インタビュー

明けない夜の世界を進むRPG「Vampire: The Masquerade Bloodlines 2」

街を支配する吸血鬼達が繰り広げる権力抗争を利用し、のし上がれ!

2020年第1四半期発売予定

価格未定

 DMMのステージで発表された「Vampire: The Masquerade Bloodlines 2」。本作は吸血鬼をテーマにしたRPGである。舞台となるシアトルは実は古くから存在している吸血鬼達の“氏族”に支配された世界だ。シアトルには5つの氏族がいるだけでなく、いくつかの勢力(ファクション)があり、ドロドロとした権力抗争を繰り広げているという。DMMは本作の日本語版をプレイステーション4向けに2020年第1四半期に販売する予定だ。

 ゲームシステムは1人称視点のRPG。リアルタイムの戦闘システムで、ステルス要素や、会話での選択肢でうまく立ち回ることもできる。プレーヤーは最も下位の吸血鬼としてスタートする。そして陰謀渦巻くシアトルで、バンパイアである素性を隠しながら夜の街を生き、そして氏族や勢力に関わりながら、やがて街の行く末に関わるような存在になっていくとのことだ。

本作のPS4版の発売は大きくステージで発表された

 ステージでは魅力的な要素が発表されたものの、デモプレイなどがなく、イメージを提示する映像が多いため、「実際のゲームはどうなの?」というところがまだつかみきれていないのが正直なところ。そこで本稿では発表会で提示された内容を含めた上で、本作のプロデューサーを務めるParadox InteractiveのChristian Schlutter氏に話を聞き、より具体的なゲームイメージを語っていただいた。これにより明確なゲームイメージが見えてきたと思う。

 「Vampire: The Masquerade Bloodlines 2(以下、「Bloodlines 2」)」は非常に個性的で、とがっており、面白そうなゲームだ。その特徴を紹介していこう。

【Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2 - Announcement Trailer】

ゲームシステム、吸血鬼の定義、主人公の背景、明確なゲーム像を紹介

 「Bloodlines 2」は現在の所α版といったところでゲーム要素は入っていおり、スタートからエンディングまでプレイできる。ここから完成度を上げるべく、磨き込みを行なっているという。

 本作のジャンルはRPGだ。プレーヤーはヴァンパイアの最も下級の存在としてスタート。シアトルの街をさまよい、クエストを進めていく。FPSスタイルの3DRPGで戦闘はリアルタイムアクション。ヴァンパイアという特性を活かすために、飛び道具より接近戦の傾向が強い。

本作のプロデューサーを務めるParadox InteractiveのChristian Schlutter氏

 プレーヤーはヴァンパイアなため戦闘能力は高い。人間は数発殴って殺せるし、メレーウェポンも強力だ。そしてヴァンパイアの能力を使っての戦闘もできる。その能力は人を内部から破裂させたり、素早い移動で相手を翻弄させたりもできる。もちろん戦闘狂のように戦いに特化するのではなく、周りの人間を誘惑して手足のように使ったり、言葉巧みに会話だけで目的を達成したり、ステルスコンバットに特化したキャラクターメイキングも可能。様々なプレイスタイルが楽しめるという。

 本作には5つの「クラン」と、5つの「ファクション」が存在する。クランとは“血筋”だシアトルには5つのヴァンパイアの血筋が存在する。プレーヤーはスタート時点では最も血が薄れた最底辺のヴァンパイアとしてスタートするが、物語を進めていく中でどれかの一族に所属することとなる。

ゲームでは会話を選択することで展開が変わっていく

 クランは言わば「キャラクタークラス」だ。特異な能力やプレイスタイルが変わり、取得できるスキルなども変わる。クランによってゲーム性が変わる。一方のファクションはストーリーに大きく変わる。どのファクションに味方し、敵対するかでゲームのストーリーは大きく変わる。クランは一度決めると変えられないが、ファクションは途中から所属を変えたり、裏切る道も用意されている。ファクションではその勢力のためのクエストが発生する、というのが基本的なゲーム展開だ。

 様々なクラン、所属を変えるファクションで多彩な展開が楽しめる本作だが、メインといくつかのサブクエストで25時間程度のプレイ時間となる。サブクエストに時間を割けばもっと長くなるし、メインだけなら短くなる。短く色々な選択を楽しむというプレイも可能だという。

ゲームは夜の街が舞台となる。まさか夜の2時に固定化された世界だとは

 本作はストーリーが最大の魅力だ。各ファクションのキャラクターは特徴的で強力な印象をプレーヤーに与えてくれる。彼らの中の誰に味方し、誰に敵対するか、イベントの合間の会話なども楽しみだという。今作は15年前の第1作「Bloodlines」を手がけたライターが担当しているので、世界観や物語の展開はとても魅力的な物になっているという。

