インタビュー
西和彦、次世代MSXプロジェクト第1弾MSX0のすべてを語る
学生時代からMSXプロジェクトの未来まで。当時のカシオの値下げやX68000 Zも語った
2023年1月30日 00:00
- 【MSX0 Stack】
- 2023年7月リターン開始予定
- 価格:29,999円より
GAME Watchでは、西和彦氏が進めている次世代MSXプロジェクトに注目しており、これまでに複数回、次世代MSXプロジェクトに関する記事を掲載した。2023年1月15日に、MSX0 Stackのクラウドファンディングが始まり、順調な滑り出しを見せている。
西氏は、Twitterや公式サイトで時折、次世代MSXプロジェクトについての情報を明らかにしており、筆者がこれまでに執筆した記事も、基本的にそれらの公知情報をベースにしたものだ。より詳しい記事を書くためにも、西氏に直接インタビューして話を聞きたいと編集部と相談していたところ、西氏のほうから「インタビューを受けてもいい」というお声がけをいただき、インタビューに漕ぎつけることができた。
MSX0 Stackのクラウドファンディングは3月末が締め切りだが、1月26日時点で目標額の72%に到達し、支援者数は1,200人を超えている。すでに支援したという方も多いだろうが、支援するかどうか決めかねている人もいるだろう。西氏とのインタビューによって、これまで明らかにされていなかったMSX0に関する最新情報を多数知ることができた。クラウドファンディングの支援を迷っている人も、本記事を参考にしていただければ幸いだ。
Microsoftと一緒にMSXを開発
――西さんは、PC/ITライターを30年以上やってきた私にとっては、伝説的な方ですが、若い世代は西さんのことをあまり知らない方もいると思うので、MSXとの関わりを中心に、簡単に今までのご経歴を教えてください。
西氏: いつからスタートするのがいいのかっていうと、大学に入ったとこからでしょうね。1975年に早稲田の理工学部に入りました。それで大学に8年間いたんですけど、その途中、1978年に会社を始めてそれがアスキーです。出版とソフトとシステム開発、半導体、 それからパソコン通信、教育、そんなことを色々やってたわけですね。
そのアスキーの事業の中で私が社長になる前は、Microsoft事業というか、Microsoftの代理店のアスキーマイクロソフトというのをやっていました。やってるうちに深みにはまってアメリカに行きっぱなしになって、Microsoftの副社長になって、営業担当副社長、企画担当副社長、新技術担当になって、それでMicrosoftの役員になる。当時のナンバースリーですね。ビル・ゲイツ、ポール・アレン、そして僕っていう、そんな感じになったわけです。
西氏: それでMicrosoftで色々やったんですが、1番大きかったのはやっぱりIBM PC関連だと思うんですね。MS-DOSを作って、BASIC作って、アセンブラ作って、FORTRAN作って、COBOL作ってみたいな。その昔のコンピューターの世界をIBMのパソコンの上で全部実現しようとした。そのうちいわゆるWindowsみたいなものがいるということで、Windowsのプロジェクトにも関わってたんです。
それで、Microsoftにいる時にやったのがMSXです。IBMが16ビットのパソコンを作ったわけです。発表してみたら大成功で、16ビットがこれで決まりっていう感じになったんです。じゃあ、8ビット(の市場)はもうないのかって、8ビットはまだあると、まだあるんだったらその決定版をやろうと、それがMSXです。
最初から、MSXには16ビットという考えはなかったんです。IBMのパソコンと競合するようなMSXはやめよう。だけど、IBMのパソコンの下にね、8ビットでまだまだ軽いビジネスはできたわけです。軽いビジネスはできたし、ワープロなんかもできたし、ゲームもできたし、Microsoftはねゲーム屋じゃなかったんです。今は、ゲーム屋だけど。
――そうですね。今はXboxを展開して、色々ソフトハウスも買収して、「Halo」や「Minecraft」など人気タイトルもたくさんありますね。
西氏: そう。ただ、我々は任天堂みたいにね。ソフトの生産もして、全額買い取って自分のところの営業成績に組み入れて売るっていうことではなくて、ソフトはどうぞ自分で勝手にやってくださいっていう、そういうビジネスモデルだったんですね。それで1983年からMSXをやってて、1985年にアスキーとMicrosoftの提携を解消したわけですね。
解消した時に、MSXを作ったのは日本だから、ビル・ゲイツのBASICインタープリターは使ってるんですけど、日本が作ったからアスキーが引き取るということで、引き取ってきたわけです。引き取ってきてから、色々やった。まず、MSX2をやりました。実はこのMSX2が最初のMSXのスペックだったんです。
だけど、MSX2をいきなり発表して、それでうまくいくのかって言ったら、いやいや、そうじゃないと。ソフトメーカーにソフトを作り始めてもらわなきゃいけないと。そのためにMSX1っていわれる、有り物のTI(Texas Instruments)のチップとGI(General Instrument)のオーディオとそれからZ80と。そういうものでシステムを組んでですね。同じようなシステムたくさんあったから。例えば、TIが990/4っていう、ホームコンピューターを出してたんですね。それからソードはTI 9918っていうやつを使って、あとZ80を使って“おもちゃ”を出してたわけですね。
――M5ですよね。
