レビュー

「逆転検事1&2 御剣セレクション」レビュー

捜査パートと対決パートを繰り返しながら進めていくストーリー

 本作は、捜査パートと対決パートに分かれており、基本的に捜査パートと対決パートを交互に繰り返して進んでいく。法廷パートはないが、基本的な遊び方は「逆転裁判」から大きく変わらない。違うのは、法廷で犯人を追いつめるか、事件現場で追いつめるかだけだ。

捜査が始まったら、様々なところを調べてみよう
捜査で得られるのは証拠の他、ロジックモードで使用する情報もある

 謎解きも、難易度自体はシリーズの中では易しめであるものの、ゲームとしての体験や物語でぐっと引き込んでいくものばかりで、非常に遊びやすくなっている。現場で得た情報と情報を正しく組み合わせ、そこから新たな情報を得て、ロジックを完成させつつ、証拠を集めることで、物語は進んでいく。

ロジックモードで2つの異なる情報を選択し、「まとめる」ことで、新たな情報を得たり仮説を立てることができる
必要なロジックと証拠が集まると自動的に捜査は終了になる

 対決パートは基本的に「逆転裁判」の法廷パートと同様に、相手の発言を「ゆさぶる」、決定的な矛盾を見つけたら証拠品を「つきつける」、このふたつを駆使することになる。

対決パートは犯人とばかり起こるわけではない。ライバル検事や他の証人ら、様々な人物と対話していく
まずはじっくりと証人の話を聞いていこう。決定的な矛盾が見つからない時は「ゆさぶる」を使ってみるのも良い
いざ矛盾を見つけたら証拠品を「つきつけ」て、異議を唱えよう

 「逆転検事」は、ほぼこのふたつを繰り返すシンプルな内容になっている。

 「逆転検事2」は、これに加えて「ロジックチェス」という要素が追加。「逆転裁判」シリーズに登場する「サイコ・ロック」に近いシステムで、主に何かを隠している証人に様々な言葉で揺さぶりをかけて、相手の証言を引き出す……、というもの。

 サイコ・ロックと大きく違うのは、制限時間があることだ。しかも選択を誤ると制限時間が減ってしまうので、よく考えて発言をぶつけなければならない。

証人によって、嘘をついている時に言葉が荒くなる、挙動がおかしくなる、等特徴があるので、うまく証人の特徴を捉えてぶつける言葉を考える必要がある
あえて「様子を見る」ことで進展することもある
リアルタイムに進んでいくので、じっくり考えたい人には少々難しい。かくいう筆者も、ロジックチェスの駆け引きは苦手なほうだ。ただ、物語前半のうちは、パターンはそんなに多くないため、万が一制限時間を迎えてしまっても、1回やり直せば正解パターンにたどり着ける、くらいのことが多い

ログの読み返しや、ストーリーモード、ギャラリーモードなども搭載

 本作はニンテンドーDSからの移植作品となるが、UIは「成歩堂セレクション」や「王泥喜セレクション」と変わらないため、ここ最近のリファイン作品をプレイしている人にとっては特に難しいことはない。

 元々操作はシンプルなゲームな上に、操作については丁寧に説明されている。もしも「逆転」シリーズは初めて、という人でも問題なくプレイできるようにはなっている。しかし、本作は前述の通りこれまでの「逆転裁判」シリーズに登場してきたキャラクターも登場する上に、御剣の亡き父親とのエピソードなども語られるので、できれば「逆転裁判123 成歩堂セレクション」はプレイしておくと、一層楽しむことができるだろう。

本作は、いわゆる「逆転」シリーズのファンサービス要素が強い。本作から入ってももちろん良いのだが、「ストーリーがわからなかった」と思われてしまうのは筆者としても少々遺憾なので、可能であれば「逆転裁判123 成歩堂セレクション」から入ってほしい

 なお、「逆転検事1&2 御剣セレクション」には、待望のログの読み返し機能や、推理まで全てを自動でプレイしてくれる「ストーリーモード」、そしてギャラリーモードなどが追加された。

