インタビュー

【特別企画】人気ゲームキャスターOooDa氏に聞く「全国高校eスポーツ選手権」の魅力とは!?(前編)

いよいよ開幕直前! 初代優勝校が決まる熱い戦いを見逃すな!!

【全国高校eスポーツ選手権】

3月23日:「ロケットリーグ」部門 準決勝、決勝

3月24日:「League of Legends」部門 準決勝、決勝

会場:幕張メッセ1ホール

 日本のeスポーツシーンにおいて、MCに、実況に、ゲストに、引っ張りだこの存在になっているのがゲームキャスター“OooDa(オオダ)氏”こと岡上哲也氏だ。バトルロイヤルゲーム「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の日本リーグ「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS JAPAN LEAGUE(PJS)」のMCをはじめ、「パズドラチャレンジカップ」、「NBPスプラトゥーン2」、「スマブラSP チャレンジカップ」、「DONKATSU TV」などなど、ゲームジャンルを問わず様々なeスポーツイベントのMCを務めている。

 そのセールスポイントである野性味を感じさせる野太い低音ボイスは、eスポーツ観戦と相性が良く、抜群の安定感で安心してその声に身を委ねることができる。とりわけ今は「PJS Season 2」が開催されていることもあり、週末ごとに声を聞いているというeスポーツファンも少なくないだろう。

【ゲームキャスターOooDa氏】

 そのOooDa氏にとって大事な仕事になるのが、3月23日、24日の両日、幕張メッセで行なわれるeスポーツイベント「第1回 全国高校eスポーツ選手権」だ。その名の通り、日本全国の高校、150校以上が参加している高校生大会で、12月に行なわれたオンライン予選を経て、ついに3月に頂点を決めるオフライン決勝が行なわれる。

 なぜ重要なのかというと、主催の毎日新聞社、共催のサードウェーブが本大会を単なるeスポーツ大会ではなく、“文化事業”として位置づけており、その栄えある第1回大会の締めくくりとなるイベントだからだ。

 “eスポーツ”という新たな文化の発展に貢献することに開催の本義があり、野球界最大の文化事業といえる全国高校野球選手権(甲子園)でいえば、OooDa氏はさしずめ実況アナウンサーのポジションになる。筆者は、「甲子園は清原のためにあるのかぁ!」(1985年、第67回大会決勝、PL学園対宇部商、植草貞夫アナウンサーの実況)、「勝負はしません!」(第74回大会2回戦、明徳義塾対星陵、植草貞夫アナウンサーの実況)を生で聞き、小さなブラウン管の前で絶叫していた世代だが、文化事業としてのeスポーツの発展に必要不可欠なのが、そういった長年に渡って心を揺さぶる名実況だと思っている。大会の主役である高校生の活躍と合わせて、OooDa氏の“活躍”にも期待したいところだ。

 さて、そのOooDa氏は、「第1回 全国高校eスポーツ選手権」メインMCとして、予選の全日程でMCを務め、誰より多くの試合を見届けてきた人物だ。今回は、そのOooDa氏に、いよいよ数日後に開催が迫ったオフライン決勝の魅力を語って頂いた。

 OooDa氏とは初の単独インタビューとなるため、「第1回 全国高校eスポーツ選手権」の前段階として、メインキャスターを務めるOooDa氏がゲームキャスターになるまでの経緯、そして個人的に聞きたかったことについても質問してみた。

 インタビュー前編では、OooDa氏のこれまでのキャリアと、「第1回 全国高校eスポーツ選手権」予選大会の感想について。後編では、「ロケットリーグ」部門、「League of Legends」部門それぞれついて決勝大会に出場した各校の特徴や試合の見所、そしてオフライン大会、オンライン配信、それぞれの魅力についてゲームキャスターの立場から語っていただいた。お互い喋りすぎて超ロングインタビューとなってしまったが、「第1回 全国高校eスポーツ選手権」決勝大会の前座としてお楽しみいただければ幸いだ。