西氏: そうです。MSXはそのM5をパクっただろうって、僕なんか言われてるんです。だけどね、中を見たら、誰も僕がM5をパクったなんて言えるはずがないんですよ、ソフト屋が言ってるわけ。そのM5とMSXの決定的な違いは何かって言ったらね。今で言うI/Oスロットなんです。プラグ&プレイうんぬんをI/Oスロットは実現してた。そのI/OデバイスとかROMとかを繋ぐでしょ。そうすると、そのハードが繋がるだけじゃなくて、そのソフトウェアのドライバーも組み込んで動くっていうアーキテクチャーだったんですね。
――それは当時としてはかなり先進的ですね。
西氏: 非常にユニークだったな。我々当時はそんなに、すごいもんとは思ってなかったけど、今になって見てみたらね、大変よくできたものだったと思ってるんですね。だけど、そのIBM PCが上にあるから。最初から8ビットでいこうという、そんな感じになった。だからMSXもね、第何世代っていうことで切るならば、MSXのあの第1世代がMSX1ですけど、第2世代はMSX2です。MSX2+っていうのがありますけど、MSX2+は、世界中のテレビ方式に追従するという目的で、だから、プラスなんですね。
その次にMSX3をやろうとしたんです。だけど、それがうまくいかなかった。そんなことで、アスキーに僕が戻ってきて、それでMSXを自前でやるということで、CPUの開発とグラフィックスチップの開発と、オーディオチップはヤマハがやってましたから。そんなことやってたわけですね。その後どうしたかというと、アスキーが上場して、それでお金もたっぷり来て、CPUの開発をしっかりやろうってことでVMテクノロジーという会社をZ80を作った嶋正利を引っ張り込んで始めた。もっと高速の32ビット、64ビットのCPUをやろうということで、ネクスジェンマイクロシステムというところにお金を出資したり、 融資したりするんですね。これは最後にAMDと合併して、AMDのAthlonとかOpteronになった。それをやった。
そのあと、アスキーがCSKに出資してもらっていろんなことがあって、僕はアスキーをやめて大学で教えるようになった。大学で教えるようになったのが、ちょうど2000年で僕が44の時で、それから60手前まで大学にずっといたわけですね。それでまあ60になる前にね。自分はこのまま大学人で終わるのかと思ったわけです。定年70だから、大学と自由業との掛け持ちをずっとやってたわけですね。いや、もう1回やるんだと。もう1回。ハードウェア、ソフトウェアのエンジニアに戻って、色々やってみるということで、その大学を辞めて、東大でIoTメディアラボをやるという提案をしてそれが決まって、そのIoTメディアラボでやってたことがIoTだったわけですよ。あと、メディア。メディアについてはデジタルオーディオ、デジタルビデオをやってたんです。
ただ、それを東大から持って出たっていうのは、65歳が定年だからですね。それを持って出て、NPO法人を作ったわけです。東大にIoTメディアラボを残すという選択もあったけど、そうすると僕はもう定年だから、関われないわけですね。だから、そうじゃなくて、みんなごっそり連れて、また外でNPO法人でやろうって。株式会社じゃなくてね、株式会社だとどうしても出資を仰いで儲けて出資者に返すっていうことになりますが、研究って出資してもらってやるもんじゃない。だから、そういう感じでここに来たという。だから、今回のMSX3っていうか、3世代目のMSXプロジェクトというのは、その東大の研究をベースにしてます。IoTをターゲットにしたMSX0と、いわゆるメディアコンピューターのMSX3と、スーパーコンピューターのMSX turbo、この3つがあります。
直ちにやらなくてはいけないのがMSX0
――次世代MSXプロジェクトには、MSX0とMSX3とMSX turboと大きく3つの柱がありますが、西さんはどれが1番重要だと考えているのですか?
西氏: 直ちにやらなきゃいけないのはMSX0だなと思ってます。
――順番としてはまずMSX0。
西氏: それはもうIoTね、昔ね、ユビキタスコンピューティングって呼ばれたことあったけど、ユビキタスコンピューティングはみんなが大騒ぎしたけど、流行らなかった。
――まあ、TRON(坂村健氏が中心になって開発された日本製OS)とかも一時期騒がれましたけど、結局そんなに流行りませんでしたね。μITRONとか携帯電話のベースになったのは知ってますけれど。
西氏: その技術が残ってるといわれる携帯も、今のスマホの中身はAndroidだったりする。だから、マスコミが騒ぐということと、実際に使われてるってことは全く別だということではないかと僕は思う。
それでね、さしあたって大切なのは、IoTだと私は思っている。そのMSX3をやらないとか、そういうことじゃなくてね。スーパーコンピューターのMSX turboもやらないってことじゃなくて、それもやります。
――先ほどの話だと、世代的にはの今の次世代MSXプロジェクト、特にMSX3とかが、MSXの世代でいうと第3世代みたいなイメージになるんですね。
西氏: まあ、第3世代。その上に上がっていくという意味の第3世代と横に広がっていく第3世代があると。
IoTを定義する「エッジ」「インターネットコネクション」「クラウド」の3要素
――今回は、クラウドファンディングも始まってるので、その中でも特にMSX0について訊こうと思っています。MSX3やMSX turboについてはまた機会がありましたら、またお話しを訊きたいと思います。そのMSX0なんですが、IoTのためとおっしゃってましたけど、西さんが定義するIoTとは何ですか?
