インタビュー
「3D スペースハリアー」インタビュー延長戦!
「セガ 3D復刻プロジェクト」の今後や追加要素について聞く
(2012/12/28 00:00)
セガは、ニンテンドー3DS用配信タイトル「3D スペースハリアー」を12月26日に配信開始した。価格は600円。前回のインタビュー記事で「そろそろお時間が……」という話できれいに終わったように見えるインタビューだが、ある要素に関するお話を別途伺いたく、急遽別の会議室を押さえてもらっての延長戦となった。ネタバレ要素を含むため、ぜひプレイされてから、お楽しみいただきたい。
メニュー画面の筐体にまでエピソードが……!
――さて、まだまだお話がありそうですが……。
堀井氏:メニュー画面の「スペースハリアー」の筐体は、本当はARで「俺の部屋に『スペースハリアー』の筐体を置いてやる」的なものを作りたかったんですが……。
奥成氏:全然時間無かったですね(笑)。なおメニュー画面の筐体モデルの制作にあたっては、会社に3面(前、後、横)から撮影したものがなかったんですよ。3面図の設計図はあると思いますし、一方からの写真はあるんですけれども、裏は無かった。そこで昔、「ドリマガ」さんがこの筐体のペーパークラフトを作ったことがあって、あれをプレイステーション 2の「スペースハリアーII」のマニュアルに写真を入れたいというので、その際にペーパークラフトを作成するための資料写真をお借りしたことがあったので今回も重宝させていただきました。梅田さんありがとう(笑)。
……でも、実はペーパークラフトと今回のメニュー画面の筐体は違うところがあるんです。どこだかわかりますか? 回ってるからわかりにくいかな?
――えーどこだろう……?
奥成氏:座席の後ろの排気口のようなところが、ペーパークラフトで使われた永久保管筐体のものは白くなっているのですが、実機はそこにはライトがあって、赤く点滅してるんですね。永久保管の筐体が初期ロットなのか、プロトタイプなのか、ともかくプリプロ的なものだったようで、中央にライトがあって。あとはモニタの下にあるゲーム説明プレートも永久保管の奴には無かったので、後から気付いてM2さんに描き加えてもらいました。
ペーパークラフトだけでなくUFOキャッチャーの景品で「スペハリ」の筐体を作ったことがあるんですけれども、そちらも白いバージョンでした。でも現存するゲームセンターに足を運んで撮影させてもらって、見比べたときに「違う」と。今回のメニュー画面に登場する筐体も1度作ったものを直してもらいました。写真で2Dで見ているとあまり気がつかないのですが、3Dにするとモールドの違いが結構はっきりわかりましたね。
――まだこんな話があったんですね(笑)。どこまでこだわってるんですか(笑)。
奥成氏:操作系に関しても少しお話ししましょうか。スライドパッドだと、アーケードライクに手を離すとセンターに戻る仕様で、十字ボタンだと、家庭用ライクにボタンから指を離してもハリアーの位置はそのまま変わらないようになっています。今までの移植版と同じですが。アーケード版でプレイされてきた方々にはセンターに戻ってこその「スペースハリアー」ですが、家庭用タイトルでプレイされてきた方はそうではないので。それと、今回はタッチスクリーンでのプレイにも対応しています。
――スライドパッド、十字ボタンが同時に認識されていて、すぐに切り替えられるのはありがたいです。連射も対応してますね。タッチスクリーンでのプレイも意外とやりやすい。
奥成氏:移動のノーマル/リバースも切り替えられますし、連射も3段階で切り替えられます。Bボタンで連射になりますし。タッチスクリーンではタッチしている間に連射します。M2さんの力作です。
ついに出た!? アーケードスタイルの「HAYA OH」
奥成氏:最後に、せっかくなので本作の追加要素についてもお話しましょうか。
――え?
堀井氏:セガ・マークIII版「スペースハリアー」に登場していた最終ボス「HAYA OH」をアーケードスタイルで追加してみました。頑張ったプレーヤーさんへのご褒美ということで。曲もアーケード音源で鳴らしたものを入れています。遊んでびっくりしてもらいたいですね。
――それって先ほど(前回の記事参照)「追加した曲」とおっしゃっていたのはこれのことだったんですね!
堀井氏:そこも相当最後までチェック入れてましたね。
奥成氏:オリジナルよりも派手な登場はしないのですが……でも、「アーケード版ベースの移植だと『HAYA OH』は出ないんだよね」というのが「スペハリ」マニアのお約束だったじゃないですか。そこは僕もM2さんも「なんとかしたいな、でもできない」って思っていたんですが、今回は「でもやるよね」と。
堀井氏:それやらなかったら去年にリリースできていたのかも……うそ(一同笑)。入りましたね。
奥成氏:1年ぶつぶつ言い続けていると、こういうこともあるんだなと。
堀井氏:元のプログラム(アーケード版)に即した形で作っています。「スケイラ」や「ゴダーニ」のプログラムをいじくり倒して、「HAYA OH」が動いていると。原作のプログラムの上で動く「HAYA OH」が動いているんだ、という風に見てもらえると、より感慨深いのではないかと。アーケード版の基板でもこの「HAYA OH」が動かせたりするんじゃないかなと。そういうレベルで作ってます。
奥成氏:編曲は並木さんなんですか?