【LFS池袋】
インタビュー会場は、予選大会の配信を行なったLFS池袋

元DetonatioN所属!? ゲームキャスターOooDa氏のこれまでのキャリアを辿る

――全国高校eスポーツ選手権がもう来週に迫りました。今回は、メインMCを務めるOooDaさんにその魅力、楽しみ方、それからやはり、全国を対象とした大会なので、会場に来られず、配信を見るという方も多いと思います。そうした方に対して大会の見所などを語っていただければと思います。

OooDa氏: わかりました。

――大会の話に入る前に、いくつかOooDaさん本人についていくつか質問したいんです。OooDaさんはeスポーツ界では、この人ありという感じになっていますが、ひょっとしたら「誰やねん?」と思っている方がいるかもしれない。自己紹介的な意味も含めていくつか質問させて下さい。まず、プロゲーミングチームDetonatioNに所属していたことがあるというのは本当ですか?

OooDa氏: 本当です(笑)。昔、いちゲーマーの時ですが、DetonatioN Gamingに所属していました。はじまりとして、僕がまだ普通のプレーヤーの時に、有志で大会というか、ユーザー大会みたいな「みんな集まって遊ぼう」みたいなイベントに、ボランティアスタッフとして参加したんですね。その時期にチームにお誘いいただきました。

――それはアスリートとして参戦したわけではなくて、スタッフとして?

OooDa氏: そうですね。その大会で、ちょこっと遊びで実況していたら、その中に、DetonatioNの梅崎さん(梅崎伸幸氏、DetonatioN Gaming CEO)から、当時まだDetonatioNが3人ぐらいの時ですかね、「DetonatioNってチームを作ろうと思ってるんだけど、OooDa氏も来てくれない?」、「あー、いいですよー、一緒にやりましょう」って。

――それはいつぐらいですか?

OooDa氏: 2012年ぐらいですかね。僕もお仕事として、年1、2回くらいは実況のお仕事があったくらいです。そのときにDetonatioNに入って。マネージャーというんですか? 選手を応援するお兄さんみたいな感じでしたね。こういう部門あってもいいんじゃない、ああいう部門あってもいいんじゃない、あ、誰々休みなんだ、じゃ、俺代わりに入るわって一緒にゲームしたりとか。日本代表として海外に向かう選手を遠征する前日に当時僕が住んでいた1Kの狭い部屋に泊めたりなどもありました。

――へー、今じゃ考えられないような、曖昧なポジションで入ったわけですね(笑)。

OooDa氏: そうです。当時、DetonatioNが出ていた大会は「Counter-Strike」というゲームですが、そこで自分も所属していながら実況しちゃってたりという、ちょっとおかしな感じではありました。

――梅崎さんは何を見て、何に期待して声をかけたんですかね。要はCeros選手(DetonatioN FocusMe所属選手)と同僚だった時代があるということでしょう?

OooDa氏: それはわからないですね。Cerosさんはいたかな? もう一個前の世代かもしれない。

――それでDetonatioNで何していたんですか?

OooDa氏: 応援です。あとはチームにこの部門増やしませんか?などの提案と相談役でした。「League of Legends」行きましょうよとか、「World of Tanks」行きましょうよとかというので、部門を一緒に作ってて、スポンサー探しのために、いろんなところをまわったりとか。梅崎さんと一緒に営業にまわったりもしていましたね。

――ほー、知られざる歴史ですね。ちなみにインタビューの前に、GAME Watchで調べたんですが、OooDaさんが記事に最初に登場しているのは、2012年12月なんです。サードウェーブ主催の秋葉原PCゲームフェスタの「スペシャルフォース2」の実況。それから、徐々に実況のお仕事が増えているという感じですね。2016年に実施した「攻殻機動隊S.A.C. ONLINE」の企画記事では、取材にご協力いただいたりしています。

【GAME Watch初登場のOooDa氏】
「SPECIAL FORCE 2 Special Exhibition Match 2012」でMCを務めるOooDa氏(参考記事

OooDa氏: そうでしたっけ?(笑)

――そうです。その節は大変お世話になりました。

OooDa氏: いえいえ、ありがとうございます。

――ですから、eスポーツファンの中には、OooDaさんというと、ここ数年で急に出てきたみたいな印象を持っている人がいると思うんですが、実は地道にやられていて今がある。ポッと出ではない苦労人ですよというのは、OooDaファンを代表して伝えたいところですよね(笑)。

OooDa氏: まーまーまーそうですね(笑)。昔から本当にこれが好きでやっているというのがあったので。自然にここ3年ぐらいでゆっくりと仕事が増えていきました。eスポーツ業界の発展とともに一緒に仕事が増えていったなという感じですね。

――今は毎週末ごとにPJSが開催されていますが、お休みないでしょう?

