インタビュー
「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー
いよいよ「漆黒のヴィランズ」発売! 吉P「PCエンジン mini」について大いに語る
2019年6月14日 12:01
- 【ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ】
- 7月2日リリース予定
- 6月28日アーリーアクセス開始予定
いよいよ6月28日にアーリーアクセス開始を控えた「ファイナルファンタジーXIV」 最新拡張ディスク「漆黒のヴィランズ」。既報の通り、E3 2019でも出展し、E3の開催に先駆けて行なわれた「Square Enix LIVE」では、累計登録者数1,600万人突破を報告すると共に、「漆黒のヴィランズ」ローンチトレーラーを公開し、最後のオフィシャル情報を出し切った。この後、6月14日15時(日本時間6月15日7時)より、ロサンゼルスからプロデューサーレターライブの放送を予定。ここでは「漆黒のヴィランズ」ローンチ後のスケジュールや、これまで出していなかったギャザラー/クラフター向けの情報が公開される予定となっている。
E3 2019においても毎年恒例となっている吉田氏へのインタビューを行なうことができた。ただ、正直ゲームコンテンツに関しては、5月に行なわれた欧米メディアツアーのインタビュー(参考記事)でほとんど聞いてしまっているため、コラボの可能性や第1世界の暮らし、そして個人的に気になっているメインストーリーについて掘り下げてみた。ちなみに、挨拶代わりに質問をした「PCエンジン mini」については、うっかり吉田氏のハドソン愛に火を付け予想以上に盛り上がってしまい、この部分だけ抜き出すと何のインタビューだかわからなくなってしまったが、極めておもしろいので全文掲載する。
「漆黒のヴィランズ」情報が足りないぞ! という方は、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」メディアツアー特集や、現在GAME Watchで展開している「ファイナルファンタジーXIV」情報局を参照していただければと思う。
累計登録者数1,600万人の原動力は中国! 「FFVII REMAKE」とのコラボの可能性は?
――スクエニブースのバトルチャレンジから質問していきますが、今回は「漆黒のヴィランズ」からティターニアを出展しました。その理由から聞かせて下さい。
吉田氏: ショウでの出展の形として、フリープレイで見せることが多いですが、MMORPGはコンソールゲームと違って、触って面白さがわかるわけではないので、まずはバトルコンテンツにしてエキサイトして貰おうというのが、バトルチャレンジの狙いで、もう7年ぐらい続けてきています。
北米チームからは、拡張コンテンツが欲しいというリクエストが強くて、前回もスサノオを出したので、今回はギリギリストーリーがバレなくて済むのがティターニアだったので、ティターニアにしました。
ただ、今回はバトルシステムやジョブ周りの変更が非常に多いので、その使いこなしを考えると「難しいと思うよ」と伝えたんですが、勝率3割ぐらいかなと思ったら、3割届かないくらいだったので、2日目からはキャラを少し強くしたと聞いています。
――まだ触ったことのない新バトルシステムでチャレンジするのは難しいですよね。
吉田氏: 完全に5.0仕様になっています。
――全員が一様に戸惑いながら挑むわけですね。
吉田氏: そうです。アクションを見ながら、ガンブレイカーも踊り子も使えるようにしてあるので、新ジョブを試してみたりしているようですね。
――そのティターニアですが、実際のゲームでは、メインストーリー上で激突する相手なんですか?
吉田氏: そうです。メインストーリーで戦います。
――バトルコンセプトを教えて下さい。
吉田氏: ティターニアは日本名だと“妖精王”という字が付いていて、妖精達、妖精達というのはピクシーだけを指しているのではなく、その一帯に住んでいる妖精全体の王という設定になっています。なぜ戦うことになるかはメインシナリオを見ていただきたいですが、本体だけではなくて、妖精達を使役しながら戦うというコンセプトになっていますから、色んなシチュエーションで相当ワタワタすると思いますね。
――想定レベルは?
