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むせかえるようなSWERY節! 「The MISSING」ファーストインプレッション

【閲覧注意】SWERYが横スクロールアクションを作るとこうなってしまう!

【The MISSING -J.J.マクフィールドと追憶島-】

10月11日発売予定

価格:2,990円(税込)

 2017年に大阪を拠点とする独立系のゲームデベロッパーWhite Owls設立後、精力的に活動している“SWERY”こと、ゲームクリエイター末弘秀孝氏。2017年に「The Good Life」を発表し、翌2018年には「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島-」をアークシステムワークスと共同発表。この「The MISSING」は、寡作のクリエイターとして知られるSWERY氏としては珍しく、発表した年に発売されるタイトルとなっている。

 今回、東京ゲームショウの出展に先駆けて体験することができたので、ファーストインプレッションをお届けしたい。「The MISSING」は10月11日に、プレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/Windows PC向けにダウンロード専売タイトルとして発売される。価格は2,990円(税込)。

【「The MISSING: J.J. Macfield and the Island of Memories」Official PV】

 SWERY氏は、代表作「Red Seeds Profile」、「D4: Dark Dreams Don't Die」、そして現在開発中の「The Good Life」でも濃厚に見られる“倒錯した不条理な描写”にこだわるゲームクリエイターとして知られている。とりわけ欧米で高い評価を集めており、その個性的な作家性を好む熱心なファンが多い。「The MISSING」もまた、北米のカルチャーに深く根ざした海外向けのタイトルだ。

 そのSWERY氏が「The MISSING」でチャレンジしているのは、欧米で“メトロイドヴァニア”と呼ばれる横スクロールアクションのゲームメカニクスを採用した“倒錯した不条理な描写”だ。

 日本では横スクロールアクションというと、どちらかというクラシックな、古くさいイメージが強いが、欧米では“メトロイドヴァニア”の語源である「メトロイド」や「キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラ)」が登場した1980年代から現在に至るまでバリバリ現役のゲームジャンルのひとつとして存在し続けている。

 一例を挙げると、1930年代のカートゥーンタッチで1本のゲームを作り上げた「Cuphead」(2017、StudioMDHR)、美しいグラフィックスとアクション性を備えたAAAクラスの横スクロールアクション「Ori and the Blind Forest」(2015、Moon Studios)、インディー界の風雲児であるPlaydeadが生み出した2本の傑作「LIMBO」(2010、Playdead)、「INSIDE」(2016、Playdead)などなど、世界中のゲーマーを夢中にさせる横スクロールアクションが次々に生み出されている。

 以前、SWERY氏にインタビューした際、「INSIDE」を激賞していたことが強く記憶に残っている。それを聞いたときにSWERY氏の気持ちが痛いほどに理解できた。「LIMBO」も「INSIDE」もSWERY氏が目指す“倒錯した不条理な描写”の固まりのような作品であり、横移動とアクション、ジャンプだけというシンプルなゲームメカニクスに、次から次に飛び出してくる斬新なアイデア、視点固定がゆえのセンス抜群の見せ方など、ゲームクリエイターとして嫉妬したことは想像に難くない。

 そして筆者が「The MISSING」をプレイしはじめた瞬間、「ああ、これはSWERY流の『INSIDE』に対する自分なりの返答であり、俺が作るとこうなるんだぞ! どうだ! という作家性を爆発させた作品だな」と感じた。この点については、東京ゲームショウで予定しているSWERY氏へのインタビューで直接訪ねてみたいと思っている。

【INSIDE】
21世紀に誕生した横スクロールアクションの最高峰と言える「INSIDE」。同ジャンルにおいてこのゲームを超えることは至難だが、「The MISSING」はそれを目指した意欲的な作品だ

