レビュー

「逆転検事1&2 御剣セレクション」レビュー

ドット絵はモバイル版のものを使用。西田氏&橋本氏インタビュー

 ここからは、本作のプロデューサーを務めた西田峻佑氏と、「逆転」シリーズプロデューサーの橋本賢一氏へのインタビューをお届けする。

西田 峻佑氏
橋本 賢一氏

――今年は「王泥喜セレクション」が発売され、「逆転検事」は15周年でしたけれども、「逆転検事」が今年発売されるのは15周年記念をねらっていたのでしょうか?

西田氏:特に15周年での発売を狙っていたわけではないのですが、運命かもしれません。「王泥喜セレクション」と同じ年に発売されるのはユーザーの皆さんも驚きだったのではと思います。

――「逆転検事」は長らく現行機で遊べなかったことで、新規「逆転」ファンは指を咥えて待つしかなかった作品の一つでした。HD版の発売を待ち望む声は長らく届いていたことかと思いますが、このプロジェクトはいつ頃から動き始めたのでしょうか?

西田氏:2022年の中頃からスタートしています。新規逆転ファンの方たちにも遊んでいただくため、他のセレクションど同等の機能を追加しています。大画面でも遊べるようになったことで、今ならではの新規ビジュアルを追加しています。

――「御剣セレクション」の発売がニンテンドーダイレクトで発表されたときは、SNSでも御剣ミーム(ドット絵の御剣怜侍がドッグランを走る動画)など大いに盛り上がりました。その時のご心境などをお伺いできますか?

西田氏:SNSの盛り上がりが思ったより凄く、それだけファンに待望されていた、期待されていたタイトルだなというのを実感しました。

 また、御剣ミームの動画は開発を始めてすぐに私も発見して、開発でも笑ってましたね(笑)。あの発想力と技術力、意味不明さがマッチして凄く面白いですね。コミュニティが盛り上がっているのは私としても楽しいです。





――新規アートは、「逆転検事」シリーズのキャラクターデザインを担当した岩元辰郎氏ですが、岩元さんにオーダーされることは最初から決めていたのでしょうか。

西田氏:描き下ろしにする場合は最初から岩元さんしかいないと思っていました。

――岩元さんが「逆転検事」の絵を描かれるのは舞台版「逆転検事」などを含めても随分と久しぶりかと思いますが、今回の新規イラストをご覧になってどのような感想を持たれましたか?

西田氏:まずカッコいいなと思いましたね。岩元さんらしいタッチで、遊び心もある、最終的にはこちらのオーダー以上のものでした。

――「御剣セレクション」アレンジミニアルバムのジャケットの岩元さんのイラストは、新規アートとはまた雰囲気が違いますが、どのようなコンセプトで進めていかれたのでしょうか?

西田氏:ミニキャラをチェスの駒に見立てるアイデアと執務室で紅茶を飲みながらくつろいでいるイメージですね。ミニキャラもゲームをクリアした後にひとつひとつ見るとまた面白いと思います。

――ミニキャラクターも、80キャラクター以上を岩元さんが新たに描き起こされているとのことですが、全キャラクターともワンテイクで仕上がったのでしょうか?

西田氏:ワンテイクではなく、リテイクを重ねています。アニメーション化はさすがに物量が多すぎるので岩元さんのデザインをもとにデザイナー陣のすさまじいこだわりで作られています。こちらも複数リテイクで、ぎりぎりまで作業しています。

――ギャラリーモードなども今回搭載されますが、開発資料なども公開されるそうですね。ギャラリーモードで特に注目してほしい場所などはありますか?

西田氏:ほんの少しですがボツになった水族館に登場するキャラのラフイラストも載っています。ぜひ見てください。

――「逆転検事」は、「逆転裁判」シリーズとは違って実際にキャラクターを操作するゲームになっていますが、一人称視点ではなく三人称視点ならではのゲームということで、「逆転裁判」シリーズとは大きく異なりますが、三人称視点ならではのHD化に伴う苦労した点とかはありますか?