吉田氏: スサノオと同じぐらい73とかですね。
――今年はスクウェア・エニックスさんが久しぶりに発表会を開催しましたが、吉田さんが出てきたら、吉田コールが起きて、メディアにもファンが多いのかと思いましたね。
吉田氏: 正直、ああいうコンソールの発表的なイベントは、MMORPGは辛いんですよね。コンソールの新作ならいいんですが、MMORPGとなると、オンラインゲームはやらないとか、6年経ってるゲームだからとかいう理由で「はい、次」ってなりがちだと思うんですよね。だから、会社から出てくれと言われて、仕事だから出るわけですが、もうメディアツアー等で散々喋っているので、あまり喋ることがなくて(笑)。もうサプライズも残っていないし、せいぜいトレーラーぐらいなんですよね。
だから今回尺は短めにしてもらいましたが、実際に出てみたら、ワッとなってビックリしましたね。あの発表会は実はメディアさんだけではなくて、200人弱のファンも招待していたので、その中に思った以上に「FFXIV」プレーヤーが多かったのかなと思いますね。おかげさまで喋りやすかったですね。
――吉田さんのアナウンスの1つに、累計登録会員数1,600万人というものがありますが、現在のユーザー分布はどのような感じになっているのですか?
吉田氏: 比率で言うと全世界で1,600万人というのは、中国、韓国なども含めた合算値ですが、一番多いのは北米で、次いで日本、その日本を抜くような勢いで中国が伸びています。次が欧州、韓国という順番です。
中国は4.0(紅蓮のリベレーター)が非常にうまくいったので、一過性のものかと思ったらずっと伸びていて、TencentさんのWeGameに開放したこともあって、どんどん新規ユーザーが入ってくる状況になっています。中国はモバイルが強いエリアで、この人気は特殊ですよね。PCでサブスクリプション制のゲームなんてないですからね。「World of Warcraft」がほぼ唯一ですよね。日本欧米についても「漆黒のヴィランズ」の前に、爆発的にユーザーが増えているのでありがたいですね。
――そういえば、中国でPS4版を発表していましたよね。私も取材しましたが、あれどうなったんですか?
吉田氏: あれは中国のセンサーシップと、サーバー問題で止まっていて、進行してないです。だからこれはPC版だけの数字です。
――発表会では「FFVII REMAKE」が大きくクローズアップされ、デモでは大喝采を浴びてましたが、今後「FFVII」とのコラボはありますか?
吉田氏: もちろん、僕は「FFVII」大好きですから機会があればと思っていますけど、たとえば、「FFVII」のローンチに合わせて何かやろうと思った場合、「FFXIV」側に実装するコンテンツの確認をお願いしなければならないんですよ。僕らはコスチュームだけのコラボレーションはやらないので、ストーリーを追加するにしても、テキストやローカライズを考えていかなければならない。僕らは徹底して確認するので大変なんですよね。核心がわかってない人が書いたテキストはやっぱりちょっと違いますし、世界中で「FFVII REMAKE」を楽しみにしている人たちの邪魔をしたくないんです。
今「FFVII」チームは、「FFVII REMAKE」を待っている人たちを満足させるために全エネルギーを使うべきだと思うので、コラボをやるにしてもまずはマスターが上がって、マーケPRのための時間も使った後で一息ついた当たりで「何かやりませんか?」と相談したいなと思っています。
「FFXV」もそうでした。発売されてから、我々も「FFXV」を遊び込んでから、コラボレーションの内容を詰めていく。その時間を空けて置くからという風にしないと、コラボってビジネスのためではなく、ゲームファンに盛り上がってもらうためにするので、同じようなアプローチで臨みたいと思います。まあ、プロデューサーの北瀬さんのほうから何かやらないと来たら、ローンチで何かやるかもしれませんけどね(笑)。
――北米の人たちはとてもポジティブな反応でしたよね。「FFVII」をいかに待ち望んでいたかと感じさせてくれました。
吉田氏: 海外の人たちにとって最初の「FF」というのは「VI」か「FFVII」なんですよ。特に「FFVII」から始めたという人が多いので、嬉しいんでしょうね。
――さらに「FFVIII」リマスターも発表されました。「FFXIV」は「FF」のテーマパークとして全シリーズの要素をゲームコンテンツとして入れ込んでいくということを表明されていますが、「FFVIII」関連コンテンツも増えてきそうですね。
吉田氏: 実際、ガンブレイカーも「FFVIII」発祥のガンブレードを使うジョブですからね(笑)。スコールの衣装はすでに実装されているので、スコールの衣装を着てガンブレイカーやる人は多いんだろうなと思いますけどね。それ以外にも何かしら、やっていけたらいいですね。
そして次のレイドタイトル「エデン」ですが、これについても関連を想像される人が多いと思います。期待は裏切らないようにしたいです、と今はそれぐらいにさせてください。
――なるほど、すでに色々あるぞということですね。今回の「FFVIII」リマスター発表は、「FFXIV」の「FFVIII」関連コンテンツの盛り上がりを受けて用意されたというわけではない?
