インタビュー
「The MISSING」クリエイターSWERY氏特別インタビュー
「INSIDE」や「ゼロ・グラビティ」に影響を受けたワンカット横スクロールアクション
2018年9月25日 18:47
アークシステムワークスが東京ゲームショウ終了直後、10月11日に発売を予定しているアクションアドベンチャー「The MISSING -J.J.マクフィールドと追憶島-」。大阪の独立系デベロッパーWhite Owlsを率いる個性派クリエイターSWERY氏の最新作だ。
GAME Watchでは東京ゲームショウでの国内初プレイアブル出展に合わせてファーストインプレッションをお届けしたが、東京ゲームショウに参加したSWERY氏にインタビューする機会を得たので、特別インタビューをお届けしたい。
「The MISSING」の企画経緯について
――先ほどステージイベントを見ていましたが、終始やりにくそうにしていましたね。
SWERY氏:SNK時代の先輩がいじりに来てくれていたんですよ(笑)。「お前がSWERYみたいな名前でカッコ付けやがって」的な(笑)。
――昭和な臭いがするいじり方ですね(笑)。
SWERY氏:やりにくくて、やりにくくて(笑)。
――今日はお時間頂きましてありがとうございます。デモをひととおりプレイ(参考記事)して、これは褒め言葉になるかどうかわかりませんが、今まで遊んだSWERYタイトルの中で、一番おもしろいと思いました。
SWERY氏:それは良かった(笑)。それはニューSWERYをお見せできたということだと思います。僕が目指しているところです。
――発表からこれまで主に海外で出展されていますが、手応えは如何ですか?
SWERY氏:ゲームとしては良いものを作ったなという手応えを感じています。ゲームデザインとストーリーを天秤に掛けて、バランスが取れるものを作ろうというのがスタートだったので、「SWERYはストーリーばっかりでしょ」と言われないように、ゲーム性から突き詰めた上でのスタートだったので、その点についての手応えは感じています。
――ゲームメカニクスの部分が非常にオリジナリティがあり、こだわった作りになっています。これは狙い通りということですか?
SWERY氏:そうです。中村さんと最初のインタビューをしたときに、「INSIDE」とか「Ori」の話をして、これはファーストインプレッションの記事にも書かれていますが、「よく覚えているなぁ、これは下手な話できへんな」と思いながら記事を読ませて貰ったんですが(笑)、実際、僕らが子供の頃のゲームはサイドスクロールのゲームが多かったと思うんです。
「アウターワールド」(1991年、Delphine Software)、「プリンス・オブ・ペルシャ」(1989年、Broderbund)、「ミッキーのマジカルアドベンチャー」(1992年、カプコン)とか、そういうジャンルに強い影響を受けつつも、自分がゲームクリエイターになったときにはそういうものはなくなっていたんです。サイドスクロールにはずっと憧れがあって、作れる機会が訪れたら、原点回帰ではないですけど、このジャンルで結果を残せるものを作りたいとずっと思っていたんです。
――SWERYさんのなかではサイドスクロールのゲームをずっと作ってみたいという思いがあったわけですか?
SWERY氏:作りたい気持ちはありました。でも実際には作るチャンスはなかったんです。でも、「LIMBO」(2010年、Playdead)が出たときに、「あ、作っていいんや」と気づいたんです。そこからだいぶ長い時間が掛かってしまいましたが、ようやく作ることができました。
――やはり直接的な刺激になったのは「LINBO」を生み出したPlaydeadの最新作である「INSIDE」(2016年、Playdead)かなと思いますが、SWERYさんとして「やられた!」と思いましたか?
SWERY氏:もうね、全然思いました(笑)。「INSIDE」は、これはネタバレになりますが最後に凄い仕掛けがあるのに、それをPRに一切使っていない。彼は持っている技術をあえて隠して、雰囲気だけでここまでのムーブメントに持っていったんです。やられまくったなと思いましたね。
当時僕はストーリーにこだわって色んなものを作っていたわけですが、言葉少なくこんな表現ができるんだということに衝撃を受けましたね。
――その上で生まれた「The MISSING」ですが、これ自体の企画の原点はどこにあるんですか?