堀井氏:編曲は、メインプログラマの齊藤(彰良)氏(※)が作っていて、それを見ていた並木さんが「ここはこう、ここはこう」ってやっていて。知っている人が聞くと、「ああ、こんなタッグが!」と思ってもらえる2人がちまちまやってました。
――それは喜ぶ人が多そうな話題ですね。
奥成氏:今回、「3D スペースハリアー」では、PS2の「スペースハリアーII」やWiiのバーチャルコンソール版とは仕様を変えて、プレイにある程度緊張感を持ってもらいたかったので、無限コンティニューをやめているんですよね。なので、出現条件としては、残機や難易度調整も変更してもらってかまわないので、ステージ1からスタートして、3回のコンティニューはすべて使ってでも、ステージ18を最後まで進めていただければ出現します。
それから、クリアしたステージまでのステージセレクトも付いているのですが、18面からスタートして、ノーミスで「バルダ」まで倒してもらえれば、その後出現します。
なお、「HAYA OH」を倒すと、メニューに「スペシャル」の項目が追加されます。これをOFFにしてもらえれば、条件を満たしても「HAYA OH」が登場しなくなり、3回までだったコンティニュー回数に制限が無くなります。アーケードライクになるわけですね。
――さらに個人的にも楽しみな追加要素です。
※齊藤彰良氏……M2所属のプログラマ。過去にmokimoki齊藤として、X68000用のSCM(音源ドライバ)などの制作に関わる
「セガ 3D復刻プロジェクト」の今後はどうなる?
――この「セガ 3D復刻プロジェクト」、今後も続けていくんでしょうか?
奥成氏:まずは「3D スペースハリアー」の反響次第というところですが、今回、「スペースハリアー」がいい感じに3Dになったので、この路線は引き続き開発していきます。「あのゲームは出るだろうな」といろいろ想像していただいているので、そのうちいくつかは実現したいとは思っているんですが、「え? このゲームまで3Dにしちゃうの?」というものも含めて、反響を見たいかなという風に考えています。
ただし、3D化に関しては、ここまでお話してきたように「バーチャルコンソール」に比べて作る労力がハンパないので、苦労しています。そういう意味で言うと、PS2のときの労力に近い感じなんです。「バーチャルコンソール」の「ゲームギア」もそうですが、今後何本続けていけるかは、皆さんの反響次第で、できればどこまでも伸ばせていけたらな、と思っています。
「セガ 3D復刻プロジェクト」の開発のスタートは3DSの「バーチャルコンソール」の時と同じ時期なんですね。「ゲームギア」も今年の3月にリリースして、「3D スペースハリアー」がリリースまでの間に「バーチャルコンソール」のゲームギアタイトルは10本以上出せました。来年も3DSでは、「セガ 3D復刻プロジェクト」と「バーチャルコンソール」をともに頑張っていきたいと思います。
堀井氏:今後も、勝手に(笑)じゃかすか3Dにして、採算が合いそうなものをかいつまんでリリースしていただければ、僕は幸いだと思っております。本当に皆さんが「3Dにすると面白そうだ」と思うものは、そこをうまく実現できる形で世の中に出していきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。
――今後、3D化に関しても、作を重ねていくことで効率が上がっていく目処は立っているのですか?
堀井氏:共通アーキテクチャを作って移植していくことで、ペースは上がっていくと思います。あとはソフトの良し悪しになりますね。
奥成氏:タイトルによっては「3Dにしたら絶対面白そう」というタイトルも、そのまま持ってくると3D絵としては破綻するので、3Dにするにあたっては、「目コピー」にしたほうがいい、というものも出てくると思います。そこをどういう風にやれば効率的なのか、という話をしたりしてます。ただ、とにかくいくつか複数のタイトルを続けて出したいと思っているので、「スペハリ」1本では終わらないです。
堀井氏:中にはすごく支持が厚くて、「共用アーキテクチャなしの1本でもやろうよ」というものもあったりするかもしれないので、その時は手間暇かけてやりたいとは思いますね。
――そうなると、値段付けの部分とか、やっぱり難しいですよね。
奥成氏:とはいえ「スペースハリアー」は「スペースハリアー」なんで、既存のバーチャルコンソールの価格とあまり大きな差は作れないですからね。今回も「俺たちは何度『スペースハリアー』を買うんだろう」と語られている人たちがいらっしゃいましたが、「3D スペースハリアー」は3Dになって「過去の移植タイトルとは違う」というところがすごく伝わるタイトルになっていると思うので、とにかく1度プレイしていただきたいです。
堀井氏:そうですね。
奥成氏:今後もよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
(C)SEGA