インタビュー
10年ぶりの正式ナンバリングタイトルはよりリアルに、よりスタイリッシュに!「デビル メイ クライ5」プロデューサーインタビュー
2018年6月15日 20:16
「Xbox 2018 Briefing」にて、華々しく発表された「デビル メイ クライ5(以下、DMC5)」。正当なナンバリングとしては「DMC4」から数えて実に10年ぶりとなる本作では、「DMC4」で主人公を務めたネロが再びメインキャラクターとして登場することが明らかになった。
しかし、ネロの髪型はバッサリ短くなっているうえに、顔つきにも少々変化がある。なにより右手の「デビルブリンガー」が失われ、様々なギミックを持つ義手に変更されている!
そこで、E3 2018の会場にて本作のプロデューサーを務める岡部眞輝氏とマシュー・ウォーカー氏の両名に、ネロについて、10年越しの想いについて、そして「DMC5」が目指したものについて聞いてみた。本稿ではこちらの内容を紹介したい。
「RE ENGINE」を用いて"最高峰"を目指した「DMC5」
――10年ぶりのナンバリングタイトルの発表ですね。心境はいかがでしょうか。
岡部氏:フランチャイズ的には伊津野(伊津野英昭氏)も参加して、Ninja Theoryさんと小文字の「DmC」と呼んでいるシリーズなども開発しましたが、大阪(カプコン本社)の伊津野達が作った「DMC」を遊びたいという声が多く寄せられていたので、ずっと計画していたものがやっと晴れて公開に至るという感じですね。
伊津野も「4」の制作が終わってからずっと「5」を作るとしたらこうしたい、ああしたいと言っていたんですが、それがやっと実現できたという形です。ファンの皆さんのために開発しました。
――「5」は世界観でいうと「4」の何年後の設定なんでしょうか。
ウォーカー氏:一応数年後という設定になっていますが、それははっきりとは言えません。「ネロ」と「ダンテ」も年を取ってるように見えるので、そこから年数を想像してもらえばと思います。
岡部氏:もちろん開発的には当然細かな設定がありますが、あまり決めつけてやってしまうと、そこに囚われてしまうというのもあるので、ある程度余裕を持たせた方がいいというのがあります。これは「バイオハザード」シリーズなどでもやる手法のひとつですね。もしかしたらどこかのタイミングで言っちゃうかもしれませんが(笑)。
――となると構想10年ということになるかと思いますが、実際に開発が稼働したのはいつからですか?
岡部氏:開発自体は大体3年くらいで、「5」は大阪の伊津野が率いる大人数のチームが制作しています。発売に向けて、今もマックスで頑張ってくれています。
――開発の進捗はいかがですか?
岡部氏:ほぼファイナルに近い状態で、現在QA(品質保証)など細かな調整期間に入っています。
――「5」では「RE ENGINE(編中:カプコン内製のゲームエンジン。「バイオハザード7 レジデント イービル(バイオ7)」と並行して開発された)」を採用していますよね。「RE ENGINE」を使うことのメリットはどのようなところにありますか?
岡部氏:「RE ENGINE」は現世代機のためのエンジンで、最高技術のレンダリングができるツールです。「バイオ7」の時点からさらに改良を加えて、「バイオハザード RE:2」や「DMC5」で採用しています。今回はそもそもフォトリアルを目指していたので、それを実現できる「RE ENGINE」というチョイスになりました
ウォーカー氏:技術的には「バイオ7」でカプコンにとって初めてPBR(物理ベースレンダリング)を製品化できました。RE ENGINEでさらにグレードアップして、ブレンドシェイプ(編注:複数のモデルをブレンドして新たなモデルを作り出す手法)なども追加できるようにしました。
岡部氏:PVを見ていただいてもわかる通り、ブレンドシェイプによってニッと笑った時の頬のシワのできかたなど、かなりナチュラルな人の表情が表現できるようになりました。
エンジン上でリアルタイムで描いているので、普通だったらもう少し顔が人形っぽくなるところ、ほんとに細かい演技も伝わるような出来になっています。
――RE ENGINEを使うことで、そういったフォトリアルな表現を作りやすかったりするんですか?