OooDa氏: PJSがあるときはもちろん休めないですね。普段の平日はE5(E5 esports Works、LFS池袋esports Arenaの運営会社)の事務所で働いているので。

【PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS JAPAN SERIES(PJS)】
「PUBG」ファンにはお馴染みの光景となっている「PJS」オープニングの様子

――お休みは、平日に取ってるのですか?

OooDa氏: できるだけ平日取るようにしてます。去年までは、それこそ休みなんてまともに取れてなかったです。1番ヒドい状況で、もう2年くらい前の話になりますけど、幕張であるイベントの仕事で、自分で2トントラックで運転していって、みんなで荷下ろしして、イベントの設営準備して、そこでMCとして出演して、そのまま片付けてトラックで帰るということもやってました。

――それは成(E5 esports Worksの前身となるeスポーツイベント運営会社)時代に、ネクソンさんの仕事ですね?

OooDa氏: はい。とかとか、そういうのですね。今は社員も増えて、キャスター業に専念させて貰っていて、休日出演したら、振休という形で平日にお休みを貰えています。でも、基本的にはサラリーマンです。

――でも、今は街歩いたら声かけられるでしょう? 「あ、あのOooDaさんですか?」と?

OooDa氏: いやいやいやいや、ほぼほぼないですよ。たまにあるくらいですよ。

――そんなことないでしょ?

OooDa氏: 実は僕、全く目が悪くなくて、これ伊達眼鏡なので、普段は眼鏡を取っているんです。

――伊達眼鏡?

OooDa氏: まず気づかれないですね。いまだに目は2.0で、バリバリに良くて。

――なぜ伊達眼鏡つけてるんですか?

OooDa氏: 1番初めは、初めて出演したときは、安易な考えで、ちょっとインパクトを持たせたいな、知的に見えるかなっていうので、眼鏡をかけてみたんです。そのときは普通に伊達眼鏡をかけていたんですが。あとは、目も悪くないのに眼鏡をかけてて、レンズにやっぱりライトとかカメラが反射するので、レンズを抜いて、スカスカの状態です。

【OooDa氏は伊達眼鏡だった】
OooDa氏はレンズ無しの伊達眼鏡だった

――ホントだ(笑)。

OooDa氏: 眼鏡屋さんに行って、レンズ抜いてくださいって言うんですよ。良かったのか、悪かったのかわからないですけど、覚え方として、「あぁ、あの眼鏡の人ね」とか。始めはもっと黒縁だったので、「黒縁眼鏡の人ね」とか、っていう風に覚えてもらえたのは良かったかなっていう風には思います。

――話を戻しますが、DetonatioNに入るくらいですから、ゲーマーではあったんですか?

OooDa氏: そうですね。最近、もう終わってしまったタイトルですけど、そこが多分1番やってたかなと思います。

――「カウンターストライクオンライン」などネクソンさんのオンラインFPSタイトルが好きということですよね。

OooDa氏: そうですね。初めて仕事をもらったのが、ネクソンさんのタイトルだったので、そのゲームをずっと愛し続けていましたね。地方のイベントも参加して遊びに行ったユーザーということもあって、ヘッドハンティングじゃないですけど、引っ張ってもらったというのもあったので、愛着があります。

【カウンターストライクオンライン】
3月6日に惜しまれつつもサービス終了した「カウンターストライクオンライン」。これは2016年に行なわれたオフライン大会の様子。左端に映っているのがOooDa氏(参考記事

――好きなゲームジャンルはFPSですか?

OooDa氏: そうですね。ただ、僕は好みがハッキリしていて、やるゲームはとことんやりますけど、やらないゲームは本当にやりません。たとえば、カードゲームとかは、触ったりはしてますけど、そこまでドはまりしません。イヤな話なんですが、僕の仕事の幅は減るかもしれませんが、お仕事の依頼がきてもかなり慎重に選んでます。実はほぼお断りしています。

――FPSならだいたいOKですか?