西氏: IoTを定義する要素は3つあって、1つは機械ですよね。エッジって言ってますけど、エッジはコンピューターとセンサーに分かれるわけですね。それから、2つめがインターネットコネクションで、これは色々ある。Wi-Fiもあるし、Bluetoothもあるし、それからLTEもあるし、そのLoRaWanもあるし、PoEもある。そのインターネットに繋がんなきゃいけないってことですよね。あと、3つ目はクラウドです。ユビキタスの場合はクラウドがなかった。
――そういう意味ではMSX0はその3つをちゃんと満たせるものとして、開発されてるという。
西氏: もちろん。そういうことがどうしてわかったかっていったら、それは東大でIoTメディアラボをずっとやって、授業やって、大学生とか大学院生と色々やってたという、それが大きかったような感じがします。
――なるほど。今、MSX0のクラウドファンディングも始まりました。MSX2+までのエミュレーターが動くということで、ゲーム機的に考えてる人もいるとは思うんですけど、西さんはどういう層がMSX0 Stackの主なターゲットと考えていますか。
西氏: まずですね、なぜクラウドファンディングしなきゃいけなかったかということですが、香港にMSX0の注文をしようとしたら、最低注文数が1000個だと言われたわけです。 1000個分のお金を前払いしないとダメなんですね。そうすると、数千万円になるわけです。そんなお金ないから(笑)。クラウドファンディングで資金を集めて、香港にお金を送って作ってもらってやろうという、そんな感じ。
電子工作が好きな人がMSX0のメインターゲット
――MSX0の想定しているコアユーザーみたいなのってありますか?
西氏: やっぱり電子工作が好きな人がメインターゲットです。
――やっぱりそのGroveセンサー繋いでとかですか?
西氏: そうです。
――私は1970年生まれなんですが、「初歩のラジオ」とか「ラジオの製作」とかを読んできて、それこそTK-80を見て憧れて、PC-8001、6001とかずっと使ってきて、もちろんMSXも使ってました。そのあとはPC-8801とかPC-9801とか、DOS/Vとかをずっと使ってきていて、元々PC/ITのライターなので。アスキーさんの媒体にも書かせていただいたことも結構ありますし。ソフトバンクとかずっと雑誌に原稿を書いてきて、今はインプレスとか、こういう感じなんですけれど。なので、ちょうどそのマイコン、パソコンが面白かった時代、8ビットのMZもあったりとか、FM-7/8もあってとかいう時代が中高生のときだったので。はんだ付けとか、電子工作も好きでした。
西氏: その半分ぐらいはね、ハードが好きな人なんですよ。あとの半分はソフト好きな人なんですよ。ところが、今ハードはね、どんどんどんどん見えなくなっている。
――そうですね、高度化、ブラックスボックス化してきてますよね。
西氏: 高度化しすぎてるというのは事実ですけど、ハードを見せないようにしている。いわゆるソフトインターフェースなんですね。Raspberry Piね。どのCPUが入ってて、どこにどんなハードが繋がってるかっていうね、いわゆるシステムバスね。オープンになってないでしょ。
SoCはシステムが閉じてるんですよ。何が載ってるかって言ったらOSが乗ってて、OSの上に言語が載ってて、それもLinuxで、そのハードウェアは見えないんで。ハードウェアは見えなくていいのかって言ったら、いや、使うことに関しては、別にハードウェアなんか見えなくてもいいんだって話だけど、ハードが分かんないから、ハードを作れないんです。
今の日本でRaspberry Piと付き合って、ハードのこと勉強できますかっていうと、勉強できません。それがいるんじゃないかと僕は思うわけ。ソフトを作る人だけが我が物顔に、威張ってるわけです。ハードのことを知りたい人がたくさんいると思う。僕はそれがしたい。
これがクラウドファンディングのデータなんですが(40代が45%、50代が40%)、嬉しいのはね、40代っていう低い年齢層に反応があることで、これ何かって言ったら 色々やりたい、ハードやりたい人です。うん、間違いなく。
――そうですね、40代って言っても、40そこそこだとリアルタイムにMSX世代ではないですよね。
西氏: それでね、ゲームやる人はね、何してんのかって言ったらね、ゲームやる人はね、WindowsとMacとXboxとPlayStationとSwitchとSteamやってんですよ。この6台でゲームみんなやってる。だから、MSXでわざわざゲームやってるっていう人はね、ユニークな人だと思います。
――もちろん昔のファミコンとか、スーパーファミコンとかのゲームをレトロゲームと言って、愛好するファンもいるんですけど、それは確かにマイノリティというか、特別なマニアだと思うので。
西氏: ゲームをやらないというつもりはないんだけど、やっぱりMSX0の本流はIoTです。
MSX0 Stackは、単なるM5Stack Core2+M5FacesIIではない
――今クラウドファンディングで展開されているMSX0 Stackは、そのハードウェアとしては、M5StackのM5FacesIIとか、M5Stack Core2をベースにしてて特に変わりがないと考えていいんですか。
西氏: ちょっと変わってます。最初はね、ハードとソフトと一体で売ると、どういうところが変わっているかって言ったらね、その普通にやるとこんな感じなんですよ、それで実はね、このカードスロットがこうなってんの。
――ああ、装着すると内側になってカードの交換ができないんですね。
西氏: だから、向きをね、こうしなきゃいけないの。この向きを回転させる改造をやるんです。ちょっと色々変わるんです。2月末に到着する試作品はこのままなんですが、6月末に到着するクラウドファンディング用の量産品では改造後の仕様になります。これがGroveセンサーで、10個つきます。こちらは20個、これが40個。
――おお、大きいですね。
西氏: すごいよね。
――40個もあればかなりいろんなことできそうですよね、これ、センサーもあるし、いわゆるアクチュエーターも含んでますよね。
西氏: でね、一般の人に。こういうI/Oをコンピューターに繋ぐということに興味を持ってもらって。今はね、Raspberry PiやArduino、Cでやってるわけ。ちょちょいのちょいでできるやんけとかいうソフト屋さんもいるけど、ほとんどの人はね、ちょちょいのちょいでできないんですよ。
――やっぱり難しいですよね。CとかってBASICに比べると、とっつきにくい部分はありますよね。大規模なプログラムとかだとやはりCのほうがいいと思いますが。
西氏: 問題はね。コンパイラーであるってこと、インタープリターじゃなきゃいかん。キーボードで入力して、リターンしたら実行できるという。だから、そういうこともあってね。まあ、Pythonなんかは、インタープリターだからいいんだけどね。数式でいろんなことを表わせる。BASICでこういうI/Oが使えるということを目指しているわけ。
――なるほど。そういう意味では、やっぱりBASICでIoTができるっていうのがMSX0の大きなメリットで、他にはないですね。あと、一応BASICコンパイラもあるんですよね。
西氏: コンパイラもバンドルします。だから、コンパイルするとね、20倍から40倍速くなる。
エミュレーターのパフォーマンスは実機とほぼ同等
――互換性としては、MSX2+までサポートし、エミュレートするということですよね。M5StackのESP32でMSXエミュレーターを動かしてるわけですが、実機と比べた時のパフォーマンスがどこまで出てるんですか?