ログの読み返し機能は非常に有り難い。ストーリーで大事な話を見落とした時はもちろんのこと、推理にも役立てたい
オプションには「オートプレイ」と「ストーリーモード」がある。オートプレイは会話が自動で進行する機能で、通常はこちらに設定されている。実際にプレイしてみるとわかるが、結構な頻度で決定ボタンで文字送りをしなければならないため、指が疲れる。オートプレイは非常にありがたい。もちろん謎解きは自分でプレイしなければならない。一方ストーリーモードは完全に見ているだけで謎解きから何から進めてくれる。2周目などでストーリーだけ読み返したい時にオススメ
ギャラリーには「勲章」、「アルバム」、「キャラ図鑑」、「特別資料」、「ミュージック」がある
特別資料では各キャラクターのデザイン画などが見れる
御剣の立ち絵ポーズ集
御剣の三面図。正面、横顔、背面からの顔や、細かいグラフィックの指定などが描かれている。これはとても嬉しい
御剣、美雲、イトノコの3人のラフ画
拡大、縮小などもできるので、細かいところもじっくり眺められる。保存しておいてスマートフォンの待ち受けなどにすることも可能だ

15周年記念に相応しいリファイン作品。これでついに現行「逆転」シリーズが全てリファイン化!

 2001年に「逆転裁判」が発表されてから、23年。2024年1月に「逆転裁判456 王泥喜セレクション」が発売され、残す「逆転検事」はどうなるのか、と首を長くして待っていたところ、まさかの今年に「逆転検事」もリファイン化が決定し、今年は「逆転」ファン歓喜の1年になったことだろう。

 かくいう筆者も今年の5月28日に「逆転検事」の15周年記念記事を執筆した際に、「ぜひHD化してください!」と書いた矢先の出来事だっただけに、大層驚いた。

 本作は15年前の作品で、設定的には一時代前のシーンもあり(例えば携帯電話をみんなが当たり前に持っている時代ではなかったり、そもそもスマートフォンがない時代だったり、映像記録がビデオテープだったり等)、現代だともう少し違うものになっているのでは、というような場面もあるにはあるのだが、ストーリーそのものは決して古臭さを感じさせない。

 今回、「逆転検事」と「逆転検事2」を通しで遊ばせてもらったが、改めてキャラクターの造形の良さ、トリックの妙、ストーリーの出来栄え等、全てで大満足の仕上がりとなっている。特に各シナリオに伏線が張られ、大きなひとつのシナリオへと繋がっていく様は、素晴らしい。

 全体的にシナリオの量も申し分なく、通しで最初から最後まで遊ぼうとすると、思った以上のボリュームに驚くことになるだろう。事実、「逆転検事」がリリースされた頃、「逆転」シリーズは「逆転裁判4」までリリースされていたのだが、「逆転検事2」は「逆転裁判4」のボリュームを上回る内容となっている。スピンオフ作品とは思えないほどの、力の入れようだ。

 「逆転検事2」では、検事として生きてきた御剣に、検事バッジ剥奪という危機が迫る中、御剣は「検事として真実を追うこと」という壁にぶつかりながら、自身の在り方を問うていく。

 御剣怜侍というキャラクターの過去から現在、そして今後の生き様までを描くような内容となっており、御剣が好きなファンはもちろんのこと、御剣をなんとなく見てきたシリーズファンにとっても、新たな御剣が見られるのは間違いない。

 いつも冷静沈着な(ように見える)御剣が心の裡に抱く情熱や葛藤、そのいずれもが「とってつけた」感がなく、自然と描かれているため、物語にぐいぐいと引き込まれていく。

 さきほどボリュームについて触れたが、それでいて展開は「逆転検事」「逆転検事2」のどちらともスピーディだ。二転三転どころか目まぐるしく状況が変わっていく物語なので、常にワクワクしながらプレイすることができる。

「逆転検事2」では信楽に、弁護士にならないかと誘われる御剣
かつては弁護士を目指していた御剣だが……

 未プレイの人には文句なしにオススメできる作品だが、久しぶりにプレイする人も美しくなった画面で新たな発見もあることだろう。ちなみに個人的には狼と名刺交換をする御剣のシーンで、お互いの名刺がはっきりと読めたなんていう些細な部分に感動してしまった。

初対面時、互いに名刺を交わす御剣と狼。御剣の名刺も狼の名刺もくっきり綺麗

 また、証人や犯人がしてやられるブレイクシーンの画もすごく凝っていて、見どころのひとつである。ちょっと気になるビジュアル部分が思った通りに弾けてテンションが上がったり、「ここでこんな仕込みがあったの!?」というような箇所もあったり、これぞ「逆転」魂というエキセントリックなキャラクターだらけになっている。ぜひ、これを機にプレイしてみてほしい。

「逆転」シリーズではお馴染みのタイホくんも登場する