【特別企画】

ビッグバンドアレンジに“心が奪われる”!「ペルソナ5 スペシャル・ビッグバンド・コンサート」レポート

【ペルソナ5 スペシャル・ビッグバンド・コンサート】
[東京公演]
会場:新宿文化センター 大ホール
日程:
12月2日、12月3日、12月4日 ※4公演
17時30分開場 / 18時30分開演(各回共通)
※12月4日は13時より追加公演
[関西公演]
会場:神戸国際会館 こくさいホール
日程:
12月5日
17時30分開場 / 18時30分開演

 近年のJRPGを代表する名作「ペルソナ5」シリーズのスペシャルコンサート「ペルソナ5 スペシャル・ビッグバンド・コンサート」が12月2日~5日の4日間にかけて、新宿文化センターと神戸国際会館の2カ所で開催されたのをご存じだろうか。

 本イベントは「ペルソナ5」の作中で流れるBGMや楽曲をビッグバンド・サウンドで堪能できるコンサートとなっており、「ペルソナ5」の多くの楽曲でボーカルを担当した稲泉りん氏による生歌唱に加え、エリック・ミヤシロ氏をバンドリーダーとする日本屈指の腕利きプレイヤー達による演奏、音楽ディレクターにはグラミー受賞アーティスト・チャーリー・ローゼン氏を迎えた超豪華コラボレーションが実現したイベントとなっている。

【P5BB アレンジ楽曲デモ音源(一部抜粋)】

 「ペルソナ」シリーズといえばRPG作品の中でもトップレベルの知名度と人気を誇るシリーズだ。近年のタイトルではスタイリッシュなバトル演出と独自の世界観の中で、少年少女達が日常と非日常を行き来しながら困難に立ち向かう高品質なジュブナイルストーリーが大きな特徴となっている。

 ナンバリング毎に作風・設定がガラッと変わりながらも一貫して“人間の様々な負の精神性と向き合う”部分に注力したストーリー構成はアトラス作品らしいダークテイストを残しつつ、物語の本筋に「学園生活の裏で人知れず世界を救う」という何とも中二心をくすぐる設定が合わさることで他では体験できない“刺さる人にはとことん刺さる”世界観を実現している。

 そんな「ペルソナ」シリーズを構成する最も重要な要素の1つとして欠かせないのが作中で流れる素晴らしい楽曲だ。

 シリーズに詳しくない人でも「『ペルソナ』と言えばオシャレなBGM」と何となく認知している人が存在するくらいにはBGM・楽曲に力が入っている作品となり、目黒将司氏などが手がける作風に合わせて変化する“スタイリッシュさ”を追求した音楽の数々が大きな魅力となっている。

 本コンサートの主題となる「ペルソナ5」であれば、作品を代表する楽曲「Life Will Change」はどこかで聞いた事がある人も多いのではないだろうか。

 今回のコンサートはそんな素晴らしい楽曲の数々を超豪華プレイヤー達による生演奏で味わえる夢のイベントとなっているのだ。

 正に“心を奪われる”ような一時を楽しむことができたので、今回の記事ではその様子をお届けしたい。

【【DJモルガナ】「Life Will Change」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第1位】
公式チャンネルでも「ペルソナ5」を代表する楽曲として紹介されている「Life Will Change」

2部構成で全19曲演奏! 世界的演奏家チャーリー・ローゼン氏が指揮・編曲・音楽ディレクターを担当

 筆者が参加したのは12月4日の昼公演となり、この日は昼と夜の2公演が新宿文化センターにて開催された。

 会場内では本イベントをモチーフとしたドレスアップ姿の怪盗団メンバーのオリジナル限定グッズが発売され、物販コーナーは多くのプレイヤーで賑わっていた。

 今回のビッグバンドに合わせ、各キャラクター毎に担当楽器が設定されており、ドラム担当の「竜司」や指揮担当の「モナ」などキャラクターイメージと合致したデザインに落とし込めている非常に完成度の高い新規イラストとなっている。

 衣装をよく見みると各キャラクターを象徴する「ペルソナ」やアイテムをモチーフとした装飾を身に着けていたりするのもファンとしては嬉しいポイントだ。

【グッズ一覧】
【購入品】
かなり早めに物販コーナーに並んだのだが多くの商品が爆速で品切れる程の大盛況となっていた……! パンフレットには参加したキャストのコメンタリー、キャラクターのデザイン設定、本イベントのセットリストとアレンジコンセプトなどが載っていたりと満足度が高い

