【特別企画】
「逆転検事」15周年! 「逆転裁判」シリーズのスピンオフ作品で、御剣検事が主役となった推理ADV
2024年5月28日 00:00
- 【逆転検事】
- 2009年5月28日 発売
カプコンが2009年5月28日に発売したニンテンドーDS用「逆転検事」が、本日2024年5月28日で15周年を迎えた。
本作はカプコンの人気推理ADV「逆転裁判」シリーズのスピンオフ作品で、同シリーズのキャラクター・御剣怜侍(みつるぎれいじ)が主人公だ。御剣と言えば、「逆転裁判」シリーズの主人公である成歩堂龍一のライバルであり親友でもある天才検事。弱冠20歳で検事になって以来、成歩堂に法廷で再会するまで一度も無罪判決を出したことがなかった。
「逆転検事」は「逆転裁判」シリーズでも人気の高かった御剣を主役に据え、法廷パートこそないものの捜査で犯人を見つけ出す、推理アドベンチャーとなっている。
本稿では15周年を迎えた「逆転検事」の思い出を振り返っていきたい。なお本稿では「逆転裁判」シリーズのネタバレを取り扱っているので、注意してほしい。
生真面目な天才検事・御剣を振り返る
まずはせっかくなので、本作の主人公である御剣怜侍というキャラクターについて、改めて振り返ろう。
成歩堂と出会うまでの御剣は、有罪判決の為ならば手段を選ばないという非情な人物だった。有罪判決のための不正疑惑もあり、証言の操作などにも躊躇いがない。御剣の師匠は、伝説の検事と呼ばれる狩魔豪(かるまごう)。狩魔豪の娘にあたる狩魔冥(かるまめい)とは、実質義理の兄妹のような関係で、検事としては兄妹弟子。
御剣に関するエピソードは、「逆転裁判1」~「逆転裁判 蘇る逆転」~「逆転裁判2」~「逆転裁判3」などで主に描かれており、不正疑惑についても「蘇る逆転」でその真実が語られているのだが、御剣自身は不正には一切関知していない。実は裏の人間が有罪をもぎ取るために証拠や証言を捏造していたのだった。
だが、御剣自身は不正に関与していなかったとはいえ、彼自身は実際成歩堂に再会するまでは冷酷な人間だった。その背景には彼が小さい頃に遭遇したとある事件が関係している。その事件は「逆転裁判」で描かれている。
それはDL6号事件と呼ばれている事件。
地方裁判所のエレベーター内で、乗客の一人だった弁護士・御剣信(みつるぎしん)が何者かによって射殺され、エレベーターの乗客の1人が逮捕されたものの、彼が犯人だと証明できる決定的な証拠が見つからなかった。そこで警察は霊媒で御剣信の魂を呼びだし、犯人を断定するが、その人物は裁判で無罪に。事件は迷宮入りとなった。
この殺された弁護士が、御剣の父親である。当時9歳だった御剣は、この事件を経て「犯罪者の味方になることはできない」と弁護士となる夢を断念。弁護士とは対峙する関係にある検事を目指すようになった。
しかし幼少の頃を共に過ごした成歩堂と法廷で再会してからは、勝ち負けにこだわるというよりも真実を追求することに重きを置くようになった。それからはなお一層天才検事として名を馳せた。
「逆転裁判3」ではとある事情で法廷に立てなくなった成歩堂から弁護士バッジを託され、かつて夢に見た弁護士として法廷に立ったこともあった。「逆転検事」は、そんな「逆転裁判3」の1カ月後から始まる物語となっている。
「検事は、法廷で被告人を有罪にするために闘うもの。だが……私はそれだけがすべてとは思わない」
検事側から事件を追い、真相に迫るのだ。
山崎剛氏によるシナリオが秀逸
本作は、これまで「逆転裁判」シリーズの生みの親としてシリーズに関わってきた巧舟氏は制作に関与しておらず、当時カプコンに在籍していた山崎剛氏がシナリオディレクター兼ディレクターを務めている。プロデューサーは「逆転裁判5」などを担当している江城元秀氏だ。
巧舟氏が関わらないことについては当時否定的な意見が多かったのだが、蓋を開けてみれば巧舟氏に劣らない「逆転裁判」節にあふれた作品となっており、シリーズファンからは絶賛されることとなった。
実際、当時は「逆転裁判」シリーズをまだ遊んだことがなかった人も多くいたが、「逆転検事」が面白かったために「逆転裁判」をプレイする、というファンも見受けられたほどだ。
本作は、捜査パートと対決パートに分かれており、基本的に捜査パートと対決パートを交互に繰り返して進んでいく。「逆転裁判」にある法廷パートこそないものの、基本的な遊び方は「逆転裁判」から大きく変わらない。違うのは、法廷で犯人を追いつめるか、事件現場で追いつめるかだけだ。