吉田氏: そんなことないです。単なる偶然です。彼らとしては、もっと早くやりたかったのが本音だと思います。当時は、リソース保全などがいい加減な時代で、当時、限界ギリギリまで詰め込んでいましたけど、今見るとちょっとキツいねと。1回、ベタ移植したバージョンは見たんですけど、「これ厳しくないか、リマスターって言えないよね」というところがあったので、かなり時間が掛かっているプロジェクトです。
「漆黒のヴィランズ」ローンチトレーラーについて
――「FFXIV」に関しては、「漆黒のヴィランズ」ローンチトレーラーが公開されましたが、このタイミングで公開した意図を聞かせて下さい。
吉田氏: 2つあります。「FFXIV」のローンチトレーラーという意味では4回目、エキスパンションでは3回目になりますけど、前回の「紅蓮のリベレーター」の時から意識していることがあって、せっかく拡張を出すんだから、新作に見えるようにしたいというのがあって、当然新規の人に、「よくわかんないけど凄そうだな」と思ってもらいたい。
そこで意識しているのが、映画のトレーラーづくり、ストーリーがなんとなくわかる、あるいはキャラクターのカッコイイ台詞、派手なバトルシーンがあって、物々しい決め台詞があって、話の筋はよくわからないけど、なんか凄そうみたいな。これはトレーラーの役割として重要だと思っています。これだけたくさんのゲームがある中で、トレーラーを見てくれた方の記憶になにか引っかかるものがないとダメだと思います。全員が集中して1コマずつ見るかというとみないわけですけど、色んな発表があったけど、カッコ良くておもしろそうだよねといってもらう。これが1つ。
もう1つは、既存プレーヤーの皆さんに、このトレーラーを見て、「早く遊ばせてくれ!」となるようにするというものです。「FFXIV」はできるだけアップデートとマーケPRで情報を出すようにしていて、プレイしていなくても楽しみと思って貰えるようにやっています。ラスト2週間、ローンチトレーラーのおかげで「謎かけも多くて待ちきれないよ!」となってくれたらいいなと。プレーヤー同士が「あのトレーラー見た? あの台詞は引っかかるよね。あの場所に行ってみようか」となってくれたら、ゲームプレイにも影響を与えられますし、SNSを使ってエネルギーが外に発散される時代なので、どういう情報を出すのか、字コンテを僕が書いて、かなり狙ってやっています。僕が持ってる中二感を発揮させて、皆さんを盛り上げていくイメージです(笑)。
――今回のローンチトレーラーは、「漆黒のヴィランズ」の過去のトレーラーからまた雰囲気を変えてきましたよね。これはどういう意図があるのですか?
吉田氏: いよいよ第一世界という、似ているようで異なる世界が舞台になります。第一世界では光の反乱によって世界が滅びようとしていて、闇を取り戻して、世界のバランスを取り直すというストーリーが描かれます。トレーラーのフィルターとかも注文を付けて質感を変えるようにしていますし、退廃的な雰囲気を出してもらいたいと。
――頽廃感を感じましたね。正直、全体的に薄気味悪いなと感じました。
吉田氏: それは意図してやっているところで、今回のシナリオでもある、停滞、頽廃、これを絵的に表現したいなと。もちろんシナリオにもそういったシーンは描かれますが、あれで全編を作ってしまうと疲れてしまうので、そこはメリハリを効かせています。トレーラーについては、全体を漂う雰囲気をあえてなんというか“ザラザラ”させています。
――トレーラーの半ばで“ファットマン”が出てきますが、彼は光の戦士達に対して攻撃を仕掛けようとしていますが、彼とは戦うことになるのですか?
吉田氏: さぁどうでしょうね(笑)。あの雰囲気で煽ってきてますからね、あるのかなぁ、ないのかなぁ。
――彼は第1世界における蛮神のような存在だと考えて良いのですか?