西氏: Z80A/4MHzくらいに相当する感じです。
――では、実機(Z80A/3.579545MHz)とそんなに変わらないですかね。もちろん、MSX3だと全然速いのは分かりますが。
西氏: MSX3はね、クロックで700MHzですから。
――MSX3は、実機の200倍くらい速いとかですよね。MSX0 Stackは、ほぼ実機と変わらないぐらいの速度が出てるってことですね。
西氏: そうです。MSX3でコンパイラを使うと、2000倍速くなります。
――それはすごいですね。あと、MSX0 Stackですが、Groveセンサーを付けられたりとか、液晶自体もタッチスクリーンになってたりしますが、そういう要素って、元のMSXには当然ないですよね。その辺を使うために、BASICにどういう拡張をするのでしょうか?
西氏: それはですね、どういう風にするのが1番使いやすいのかっていうことを、これから考えていこうっていう感じ。拡張しすぎたらどうなるか。昔のMSX1とか、MSX2とかMSX2+がみんな死んじゃうんですよ
――そこは難しいところですよね。
西氏: だから、その互換性っていうのがものすごい大切なんです。互感性を大切にしようということで、やりすぎの改造は良くないんじゃないか。その互換性と進歩性のトレードオフをどう考えるのかっていうのが、大きなテーマですよね。
――クラウドファンディングで、7月から基本的にはリターンが入って、その時点で、その辺のMSXのBASICの拡張みたいな、IoTは使えるっていう感じですか。
西氏: はい。
M5StickやM5Stampで、MSX0のプログラムを実行するためのモジュールを販売
――もちろん、その後もシステムソフトウェアのアップデートは適宜行われるんですよね?
西氏: システムソフトウェアをアップデートするサーバーを立てて、毎回電源オンの時にチェック行って、新しいバージョンがあったら、自動的にダウンロードするという。
――そういう仕組みがちゃんと用意されるんですね。
西氏: そういう仕組みになってます。だけど、アップデートしたくない人もいるわけ。だから、選べるようになっています。
――現状はそのシステムソフトウェアだけを別売りする予定はないとTweetされていたと思いますが、そちらはいかがでしょうか?
西氏: それは、今日のインタビューのためにね、まだ決まってないって言い続けてたので、そちらのスクープになると思うんだけどね。こいつ(M5Stick)とこいつ(M5Stamp)のために、MSX0 Stackでソフトを書いてね、こっち(M5StickやM5Stamp)で実行というか、こっちにダウンロードして、実行できる実行モジュールを販売する予定になってる。
※筆者注:MSXシステムソフトウェア全体を別途販売する予定についてはこのインタビューでも明言はされていないが、代わりにMSX0 Stackで開発したソフトを市販のM5StickやM5Stampで実行可能にするためのソフトウェア(実行モジュール)を販売する予定とのことだ。実行モジュールはライセンスカートリッジ的な役割も果たしており、実行するためのデバイス1台につき1つの実行モジュールを購入する必要がある。後で説明されるが、MSX0 Stackの実機を購入しなくても、無料で配布されるリモートデスクトップツールにMSXエミュレーターも含まれているため、MSX0用ソフトウェアの開発が可能だ。無料で開発したIoTソフトウェアを、実行モジュールを購入して市販のM5StickやM5Stampで動かせるというのは、気軽に実用的なIoT機器を実現する画期的な試みといえる。
――そうすると、実際にIoT機器に組み込んで使う時には、もっと小さいM5StickやM5Stampを使ってやるとかもできますね。
西氏: それもできる。
――これは、あくまでもその実行モジュールだけ提供されるわけですよね。
西氏: でも、実行モジュールって形で。今までのESP32のBASICなんかは動くようにしたいと思ってる。それをどういう風にするのかって言ったら、リモートデスクトップのソフトあるでしょ。あと、コントロールパネル。そこに、いわゆるライセンスカートリッジって感じで100台分とか買ってもらって、ここに書き込む。それでね、問題はそういう風な感じで、細かく色々やんなきゃいけないのはどうしてかっていったらね。IoT機器が狂って暴走したらね、本当に困るんです。街にね、転がる100万台のIoT機器がね、暴走してね。DDoS攻撃を始めたら。
――大変ですよね。まあテロみたいなことですよね。サイバーテロ。
西氏: だからね、IoT機器を野放しでやるのはやめようと、 必ずIoT機器については、コントロールされなければいけないと。コントロールパネルと1対1な紐付きで。
――要するに、いわゆる野良IoTデバイスみたいなものは存在させないってことですよね。ちゃんと管理されると。
西氏: それから、たくさんアップするデータもね、その1日アップし続けたら、継続してアップするように、というコマンドがない限り。自分は静かになるという、継続アクセスを許さない仕組みも入れます。そこらへんは試行錯誤しながらやるしかない。
MSX0 Stackの次はMSX0 Stickをリリース
西氏: これがM5StackとM5StickとM5Stampのスペックなんですが、CPUは同じなんです。
――フラッシュの容量がM5Stackは16MBなのに、M5StickとM5Stampは4MBなんですね。
西氏: そうフラッシュが違う。
――あと疑似SRAMもですね。
西氏: そうそう。フラッシュとあとRAM。だから、M5Stickのスペシャルバージョンを作ってもらうとことにしました。
――ここにRAMを追加するってことですか。
西氏: そうそう、その8MBのM5Stackと同じ容量のRAMを追加します。これM5Stickの中なんだから、スペースは十分あるから。
――それはもう、M5Stackの方でできそうっていうのは決まってるんですか?