 そして本作の1つのテーマ「マスカレード」である。本作での吸血鬼は存在を知られてはならないのだ。それは「レベルシステム」で表現されている。このレベルというのは「吸血鬼への認知度」だ。人々がたくさんいるところで魔術を使ったり、人を襲うとレベルが下がり、その場所に人はいなくなり、吸血鬼を排除しようとする警官や軍隊が現われる。そのままレベルが下がりすぎると主人公へ敵対する存在は数を増やし脅威度を増し、排除されてしまう。

 こうならないため、主人公は自分の素性を隠すのだ。レベルを下げすぎると吸血鬼自身が主人公を驚異と見なし、排除に動き始めるとのことだ。レベルが下がると街に人がいなくなる。それはつまり、ヴァンパイアにとって食料が減る、ということなのだ。

 ヴァンパイアとして知られないためには「ヴァンパイアについて話さない」。キャラクターとの会話の時に、自分の正体や知識について安易にばらさない。そして「セイフティースポットを活用する」。街には裏路地や人気の少ない場所があり、ここに犠牲者をおびき寄せることで吸血できるというわけだ。

クラン(氏族)はキャラクタークラスに相当する。ストーリーも変化していく

 話をしていて浮かんだ疑問で、「プレーヤーは吸血鬼だが、日中は歩けるのか? という質問に対してSchlutter氏は「ゲーム内の時間は“午前2時”のままだ。プレーヤーがゲーム内でいくら時間を過ごしても、時刻は変わらない」と、衝撃的な事実を明かしてくれた。午前2時は“吸血鬼の時間”というわけだ。他のゲームの様に、移動していると日が昇り1日が過ぎていく、といったシステムではないとのこと。

 しかし、時間の概念はある。プレーヤーキャラクターが“眠る”と、日が過ぎる。クエストやストーリーなどで、「明日また来てくれ」といった展開の時キャラクターは眠り、次の日の午前2時に目覚めるのだ。強制的に眠らされる場合もある。ちなみに、吸血鬼は本来眠りを必要としない。しかし眠りを欲する気持ちはある。それは“人間だった頃の名残”だという。食事や人と触れあうことも吸血鬼は必要ない。しかし習慣として残っているのだという。

 他に語り足りない要素は? という質問にSchlutter氏は身を乗り出して説明をしてくれた。1つは「主人公の背景」。ゲームスタート時プレーヤーは主人公の背景を選べる。「警官」を選べばキャラクターは警察署に顔パスで入ることができる。犯罪者ならば隠された場所に行けたりする。「お前2週間ほど行方不明だったけど、何をしてたんだ?」と聞かれる。……そう、プレーヤーキャラクターは何者かの吸血鬼にかまれ、吸血鬼になってしまった人間なのだ。この背景の選択や、その後のクランやファクションでのキャラクターの反応に関係してくるという。

 もう1つがプレーヤーが吸血鬼になる事件の発端だ。実はプレーヤーの他に何人かが同時に吸血鬼になっているという。彼らを探し出し話を聞くというのもこのゲームのストーリーに大きく関わってくる。彼らに出会うことはクエストの始まりでアリ、物語の大きな要素の1つとのことだ。彼らもまた吸血鬼になってしまった人間だ。主人公は同じ立場として彼らを助けることも、敵対することもできるという。

 ちなみにローカライズはテキストのみのローカライズを考えているが、音声も含めたフルローカライズを行なうかで揺れているという。街の人達の会話や、ふと目にしたモノなどがゲームのヒントになるゲーム性のため、プレーヤーによりプレイしやすいフルローカライズも考えている。筆者は「ぜひフルローカライズして欲しい」という希望を伝えておいた。

ファクションにどう関わるかがストーリーを握る。今回は2つだけが公開された

 日本のファンに向かいSchlutter氏は「我々は15年前の『Bloodlines』の続編を作っています。私達自身が15年間待ち続けた作品が、ついにこの世に生まれます! 私達こそが最も情熱的にこの作品が世に出ることを待ち望んでいました。だからこそ絶対いいものにします」と語りかけた。

 ……今回のインタビューで、「Vampire: The Masquerade Bloodlines 2」の具体的な姿が見えてきたのではないだろうか? 非常にユニークで、ダークで、何よりも面白そうな作品であることが伝わったと思う。街を牛耳る闇の一族がどんなキャラクター達なのかもとても楽しみだ。今後の情報に心から期待したい。