吉田氏: 彼はユールモアという都市の元首です。ユールモアを取り仕切っていて、どうやら罪食いと何やら共存してそうだと。彼は素直に罪食いの仲間なのか、それとも誰かに操られているのかは、トレーラーを見ながらあれこれ想像してもらいたいですね。
――このトレーラーでまたさらに謎が深まりました。ラストシーンの「ゾディアークとハイデリンは最古にして最強の蛮神」という台詞はいかにも吉田節ですが、あの決定的に重要な台詞をローンチトレーラーに詰め込んだ理由を聞かせて下さい。
吉田氏: 今回、「漆黒のヴィランズ」で「FFXIV」の根幹に根ざすところに踏み込んでいくストーリーになっています。そもそもいったい何なのか、アシエンはなぜ暗躍しているのか、そもそもなぜ世界は14個に分裂しているのか、6属性とはなんだっけとか、霊災はなぜ起きて、再び起こそうとするヤツがいるのかとか。これらについて真っ直ぐに答えを出すストーリーになっています。
別にハイデリンとゾディアークなんてなんとなく蛮神ぽいよねってみんな知っていると思うんです。だからあれぐらいはハッキリ出して構わないと、なぜならそれ以上の衝撃をたくさん用意しているからです。皆さんにはもっと大きなところに期待していただいて良いと思います。
開発チームからは「本当にこれ出します?」と問い合わせが来たぐらいで、「いいよ」と。これを出すことによってそれぐらい今回のストーリーは凄いんだなと思って貰えるんじゃないかと。
――「漆黒のヴィランズ」は、「FFXIV」の根幹の謎が解き明かされる拡張パックという理解でいいのですか?
吉田氏: はい、そうです。
――それでは、パッチ4.xで描かれてきた帝国との決着を付ける云々というのは、全体からすれば枝葉に過ぎないと?
吉田氏: はい、そうです。
――帝国との戦いは5.0である意味で簡単に決着が着いて、パッチ5.xでは想像もできないようなストーリーが展開されるということですか?
吉田氏: あまり言わないようにしておきますが、基本的にはデカくなっていくと思いますね。「漆黒のヴィランズ」中盤から終盤に掛けては怒濤の展開になっていくと思います。
――5.0ではズバリどこまで描かれますか?
吉田氏: 「FFXIV」は私が担当する前からストーリーが存在していて、私が引き継いだ後に、「蒼天」、「紅蓮」、「漆黒」と続いているわけですが、これら一連のストーリーを仮に「ハイデリン・ゾディアーク編」と名付けるなら、5.0でその8割までが描かれます。
――それは楽しみですね。ゲームとしてのボリュームは如何ですか?
吉田氏: シナリオのボリュームは、今までよりちょっと多いかなという印象です。
――見せ方、演出で変えているところはありますか?
吉田氏: 4.xの中盤以降から意識して変えていますが、プレーヤーにもう一段踏み込んだ演技をさせると言うことと、会話シーンに対してしっかり演出を付けてくれということを繰り返し伝えてきました。4.xをプレイしている方からも、「演出のクオリティ上がりましたよね?」って言っていただくことが増えたんですが、基本的にはそれを踏襲している感じです。
会話シーンって、凄く簡単に作れちゃうんですが、雑に作るとつまらないんですよ。あえて全然違うところにカメラを置くとか、会話しているのにろうそくにカメラが向いているとか、別に会話しているから会話した人に向ける必要はないんですよね。その人が言っているセリフを暗示させるものを映すべきです。今回も、割とそういう演出は多いかなと思います。
――ちなみに第1世界のクリスタリウムという街は、「FFXIV」がコードネームRaptureと呼ばれていた頃のビジュアルが使われていますが、当時の素材は全部使ったのですか?
吉田氏: まず、そもそも何も使ってないんですよ。だって、ポリゴン数が半端ではないので、使いたくても使えないからです(笑)。ただ、みんな参考にしてますし、テクスチャの雰囲気を再現するのに、あの映像を見直しましたが、それそのものは一切使っていません。
元はといえば、最初に作ったクリスタリウムが僕の中のイメージにハマらなかったんです。今振り返ると、あのRaptureの映像があって、それが引っかかっていたんだと思うんです。ブルーのドームがあって、黒の梁が出ていて、まるで植物園のようなイメージです。たとえるなら、旧「FFXIV」のギルドリーヴのシーン、「あそこの天井の雰囲気なんだよな」と伝えたら、梁が金になったりして「でも違うんだよな」と。僕は絵が下手なので絵でうまく伝えることができないのでどうしたらいいかなと、うんうん唸っていたんです。
そしたらアートディレクターの皆川が「吉田さんがイメージしているのってこれじゃない?」ってRaptureの映像を持ってきて、「そう、これ」と(笑)。そこで初めてイメージが固まって一気に進んでいった感じです。
――ほー、最初から、「今回はRaptureの素材使うぞ」じゃなくて、途中から差し込まれたんですね。
吉田氏: そうです。だから、別物ではあるので、「あそこまでRaptureを取り込むなんてスゲえなって言って貰えたらラッキーだよね」という話は開発でしています。ただ、いずれにしても、僕の心の中に引っかかっていたのは事実としてあって、その当時から凄いものを作っていたわけではあります。
ただ、そのまま使うのは無理なんですよ(笑)。たとえば、このペットボトルが電球だとすると、電球だけではなく、電球の中のフィラメントまで作られていたんです。それは動かないよねと。当時の残っているものを中心に、アートは特に参考にしたみたいです。
第1世界でも原初世界と同じ暮らしに。理由はビギナーに疎外感を感じさせないようにするため
――もう少し「漆黒のヴィランズ」の基本的な話も聞かせて欲しいのですが、冒険者は第1世界でどのような暮らしを送るのですか?