西氏: はい。また、1000個頼まなきゃいかん。
――では、それがMSX0の次の形というか、MSX0 Stickみたいな。
西氏: そうそうMSX0 Stickです。MSX0 Stickの次はMSX0 Stamp。
――そういう意味ではMSX0という名前は総称ですよね。その1つの実装形態としてMSX0 Stackがまず出て、次にMSX0 Stickが出るし、電子ペーパー搭載MSX0も試作品で出されてましたよね。だから、いろんなものがありうるわけですよね。広く使われやすそうなものとして、まずこのMSX0 Stackが出ると。
西氏: だから結局ね、こうしたいわけよ(MSX0 StackにGroveコネクタ拡張モジュールをスタック)。
――そうですよね、それで、さまざまなセンサーで取り込んだデータを処理する。
西氏: そう。これができたらいいわけですよ。
――Bluetoothにも対応してますよね。
西氏: BluetoothもWi-Fiも対応してる。
――すごいですね。だから、IoTの要件をちゃんと満たせる。
西氏: そうです。だけどまあ、そんなこと今から言っとくわけにいかんから。クラウドファンディングでまだこれからだから。これ(M5Stick)のね、MSXブルーカラーが出てくる。
――それは今年後半ぐらいのイメージですか。
西氏: 今は、M5Stackの売れ具合を見ながら投入しようと考えています。
ゲームも本命でいいと思うが、EGGに一任している
――ゲーム関連の話をちょっと聞きたいんですけど、ゲームプラットフォームとしてのMSX0、MSX3というのは西さんとしては、本命という使い方ではない?
西氏: いやいや、それも本命でいいと思う。だけど、僕自身はそれはやらない。それはEGGがね、商売をやればいいと思う。
――EGGもちゃんとサポートするってことで、それも話題というか嬉しいと思うんですけれど。付属するゲームソフトとして、クラファンのプレビューの時には「けっきょく南極大冒険」でしたが、開始時には「ザナック」になった理由は何でしょうか?
西氏: 権利関係をどうクリアするのかっていうのが、思ったより大変だということですね。だからそこは全部、何をバンドルするかも含めてね。全部EGGに丸投げしました。だから僕は、「テトリス」で遊んでたりね、「けっきょく南極大冒険」で遊んでたり、好き放題やってんですけどそれは内々だけの話で、対外的にどうすんのかって言ったら、はい、それはEGGに一任してます。EGGのビジネスもあるし。
――では、EGGが権利を持っているゲームが、さらに増える可能性は十分あると 。
西氏: そうです。
――たくさんつけばいいってもんでもないけど、ある程度ついてるとやっぱりお得感はありますね。
西氏: そうです。
X68000 ZはX68000の未来の姿を目指すべき
――ターゲットというか、思想が全然違うんで。私は同一線上には並べてはないんですけど、X68000 Zの方も現状は、そんなにソフトが多いわけではないですよね。あれもまだクラウドファンディングでアーリーアクセスみたいなものですが。
西氏: あのね。まあこれ書いてもらっていいいんですけど。あんまり競争相手のこと、競争相手っていうか、他社のことを話さない方がいいかなと思ったんだけど。あのハードで、Armの32ビットが4つも載ってるハードでね。あれ、なんとかミニを作ってるわけです。
――はい。瑞起さんは今までも出してましたね。
西氏: まあ、それはそれでね、いいと思うんですよ。だけど、あんなハードがあるんだったらね。もうちょい気の効いたソフト作るべきですよね。僕は思うのはね、その68000のエミュレーションだけじゃなくてね。やっぱやるべきことは、もし68000が生きてたら、どうなってるか。68000が64ビットになってたらこうなってたとか。それと、その68000のOSがどんなに立派かもしれんけどね。やっぱりLinuxでしょう。だから、64ビットの68000にLinuxを載せるという。そのビデオのスキームをどうするかっていう、それをしっかりやるべきでしょう。だけど、それをやるのは技術的にものすごい大変だから、昔のものをポーティングする世界ではない。
――X68000 Zもこれからまた色々と変わる可能性ありますが、確かに仰る通りですね。
西氏: 向こうは金儲けだけど、僕らはNPOだから、開発費分は回収しなきゃいけないけど、ウハウハ儲ける必要はない。そこは大きく違うところですね。
I/Oカートリッジも使える双方向リーダーを開発予定
――話を戻しますが、昔のMSXとかMSX2とかMSX2+のカートリッジも、遊ぶことができるのでしょうか? Windowsから転送すればこのMSX0 Stackで動かせるってことですよね。
西氏: もちろん。
――そのMSXゲームリーダーも探すとまだありますが、結構品薄だったり、プレ値になってたりしているのですが、公式で出す予定はないんですか?