OooDa氏: なんですけど、自分が納得、納得というかある程度妥協点、「俺はここまでしゃべれるな」という部分、あとユーザーの人たちに失礼じゃないなと思うタイトルは受けています。ただ、失礼だなと思うタイトルに関してはお断りしています。

――たとえば、今回の全国高校eスポーツ選手権の競技種目である「LoL」とか「ロケットリーグ」は大丈夫なんですか?

OooDa氏: 実況と言われたら「ロケットリーグ」は考えます。「リーグ・オブ・レジェンド」は正直お断りすると思います。ただ、MCだったら大丈夫です。大丈夫って言い方はあれですけど。MCはやはり、選手、出演者の方をしっかり立てて、お話を引き出して。最低限の話をして盛り上げる役割ですので、それは大丈夫です。

――なるほど、解説のお仕事とMCのお仕事はハッキリ切り分けているわけですか。MCであれば、どのジャンルでも何でもOKですか?

OooDa氏: だいたい大丈夫ですね(笑)。ただ、解説となると、また実況とは違った知識になってくるので、僕のフィールドではないかなという。そこはそこでちゃんと話せる人もいるし、盛り上げてくれる人もいますからね。

――たぶん多くの人が知りたがっているのは、FPSの腕前だと思うのですが、全盛期でどれぐらいうまかったんですか?

OooDa氏: 平均点くらいだったと思います。

――プロを目指せるというレベルではない?

OooDa氏: 全然そんなレベルではないです。「あの人強いよね」って言われるもっと手前ぐらいです。普通に野良で遊んでいて、真ん中よりちょっと上くらいのスコアだと思います。シューティングでも下手なゲームは本当に下手なんですよね。正直言うと「PUBG」はものすごく下手です(笑)。

――あれだけ実況やってるのに?(笑)

OooDa氏: ものすごく下手です。

――あれだけ試合を見てるのに?

OooDa氏: そうです。ものすごく下手です。ただ、別のシューティングになると、全然撃ち合えたりとか、「OooDa氏、強いじゃん」って言われるぐらいではあります。

――その「OooDa氏、強いじゃん」と言われるゲームってなんですか?

OooDa氏: タイトル言っちゃっていいですか? それこそ「Counter-Strike」とか、「サドンアタック」もそうですし、あとは、「Apex Legends」、「オーバーウォッチ」も、まぁまぁって感じですかね。

――いやー、意外ですね。「PUBG」はかなりうまいんだろうなぁって思ってました。

OooDa氏: いやいやいやいや。

――結構、いっぱし語ってるじゃないですか。

OooDa氏: いっぱし語ってますか。このゲーム難しいんだよっていうのを逆に伝えられてるのかもしれないです。だから「この人たちすごいんだよ」っていう意味で伝えてるのかもしれないですけど。本当に苦手ですね。「PUBG」の難しさって……「PUBG」の話になってますけど大丈夫ですか?(笑)。

【いっぱしに「PUBG」の戦術を語るOooDa氏】
「PJS」で「PUBG」のセオリーを語るOooDa氏。そのわかりやすい説明には定評があるが、実は「PUBG」は苦手だという

――大丈夫です。OooDaさんのFPSの腕前の話です。

OooDa氏: バトロワ系の難しさっていうのは、ルート取りだったりとか、撃ち合い。特に「PUBG」って偏差撃ちって呼ばれる、狙ったところにまっすぐ飛ばない。例えば遠い距離だったら、少しその距離を見て、スコープを見て、ちょっと上からふわって撃たないといけないですし、後は走ってる人とか車だったら、進行方向に対して、その偏差も含めてこのへん狙ってちょうどみたいな。あとはリコイルコントロールというのが他のゲームよりもかなりシビアかなと。その分、当てたら凄いし、勝ちに繋がるわけですけど、ちょっと、僕には本当に難しいですね。

――お話を伺っていると「DetonatioNに所属していた」というと、ちょっと語弊がありそうな感じですね(笑)