 さて、その本題の「The MISSING」である。今回は4つのステージをいずれもちょっとずつプレイする事ができた。せっかく謎を解いたのにステージの最後まで遊ばせてくれないのはSWERY氏らしい“焦らし”のテクニックだと感じたが、1ステージではなく4つもステージを遊ばせるのは、ゲームに盛り込んだ4つのギミックを見せたいためのようだ。

【デモで体験できる4ステージ】
真っ先に体験すべきは3つ目「フランクリン・ローズ教会/墓地」だ。SWERISMが爆発してる

 1つは木に引っかかった木箱や、シーソーのギミック。木箱はどうにかして地面に落とすことで木箱を台にして先へ進めるようになるのだが、木を直接揺らしたりできないのでどうしたらいいかよくわからない。「INSIDE」で言うところの農場でわらわら付いてくるヒヨコのギミックに近く、アクセスできるオブジェクトをどのように有効活用するかがポイントとなる。アクセスできるオブジェクトは、ぼんやり明るく光っており、その活用法に気づけば後は早い。

 シーソーのギミックは、最初のSWERY節となる。平行棒の片側に何らかの重りを置かないと、重心のバランスが崩れて先に進めないようになっている。重しに使えるのは何か。周囲にはやけにトゲトゲトラップが多く、接触することで見えてくることがあるかもしれない。SWERY氏はまったく凄いことを考えるものだ。

 2つ目あたりからSWERY節が加速し出す。目の前で振り子運動を続ける鉄球に当たると、主人公J.J.が吹っ飛ばされると共に骨折の重症を負い、それと同時に重力が反転し、天地がひっくり返るのだ。どういう原理でそうなるのかよくわからないが、SWERY氏のゲームなので、痛い目にあわずにクリアするという選択肢は用意されておらず、計算ずくで鉄球にぶち当たり、骨折した体を引きずりながら奥へ奥へ進んでいく。「いやいや、こう来たかー」という感じだ。

 3つ目はもっと凄い。トレーラーでも見られるように、ゲームの舞台である「追憶島」は、J.J.が重症を負っても死ぬことができない悪夢のような場所となっている。J.J.はゲーム内で火だるまになったり、四肢が切断されて首だけになったりするが、火だるまになった体を火を移す道具に使ったり、ちぎれた腕を重りとして使ったり、首だけの状態にして狭い通路をくぐり抜けたりなど、文字通り身体を駆使した不条理すぎるゲームメカニクスにすっかり感心してしまった。これはSWERY氏にしか表現できないと思う。

 4つ目は、迫り来る巨大なモンスター「髪鳴り女」から逃げまくるラン系の横スクロールアクション。「INSIDE」の追っ手や犬の群れから逃げるギミックに近い流れだが、「The MISSING」にも時間無制限で考えられる謎解きギミックだけでなく、こうしたアクション要素もあるということがわかる内容となっている。

 このデモでわからないのは、ストーリー部分だ。ほとんどマスクされており、スマートフォンを通じて交流するF.K.とのチャットぐらいしかそれらしい要素はない。ただ、このF.K.、何者なのか調べて見ると“J.J.が子供の頃から大切にしているぬいぐるみ”ということで、そもそもなぜ会話が成立しているのか、会話で張られた伏線はどこで回収されるのかなどかえって謎が深まってしまった。ヒジョーにモヤモヤする感じだが、このあたりもSWERY氏らしいアプローチで、クリア時のお楽しみとなるようだ。

 東京ゲームショウのアークシステムワークスブースでは「The MISSING」をプレイアブルで体験できる。体験できる内容は今回筆者が体験できたものと同じということで、ぜひブースを訪れて「The MISSING」の不条理な謎解きとスリリングなアクションを楽しんでみては如何だろうか?

唐突に呼びかけてくるF.K.。ぬいぐるみらしいがなぜチャットできているのかはよくわからない
状況に関わらず呼びかけてくるF.K.。首だけの状況でどうやって応答しているのか謎だが、壮絶な状況にも関わらず、会話の内容はコミカルだ