西氏: MSXゲームリーダーは一度出したことはあります。だけど今回は、高速のシリアルバスで双方向にしてね。ROMカートリッジが繋がるだけじゃなくて、MSXのI/Oカートリッジがフルフルで繋がる。そういうものを作ろうと今やってる。
――音源とかの拡張カートリッジでも使えるっていうことですね。
西氏: その通り、はい。
――これも年内ぐらいの感じで考えているんですか?
西氏: それはまだ時期的にいつっていうのは決めてません。
――ただ計画というか、構想には入ってるという
西氏: そうです。はい。
――では、現状はサードパーティーからいくつか出てるので、それを使えということですね。
西氏: 今はWindowsに対応してますから。それを使ってもらうのがいいんじゃないかと。
MSXエミュレーターに搭載されている音源はGIとSCCだが、SCCはライセンス交渉中
――細かい質問なんですが、今のこのMSX0 StackのMSXエミュレーターに搭載されてる音源は何ですか?
西氏: GI(PSG音源)とSCC(波形メモリ音源)です。
――SCCはコナミの技術ですよね。それはコナミからライセンスを受けてるわけですか。
西氏: 今頼んでるとこなんだけど、コナミってやっぱりビジネスにシビアな会社ですから、ノーって言われたら、当然ね、落とさなきゃいけない。あと、じゃあお金払えって言われた時になんぼ払うのかっていう、そこのところが残ってる。でも動いてる。
――それは今後の交渉で決まるっていうことで、実現はできてるから、技術的な問題はないと。
西氏: うん。ヤマハのFM音源の特許は切れてる。
――ただ、現状のエミュレーターには、FM音源は搭載されていないってことですよね。
西氏: 今は作ってるところです
――だから、MSX0 Proとかなら?
西氏: MSX0 Proには載せることができると思ってる。だけど、これはねIoTなので、なんでFM音源がいるのって話なんです。
――確かにそうですよね。FM音源も当時としては画期的でしたが、私もPC-8801mkIISRの「テグザー」とか「シルフィード」を見て、音も凄いなとか思った世代ですけど、今はもっといい音源のアルゴリズムがあるし、当時はデータ量が限られてる中で、いかにいろんな音を出すかっていう工夫の1つだと思います。
西氏: その通り。
――いわゆるPCM音源とか、あとは楽器そのものを物理的にエミュレートするのとか出てますしね。
西氏: だから、MSX0 Proの方にMSX-AUDIOとMSX-MUSICを両方載せるというのが、落としどころじゃないかなと思ったりしてます。
――ただ、やっぱり、その制限じゃないけど、昔の音源で曲を聞きたいとか、新しく曲を作りたいっていうそういうニーズも確かにあるのはあるんだろうなと。SCCもかなりいろんな音出せますよね。そのSCCが使えるというのも、最初に西さんがおっしゃってたMSXの利点、カートリッジにバスが出ているという。
西氏: そうそう。
MSX0カートリッジ型の開発も継続中
――それからMSX0のカートリッジ型でアンテナがついたやつ。これもクラウドファンディングの予定とかは決まっているのでしょうか。
西氏: クラウドファンディングするかどうかは、わかりませんけど、今作ってます。
――あれはあれで面白いと思うんですけど、
西氏: あれはねESP32が乗っててね、あれだけでも動いちゃう。だけど、その我々のスタンスとしてね。初代MSX、MSX2、MSX2+、MSXturboRを、このMSX0をやる時に切り捨てるわけにはいかんのですよ。
――MSX0とかMSX3のカートリッジタイプもあると思うんですけど、それをスロットに挿すと、そのMSX側のキーボードが使える感じになるんですか?
西氏: もちろん。
――ただ、出力はそのカートリッジから出す感じですよね。
西氏: ビデオ出力に関しては、MSX0 Stackにはない。
――MSX0カートリッジ型の場合は、カートリッジから何か出さないと。
西氏: いや、バスに出せば。NTSCはバスに出せば行けます。
――なるほど。ただ、今の大型テレビなんかはあんまりNTSCに対応してないじゃないですか?