OooDa氏: まぁ、そうですね(笑)。プロ選手というよりは、マネジメントというか、チームを、eスポーツを盛り上げようっていう、その思いでしたね。

――OooDaさんのキャリアでユニークなのは、DetonatioNから成に移籍しているところですよね。

OooDa氏: ちょうど成に入社が決まって、DetonatioNを辞めたみたいな感じです。居たらまずいな、っていう意味で。けんか別れとか全くなくですね。

――ゲームが好きで、ゲームキャスター、チームマネージャーとしてDetonatioNにいたのに、なぜ成に移ったんですか。成の創業者の長縄さん(長縄実 E5 esports Works代表取締役社長)とは、BIGLANを主催されていた頃からのお付き合いですが、当時はeスポーツだけの会社ではなかったですよね?

OooDa氏: そうなんですけど、もともと僕、PCデポ(PC量販チェーン)でずっと働いてて、そろそろ社員にならないかって言われてました。一部門任されたり、そのリージョンの地域の会議に出席したりしながらも契約社員の立場で、くすぶってるところもあって。どうしようかなって思っていたんです。

 仮に社員になると、土日の拘束というのは間違いないから、eスポーツイベントにも出られなくなるし、そっちの夢はもう追えないなと思って。その時、成が有志で毎週バラエティ番組をやっていたんです。2011年ぐらいから隔週でバラエティ番組を無償でやっていたんです。

――ああ、やってましたね。

OooDa氏: 「OnPlayerSTREAM」という番組なんですが、SHAKAさん(DeToNator所属ストリーマー)や、YamatoNさん(DeToNaTor所属ストリーマー)、江尻さん(江尻勝氏、DeToNator代表)といったゲストが出てて、ほかにも僕とか梅崎さんも一緒に出ていました。今振り返るとちょっとまだ早すぎたなという番組なんですけど。その番組でお世話になったり、それ以外にも2回ぐらいの成から仕事をもらって、長縄から仕事をしながらより出演のチャンスを広げてみないかっていうふうに誘われたんですね。「じゃ、こっち行こうかな」っていうのがきっかけです。

【OnPlayerSTREAM時代のOooDa氏】
「OnPlayerSTREAM」配信のワンシーン。ピンクタイツではっちゃけているのがOooDa氏。まだ配信はニコニコチャンネルから見ることができる

【岸大河・OooDaのスタングレネード】
OooDa氏は現在、同業のゲームキャスター岸大河氏と一緒にeスポーツ番組「岸大河・OooDaのスタングレネード」を配信している。当時と比べるとずいぶん落ち着いた印象を受ける

――やっとすべてが繋がりました。成のPC事業をゼロから覚えるのは大変だろうなと思ったんですが、もともとPCに関する知識があったんですね。

OooDa氏: そうです。ただ、PCデポはPCに興味があってちょっと行ってみた。それはPCゲームにハマってからなんですけどね(笑)。

――紆余曲折があってMCになったわけですが、一気にゲームキャスターとしてトップスターまで駆け上がりましたよね。

OooDa氏: トップスターなんてまだまだまだ。いつ消えるかわからない(笑)。本当にいつ消えるかわからない人間です。でも、しがみつきたいとは思ってますけど。

――今の本業である実況、MCについて、これは何がきっかけだったんですか?

OooDa氏: 成の前からボランティアスタッフをやってる中で、「俺らも配信してみたいよね」っていう話になって、「誰がしゃべる?」、「じゃ君今日しゃべってみようか」と運営の中でなって、「じゃ、やってみますー」が始まりです。初めは知り合いのうまい子を呼んできて、一緒に実況解説っぽいことをずっとやってて、それが毎週土日ごとに、今のPJSみたいな感じで、シーズン毎にずーっとやり続けているとこんな感じになっちゃいました。

――ゲームキャスターというお仕事について、私はeスポーツを2001年ぐらいから見ていて、諸説あると思いますが、日本のeスポーツ界の初代のゲームキャスターはnao-k氏(加賀直柔氏)だと思っています。ただ、当時はeスポーツの市場がまったくなかったので、4dNのマネージャーを務めたり、うちでライターをしながらキャリアの継続を模索しましたが結局うまくいきませんでした。eスポーツアスリートと同様、ゲームキャスターも苦難の時代が長かったと思いますが、OooDaさん自身はどのように見ていますか?