岡部氏:そうですね、まあ作りやすいって言ってしまうと開発からは「そんなことない!」とか言われそうですが(笑)。開発チームの苦労は山ほどありますが、フォトリアルな表現を作りやすくするためにやっていますし、それを実現できるエンジンにしています。
ウォーカー氏:そういう意味で言うと、今回は完全に新しいフェイシャルリグ(編注:表情を動かす仕組みのようなもの)を使ったんですね。なるべくリアルな表情を出したいと思ってちゃんとブレンドシェイプも生かしていけるようなフェイシャルリグを使ったので、新しい技術の使い方を学習する必要があったりと開発チームには苦労もありましたが、素晴らしい成果を出したと思います。
岡部氏:ほんとに顔の表情が豊かに表現できているのと、細かいシワがでてくるだけでも演技の見え方やキャラクターの個性の表現力が変わってきます。
「DMC」の舞台は実際の世界というよりファンタジー世界なんですが、写実的という意味でのリアルだけではなく、「DMC」のリアルというのが表現できていると思います。
――「DMC」といえばスタイリッシュなアクションが特徴ですが、「5」のアクション部分でのこだわりを教えてください。
岡部氏:僕から言えることとしては、「5」は現世代期で最高峰を目指して、その目指したものが実現できるスタッフと伊津野がいます。アメリカでいうところの"クラシックスタイル"の「DMC」をちゃんと引き継いだ上で、最高峰が実現できていると思います。
ウォーカー氏:今回伊津野さんが拘っていたのは見た目のリアルさです。ただ、それに合わせてアクションも現実的じゃないと、伊津野さんが命名したアクションの"不気味の谷"という現象が発生してしまいます。
岡部氏:一時期フォトリアルなCGを作るときに、顔がやっぱりなんだか気持ち悪い、というのを不気味の谷と呼んでいましたが、映像のクオリティの向上によってキャラクターの不気味の谷はクリアしても、次はアクション・アニメーション面で不気味の谷が発生します。
見た目がリアルなのに動きがコマ送りだったりするとやはり不自然に感じてしまいますので、ちょっとした動きでもよりリアルに作っていかないといけません。一方で、よりリアルに作っていくと1アクションに対する予備動作が増えてしまいます。
例えば銃を持って撃つ、というモーションを細かくちゃんと作れば当然ナチュラルにはなるけれど、そうなると今度はキーレスポンスが悪くなります。なので、アクションの不気味の谷を超えて、かつアクションレスポンスの良さとアニメーションの気持ちよさを両立するのを課題にしました。
――ここ10年では「ダークソウル」や「God of War」など、"重たい"アクションの流行がありました。こういったタイトルに影響を受けたりはしましたか?
岡部氏:逆にそういったゲームを作っている人たちに僕らが影響を与えた側だと思っています。彼らは彼らで進化していくと思うんですけど、僕らは元祖として引き継いだものを今の現世代期で出して、1番上を目指します。あとに出てきた人たちに敗けないよという精神で頑張っています。
ウォーカー氏:「DMC」の身上は「スタイリッシュアクション」ですので、"速さ"を重視したアクションじゃないといけません。
岡部氏:特に今回はスタイリッシュなプレイをしていくとより音楽も盛り上がっていくという仕組みを入れています。単純なBGMとしてだけではなくて、スタイリッシュアクションを決めていくと、はじめAメロだったものがBメロになり、コーラスが聞けるようになったりとかどんどんバックグラウンドが盛り上がっていくという仕組みもあるので、相乗効果でより気持ち良さを感じていただけるようになっています。
ウォーカー氏:アクション面に関しては「DMC」らしく。
岡部氏:そうですね、「DMC」らしくという言葉に尽きると思います。ちなみにネロの戦闘曲に関しては、PVに入っているものに関してはSpotifyなどで配信をしていますし、ミュージックビデオ(MV)も作りました。是非次の情報が出るまで聞き続けて、覚えて歌えるようになってほしいです(笑)。
ウォーカー氏:MVはこんなに早く見つかると思わなかったですよね。
岡部氏:実ははじめMVは非公開にしていたんです。公式ホームページのHTMLのなかにYoutubeのリンクを隠しておいて、見つけたら見られるいう形にしようと思って置いておいたんですが、公開初日にすぐ発見されて、気づいたら1万ビューくらいになっていました(笑)。次の日からは公式ページにもMVのリンクをつけて、一般公開しています。
――「Xbox 2018 Briefing」で初めて動画を見た時に、いわゆる"洋ゲーっぽさ"を感じました。これは意図的なものでしょうか?