 本コンサートはアンコールを含めて全19曲の演奏を前半・後半で15分休憩を挟んだ2部構成。楽曲の合間には今回のビッグバンドアレンジを手掛けたチャーリー・ローゼン氏による小粋なトークなども披露される形で進行した。

 チャーリー氏は「グラミー賞&トニー賞」をそれぞれ2度受賞した実力のある世界的演奏家であり、グラミー賞に関しては「ペルソナ5」の楽曲「Last Surprise」のビッグバンドアレンジでノミネートされているので、その実力を疑う者はいないだろう。

【チャーリー・ローゼン氏】
本コンサートの指揮・編曲・音楽ディレクターを担当したグラミー賞の受賞経験もある世界的演奏家
イベント内では日本で「ペルソナ5」の公演を行えることがとても嬉しいと語り、演奏中やトークタイムでは時折コミカルな一面も見せ観客を大いに盛り上げていた

 開演前や休憩時間中のホールでは「ペルソナ5」のキャラクター「奥村春/ノワール」がアナウンスを担当し、イベントに来た怪盗団メンバーの様子や会場となった「東新宿」周辺の紹介が行われるなどシリーズファンには嬉しいサプライズとなっていた。

 クラシックな雰囲気となる今回のコンサートのアナウンスに怪盗団の中でも指折りの令嬢である彼女はベストマッチな存在と言えるだろう。

 公演時間は120分となり、セットリストは以下になる。

【セットリスト】

□第一部
0.Overture
1.Wake Up, Get Up, Get Out There
2.Life Will Change
3.Butterfly Kiss
4.Tokyo Daylight
5.全ての人の魂の詩(Aria of the Soul)
6.Beneath the Mask
7.Have a Short Rest
8.Will Power
9.Rivers In the Desert

□第二部
10.Colors Flying High
11.Tokyo Emergency
12.Break it Down
13.Layer Cake
14.No More What Ifs
15.Life Goes On
16.The Whims of Fate
17.Take Over

□アンコール
18.星と僕らと(Hoshi To Bokura To)
19.Last Surprise

ビッグバンドでより壮大に! 常に鳥肌の迫力

 開演後は豪華キャストによる大迫力の生演奏が行われ、各楽曲に合わせる形でライティング演出や後方の大型スクリーンにゲーム映像が流れるなど圧巻の演出で一気に心を奪う。

 ボーカルが存在する楽曲では観客を巻き込んだ手拍子やコール&レスポンスが行われたりなど音楽イベント特有の一体感を楽しめるパートも存在し、稲泉りん氏の美麗かつ力強い歌声を堪能しながら「ペルソナ5」の世界観に浸れる極上の空間となっていた。

【稲泉りん氏】
「ペルソナ5」の多くの楽曲にてボーカルとして活躍した世界的シンガー
チャーリー氏とノリノリで音楽を奏でる姿は正に“夢の最強のタッグ”と言って差し支えない
楽曲に合わせた舞台演出で一気に会場は「ペルソナ5」の世界へ
ゲーム体験がフラッシュバックして自然と涙腺が熱くなる感覚が幾度も訪れた……!

 ゲームプレイ時にBGMとして聞いていた時ももちろん素晴らしかったのだが、「ビッグバンド」という形で再誕した今回の演奏は音の迫力や勢いが全く異なり常に鳥肌が出てしまうほどだった。

 各楽曲のアレンジは原曲の良さを残しながら“壮大さ”が増しており、加えて“各楽曲の個性がより強調”されているような印象を受けた。

 BGMとして聞き流していた各楽曲のキャッチーなメロディーの良さに改めて気づくことができながらも、アレンジによって拡張された“曲の盛り上がり”が何とも聴き応えのある完成度だったのだ。

 中でも筆者が特に感動したアレンジは各楽曲に必ず1度は訪れるプロアーティストによるソロパートだ。

 楽曲によって異なるテイストのソロパートは“初めて聞くメロディーなのに知っている曲とマッチしている”という不思議な感覚が毎回発生し、違和感なく新たな感動を与えるプロの腕前をいかんなく見せつけられた。

ソロパート/アレンジパートの際にはスポットライトが特定のプレイヤーに集中したり、ステージ前方に登場して演奏してくれる

感動から大熱狂も。第一部をセットリスト順に紹介

 ここからは実際のセットリストの順に沿って本コンサートの感動を振り返りたいと思う。

 開園を告げる楽曲「Overture」はチャーリー氏のオリジナル楽曲で、彼がアレンジした「Last Surprise」と同じテーマを引用した物だ。

 観客を「ペルソナ5」の世界へ導入するスタートに相応しいメロディーから、流れるように始まるのが元祖「ペルソナ5」のOP曲である「Wake Up, Get Up, Get Out There」である。「ペルソナ5」という作品のイメージをバッチリ投影しており、正にコンサートの開始を継げるに相応しい。

