インタビュー

「デビル メイ クライ 5」開発者インタビュー

Vはビジュアル、バトルの双方で個性が際立つ存在

3月8日 発売予定

価格:
【パッケージ版】
6,990円(税別)
【ダウンロード版】
6,480円(税別)
【デラックスエディション】
7,400円(税別・PS4/Xbox One版)
7,436円(税別・PC版)
CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 3月8日にカプコンから発売される「デビル メイ クライ 5(以下、DMC5)」。GAME WatchではこれまでにもE3gamescom東京ゲームショウのタイミングで本作に携わるスタッフへのインタビューを行なってきたが、発売まで約1カ月に迫ったこのタイミングで、あらためて話を聞く機会が得られた。今回のインタビューに応じたのはディレクターの伊津野英昭氏、プロデューサーを務める岡部眞輝氏、マシュー・ウォーカー氏の3名。いずれも「デビル メイ クライ 5」の開発を引っ張ってきたキーマンと呼べる人物だ。

 今回のインタビューの大きなテーマは、その存在こそ明らかになっていたものの、詳細が語られてこなかった3人目の主人公”V”について。Vとは一体何者で、ゲームにどんな変化をもたらすのか、そして悪魔との戦闘における実力は……。事前のプレイレポートで得た知識を交えつつ、発売前に聞いておきたい質問をぶつけてきた。

左からプロデューサーを務める岡部眞輝⽒、ディレクターの伊津野英昭⽒、プロデューサーのマシュー・ウォーカー⽒

どういう戦い方がベストなのか模索してほしい

――新キャラクターとして登場するVですが、どのような経緯で誕生したのでしょう。

伊津野氏:「DMC5」の企画を立ち上げたときから「ダンテとネロとはまったく違う遊びの、新しい主人公は必要だろう」という話は挙がっていたんです。まったく違う、つまり既存の戦い方の発展形ではなく、プレーヤーの触り心地を違うものにしたかったのです。具体的には攻撃する場所と、守るべき場所を別々にすること、右目と左目で別々のところを見るようにしたいと考えました。

――今までの作品とは違う体験を味あわせることがスタートラインだったと。

伊津野氏:「デビル メイ クライ 4」のときはネロが登場してデビルブリンガーという新要素も入りましたが、それでもダンテと全く異なるとはいえない範囲でした。それだとずっと似た緊張感が続いてしまい、プレイしてると疲れてしまうんですよね。だから新しい主人公を入れて、また別角度の緊張感を味わってもらいたかったんです。Vのアクションが簡単というわけではなく、少し味を変えるような、そんな感覚です。

――ダンテとネロとVの3人がプレイアブルキャラクターとして登場しますが、ストーリーでは3人をバランスよく使うことができるのですか?

伊津野氏:ストーリー中に限れば、Vは若干少ないかもしれません。その代わりキャラクターを選択できるミッションがいくつかあり、Vがお気に入りであればそこで自由に使うことができます。


――ストーリーの面では、Vはどのように絡んできますか?

伊津野氏:今はまだ敵か味方か謎が多くて、その謎がどうストーリーに関わるのか……関わることは間違いないので、楽しみに待ってもらえると嬉しいです。

岡部氏:ダンテに魔物の討伐依頼をしたかと思えば、ダンテを刺そうとしたり、いろいろ謎が多くて、重要な存在であることは確かです。これまでに公開したトレーラーを見て、謎を溜めておいてもらうとより楽しめると思います。


Vはどのようにストーリーに絡んでくるのか……?

――アクション面での見どころについても教えてもらえますか。

ウォーカー氏:Vは魔獣を召喚して戦うわけですけど、その間もV自身は無防備な状態です。プレーヤーはVの身を守りつつ、魔獣を動かして攻撃をしなければいけません。また魔獣がどんなに攻撃しても悪魔は倒れず、Vがとどめを刺さなければいけないんですよね。攻めるか、守るか、どこでとどめを刺しに行くかの駆け引きも面白いところだと思います。デビルトリガーゲージを使うと、魔獣が自動で戦ってくれますし、感覚が違うといっても遊びやすさは変わらないです。

伊津野氏:1体を自動で戦わせて、プレーヤーはもう1体の操作に集中することも可能ですので、慣れるまでは試してもらいたいですね。これまでのネロ、ダンテと比べると操作している感覚はまったくの別物なので、シリーズの経験者であってもどういう戦い方がベストなのか、模索することになると思います。全員が同じ条件で、探りながら発見していくのがVの最大の魅力ですね。

――3体の魔獣、シャドウとグリフォン、ナイトメアのビジュアルではどんなこだわりを持って制作したのでしょうか。

伊津野氏:四足歩行のシャドウは体にキラキラ光る粒があるんですけど、これは磁性流体や砂鉄のように形が自由に変化する表現を目指しました。散りばめた粒は、ハードのスペックいっぱいいっぱいまで表示できるまで詰め込みましたね。グリフォンに関しては1作目をプレイした方には懐かしい存在だと思います。当時は雷の技に苦しめられたと思いますけど、今回は自分で使えるというわけです。足の後ろにも羽があって、飛んでるときは垂直尾翼のようになるんです。細かいところですけど、スタッフには作り込んでもらいました。