岡部氏:伊津野も少し言っていたんですが、シリーズのなかでNinja Theoryさんとも一緒に仕事をしてきたので、お互いに影響を受けあっていると思いますし、そういったところがいい形で出てきているとは思います。
――ダンテはプレイアブルキャラクターとして登場しますか?
岡部氏:ここ(ビジュアルアート)に映っている3人はプレイアブルキャラクターです。
――となると、ダンテ、ネロに続く3人目は誰でしょうか。
岡部氏:いい質問ですね(笑)。実はMVのに3人目のヒントのヒントのようなものを入れてあるので、MVを何度も注意深く見ると何かわかるかもしれません。ただ、僕らとしてはまずネロが主人公であるということを推していきたいので、もう少し先に公開したいと思います。
――ネロの腕が義手になっていますよね。これはどのようなものですか?
ウォーカー氏:デビルブレイカー!!!
岡部氏:PVの中でも表現しているんですが、ネロは腕を奪われてしまうんです。奪われた後に女性キャラクター「ニコ」が新たな腕として作ったデビルブレイカーを使うという設定になっています。義手の採用によってより遊びの幅を広げつつ、「4」の時のネロの操作感というのを引き継いで進化させることを目指しました。
義手にはロケットパンチのようなものや電撃を放つもの、敵を振り回すものなど色々なバリエーションがありますし、今後も開発メンバーのプレイ動画などでお見せしていきますので楽しみにしていただければと思います。
ウォーカー氏:gamescomではプレイアブル出展する予定ですので、その時にはもっとデビルブレイカーについてご説明しようと思っています。今はトレーラーをじっくり見ていただいて、具体的にゲームプレイにどういう影響を与えるか考えていただければ嬉しいなと思います。
――ファンの間でも人気の高い「バージル」は今作でも登場するのでしょうか。
岡部氏:そこは情報公開まで今しばらく引っ張っていきます(笑)。ただ、小説版の設定が公式設定となりますので、ネロのキャラクターを作っていく中で「『5』では『4』から少し年をとってお父さんに似てきたね」みたいなユーザーコメントもあって、わかってもらえて嬉しかったです。
当然シリーズにかかわっているキャラクター達は大切に扱っていきたいと思っています。ただ、シリーズのキャラクターがどう関わってくるかというのは、ここでは秘密です。
――では、最後にファンに向けてコメントをお願いします。
岡部氏:シリーズとしては10年ぶりの、ユーザの皆さんを待たせに待たせた正式続編「5」になります。開発チームもまだまだ頑張っている最中ではありますが、発売まで皆さんの期待を裏切らないようにします。ご期待ください!
ウォーカー氏:私は子供のころから日本のゲームが大好きで、カプコンに入りたいとずっと思っていました。それでプログラミングと日本語を専攻したんですが、最終的に伊津野さんという伝説的な存在と一緒に働いて、マイクロソフトの1番大きなステージで並んで立って我々のプロジェクトを発表できて、そしてファンの皆さんが発表をみて喜んでくれているのを見て本当に感動しました。ファンにもカプコンにも感謝しています。
――本日はありがとうございました。
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