西氏: それはね、昔のやつはNTSCの入力があったし、NTSCからHDMIへの変換アダプターが数千円でありますから。それでいいんじゃないでしょうか。
クラウドファンディングの手応えは上々、ドキュメント類も無料で提供
――クラウドファンディングの手応えはいかがですか? まだ終わってないですけど、私は上々かなと思ったんですけど、西さんとしてはどうですかね。
西氏: それは上々だと思うよ。よくいってると思う。
――私もいくつか、クラウドファンディングも出資をしてきて、リターンが帰ってこなかったKickstarterのやつとか、当初の予定から2年ぐらい遅れた日本のプロジェクトとかも結構あるので。今回はリターンが早くて素晴らしいと思います。
西氏: 今回のクラウドファンディングは、3月末に締め切って、そのお金が4月末に来ます。それで4月末にお金を香港に送って、香港で5月、6月と、2ヶ月やる。終わって、その日本にそれが6月の末に来て、7月に配送するという。そんな予定です。
――MSXシステムソフトの書き込みは日本でやるんですか? それとも向こうで一緒にやってくれるんですか?
西氏: 日本でやる。
――では、それまでに、ドキュメントとかもPDFなり、フリーで見られるような感じにするんですか。
西氏: そうです。今、フリーでね、Datapack。電子書籍でね。デジタル化もされてるんで。こういう感じで。
――これは前に刊行されてたものがそのままみたいな感じなんすか。
西氏: うん。これだけじゃなくてね。MSXマガジンのバックナンバー。はい、全部もうデジタル化されている。
――これ全部読めるんですね、
西氏: はい、タダですよタダ。
――クラウドファンディングの終了後は、MSX0 StackをAmazonとかで買えるようになるんですか?
西氏: Amazonとスイッチサイエンスの両方で買えます。
――普通に手に入るようになるのはいいですね。
西氏: うん。スイッチサイエンスに色々お願いをして。こういうものを我々が直接売るかって言ったら、そんなこと僕にはできないから。
――スイッチサイエンスさんはその辺は昔から実績ありますよね。Amazonだったら、日本中どこからでも買えるわけだし、もちろんスイッチサイエンスも通販やってるし。
リモートデスクトップにはMSXエミュレーターも含まれ、MSX0実機が無くても無料で開発できる
――基本的にMSX0 Stackで開発する場合は、MSX0リモートデスクトップを使って、Windowsから使えるってことですよね。そのツールも、クラウドファンディングのリターン時の7月にはサイトからダウンロードできるみたいな感じでしょうか?
西氏: そうです。そういう風にしようと。それで、その実行モジュールを作るやつは、また後でオンラインで買ってもらう。
――なるほど、いいですね。リモートデスクトップということは必ずそのMSX0 Stackとパソコンを繋いだ状態で開発するってことですよね。
西氏: MSX0 Stackがなくても大丈夫。
――完全に切り離して、いわゆるクロス開発みたいなこともできるんですね。
西氏: そうです。
――そうすると、そのリモートデスクトップツールの中にも、MSXエミュレーターごと入ってるイメージなんですか。
西氏: そうです。だから、それをタダでダウンロードしてきて開発して、M5Stickを買って、実行モジュールを使えばそれで実行できるんです。
――M5Stickとかを使わなくてもMSXのBASICで遊びたいとか、勉強したいとか、持ってるソフトを動かしたいっていうだけなら、そのツールだけ手に入ればできちゃうっていうことですよね。
西氏: そうです。それをやればいい。
――そうすると、なんかあんまり儲からない感じしますけど、西さん側としては。大丈夫なんですか?
西氏: 儲かんなくていいんですよ。
MSXPLAYerの失敗の経験をMSX0に活かす
――昔、公式のMSXPLAYerがあったのはもちろん知ってるんですけど、あれもすごく理念として素晴らしいと思ったんで
西氏: MSXPLAYerはダメだったね(笑)。
――まああまり広がりはしなかったですよね。
西氏: うん、やっぱりね。PLAYerっていうか、ソフトウェアを実行するエミュレーターはダメですよ、Windowsでは、他に魅力的なソフトがたくさんあるから。その経験があるから。リモートデスクトップ、それからコントロールパネル、エミュレーターはタダでいいと。
――それで興味を持って、やっぱりMSX0 StackでIoTをやりたいって人が出たり、今後のMSX3にも繋がるわけでしょうね。
西氏: そうですそうです。タダばっかり。
――なんていうか、太っ腹ですよね。
西氏: いや、太っ腹じゃなくて、やっぱりね、30年前のものを復活させるってことはそういうことですよ。でもねそれをね。売るためじゃなくて、それを使ってIoTをしたい。
――そういう意味では、そういう教材もあるけど、例えば工業高校的とか大学の情報科の基礎とかで、これを教材として使うっていうのも全然ありですよね。
西氏: もちろん。もちろんだけど、それは僕が決めることじゃないし、まあ、その現場の人がね面白いという風に思ってもらわないといかん。
――そういうのも最近だと、micro:bitとか、教育用のワンボードコンピューターが出てますが、その上を狙う感じですかね。
西氏: 今の世界はね、Raspberry PiとArduino、この2つです。ただ、Raspberry PiとArduinoで楽しくやってんのかって、全然楽しくない。
――Raspberry Piはもう小さいパソコンみたいになっちゃってるし。結構性能が上がってるから、Raspberry PiでエッジAIを処理するとかのソリューションをベンチャー企業が商売の種にしてますよね。だから、面白いかっていうとちょっと違う感じだし、Arduinoは素人にはちょっと使いにくい部分もあるし。
西氏: そう、結局ね。だから、どこから行くべきかって言ったら、いろんなセンサーがあるGroveかなと。300種類ぐらいあるんですよ。なんでも選べる、割と簡単に手に入るっていう。あとはね、こういうのもあるんですよ。これMSX0 Proです。MSX0 Proの前にね、ここにこうさす拡張コネクターもあるんです。
――これはUSB Type-Cなんですか。
西氏: そうです。それ電源です。電源供給もしなきゃいかんので、ここの電池だけじゃ足んない。
――センサーとかアクチュエーターも当然電気を使いますもんね。こうなるといろんな実験というか、IoTで遊べそうですよね。やっぱり色々繋いで、センサーからの入力をなんか処理して、アウトプットというか、アクチュエーターを動かすというのが基本ですよね。ロボットというか、制御的なものだと。
西氏: そうそう。そのためにやっぱり複数コネクターが欲しくなるので。そうなる。
――この辺りのI/Oモジュールは別途で売る予定でしょうか?