OooDa氏: いたのはいたんですけどね。プレーヤー上がりの方に実況して貰って、でもやめて、っていう繰り返しではあったと思います。

――岸さん(岸大河氏、元プロゲーマーのゲームキャスター)や、OooDaさんのように、ゲームキャスターが商売になるというのはここ数年の話ですよね。

OooDa氏: はい。今でも活躍されている方だと、格闘ゲームならアールさんだったり、シューティングゲームだったらyukishiroさんなど、何人かいらっしゃいますね。

【同僚yukishiro氏がゲームキャスターに復帰】
OooDa氏が名前を挙げたyukishiro氏は元成で、OooDa氏の先輩に当たる人物。数年前に成を離れ、スクウェア・エニックスの「フィギュアヘッズ」の運営に携わっていたが、E5に戻り、3月16日、17日に行なわれたPJS Season2 Phase2 PaR(入れ替え戦)の実況を担当していた(写真左)。成の2枚看板が復活している

――その点OooDaさんは、プロゲーマー上がりではないという意味では、異色の人材ですよね。シンイチロォさん(元吉本興業所属の芸人、eスポーツキャスター)と同じようなキャリアですよね。

【シンイチロォ氏】
元吉本の芸人で、eスポーツキャスターとして活動するシンイチロォ氏。写真は「ハースストーン」のイベントに出演しているところで、OooDa氏が苦手なカードゲームに強い

OooDa氏: ん~近しいのかな? あくまでも一般のユーザーでした。岸くんは「スペシャルフォース2」で日本代表でしたからね。

――いいにくい話だとは思いますけど、ご自身のキャスターとしての魅力っていうのは、何だと思いますか?

OooDa氏: 多分楽しくやってることじゃないですか? その中で、僕の中で、楽しくやる。ただ、その場面その場面でわきまえてるとか、楽しくてもただ、笑っているだけじゃなくて。その中でも真剣な勝負ですし。選手たちおのおのが、ファンの方々が見てる中で、プロ意識を持ってプレイしている、その思いがあると思うので、そこをちゃんと大切にして、それでもみんなで楽しむことを忘れないっていうのを重要視してます。

 これが本来のスポーツだったら、多分もっと楽しむ部分が少ないかなと思うんです。真剣にスポーツマンシップに則って、というとこなんですけど。プラスやっぱり、eスポーツはゲームであって、非現実的なこのゲームをする楽しさっていうのを忘れちゃダメだなって思っています。真剣に楽しむですかね。そこが自分の魅力かなとは思ってますけど。

――そしてOooDaさんのおもしろいところは、“会社員キャスター”というところですよね。

OooDa氏: そうですね。今なかなかいないと思います。

――E5に所属していて、E5というのはインタビュー会場に使わせていただいたこのLFS池袋を運営してる会社であり、親会社はGALLERIAを展開するサードウェーブです。という点では実はPJSやLJLで活躍しているプロゲーミングチームRascalJesterとは、同じグループなわけですよね。

OooDa氏: ある意味、親戚関係みたいなところなんですよね。ただ、そこはあんまり押してません。

――そうですよね。自身の口から語ったことは1度もないですよね。

OooDa氏: たとえば、全面的に「サードウェーブグループの人間です」みたいに押しちゃうと、僕を使っていただいてる競合他社さんが使いにくくなると思うんです。

――そうですね、実際、今MCをされているPJSだったらユニットコムさんがメインスポンサーですもんね。

OooDa氏: そうですね。ユニットコムさんのゲーミングブランド「LEVEL∞」の名前を冠した「LEVEL∞アップ」というeスポーツイベントがありまして、僕はそこのメインMCとしてずっとやっています。

――それって冷静に考えると凄いことですよね(笑)。

OooDa氏: そうですね。サードウェーブグループの人間が「LEVEL∞買おうー!」って言ってるので(笑)。ただ、LFS池袋やE5もそうですが、基本グループ会社ではありますけど、競合してるものは置かない、使わないという縛りはないんです。LFSも極端な話、PC全部他社のものに入れ替えてもOKですし、そこはeスポーツを盛り上げるための団体、施設として活動させていただいています。