吉田氏: 冒険者の暮らしですか。冒険者は“謎の呼び声”によって第1世界に行くことになりますが、クリスタリウムに部屋も用意されますし、それなりの生活が送れますよ。宿屋ではなく個室があてがわれ、そこと冒険先を行ったり来たりするイメージです。
――そこでリテイナーも呼び出せるのですか?
吉田氏: 街にリテイナーベルもマーケットボードもありますが、それはあくまで第1世界の人たちが使っているものです。プレーヤーのリテイナーもマーケットもすべて原初世界にあるわけです。で、どうなるかというと、第1世界からリテイナーも使えるし、マーケットボードも利用できるようになっています。それはメインストーリー上でなぜそれが可能なのかキチンと説明されます。
ですから、マーケットボードは原初世界と繋がっていますし、リテイナーは次元の狭間を超えられないので呼べないのですが、別の方法でやりとりが可能なようにしてあります。
――何かをするためにいちいち原初世界に戻る必要はないわけですね。
吉田氏: そうですね。
――コンテンツファインダーなどはどうなりますか?
吉田氏: それはそのままです。なぜ冒険者が原初世界と第1世界を自由に行き来できるのかもストーリーで語られるので、そこは変わりません。
――では、「今第1世界なんだよね、ごめん」みたいなことは一切発生しませんか?
吉田氏: 発生しません。それは遊びとしてもそうですし、原初世界にいるビギナーの皆さんが、ベテランの皆さんが第1世界に行くことで疎外感を感じることがないようにしています。ベテランの方がどこにいようとも、世界は1つだと思わせるような設計にしないとダメだと思っています。ただ、そこはゲームとしての割り切りというよりは、「FF」だからこそこだわって作らないとダメだと思っていて、初期段階からどうやって馴染ませるか考えて作っています。たとえば、アラガントームストーンは第1世界ではどうなるのかとか、そういった細かいところも考えて作っています。
――以前、第1世界は光に支配され、天候がないと仰っていたと思うんですが、これは冒険者の活躍の結果、天候を取り戻すことがあるのですか?
吉田氏: 基本的には地域攻略型になっていて、地域にあるとあるものを討伐すると夜が戻るので、そこから昼夜と天候を取り戻します。ずっと時間の概念はあるんですけど、空がずっとハレーションを起こして明るい状態になっています。完全討伐してその地域を攻略すると、夜が来て、夜と共に天候も変化するようになります。
――それは雨が降ったり、嵐が来たり、原初世界を同じようになる?
吉田氏: なります。
――今回の特徴である地域攻略型のコンテンツですが、実際にどのようにして進めていくのですか?
吉田氏: トレーラーにも登場する大罪食いという存在がいて、プレーヤーは闇の戦士と呼ばれる存在になりますけど、エリアごとに起きている事件を解き明かし、そこのボスを倒すことで、そのエリアが開放されていくイメージです。
――それは当然プレーヤーによって進行度は異なるわけですね? みんなで一斉にレイドボスを倒すみたいな話ではなく?
吉田氏: 異なります。だから第1世界の空の見え方もプレーヤーによって異なることになります。そのためのシステムを用意しました。
――それでフィールド型のコンテンツをプレイする際に、不都合は起きないのですか?
吉田氏: 起きないようにしました。
――それからフェイスは私も楽しみにしているコンテンツですが、これは最終的にどのコンテンツで利用できるようになったのですか?