SWERY氏:White Owlsを作る時に、アークシステムワークスさんに1本やらせてください、という話はしていたんですね。木戸岡社長に相談しに行ったときには3つぐらい企画があって「The MISSING」はその1つなんですけど、原点というとその前ですよね。なんだろうなあ……。やっぱり、「LINBO」や「Ori」、「Ori」のクリエイターとも友達なんですけど、ああいった作品に触れて刺激を受けた結果、「こんなんできそうやなあ」と思った感じですかね。
――では、私が記事で憶測した内容は当たってるんですね(笑)
SWERY氏:そうなんですよ(笑)。だから、拝読したときに「内面を見透かされてる!?」と思ったぐらいです。「Ori」のクリエイターのトーマスと仲が良いんですが、ちょうどE3で「Ori」を出した時に、僕も「D4」を出したんですが、彼らだけが賞を取って、僕は取れなくて、一緒に食事に行った時に悔しい思いをしたんです。
――なるほど、無数の表現方法があるなかで、あえてサイドスクロールを選択した理由、彼らと同じ土俵で勝負をしようと思った理由は何ですか?
SWERY氏:自分が子供の頃に遊んだジャンルに対する挑戦ですよね。あと、カットチェンジを無くしたかったんですよ。
――というと、ローディングがないという意味ですか?
SWERY氏:それもありますが、映画でも「ゼロ・グラビティ」のようにワンカットで撮るものが増えているじゃないですか? ああいうスタイルの表現は「God of War」のようにゲームでも増えていて、それをインディでやるにはどうしたらいいんだろうということでサイドスクロールにたどり着いたということもあります。
――しかも今回はフルプライスではなくハーフプライス、名実共にインディタイトルとして、その中でも激戦区であるサイドスクロールに挑むわけですが、この強烈なモチベーションというのはどこから来ているんですか?
SWERY氏:White Owlsは、事務も何もかもいれて12人ぐらいの小さな会社です。「少人数でも大阪から、日本から、世界に挑戦できるものを作ろう!」というのが会社のビジョンです。「大阪から世界中のあなたへ」という社のスローガンがあるのですが、自分たちのサイズ規模を自覚した上で、PRで売るのではなく、ゲーム内容で皆さんの判断を問いたいという気持ちがあるんです。
――ゲームのボリュームはどれぐらいですか?
SWERY氏:僕がテストのために、多少迷っている振りをしながらゆっくり最初から最後まで遊んで8時間ぐらいでした。ビギナーの方ならもうちょっと時間が掛かるかもしれませんし、上級者はもっと早いでしょうね。PAXで海外のユーザーが遊ぶのを見ていたら、もの凄い勢いでクリアしていくんですよ、そういう人は3~4時間でクリアしてしまうかもしれません。
――「The MISSING」の謎解きは、一癖も二癖もありますが、それでもグングン進んでいくんですか?
SWERY氏:グングン進んでいきます。なんでしょうね、ゲームリテラシーが異様に高いというか。ちなみに、我々はインディーで、他のインディーメーカーとも繋がりがありますから、クリエイターにNDA(秘密保持契約)を結んだ上でプレイして貰うんです。彼らはゲームをやりこんでますから、そのせいでゲームの難易度は高くなっているんですけどね(笑)。
――ちなみに私は、デモ版の最初のステージで、いきなり詰まって、別のステージに行ったぐらいです。遊んでいるうちにメカニクスが理解できてきて、再び最初のステージに戻ってクリアしたんですが、このゲーム難しいですよね。
SWERY氏:普通、詰まりますよね。ゲームの難易度はかなり高いほうだと思っています。
――難易度設定を入れなかった理由は?
SWERY氏:指先のテクニックを問うゲームではなく、発想を問うゲームになっていますので、難易度は1つかなと思っていました。詰まったという人はネットを見ちゃうと思うんですけど、それを我慢して自分の力で解くというのが1番の醍醐味だと思います。
――その謎解きについて、もっとも特徴的な部分は四肢を謎解きに使うというところですが、この発想はどこから来たものですか?
