意味で「C32G1/11」はFPSを始めとしたeスポーツ競技向けのモニターとも言えるだろう。
そのほかの使い心地は?
ちなみに、「C32G1/11」には、ここまで紹介してきた曲面パネルや高リフレッシュレートのほかにも、ゲーミングモニターとしての機能がいくつか搭載されている。そのうちの1つが「Dial Point」と呼ばれる照準補助機能だ。これはディスプレイの中央にモニター側で照準を表示させるもので、主にFPSをプレイする際、画面の中央を捉えるのに役立つ機能となっている。FPSを始めたばかりの入門者にとってはめまぐるしく動く視界の中で画面の中央を捉えるのは中々難しかったりもするので、そうしたプレーヤーをサポートする機能と言えるだろう。
また、「Low Input Lag」と呼ばれるマウス操作などの入力遅延をカットする機能も用意されており、これは厳密にはフレームバッファをOFFにして入力遅延を無くす機能。実は筆者の環境ではリフレッシュレート144Hzで動作させることができなかったのが、約60/100HzではON/OFFを切り換えることができることを確認できた。個人的には正直目に見えるほどの違いを感じることはできなかったが、トップクラスのプレーヤーには違いがわかる機能となるかもしれない。このほか、画像調整のプリセットもゲーム向けに多数用意されており、ゲーマー向けの機能は充実していると言ってよいだろう。
さて、ここまではゲーミングモニターとしての使い心地について解説してきたが、一般的なディスプレイとして見た場合はどうだろうか。まずデザインだが、「C32G1/11」は薄型のベゼルを採用しており、上と左右はパネル部分の非表示部と合わせても8mmほどしかなく、非常にスマートだ。正面下部にはアクセントとなる赤いラインが施されており、OSDの操作ボタンは本体部分の底面右寄りに用意されている。OSDは画面下部に表示されるようになっており、大きく見やすい。ボタンもタッチタイプではなく物理的なボタンのためクリック感があり、反応も悪くない。
スタンド部分は逆V字形で、こちらもスマートなデザインだ。高さの調節やスイベル機能はないが上下のチルトができるため、1度設置してしまえばそれほど使い勝手に支障が出ることはないだろう。入力端子はDisplayPortが1つ、HDMIが2つのほか、Dsub 15ピンのVGA端子も備えている。HDMIが2つということで、PCのほかゲーム機などを複数接続して利用するのもいいだろう。
なお、スピーカーは搭載されていないため、HDMIやDisplayPort経由の音声出力には対応していない。ヘッドフォンを使ってゲームを楽しむことの多いゲーマーであればモニターのスピーカー機能は必要ないので、ここもまたゲーミングモニターとして特化しているようにも感じる。
大型曲面ディスプレイでゲームの世界に飛び込め!
144Hzという高リフレッシュレートへの対応、そして1msの高速応答に加え、曲面パネルの採用や薄型ベゼルによるスマートなデザインとバランスの良いスペックをもちながら、市場での価格は35,000円前後。スピーカーやUSBハブ機能などはあえて排除して価格を抑えている点もうれしいところで、お買い得感のある価格設定となっている。さらに31.5型という大型パネルでありながら、フルHDというちょうどよい解像度のチョイスも、勝ちにこだわるハードコアなゲーマー向けと言える。「C32G1/11」はそんなゲーマーたちの強い味方となってくれることだろう。
ちなみに、今回レビューに用いたのは31.5インチのモデルであったが、ほぼ同等の仕様で23.8インチ、27インチのモデルもラインナップされている。1番大きな31.5インチというサイズは没入感を味わうにはうってつけだが、やはり物理的なサイズも大きくなるので、机のスペースなどの使用環境や設置環境による目との距離、あるいは予算にあわせて23.8、27インチのモデルを検討するのもよいだろう。いずれも曲面モニターの没入感と高リフレッシュレートによる"ヌルヌル"感は、1度使用したら病みつきになること請け合いだ。
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