 ナイトメアはドロドロ感を自然に見せることを重視しました。それでいて同期してない感と言いますか、同じ行動をループさせず、前後の動きを計算することも大切な作業でした。あとはVがナイトメアを呼び出したときの出現方法ですね。地中から現われたり、壁を突き破ってきたり、ロケーションによってさまざまで、どれもが中二の極み、みたいなところがあります(笑)。

【魔獣】
姿を自在に変形させる「シャドウ」
雷の力を使う大型猛禽「グリフォン」
ゴーレムのような超大型悪魔「ナイトメア」

――ナイトメアにはV自身が乗り込んで、操作もできるんですよね。

伊津野氏:それはもう、あんな大きい魔獣ですから「操作したいよね」という想いで生まれました(笑)。それ以外にもグリフォンが2段ジャンプの助けをしてくれたり、シャドウは回避行動のとき出てきてくれたり、パートナーとしての役割を果たしてくれます。

――グリフォンは3体の中で唯一言葉を喋りますが、なぜそのような形になったのでしょう?

伊津野氏:Vは設定として体が弱く、寡黙で謎のある人物という前提があります。そんな設定がある以上自分語りを差し込むのも難しく、言葉で性格を表現するのが難しいと。そこで出た案が、グリフォンに喋ってもらって、会話をする中でVの個性を感じ取ってもらう形でした。でも魔獣が全員喋ると今度は……。

岡部氏:ちょっとにぎやかすぎますよね。それはそれで見てみたいですけど(笑)。

伊津野氏:(笑)。という話もあって、言葉を話すのはグリフォンだけに絞りました。「スター・ウォーズ」だと会話ができないチューバッカやR2-D2に対して、C-3POがきれいにまとめてくれるじゃないですか。グリフォンが魔獣の翻訳、ツッコミ、V自身の説明といろいろな役をやってもらっているのです。

――Vのビジュアルという点ではいかがですか?

伊津野氏:まずはロングコートですね。ロングコートは3Dのアクションゲームだととても映えて、あるとないとではインパクトに大きな差が出ます。Vが着るならロングコートというのは初期から決まっていました。その一方でちょっと病弱というか、ダンテとネロのしっかりとした骨格ではなく、Aラインになるよう意識しました。杖をついて歩いたり、ニヒルな一面もありますよね。

岡部氏:いかにも戦わなそうな服装も面白いですよね。コートはノースリーブだし、つっかけサンダルだし(笑)。でもノースリーブのおかげタトゥーも目立つし、Vを象徴するたくさんのポイントが上手く表現できていると思います。

ウォーカー氏:3人が並ぶとそれぞれに個性があって、新しい「デビル メイ クライ」だなと感じますね。ネロの髪の毛を短くしたことで、ヘアスタイルも三者三様ですし。

――持ち物が杖と詩集というのも、「デビル メイ クライ」の中では個性が際立っていますよね。

伊津野氏:杖に関しては最初のデザインのときから決まっていて、私自身魔獣を操るなら杖しかないだろうと考えていました。杖自体も体を預けられるオーソドックスなものですけど、細かいところまで描ききって若者らしさも感じられるようにしました。

ウォーカー氏:詩集はバトルシステムにも絡んできますけど、Vが好んで持っているという設定から始まったんですよね。

伊津野氏:もともとウィリアム・ブレイク(注:イギリスの詩人)が好きで、詩をいつも読んでいる設定が先にあったんです。ゲーム中でも本を読むアクションがあって、その間はデビルトリガーゲージが溜まる仕組みになっています。詩集を読む間は完全に無防備な状態になるんですけど、敵に近づけば近づくほど素早くゲージが溜まります。安全な場所でゆっくり溜めるか、リスクを負って近づくかの駆け引きもV編のポイントになりますね。

ウォーカー氏:敵がまったくいないときも読むアクション自体はできますけど、ゲージは一切溜まりません。単純に詩集を読んでるだけなので注意してください(笑)。


【Devil May Cry 5 - Main Trailer】

重要なのは「戦闘フィールド全体を見る力」

――今までとの違いを意識して生まれたVですけど、ボタンの配置自体はまったく同じですよね。

伊津野氏:ボタン配置を同じにすることも当初から決めていたことであり、「同じように遊べる」という強い気持ちを持って挑んだところです。今までと違う遊びではあるものの、操作の感覚まで変えるととっつきが悪すぎます。あくまでも戦い方のみを変える方向性を狙いました。チャンスのときに押すべきボタン、ピンチのときに押すべきボタンはネロやダンテと一緒で、そこで迷う人はいないと思います。