SWERY氏:不死身の主人公を表現したかったというのが1つと、サイドスクロールのレベルデザインに、もう1レイヤー足したかったんですね。それを解決する方法としてフッと出たというか。サイドスクロールのゲームは、レベルデザイン、オブジェクト、エネミーでほぼすべてが構成された世界になっています。その中でプレーヤーはジャンプしたり、スキルを使ったりしてプレイしていくわけですが、プレーヤー自身を活用するというレイヤーを足したいと思ったんです。
――凄いですよね、よくこんなこと考えるなと、ゲームに実装するなと思いながらプレイしていました。
SWERY氏:ありがとうございます(笑)。そこまで褒められると恥ずかしいですが。
――意見としては、狂ってるとか、奇想天外だと言って、理解できないものとして棚上げしようとする人が多いと思いますが、私はもうちょっとこのメカニクスの発想の根本に迫りたいですね。
SWERY氏:うーん(笑)。言葉にすると、苦しみぬいて考える、ということですが、そうする理由は、アークさんからグリーンライト(ゴーサイン)が欲しいからです。それも紆余曲折なく、一発で押し切りたいからです。
木戸岡さんとは付き合い長いですから、見て貰って「やっぱりSWERYはストーリーだけやなあ」とか、「シナリオだけやったほうがいいんじゃないか」と言われたくないですから(笑)、一発目で木戸岡さんの期待を超えるものを出さなければならないと思ったんですね。その必死さがこのアイデアを生み出したんだと思いますね。
――先ほどのステージイベントでは、チーフプロデューサーの森さん(利道氏)が、3つ出された中で「The MISSING」が一番おもしろかった。でも、SFのものも良かったと発言されていましたが、残る2つのアイデアはどのようなものだったんですか?
SWERY氏:森さんは混同されているんですけど、SFモノは、今回の3つのアイデアの前に出したものですね。それはSFと日常が入り交じった世界の中で倒錯したアドベンチャーゲームでした。
――「D4」のような?
SWERY氏:そうです。もっと倒錯していました。日本の日常をテーマにしていて、普通に宇宙人が存在している世界。
それが前に出した企画で、3つ出したうちの残る2つは、VRで真っ暗な中で、エコーロケーションを使いながら盲目のガンマンが戦う話だったんですが、これは途中で似たようなゲームが出てしまったんですね。もうひとつはテーブルトーク、そしてもう1つが「The MISSING」だったんです。言うなれば、ストーリーに寄せたもの、最新技術に寄せたもの、本当にやりたいものという感じですが、本当にやりたいものを今やっているという感じですね。
――サイドスクロールのゲームがやりたいことの1番に上がるというは以外な気もしますが、なぜ1番なんでしょう?
SWERY氏:「Red Seeds Profile」、「D4: Dark Dreams Don't Die」という映画ライクなものを作ってきた中で、そろそろ次の表現に行きたいと言う風になってきて、ワンカットで映画で撮るという流行に、ゲームらしいアプローチで挑みたかったというのはありますね。映画のワンカットを、ゲーム内のカットシーンにそのまま適用するのではなくて、ゲームで映画のワンカットを表現したかったんですね。
――メディア側からするとSWERYさんは「The Good Life」を制作しているクリエイターというイメージが強いですが、「The Good Life」は過去の作品との連続性が絶える、方向性の異なる作品だという理解をしています。しかし、「The MISSING」はSWERY作品の正当な後継作というか、SWERISMを象徴するような作品だと思っていますが、自分自身ではどのように考えていますか?
SWERY氏:「The Good Life」と「The MISSING」はほぼ同時に、両方ともやりたい作品ではあったんですが、「The Good Life」は会社の規模的に自社だけで作るのは難しいだろうということで「The MISSING」を立ち上げました。この2タイトルはライトサイドとダークサイドだと思っています。「The Good Life」がライトサイドで、「The MISSING」がダークサイド。でも、表面上で、それってプレイしていくとクロスしていくかもしれない。そう言う関係性ですね。
――初期案ではもっとエグかったという話でしたが、どういう内容だったんですか?