西田氏:ミニキャラクターが画面内にいるので、フルHD化で横表示が広がったこともあり色々と問題が起きました。

――今回、オリジナルのドット絵との切り替えも可能にしていますが、わざわざドット絵のバージョンも入れようと思われたのは何故ですか? また、ドット絵バージョンは基本的にDSの時のままになっているのでしょうか?

西田氏:ドット絵については、当時のドット職人のセンスと技術でしっかり作りこまれており、ドット絵ならではの良さが感じられるものになっています。モダンとあわせて楽しんで頂きたいと思い今回入れさせて頂きました。ドット版を知る方には懐かしく、今回初めて遊ばれる方には新鮮に感じて頂けるものと思います。

 ドット絵についてはモバイル版で使われたものを使用しています。ニンテンドーDS版に比べキャラクターのシルエットが少しだけ滑らかになっています。

――今回、BGMもオリジナルとアレンジが選べるとのことですが、アレンジBGMはどなたが担当されているのか教えていただきたいです。

西田氏:今回はカプコンサウンドチームのコンポーザー2名がアレンジを担当いたしました。

 1人は「逆転」シリーズではおなじみの北川保昌、もう1人は2023年入社の新鋭、平沼優奈です。

 「逆転検事1」の5曲を北川が、「逆転検事2」の5曲を平沼がアレンジを担当しておりまして、平沼はメインメニュー画面の新曲(「追究への序曲 ~さらなる真実を求めて」)も制作しております。

――BGMのアレンジで意識した点や、特に聞いてほしい渾身のアレンジ楽曲などはありますか?(当質問のみ、平沼優奈氏と北川保昌氏より回答)

平沼氏:「逆転」シリーズは特に音楽を愛してくださっているファンの方がたくさんいらっしゃるので、ガラッと方向性を変えるのではなく、「原曲のイメージを壊さないようにしつつ、令和版として、新たな魅力を感じていただけるようなアレンジ」を目指して取り組みました。

 特に聞いていただきたいのは、「追究~つきとめたくて」と「御剣怜侍~異議あり!」です。どちらもギターやストリングスのアレンジを工夫してプレイ中の疾走感や爽快感が出るようにがんばってみましたので、ぜひ聴いていただけますと嬉しいです!

北川氏:カッコいい部分はよりカッコよく、かつゲーム内でオリジナル音源と連続した際にもあまり違和感の出ないようアレンジしました。原曲と完全同尺で制作しているのも、その部分を重視したためです。

 特に聞いてほしい渾身作は、「対決 ~アレグロ 2009」です。というより、「逆転」シリーズ全般のアレグロが好きなだけかもしれません。

 あと平沼さんの「追究への序曲 ~さらなる真実を求めて」がお気に入りです。物凄く検事感がありますし、うねるようなベースラインがカッコいいんですよね。ただ、本人はベースは弾かないとのことです……。

――「逆転検事」シリーズで好きなキャラクター、好きなシーン、その理由をお伺いできればと思います。

西田氏:キャラは木之路いちるですが、シーンだと狼士龍の登場シーンが好きです。部下にも慕われて、何度見てもカッコいいと思います。

――「逆転検事」の舞台版がとても大好きでした。HD版発売に伴い、「逆転検事」を再び舞台化したりする可能性もありますか?

橋本氏:機会があれば実現したいですね。

――成歩堂セレクション、王泥喜セレクション、御剣セレクションとHD化してきましたが、今後の「逆転」シリーズの展望などをお伺いできればと思います。

橋本氏:今後についてはまだお伝えできることは無いのですが、シリーズ作品が現行のプラットフォームでプレイしていただけるようになりましたので、まずは色々な方にシリーズ作品を遊んでいただきたいです。

――ありがとうございました。