――そういった意味では、サードウェーブさんも度量がありますよね(笑)。たとえばPJSももともとαリーグの段階ではGALLERIAでスタートしましたけど、スポンサーの変更に伴い今はご存じの通りLEVEL∞が使われています。これに合わせてキャスターもOooDaさんから誰かに変わる、あるいは降ろされるという、“ダメな外圧”があってもおかしくないケースですけど、OooDaさんが適任だから継続するという健全なチョイスが行なわれている。これはとても良いことだと思いますね。

OooDa氏: 多分、サードウェーブの取り組みとして、全国高校eスポーツ選手権も、LFSもそうだと思うんですけど、自分たちでeスポーツを独占しようとか、自分たちの名が広がればいい、ではないとは思ってます。もちろんそこも後からついてくるもんだとは思うんですけど、それよりももっとeスポーツっていう文化を採算度外視してでも広げていかないといけないなという重要性をわかっています。グループ会社ですけど、LFSでスマートフォンのゲームのイベントをやることもありますし、そこはもちろん好きにしていいですよってことだと理解しています。

――サードウェーブさんから、禁止事項なのはないんですか。「岡上さん、頼むからこれやめてくれよ」っていうような。

OooDa氏: ないです。あったら僕が怒ると思います(笑)。

ゲームキャスターとしてのこだわりを感じさせてくれた

予選から盛り上がりを見せた「全国高校eスポーツ選手権」

――さて、すでにいっぱい語って頂いたような気がしますが、ここからが本題です(笑)。いよいよ3月23日、24日に「全国高校eスポーツ選手権大会」の決勝大会が行なわれます。その予選が12月に実施され、私も見てましたけどかなり盛り上がりましたね。まずは予選から振り返っていきたいと思います。あの4日間は如何でしたか、大変だったのではないかと思いますが。

OooDa氏: まぁ大変でしたけど、我々の負担だけいうと、全然大したことないです。実況解説がいましたから。大会の規模によっては、実況の人がMCも進行も一緒にやっちゃうよみたいなイベントが多かったりするんですが、ちゃんと立て付けというか、役割がはっきりしていました。僕とケインさん(ケイン・コスギ氏、スペシャルサポーター)のほかに、実況、解説、アナリストの3名がいてしっかりとどこが面白かったのかを紹介してくれて、こんな子たちが、こんな学校のみなさんが出てますよっていう紹介をしっかりしてくれて、ゲームの盛り上げも実況解説の方々がしてくれてという。その5人の連携もすごくとれていたので、大変ではありましたけれども、みなさん5人とも楽しんでいました。

【「全国高校eスポーツ選手権」予選大会】
MCを務めたOooDa氏
スペシャルサポーターのケイン・コスギ氏

――史上初の全国の高校生を対象とした選手権大会。プロではなくアマチュアということで、日本では今までにない形の大会です。実際、予選のMCを務め、4日間の戦いを見届けてどのような印象を持ちましたか?

OooDa氏: まずすごいなと思ったのが規模ですよね。例えば、高校生の方だけ参加募集OKです。高校生大会です。っていうのは、やろうと思えばできると思いますし。「LoL」の大学生リーグ「LeagueU」のように、これまでにもちょこちょこあったと思うんですよ。ただ、今回の大会は、eスポーツっていうものを、根付かせたい、文化として残したい、プラス引き合いにだしていいのかわからないですけど、「甲子園」なんですよね。

 やっぱり僕らが目指すのは「甲子園」かなっていうところもあって、生半可な覚悟じゃダメだなと。もちろん、これだけ大きいことやってることもあり、お金の面でも凄いんですが、それ以上に大会のフォーマットというか仕組み作りは、ほかではできないんじゃないかなっていうところがあります。

 例えば、参加したいという高校に対して1校ずつ連絡を取り合って、責任をもって回る。参加する高校生はまだ16歳とかの学生なので、学校からしっかりと承諾を取った上で参加してもらったりとか。PCをもってない学校に対しては支援プログラムでPCを貸し出しますと。それは別に多少勉強で使っても構いませんし、最終的にeスポーツ、部活として使用していただければ貸し出しますよというプランを紹介したりとか、これはほかの企業さんではまずできないんじゃないかと思っています。

――実際このアマチュア大会、高校生の大会を、MCするにあたって、気をつけたことって何かありますか?