SWERY氏:そうですね、あんまり言えないですけど、ボツにしたパズルとして、切断された体をエサにして動物を追い払うというものがあったんですが、「それは違うんじゃない?」という意見が出てボツになりました。
――まだデモを含めて世間に見せていないが、何か画期的なパズルというのものはありますか?
SWERY氏:基本はお見せしたものがすべてで、パズルなので、基本はその複合、二次的な利用ということになります。あとはパズルではないですが、デモでは敵が出てこなかったと思いますが、髪鳴り女以外にもいくつか出てきます。実はPVには出てきますが、巷ではシャラポワ(編注:SWERY氏の秘書を務めるぬいぐるみ)ではないかと噂されている猿も出てきますが、シャラポワではありません。
――この作品の魅力は何だと思いますか?
SWERY氏:難しいなあ、「大阪から世界のあなたへ」というのが社訓ですが、このゲームは女の子が主人公で、親友を探しに行くというものですが、プレーヤー全員の原体験が込められています。プレーヤー全員がJ.J.なんです。クリアしたらそう感じて貰えるように作ったつもりです。それが冒頭のメッセージに繋がっています。
「この作品はすべての人びとが自分自身が否定して無くて良いという信念の元作られています」というメッセージが冒頭に流れるのですが、その考えにたどり着くようなゲーム体験ができるものになっています。
――ステージでは、ゲームをクリアするとすべての謎が解けるだけでなく感動すると言っていましたが、今体験している範囲内だととても信じられない(笑)。
SWERY氏:そうでしょうね(笑)。
――それからF.K.ですか、ぬいぐるみとの会話も謎ですし、スマートフォンをよく見ると、F.K.以外にも様々な人物とチャットした形跡があって、サイドスクロールのゲームデザイン以外の部分は謎だらけですよね?
SWERY氏:クリアすることですべて謎が解けます。少なくとも僕はそう作ったつもりです。
――そのエンディングはどのような表現で実装されるのですか?
SWERY氏:あの2Dの画面のまま演劇として処理されます。1度ゲームが始まったら、一切ローディングなどはないままエンディングまでたどり着けます。
――念のため確認ですが、このゲームはいわゆるステージクリア型ではなく、最初から最後までが1つのステージで構成されているという理解でいいですか?
SWERY氏:そうです。ストリームで、ゲーム冒頭からエンディングまでローディングや画面切り替えはありません。「ゼロ・グラビティ」のようなカットチェンジをしない映画の影響が強いですね。
――デモをプレイしていて、もう少しでクリアだけど、ストーリーがネタバレになるからあえて最後まで見せないのかなと思っていましたが、そうではないんですね。
SWERY氏:違いますね。スタートからエンディングまでひと繋ぎのゲームです。
――プレイするステージによって雰囲気はかなり違いますが、遊んでいくとそういうステージに移り変わっていくわけですね。
SWERY氏:そうです。追憶島の中で、様々なロケーションが繋がって1つのステージを構築しています。
――もう来月には発売ですが、ゲームはマスターアップしたのですか?
SWERY氏:ほぼ、というところです。今回は色んなプラットフォームへの発売を予定していて、一辺にマスターアップはできませんから、今順番にマスターアップを行なっているところです。メーカーさんへの提出は終わっています。
――ゲームプラットフォームごとの差異は何かありますか?
SWERY氏:まったく同じです。PC版なら4Kで遊べたりということはありますが、内容はまったく同じです。
――発売後に、ダウンロードコンテンツによる拡張要素はありますか?
SWERY氏:現段階ではないんですけど、残念ながらマンパワーの都合で実装できなかったステージやアイデアはありますので、それを追加でお見せできる機会があればいいなと思っていますが、本編がどれぐらいヒットするかによりますね。
――これまでに届いた世界からの反応でユニークなものは何かありましたか?
SWERY氏:僕が驚いたのは、女性からのレスポンスがとてもいいんです。女性のゲーマーや女性のストリーマーさんが「自分のためのゲームが出た!」といってくれて「絶対ストリームするよ」とまで言ってくれているんですね。
――そこまで女性受けする理由はどのあたりにあるのですか?