ウォーカー氏:ダンテ、ネロとの違いは、近距離攻撃と遠距離攻撃を同時に撃てることです。

伊津野氏:そのおかげもあって、戦闘フィールド全体を見る力が問われますよね。

岡部氏:ユーザーの皆さんがどういう風にVを動かすのか、映像を見るのが今から楽しみです。基本は敵から離れて戦うと思うんですけど、アグレッシブに動く人もいるでしょうし、私たちにとっても新たな発見があるかもしれませんね。

――シャドウとグリフォンにヒットポイントがあるのも、画面全体を見る要因のひとつかと思います。

伊津野氏:彼らは強力なパートナーですけど、無敵にしてしまうと一方的に攻撃して終わりですからね。ボス戦のときだと、いつの間にかピンチになっているケースもあるかと思います。そうならないためにも、ヒットポイントが少なくなったら回避行動などで魔獣をVの近くへ呼び寄せて、温存するなどの判断が必要になってきます。仮に2体とも倒れてしまうと大ピンチになるので、どちらかだけでも生存させるようなプレイが大切ですね。

――もうひとつ、仮死状態になった敵へのとどめを刺すアクションも独自の要素だと思います。こちらはどのような経緯で導入されたのでしょう。

伊津野氏:やはり魔獣に戦わせるだけで自分は安全なところで逃げるだけでは面白くありません。いつかはかならず戦闘の最前線に行かなければいけない状況を作りたかったのがきっかけです。これによって魔獣とVの役割分担というか、差別化にもつながり上手くまとまったと思います。

ウォーカー氏:近づかなければいけない状況という意味では、魔獣が戦闘不能になった「ステイルメイト状態」のときも同じことが言えます。ステイルメイト状態になった魔獣は球体のコアとなり、その場に浮かんでいます。そしてVがコアに近づくと、素早く復活できるんです。ちょっとリスクを負って近づかないとなかなか復活してくれないので、プレイする皆さんにとってはいい悩みどころになると思います。


Vは魔獣が弱らせた敵に、直接トドメを刺す必要がある

――以前のインタビューでは、ハードのスペックが上がり滑らかになったことで、「アクションの不気味の谷」が生まれると語っていました。Vでも同じ現象はあったのでしょうか。

伊津野氏:Vに関して言うと全然そんなことはなくて、普通の移動と、あとはとどめを刺すアクションくらいしかないんです。魔獣たちに関しても同様で、シャドウは攻撃に合わせて姿を変える特性を持っていて、攻撃のキャンセルで姿が変わってもあまり違和感はありませんでした。猛禽類のグリフォンも遠距離攻撃ということもあって、激しいアクションはあまりないんですよね。それとナイトメアも、動きがゆっくりなので不気味の谷にはまることはなかったです。

――スキルを覚えるのにオーブを使いますけど、これって全キャラクターで共有するじゃないですか。どのタイミングで誰にスキルを覚えさせるのかとても迷って、実に意地が悪いなと(笑)。

伊津野氏:確かに(笑)。やっぱり理想は1番使いたいキャラクターにつぎ込むことだと思います。でも今使っているキャラクターを強化しないとボスに苦戦するかもしれないし、そこで悩む楽しさというのも、3人に増えたことで生まれてくるかもしれませんね。それに加えてバトルで負けてコンティニューするときも、数は少ないですけどオーブを使うんです。そこでもまた悩みが増えるかもしれないですし、皆さんなりの最適な使い方を見つけてほしいです。

――東京ゲームショウ 2018でのプレイアブル出展以来、日本でのプロモーションも本格化してきたと思います。その中での手応えはいかがでしたか。

伊津野氏:「PlayStation祭」に出展して、店頭体験会も積極的にやらせてもらって、非常に好感触かなと思います。それに2月7日からはPS4版の体験版も配信されて、作品に触れる機会はさらに増えました。ただ、体験版でも触れるのはネロだけで、Vを動かすことはできないんです。そこだけは製品版の楽しみとしてとっておいてもらいたいですね。

岡部氏:3人の主人公は、インプットは同じでもそこから生まれるアウトプットはまったく異なります。ネロで操作方法を覚えておけば他の主人公でも活かせるのは素晴らしいバランスだと思いますし、まずは体験版で味わってもらいたいです。

――最後に、ファンに向けてのメッセージをお願いします。

伊津野氏:まずは体験版をプレイして、雰囲気を予習してもらえると嬉しいです。Vについては発売まで触る機会はないですけど、この記事を読んで楽しみを膨らませてほしいです。あとは前日譚を描いた小説も発売されます。ストーリー的な予習としてはこれ以上ないものに仕上がっているので、ぜひそれも手に取ってもらいたいですね。

ウォーカー氏:10年ぶりのナンバリングということで、いろんな仕掛けを用意しています。濃いファンであればあるほど楽しめると思います。できればデジタルデラックス版を予約して、発売までお待ちください。

岡部氏:これまでに培ってきたフランチャイズのすべてを集約して作った作品です。継ぎ足し続けた伝統のタレみたいな味わいがあると思います。ファンの人は間違いなく楽しめる作品なので、発売まで1カ月、よだれを出しながら待っていてください。