 その後に続くのは本作のメインテーマと言っても過言ではない「Life Will Change」。「ペルソナ5といえばコレ!」と言えるほど逆転を想起させる勝気なメロディーと、観客を巻き込んだクラップで会場全体が一気にヒートアップした。

 この「Wake Up, Get Up, Get Out There」から「Life Will Change」の流れは「ペルソナ5」を初めて起動したプレイヤーがゲーム冒頭で体験する内容に沿った曲チョイスとなっているのもニクイ演出である。

ゲーム冒頭を想起させるような作品を代表する楽曲の連続で一気にコンサートへ惹き込まれる!
【【DJモルガナ】「Wake Up, Get Up, Get Out There」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第7位】

 続いて奏でられた「Butterfly Kiss」と「Tokyo Daylight」はゲーム本編では主人公が街の探索やアイテム購入などを行う日常パートで流れる曲だ。

 舞台となる東京をイメージさせるクラシックなメロディーと日常パートならではの穏やかな曲調がビッグバンドアレンジと意外なほどにマッチしていた。

 特に筆者のお気に入りは「Butterfly Kiss」のアレンジで、原曲の少しアダルティな雰囲気のメロディーにオリジナルパートが加わって本曲の新たな一面を垣間見たような感動を覚えた。

【【DJモルガナ】「Butterfly Kiss」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第30位】
【【DJモルガナ】「Tokyo Daylight」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第26位】
「Tokyo Daylight」はコーラスが印象的な楽曲! とてもマネできないパートがいくつもあるのでプロの歌唱を生で見れたことにも感動だ……!

 「ペルソナ」シリーズを通して愛される楽曲「全ての人の魂の詩」がこのタイミングで流れ会場は一気に荘厳な雰囲気に包まれる。

 元々オーケストラチックな本曲は当然ビッグバンドアレンジとも凄まじく相性が良く、通常とは異なるジャズバラード風の曲調は新鮮さと本曲の懐の広さを感じさせてくれる。

 ソロパートでは本イベントのバンドリーダーを担当した世界的トランぺッター・エリック・ミヤシロ氏が演奏し、本コンサートの中でも特別感の強いシーンだったと感じている。

【エリック・ミヤシロ氏】
世界的トランぺッターであるエリック・ミヤシロ氏のソロパート。本イベントの国内プレイヤーのバンドリーダーを担当しているビッグバンドの第一人者だ
【【DJモルガナ】「全ての人の魂の詩」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第19位】

 観客が存分にベルベットルームの雰囲気を味わった後に流れたのが「Beneath the Mask」と「Have a Short Rest」の2曲。

 ゲーム本編では穏やかな日常風景やダンジョン内の休憩ポイントで流れるこの2曲は、感動の連続で疲弊した観客の心を一旦落ち着かせてくれる選曲となっていた。

 まるで嵐の前の静けさのような穏やかなメロディーと、ジャズオーケストラならではの多彩な音色に心惹かれていると会場の雰囲気が一気に変わる。

 「ペルソナ5」のボス戦の際に流れる代表的な2曲「Will Power」と「Rivers In the Desert」が連続して演奏されたのだ。

 ただでさえ熱い選曲に加え、今回演奏されたアレンジが原曲のヒロイックな雰囲気はそのままにビッグバンドらしい壮大さが加わってハチャメチャにカッコ良すぎて会場は熱狂の渦に包まれていた。

 再び登場した稲泉りん氏の歌唱のボルテージも最高潮に高まり、大熱狂の中第一部は幕を閉じる。

 個人的な感想だが、今回のアレンジの中で最もカッコいい曲を上げるとするならば「Will Power」を選ぶほどアレンジならではの感動が大きかった。

【【DJモルガナ】「Rivers In the Desert」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第3位】
【【DJモルガナ】「Will Power」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第12位】

最後まで大盛り上がり。「Take Over」で熱気も最高潮に

 第二部のスタートを飾ったのは、「ペルソナ5 ザ・ロイヤル(P5R)」のOPテーマ「Colors Flying High」だ。正に新たな幕開けに相応しい楽曲で、これほど適したタイミングの曲はないだろう。