SWERY氏:なんでやろう?(笑)。曲ですかね。ちょっと悲しげでありながら、ポップスというか、聞けるテーマを入れようと言うことで、メインテーマはそういうものにしています。そこは評価されているところですね。
――曲はすべてオリジナルばかりですか?
SWERY氏:そうです。「D4」のハミングの曲を作曲して頂いた深水チエさん、現在kidlitという名前で活動している方に作曲をお願いしています。サウンドディレクターも「D4」と同じテクノウチさんです。
――なるほど、想像以上に「D4」と開発陣は似通っているんですね。
SWERY氏:そうですね。僕の作品性を理解してくれる人と、次のステップを作りたかったので、それが「The MISSING」という形になったんだと思います。
――細かいギミックについてもいくつか伺いたいんですが、プレイしていて衝撃を受けたのは、2つ目のステージですね。鉄球で全身骨折すると天地が入れ替わるギミックです。
SWERY氏:あれは産みの苦しみがありました。骨折させたり、骨折ダメージを与えたりというアイデアはあったんですが、それをうまくゲームに落とし込めなかったんです。骨折をどうパズルにするか、という。
そこでチームを集めてミーティングをしたときに、メインキャラクターを担当した新進気鋭のプログラマーが、「首が折れるから脳しんとうを起こして天地が逆さまになるってどうですか」って言った後に「しまった」って言ったんです。プログラム的な処理の面倒さに気づいたんでしょうね(笑)。僕が「言ったんだからやれるよな?」といって入れてみたら、絵がおもしろいから、木箱を置いてパズルにしてと言う具合に練り込んでいきました。ベースとなっている主人公の四肢が欠損というというのは僕のアイデアですが、そこから膨らませているのはWhite Owlsのチームです。
――ただ、ゲームとしてユニークなのは四肢欠損からの展開ですよね。腕を投げるとか、重しに使うとか、尋常じゃないですよね、アイデアが(笑)。
SWERY氏:たぶん、他のメーカーでも思い付いている人がいると思うんですけど、スタッフの大反対を食らって作れないと思うんですよ。グロいだけじゃなくて、実は処理が大変なので、モーションやパターンを一杯用意しなければならないし、スタッフは嫌がると思います。それをWhite Owlsのメンバーは「おもしろそう」って言ってくれたんですよ。
――それはなんでしょうね、やっぱりWhite OwlsのスタッフはSWERY教に入ってますよね(笑)。普通引きませんか?
SWERY氏:どうなんでしょうね(笑)。いや、引いた子もおったと思うんですけど、そこまで突き詰めているんならやらせてみようかという感じだと思いますね。
金子宝巨氏(「The MISSING」プロデューサー):僕は最初に説明を受けたとき、引きましたもん(笑)。これ、発売できるのかなって。
――首だけの状態で細い通路を通っているときに、よくこのゲームが販売可能になったなと驚きましたから。
SWERY氏:なるほど(笑)。でもストーリーを最後まで見て貰えれば、ああ、こういうことかと納得して貰えると思っています。
――なるほど、では今目の前に映っている事象というのはかりそめの姿というか、真実ではないわけですね。
SWERY氏:そう思いたいですね。
――せっかく金子さんが到着されたので、金子さんにも話をを伺いたいのですが、プロデューサーとしてこの作品をどのようにして世に送り出そうとしているのか、聞かせていただけますか。
金子氏:この作品は本当に悩ましくて、グロテスクなんですけど、それを全面に押し出したくないというSWERYさんの思いもあって、メッセージ性が高いことは理解しているんですけど、そのメッセージを伝えてしまうとネタバレになってしまうので、プロモーションどうしようかという(笑)。
発売後にどういう結果が待ち受けているかわからないんですけど、SWERYさんを信じて発売するしかないという。
――ストーリーという点では、何もないときにアクションボタンを押すと「エミリー!」と呼びかけますよね。今だと操作にミスったときに出る声みたいな感じですが、あれが実際に機能することはあるんですか?
SWERY氏:もちろんあります。声を出すことで解けるパズルもあります。何もないときって皆さんジャンプするでしょう? あれはゲームの雰囲気を壊すから、それぐらいなら「エミリー」と呼んで貰いたかったんですよ。
金子氏:開発中のバージョンは「ピザ」って言ってましたよね?