「逆転裁判」シリーズの時系列の都合上、御剣を動かせるのはたった4日間しかなく、4日間で数々の難事件を解決していくという少々強引な展開にはなっていたのだが、その無茶苦茶さは4日間という時間を気にしなければ、あまり気にならないものであった。
それ以上に、「逆転裁判」シリーズよりもシナリオが全体的にボリュームアップしていたことが評価につながった作品である。全体的に内容が短めな「逆転裁判」シリーズよりも、遊び応えのある作品となっていた。
謎解きも、難易度自体はシリーズの中では易しめであるものの、構成としてはよくできたものばかりで、非常に遊びやすくなっている。基本的には現場で得た情報と情報を正しく組み合わせ、そこから新たな情報を得て、ロジックを完成させることでシナリオが進むようになっている。
ロジックモードで2つの異なる情報を選択し、「まとめる」ことで、新たな情報を得たり仮説を立てることができた。
作中にはもちろん「逆転裁判」シリーズお馴染みのキャラクターが多数登場。特に御剣の部下にあたる糸鋸(いとのこぎり)刑事などは、捜査に協力してくれるまさに相棒のような存在だ(糸鋸刑事を「相棒」と称すと、御剣は非常に嫌な顔をしそうだが)。
「逆転裁判」シリーズではお馴染みの亜内検事や、狩魔冥、須々木マコなども登場。特に須々木マコはまたもや犯人と疑われ、誤認逮捕されかけてしまうものの、御剣の捜査によって真犯人を逮捕することができたため、須々木マコは助かるのだった。
登場するのはもちろんお馴染みのキャラクターばかりではない。(勝手に)御剣の助手を名乗っていたのは、新キャラクターの一条美雲(いちじょうみくも)。17歳の高校生でありつつ、怪盗「ヤタガラス」の後継者だと名乗り、「悪」が隠している「真実」だけを盗む義賊を目指している。
怪盗と検事という、なんともよくわからないコンビだが、押しかけ助手の美雲の明るさが御剣の寡黙さと正反対で、なんだかんだと良く収まっているのが見どころだ。人当たりがよく、相棒の座を奪われてヤキモキしている糸鋸刑事ともなんだかんだとすぐに仲良くなってしまった。
先代のヤタガラスが開発した潜入シミュレーション「ぬすみちゃん」を持っている美雲は、事件当時の現場再現で大いに役立つこととなる。
しかし惜しいかな、全5話中美雲が出てくるのは第3話以降。せっかく登場した新キャラクターでありつつ、どうしても「逆転裁判」シリーズから登場しているキャラクターたちには印象負けしてしまっている部分もあったが、美雲自体はとても可愛い魅力的なヒロインに仕上がっている。「個性的」という意味でもキャラ付けはとても「逆転」シリーズ風味なヒロインで、正義感が強く、どちらかというと人が苦手な御剣に変わって聞き込みをしたりと、大活躍してくれるのだ。
また、「逆転裁判」は成歩堂の一人称視点で進んでいくのに対して、「逆転検事」は御剣を三人称視点で操作できる。ドット絵で描かれる御剣を操作しながら捜査を進めていくのは、それだけで楽しかった。
特に第1話の事件現場は海外出張に出ていた御剣の執務室で起こったということもあり、御剣の執務室を細かく見て回れてしまう。
「なるほどなるほど、ここでみっちゃんはお仕事してるのね~」なんて、オバチャン(大場カオル)も真っ青な気持ち悪さ丸出しで見てしまったことは、今でも忘れられない思い出だ。
舞台化もされていた「逆転検事」。御剣役は人気俳優の和田琢磨さん
個人的に推したいのは、舞台版「逆転検事 ~逆転のテレポテーション~」だ。2016年に初演が、2017年に再演が行われた。
御剣怜侍役は、人気俳優の和田琢磨さん。この和田さんの御剣が、まさに理想からそのまま抜け出してきたような美しい御剣だったのだ。
この舞台は、舞台版のためのオリジナルストーリーとなっており、これまでの「逆転」シリーズの舞台化と違って、見ている側も最後の最後まで犯人がわからず、御剣と同じ視点でロジックを整えていくことができたのが魅力だった。
また、矢張政志(やはりまさし)やオバチャンらが登場するのも、見どころのひとつだった。
残念ながら現在ではDVDは販売されておらず、中古品などを探してもらうしかないのだが、興味がある人はぜひ見てもらえると2.5次元大好きな筆者も嬉しい。
今年1月には、「逆転裁判」の4〜6がセットになった「逆転裁判456 王泥喜セレクション」も満を持して発売された。ぜひこの流れで「逆転検事」シリーズもHD化してほしいと願うばかりだ。
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