吉田氏: 5.0で実装されたメインシナリオで行くことになるすべてのダンジョンで連れていくことができます。
――外に連れ出したり、その他のバトルコンテンツで使うことはできないのですか?
吉田氏: それ以外のコンテンツに適用させるつもりはありません。仮に対象範囲を広げるとしてもそれはインスタンスダンジョンに限ると思います。
――外で呼び出したりすることはできないのですか?
吉田氏: パブリックフィールドに呼び出すことは考えていないですね。彼らはミニオンじゃないので(笑)、ヤシュトラはヤシュトラで彼女の冒険があるので、そんなに頻繁に呼び出されたらたまったものじゃないですし、仮にそこで何かが起きたら、その後、どうするんだっていう問題があります。
彼らは5.0で闇の戦士の皆さんと一緒に冒険をしているので、ダンジョンを前にして「よし、行こう!」となったときに、誰を連れて行くかを選ぶ形になります。その際に誰を選択するかを選ぶダイアログがでますので、選んだキャラクターと一緒にパーティーを組むことになります。もちろん、この機能を使わずに、コンテンツファインダーでマッチングして他の冒険者と一緒に行くということもできます。
――フェイスはビギナー向けの施策とも相性が良いと思いますが、今後、原初世界のダンジョンでも呼び出せるようになったりしますか?
吉田氏: 今はまだ悩んでいます。呼んでいただくと分かると思いますけど、凄いコストを使って作っています。それぞれのキャラの個性が出て、なおかつそれがスムーズに動いています。「やる」って決めたら後に引けなくなるんですよ。僕としては5.0のメインストーリーを盛り上げるために、彼らと一緒に冒険に行くというほうが作りがいがあるんですけど、その一方でプロデューサーとして、新規の離脱を防ぐためには、2.0のダンジョンを全部フェイス対応した方がいいのは間違いないんですよね(笑)。
――確かにそのとおりですね。
吉田氏: 2.0コンテンツからフェイス対応を始めたら、5.0に追いつくまでに何年かかるんだって話で、凄く悩ましいです。フェイス自体は、自分たちで作っていて感じることではありますが、もの凄く可能性のあるシステムなので、実際にプレイして頂いて、どう使っていくべきなのかというフィードバックをぜひ皆さんから頂きたいですね。当然、8人コンテンツでも遊びたい人はいるでしょうし、今あるリソースでどこまでできるのかとテストしていたりもしています。ただ、決めたら後に引けないので、まだ決断を先送りしています(笑)。
――別種の“超える力”として、5人目、あるいは9人目として登場したらカッコイイですよね。
吉田氏: 腕の良いプログラマとゲームデザイナーがいないと良いものになりませんし、現時点では汎用のシステムではなく、1ダンジョンずつ補正しながら作っているので、かなり工数が掛かります。まずは皆さんの反応を見たいですね。
エデンは情報なし! 「ニーア」コラボの情報は東京ゲームショウから
――新たなエンドコンテンツの「エデン」ですが、発表自体はかなり早かったですが、その後の情報がないですね。これは出さないのですか?
吉田氏: エデンの中にサプライズが詰まっていて、「大迷宮バハムート」ほどではないですけど、かなりメインストーリーに即したシナリオになっています。もちろん、メインシナリオそのものではなく、クリア後に入れるコンテンツですが、クリアが前提になっているので、非常に言いづらいんですよ(笑)。だから出さないですよ。
――E3終了後のPLLでも情報なしですか?
吉田氏: 出そうと思ったんですけど、不都合があって(笑)。「これ見えちゃいますけどいいですか?」と聞かれて、「これはさすがにダメでしょ」ということになりました。
――では、「エデン」に関して事前情報はないまま……
吉田氏: 突入していただきます。5.0をクリアして2週間後にはノーマルは追加しますので、ぜひチャレンジしてみてください。
――では、質問を変えますが、「エデン」はハイエンドレイドとして、ゲームコンテンツととしてこれまでとどのような違いがありますか?
吉田氏: 関連するキャラクターの成長を感じられるところは今までのレイドと同じです。今までのレイドは、レイド専用のキャラクターを立てるというところが強かったですけど、今回のエデンは、話としてはメインストーリーと地続きに近くて、メインストーリーが終わった後に、とあるキャラクターが絡んできますが、そういう意味では、キャラものとしては毛色が違うかもしれませんね。
――難易度は?