SWERY氏:そうそう(笑)。ボイス収録前のバージョンは、「ピッザー!」って適当な声が入っていたんですよ。
――先ほどのステージイベントでは、エミリーらしきキャラクターが一瞬見えましたが、あれはもうラストシーンに近いと言うことですか?
SWERY氏:うーん(笑)。それは実際の製品でお楽しみにというところで。
――SWERYさんの作品の特徴として、目に見えている情報が本当かどうかギリギリまでわからないという部分がありますが、この作品もまた、表と裏、光と影があると理解していいですか?
SWERY氏:そうですね。もちろん、どんでん返しはありますし、皆さんが僕の作品に期待されるようなことは入っています。
――少し気が早いですが、このゲームはマルチプレイモードを拡張する計画はありますか? 協力プレイというか、複数人で謎を解くような?
SWERY氏:CO-OPについては「The MISSING 2」で! 今プロデューサーがいるから言うておこうみたいな(笑)。
――でも実際に続編が作れたら作りたいという気持ちなんですか?
SWERY氏:まだダメージについてはアイデアを一杯残していますし、ちょうどこないだもCO-OPの企画書出して金子さんのところに持っていかないか? って社内で言っていたぐらいで、ただ、いずれにしてもまずは「The MISSING」自体が世に浸透して貰わないと始まらない話なので、ヘンなことに浮気してる場合ちゃうと自分を戒めています。
――もうお時間ということで締めくくりに入りますが、「The MISSING」をどのように遊んで貰いたいと考えていますか?
SWERY氏:まずは攻略を見ずに、悩みながら最初から最後までやっていただきたいと思います。最初は難しいかもしれませんが、徐々に“不死身脳”になっていくと思います。逆にそれぐらいにならないと解けない謎がどんどん出てくるので、そういう脳になった上でこの世界を浸って貰えるといいなと思いますね。
――このゲームはリプレイバリューはあるんですか? 2周目、3周目の楽しみについて。
SWERY氏:はい、ドーナツを集める要素があって、全部で271個あります。
――ああ、ありますね。2周目以降でないと取れないものもあるということですか?
SWERY氏:というか、見えてるけど、気づかない、あるいは心理的に見えていないものがたくさんあります。
――森の木の枝で見えにくいものがありますけど、ああいう奴ですか?
SWERY氏:それもありますし、こちらに注目してしまうので、ついつい見逃してしまうとか、色々あります。
――そのドーナツを集めるとどうなるんですか?
SWERY氏:色々アンロック要素が解放されます。過去ログのメッセージ、ギャラリー、ジュークボックス、それからチートですね。チートというのは、衣装を変えたり、キャラクターの移動速度を変えたりできます。クリアしていれば謎はわかっているので、早くプレイしてドーナツ集めだけに集中することもできます。
――なるほど2周目以降は、高速移動でサクサクプレイできるわけですね。
SWERY氏:そうです。
――SWERYさんらしいなと思ったのは、スマートフォンですよね。1950年代の世界観に、不思議に同居していて、それでいてスタンプのデザインは古くさい。あれはどういう役割を果たす存在なんですか?
SWERY氏:1950年代風のアメリカーナなんですが、設定自体は現代です。1950年代のアメリカーナを現代っ子が旅をしているという設定です。スタンプ等はすべて社内のデザイナーの描き下ろしです。
――へー凄い、あれはLINEスタンプとして販売できるクオリティですよね?
SWERY氏:LINEスタンプとして売りたいですよね(笑)。スタンプは無茶苦茶ありますよ。各キャラクターに20個ずつありますから。
――それでは最後にゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
SWERY氏:「The MISSING」にはメッセージを込めて作っています。あなた自身の原体験と重ねながら物語を味わっていただければと思っています。動画で満足せず、ぜひご自身の手で遊んでみてもらいたいと思っています。
金子氏:ただのパズルゲームとして遊ぶのではなくて、自分で頑張って解いていただいて、この作品に込められたメッセージ性を感じ取っていただければと思います。
――ありがとうございました。
(C)White Owls Inc. / ARC SYSTEM WORKS