西氏: そうです。
――MSX0 Proなんですけど、MSX0 Pro単体でも動くのか、それともMSX0 Stackにスタックして使う必要があるのか、どちらなのでしょうか?
西氏: どちらでも動きます。MSX0 Proはね、まだ完成してないから。
――MSX0 Proについては、また今度、お話を訊ければと。順番としては、MSX3の前にMSX0 Proをやる感じでしょうか?
西氏: MSX3とMSX0 Proは同じ時だと思う。
――MSX0 ProもFPGA搭載で、MSX3とかなり近いところもありますよね。それはまた次回、バルセロナの話も訊きたいですし。
西氏: そうです。帰ってきてからね。
キーボード付きで1万円のMSX0も構想中
――昔は結構パソコン高かったじゃないですか、NECとかPC-8801とかも、当時の価格で本体だけで20万円超えとか、プリンターも高かったし。Macとかもっと高かったですけど、もちろん、PC-6001とかM5とか、シンクレアのZX81とか安いやつもありましたが、MSXも当時としての価格的な手頃さみたいなところがあったと思います。そういう感じで、Twitterで西さんが、巻けるキーボードとセットで1万円以下のMSX0の話もされていましたよね。
西氏: キーボードとか色々セットで1万円以下のMSX0も考えています。次の商品は、1chipMSX0だと思います。これはキーボードなんですけど、この安いキーボードいくらやと思います? 4,500円、これでここのとこに基板を内蔵できると。これで1万円。
――これはこれで欲しい人がいそうですけどね、MSX0 Stackも頑張って3万円切ったってことで、リーズナブルだと思うんですけど、なかなか3万円ポンと出せるわけじゃないという人もいると思いますので、1万円っていうのはなかなか魅力的ですよね。そういう意味では、当時カシオがすごい値段下げたことは、結構まだ西さん根に持ってるんじゃないかなと思ったんですが。
西氏: すごい根に持ってる。
――持ってますよね。確かにあれでだいぶ市場というか。
西氏: 色んな会社がね。撤退しましたよ。やっぱりだからね。カシオだけが安いもの出して独走するっていう。まあ市場原理はそうなんだけど、それをやっぱり許したのは間違いだったという。例えばね、松下がVHSを作った時にね、韓国のメーカーに作らせなかったでしょ。だからね。ビデオテープレコーダーのビジネスは長くね、続いたんです。
――確かに長かったですね。値段もそんなに極端に下落してないですし
西氏: 私はそれを見ててね、やっぱ松下は考えてるなと思ったわけです。だから、やっぱり安かろうっていうのは良くない。
――最終的にみんなの首を絞めるみたいなとこありますよね。その時はね、その会社は良くてもみたいなそう、回り回って市場そのものがなくなってしまうと。
西氏: そう、その通り。
MSX0でIoTのキラーアプリを見つけて欲しい
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
西氏: はい、やっぱり楽しくなきゃあ、楽しくなきゃ意味がないから。ゲームもね、大切だなとは思う。あとは、日本ってアメリカの方ばっかり向いてるけど、今回、スペイン、オランダ、イタリア、ブラジルと色々やってね。やっぱり世界中を見てコンピューターを作るということは、大事にしなきゃいかんって思いましたね。それは、僕だけがやることではなくて、Groveっていう仕様で、誰でも参加できる。1つね、完全な乱数発生器の開発をしてるベンチャーがある、それをGroveに繋げるようにしますって、今やってくれてるんですよ。それから、もう一つは、IoTね。おもちゃとして遊びとして、電子工作としては面白いけど、IoTのキラーアプリって何よっていう問題がやっぱりまだ残ってる。あのね、日本で1番多いIoT機器ってなんやと思います?
――うーん。なんだろう。
西氏: ガスの検針メーター。
――ああ、なるほど。
西氏: パソコンのキラーアプリはなんだったかって。うん、それはね、ワープロであり表計算だったわけですよ。スマホのキラーアプリはなんだったといえば、ブラウザーですと。すべての人が認める、IoTのキラーアプリはまだないということ。それをこれから我々は探し続けなきゃいけない。
――確かに仰る通りです。
西氏: そのIoTのキラーアプリは何かということを探して、それを実現する手段としてのMSX0だと。僕はそれはウォッチじゃないかと。全ての人ある程度身につける、腕時計の形をしたIoT。
――いくつかスマートウォッチは出てますよね。
西氏: そう形としてね。フィットビットみたいな。だからちょっとこれも、M5Satckを腕にはめられるようにするやつです。これもね、出そうと思う。本当はね。ベルトとケースをクラウドファンディングにつけようかなと思ったけど、そうするとけわかんなくなっちゃうんです。これで、時計だけじゃなくて、心拍数とかなんかいろんなことができるような、そういう開発をみんなにしてもらいたいわけです。
――ありがとうございました。