吉田氏: 3.4の天動編でバランスの目安を付けたので、それを踏襲しています。ただ、レベル80時のキャラクターの使い方はまだ慣れていないでしょうし、まだ戦い方を模索している時期だと思うので、普段よりも要求するDPSは低く見積もっています。ただ、ギミックは派手なので、差し引きでいつもと同じぐらいかもですね。
――ヨコオタロウさんとのコラボコンテンツ「ヨルハ:ダークアポカリプス」ですが、いつぐらいから情報を出して行きますか?
吉田氏: 5.1から実装予定ですから、最初は東京ゲームショウぐらいでしょうか。だいぶ「ニーア」っぽいコンテンツになってきています。
――今どれぐらいまでできてますか?
吉田氏: 今ちょうど制作が始まって、ストーリーがほぼほぼ決まって、ボスの企画が決まって、組み上げに入っている段階です。
――E3後に行なわれる第52回PLL(日本時間6月15日7:00放送開始)ですが、ここでは何の情報を出すのですか?
吉田氏: 世界中で注目が高いのはバトル、ジョブ、メカニクスの変更、そしてメインストーリー周りなんですが、当然ギャザラー/クラフターにもUIの変更をはじめ様々な変更が入るので、発売前ですのでその情報をお知らせするのと、あとは小ネタです。こんなオシャレアイテム入ってますよとか、こんなマウントありますよとか、あとはレイドドロップの仕組みの変更とか、山ほどプレイアビリティを上げるアップデートを行なっているんですが、ぜんぜん伝え切れてないんですよ。それを1つずつわかりやすく解説しようと思っています。
あとは5.0リリース後のスケジュールです。2週間後にノーマルレイドがあいて、その2週間後に零式があいて、週制限アラガントームストーンがはじまりますとか、そういった情報ですね。
――青魔道士のアップデートはどうなりますか?
吉田氏: 5.1でレベルキャップの開放とコンテンツの拡充を行なっていく予定です。
――ちなみに吉田さんは第3開発事業部を率いていますが、春に新規プロジェクトの立ち上げが発表されました。それによって「FFXIV」の開発への影響はありますか?
吉田氏: ないと思いますよ。僕が忙しくなってるぐらいで(笑)。両方をやっているスタッフは僕ぐらいです。だってそれはそうですよね、新しいプロジェクトですから。
――でも、「FFXIV」を新生させる際、吉田さんの開発チームは、旧「FFXIV」のアップデートを続けながら、「新生FFXIV」の開発を行なっていましたよね?
吉田氏: あんなことはもう二度とやりませんよ!(笑)。「ドラゴンクエストビルダーズ」もまったく別ですし、同じように別と考えていただいていいと思います。
吉P「PCエンジン mini」を大いに語る
――今回吉田さんに質問したかったのは「PCエンジン mini」です。ハドソン出身の吉田さんに発表の感想を聞きたかったんです。どう感じましたか?
吉田氏: えっ?? 知らないですけど、E3でそんな発表があったんですか?
――ありましたよ。本当にご存じないのですか?
吉田氏: 知りませんよ。忙しすぎて情報を遮断しているんですよ。Twitterに「PCエンジンのタイトルに吉田関わっていたのかな?」とか書いてあって、何で今頃PCエンジンとか「天外魔境」の話をしてるんだろうなと思ったんですが、「PCエンジン mini」だったんですね(笑)。逆質問ですが、それはどういうタイトルが遊べるのですか?