OooDa氏: 僕って、いろんなイベントもそうなんですが、ファンの人に失礼があったらダメだなっていうところをまず念頭に置いています。今回の高校生大会の場合は、まずは参加する選手の方々に失礼のないように。それを見ている親御さんや学校関係者。高校生大会というものに興味があって、初めてeスポーツの競技を見られた方。例えばeスポーツは知らないけれど、同じ学校の友達が出るならちょっと応援して、観てみようよという子たちにまずは失礼のないように。なおかつその人たちに興味を持ってもらえるようなお兄さんになろうと思って頑張りました。真剣過ぎず、ふざけ過ぎず、ちょうど体操のお兄さんくらいのイメージで。「はい、みなさん始まりましたよ」、「ああ、そうですね」というイメージですね。

――PJSをはじめとしたプロのイベントに比べると、ちょっと真面目なお兄さんな感じですか? どうしようもないギャグはあまり言わず?

OooDa氏: そうですね。そこはあまり言わず(笑)。

【どうしようもないギャグは封印】
PJSでは、OooDa氏がくだらないギャグを言い、SHAKA氏にそれを無視されるという掛け合いが魅力だが、全国高校eスポーツ選手権では封印しているという

――親御さんなど関係者から、OooDaさんの実況に対して何か意見が寄せられたりしましたか?

OooDa氏: 親御さんからはなかったですが、学校の先生からはFAXで連絡が届いてまして、「ここ何か月の間生徒さんたちが一丸となって練習して、試合してというのを身近で観てきて、eスポーツやゲームに対する考え方も変わりましたし、もし第2回、第3回があるのか分かりませんが、今後とも積極的に参加していきたいと思っています」、というような先生からの文章を頂いた時には、何か残せたなと。

――全国高校eスポーツ選手権が目標として掲げる“文化事業”にちょっと貢献できたかなという気持ちですか?

OooDa氏: そうですね。その一部になれた。その手助けができたというところが本当に光栄ですし、今後とも広がっていけばいいなあ、ひとつでもなにか残していければいいなと思います。

――予選の戦いについてですが、私も仕事の合間にところどころ見ていたんですが、粗削りだけどキラキラするような、甲子園で言えば松坂大輔投手率いる横浜高校みたいな、ああいうドラマと感動を感じたんです。実際OooDaさんは全部しっかり見ているわけですよね。どんな感想を持たれましたか?

OooDa氏: ちょっと中村さんと同じ感想になるかもしれないですが、例えば1チームでエース選手、もうずっとこのゲームやってたんだというめちゃめちゃ強い選手がいるんですね。プロと同レベルの。そのメンバーはどうかというと、初心者だったり、この大会があったから参加したんだなという人たちとのチーム編成だったり。ただ、それでも各役割をしっかり担っているというか、できないならできないなりに今持てるすべてを出しているというのがゲームから伝わってきて良かったですね。

 例えば「ロケットリーグ」で言うと、上手く空中でドリブルして相手のゴールに入れることはできないけれど、相手にプレッシャーを与え続けることはできると。車両をぶつけてぶつけてボールを持たせないとか。ひたすらワンゲームそれに集中している子とかがいて、そういうのを見ると、ああ、いまできることを最大限にやっているんだなと。あとはエース級のプレーヤーがどんどん詰めていく、みたいな。もう1人はしっかりとディフェンスをする。そして上手い人にちゃんとアシストをする連携。

 それは「LoL」も同じで、自分たちがいまできること、持てるすべてを出しているなと言うのがゲーム上から伝わってくる。それはゲームを知っていないと伝わらないというのはたぶんあると思いますが、それを見る事ができて、それは先ほどおっしゃった松坂選手がバーンと出てきたイメージと一緒で、青春というかキラキラするものをやはり感じましたね。あとは我々が視聴者の方にそういったものをどう伝えていくかですね。

(以下、後編に続く)