 その後に続く「Tokyo Emergency」は物語が大きく動くタイミングで流れる楽曲なのでこちらもタイミングバッチリの選曲といえる。

 休憩後なのに会場の空気は一気に元に戻っていたように感じた。

【【DJモルガナ】「Will Power」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第12位】

 スタートダッシュを決めた後は第一部と同じく日常パートで流れた楽曲のアレンジが続く。

 「Break it Down」「Layer Cake」「No More What Ifs」「Life Goes On」はコープ活動や特定の場所・イベントに訪れた際に聞くことが多い楽曲なので、聞き馴染みがある分アレンジとの違いをより濃く感じられた。

 また楽曲が流れた際の映像も「Layer Cake」ならミリタリーチックな映像に岩井とのコープが流れたり、「Life Goes On」では学校のテストイベントが流れるなど曲とシチュエーションが紐づいているものが多く、力が入れられている。

 特に「No More What Ifs」に関しては「P5R」にて追加された楽曲で、この楽曲が流れるシチュエーションで出会うことの多い「明智吾郎」とのメモリアルがスクリーンに表示されるなど必見の内容となっていた。

【【DJモルガナ】「No More What Ifs」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第17位】
【【DJモルガナ】「Layer Cake」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第22位】

 コンサートも終盤に差し掛かる中で流れたのが「The Whims of Fate」だ。「ペルソナ5」本編の中でも最もストーリーが動き出す「ニイジマパレス」で流れる楽曲で、数あるステージBGMの中でもトップレベルに人気で記憶に残っているプレイヤーも多いだろう。

 「ニイジマパレス」はカジノを舞台としたステージなのでオリジナルの楽曲もクラシックファンクな曲調でオシャレ度が際立っているが、もちろんビッグバンドとの相性もバッチリ。偶然か必然か、ストーリーの終盤と盛り上がりを印象づける楽曲なので本コンサートのクライマックスへ向かう曲として非常に適しているとも感じた。

【【DJモルガナ】「The Whims of Fate」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第6位】

 第二部の終幕を飾るのが「P5R」から追加された楽曲「Take Over」だった。

 いつこの曲が流れるのかとワクワクしながら待っていたファンも多い中、最も盛り上がるタイミングでの登場に会場の熱気も最高潮に高まる。

 ゲーム本編では敵の不意を突いたチャンスエンカウント時に流れる楽曲で、ノリノリでスタイリッシュなリズムがビッグバンドと相まってより強く強調されて奏でられる。スクリーンには怪盗団メンバーによる総攻撃フィニッシュの映像が映し出され、「ペルソナ5」が持つカッコ良さの全てを一気に摂取できるような演奏となっていた。

【【DJモルガナ】「Take Over」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第4位】

 コンサートのラストにはアンコールに応える形で「ペルソナ5」のエンディングテーマである「星と僕らと」と「Last Surprise」の2曲が演奏された。

 作品の楽曲としての終幕、チャーリー氏が手掛けるアレンジソングの総括として相応しいチョイスの2曲と言える。

 特に「星と僕らと」は作品のエンディングテーマなので演奏は難しいと思う観客も多かったようで、演奏が始まった瞬間にどよめきの声が上がっていた。

 メッセージ性の強い楽曲でノスタルジーに浸った後、「ペルソナ5」をプレイしているプレイヤーが最も聞き馴染みのある「Last Surprise」でテンションを最高潮に高める流れは非常に心地よく、大歓声の中でコンサートは終幕した。

【【DJモルガナ】「Last Surprise」 みんなで選ぶ『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』楽曲 第5位】

再演も決定! 「ペルソナ5」×「ビッグバンド」のコンサートは想像以上

 今回史上初となる「ペルソナ5」×「ビッグバンド」のコンサートだったが、想像以上のシナジーを感じられる素晴らしすぎるイベントだったと筆者は感じている。

 元々楽曲に力が入っているゲームシリーズだが、生演奏でゲームサウンドを体で浴びられる幸せ、楽曲にアレンジが加わる事による新たな発見など、本イベントでなければ体験できないだろう。

 願わくば今回のアレンジ楽曲を何かしらの媒体で発売してほしいと思えるほど素晴らしい演奏だったので、今後の展開に期待したい。

 そんな今回の「ペルソナ5 スペシャル・ビッグバンド・コンサート」だが、なんと2026年夏に早速再演されることが決定した!

 「ペルソナ」ファンで作中の楽曲に興味のないプレイヤーは存在しないと思うので、ぜひ次の機会には一度参加してみてほしい。