――まだ一部しか明らかになっていませんが、「PC原人」、「R-TYPE」、「THE 功夫」、「ダンジョンエクスプローラー」など、国内版、海外版それぞれタイトルが違うようですが、懐かしの名作がリストアップされていましたね。
吉田氏: それ完全に初期じゃないですか。「R-TYPE」はそれこそ死ぬほど遊び込みましたからね。僕はアーケードでクリアしているんですけど、PCエンジンの「R-TYPE」を遊んだ時に、本当にゲーセンのままの移植になっていて、「こんなに遊べていいんだろうか?」と思ったぐらいよくできていました。
あとは「THE 功夫」。あのドットのデカさが、処理落ちなく動くってPCエンジンの性能凄いなって思ったんです。ゲームとしては大味もいいとこですけど、あれはよく覚えていますよ。あの巨大なキャラクターをドットで動かすのは当時凄いことだったんです。
「ダンジョンエクスプローラー」も秘話がありますよ。もう時効だと思いますが、僕がハドソンに入社して辞めるまでの間に、「ダンジョンエクスプローラー」の新作を作っていました。PS2向けのマルチプレイオンラインゲームを作ろうとしていて、当時会社でかなり良いメンバーを社内で集めて、開発機をもらって、プリプロダクションを立ち上げて、3カ月ぐらい作りました。それを僕は「ダンジョンエクスプローラー」の復活にしたいと言っていたんです。
「ダンジョンエクスプローラー」自体は外で作っていただいたタイトルだったので、版権周りを確認して上で復活させたいと。1つのハードでローカルマルチじゃなくて、オンラインで4人でやりたいと。僕は「Diablo」が大好きだったので、「Diablo」みたいなハクスラベースのゲームになっていて、3カ月ぐらいでプロトタイプを作って凄いスピードで開発していたんですけど、とある日、上司に「中止だ。『ボンバーマン』作れ」と言われて、それでカチンと来て辞めたんですけど(笑)。「ダンジョンエクスプローラー」は良いですよね。盛り上がりますよ。
――PCエンジンの名作が吉田さんのハドソン退社に関わってるとは知りませんでしたね(笑)。いちPCエンジンファンの吉田さんとして収録して欲しいタイトルを1つ挙げるとすれば何ですか?
吉田氏: 「天外魔境」は外せないでしょう。ただ、スペックがわからないので、容量が入りきるのとか、版権周りがどうなっているのかわからないですけど、できれば入れて欲しいですよね。というのも「天外魔境」は、今、当時の環境でちゃんと遊べるハードがないからです。超名作だと思うので、せめて「天外魔境II 卍MARU」まではちゃんと収録して欲しいですよね。
ちなみに僕は幻の「天外魔境III NAMIDA」の開発に関わってました。「天外魔境III NAMIDA」は結局発売中止になって幻になりましたが、実は7割ぐらい完成していたんですよ。僕はハドソンの最初の仕事がそれでした。村人のメッセージを全部僕が書いて、広井さん(広井王子氏、「天外魔境」シリーズクリエイター)にチェックしていただいていました。それからゲーム内のイベント、ミニ劇も僕が統括していました。もったいなかったですよ。超良くできていたのに。という感じで、この話、3時間ぐらい喋れちゃいますので、また別の機会にしましょう(笑)
――わかりました(笑)。それでは最後に「漆黒のヴィランズ」を期待しているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
吉田氏: 1,600万人を達成できたこともそうなんですが、「漆黒のヴィランズ」を発表する前に、課金者数も過去最大を達成しまして、拡張パックがまだ出ていないのに、MMORPGとして尋常じゃない状況になっています。これは普段から遊んで応援して下さる光の戦士の皆さんが、情熱を持ってゲームに取り組み、友達を誘い、イベントを楽しんで下さっているからだと思っています。
自分たちが招いた失敗ですけど、旧「FFXIV」の失敗からここまで来れたのは、本当に世界中のプレーヤーとファンの皆さんのおかげだと思うので、今度は僕たちが拡張パックをリリースして、さらにエキサイトメントを高めていただければと思います。今回もまた絞りかすギリギリになるまで頑張りましたので、ありとあらゆるところを楽しんでいただければあると思います。
メインストーリーについては好き嫌いがあるとは思うのですが、少なくとも僕としては「ファイナルファンタジー」として良い物語が作れたかなと思っているので、何をおいてもまずはじっくりメインストーリーを楽しんで貰えればと思います。
最後にもう1個だけ。クエストをやるときって、クエストを受託するとあとはTODOで、次にどこに行ってという流れになると思いますが、すぐ飛ばずにそこにいるキャラクターたちに話しかけると、僕らが「ヒントトーク」と呼んでいる情報を得ることができます。たとえば、アルフィノに話しかけることで、「次はどこに行って何を探そう」という情報が得られるんです。これは以前からも仕込んでいるんですが、情報が多すぎるので、彼らのトーク自体はTODOに入れていませんが、今回はそれがかなりおもしろくなっています。さらに、重要な情報も入れ込んだりしているので、ぜひあまり急がずにそのあたりも含めてプレイしていただけるとより楽しんでいただけると思っています。
――メインクエストを受託しても速攻でテレポしちゃダメだよと?
吉田氏: そうです。ひととおり話してから行くと良いです、特にロア好きの方とか、ストーリーを奥深くまで掘り返したい方は要注目です。これはぜひ書いて下さい。
――了解しました。ありがとうございました。