インタビュー
さらば、セガ3D復刻プロジェクト!
「ザ・スーパー忍II」が集大成だとすると、「ベア・ナックル」はネクストレベル
(2013/8/21 00:00)
「ザ・スーパー忍II」が集大成だとすると、「ベア・ナックル」はネクストレベル
奥成氏:せっかくですから今回、3D立体視化した際の裏話で面白いエピソードもいくつかご紹介します。まずは、3面です。恐らく3DSで立体視で遊んでいたら何の違和感もないと思いますが、実はギガドライブで初めて、メガドライブ版のオリジナルと同一ではなくなりました。
堀井氏:海のプライオリティ(優先度)ですね。
奥成氏:オリジナル版では、海の波のアニメーションが1番手前にあって、プレーヤーが海に足を踏み入れると、波に隠れていたんですよ。それを立体視に対応させるとおかしなことになってしまったんですよ。そのままではパースを付けられなくて、垂直に立っている波が上下に移動するんです(笑)。今回は3Dにしたときを基準にしているので、思い切ってプライオリティを変えました。おかげで波がアニメーションしたまま、パースをつけることができています。ですから、このシーンを2Dに戻すと、オリジナルとプライオリティが変わってしまっています。
堀井氏:Zバッファ(3DCGで物体を描画する際、表面の深度情報を保存することで、物体同士の深度をピクセル単位で計って描画できる)みたいに、ドット単位で深度を持てればね……。
――そこまで行くとまたまた別の次元ですね。
奥成氏:それと、当初から「ベア1なら(3D立体視化は)いけるよね」って言っていた僕も1つだけ、こっそりと「たぶんあそこでは苦労するだろうな」って思っていたのが7面です。7面はエレベーターのシーンなんですが、ここの3D化こそ今までの集大成の先の部分の典型です。
堀井氏:エレベーターの形といい、背景といい……どうなってるんだと……やれるところまでやりました。
奥成氏:……この7面が立体視に対応できたので、この先も力技でできる目処は……(笑)。
堀井氏:そうかもしれないけど……。
奥成氏:ここは最後まで全然見た目どおりにならなくて、本当に苦労しました。エムツーさんがですが。
――オリジナルを制作しているときは、まさかこれが3D立体視に対応するなんて、考えられるわけがないですものね。
奥成氏:「ソニック」や「ザ・スーパー忍II」もそういうものなんですけれどもね。
堀井氏:上に上っていく最中も背景がどんどん見え方が変わっていくので……。
――しかも、敵を投げ飛ばしちゃうと、いい意味でついていたウソが立体視になると速攻でバレるという(笑)。
堀井氏:そうなんですよ。
奥成氏:それでも最終的には、見た目どおりの立体視ができるようになっていると思うのですが。
――ホントに違和感なく立体視できてますよ。すごい(笑)。何回見ても面白い。上に移動したとき、左の壁の部分も位置関係がおかしくなってウソが見えちゃうから……これはすごく大変だ。オリジナルの時には考えられなかったところでえらい目にあってますね。
奥成氏:左側の壁のところと、ゴンドラのところの部分のパースの違いが、立体視化するとおかしなことになるんですね。
――今、7面スペシャルアタックを使ってみたんですが、このシーンもちゃんと立体視に対応してるんですね(笑)。
奥成氏:はい。もちろんです。そういうことをやってたおかげで他の面もどんどん凝り出してきて、5面も最初は遠景1枚だったんですが……。
――船の窓から見える風景とかもきちんと立体になっているんですね。たまらんわー。これもう、600円でいいんですかね? という作りこみですね。
堀井氏:とはいえ、初代「ベア・ナックル」ですし。
――これ、本当にギガドライブも2.0でまかなえているんですか? 計算コストなども。
堀井氏:可能な限り大丈夫なようにしながら……ですね。
奥成氏:きりがないのですが最後にもう1つ、ここも1つハマッたところなんですが、6面のプレス機のところ、パースがやはり3Dにするとおかしなことになっていて……苦労しましたね。
堀井氏:ここは矛盾が出まくりましたね。当初考えていた以上に、3D化する時に何をすればいいのかがわかったことが多いので、「これをやればよくなる」、「あれをやればよくなる」ということがどんどん出てきて……。奥成さんも日々出来上がったものに対してコメントを下さるので、「ここをこうしたらどうですか?」と言われるとやっぱり「ああ、そうだな」となりますしね。
――毎回お話を伺っていると、本当にムチャなことをしているなと。
堀井氏:そのムチャが面白いんで……。時間が無尽蔵にあればなー。
奥成氏:時間が無尽蔵にあったら、エムツーさんが倒産しちゃいますよ(笑)。
堀井氏:そうか……お金も無尽蔵にあったらなー(笑)。
――それにしても、ギガドライブタイトルのリリースペースは早いですね。
堀井氏:ベースになるハードウェアは大きく変わらないので、コントロール系が毎回変わったりしないですからね。
奥成氏:ギガドライブというアーキテクチャーをエムツーさんが作ってくれて、そこの立体視に対して注力してくれているんですよね。
堀井氏:立体視用の人員を投入することで、並走もできちゃうので。その立体視を付ける人のクセというか、好みも出るような感じになるようになってきたので、見ていて面白いですね。
――単に立体視に対応させる、というだけではないし、ベルトフロアもこうして実現できていて……。
奥成氏:下地を作るのにすごく苦労しましたからね。ギガドライブを作るまでが大変だった。メガドライブを3DSで動かすまでが1番大変で、それを作る場所としてのギガドライブを作ったところが次に大変で……あとは作り手のセンスで作れるような環境だったので……手間の部分というのは、タイトルを重ねていくことで効率化できてきた、ということだと思いますね。
――どんどん、とんちみたいな感じになってきますね。
堀井氏:「ベア・ナックル」はとんちの部分が多い感じがします。
奥成氏:「ザ・スーパー忍II」まではスクロールの技術部分に立体視の工夫と苦労が多かったんですが、「ベア・ナックル」に関しては、ゲームの中身全部が「ソニック」の木であり、工事の看板であり、それでゲームが進行しているということで、その絵を本当に3Dに対応させることですね。完成形は最初におぼろげに見えているんですけれども、それが実際に動くまで、というのが縁の下の話で。
――わかりやすさで言えば、確かに多重スクロール部分が立体視に対応できたら、それが1番わかりやすいんでしょうが、「ベア・ナックル」は、「もともとがパースの付いた絵なんだから、それを立体に起こせばいいのでは?」と考えてしまいがちです。でも実際にやるとなると……。
堀井氏:メガドライブの頃は、メモリ使用量を削る理由もあって、絵的に破綻していても、それらしく見えていればOK、という部分がいっぱいあるので、そこが厳しいですね。
――背景をまず立体に起こした段階で、キャラクターとの矛盾が出てきて、それを解消するだけでも結構な労力なんですね。
堀井氏:そうです。
――なんて言ったらいいのか……特撮でいうところの「あれ? これ、アップ用のミニチュアだよね? パース狂ってるけど……迫力あるし、いっか!」というところが立体になったとたん、「やっぱり違和感が……」というところを1つずつ直していったと。。
堀井氏:その「特撮」という例えがぴったり来るところですね。
奥成氏:「ザ・スーパー忍II」が集大成だとすると、「ベア・ナックル」はネクストレベル。次の次元になっています。