レビュー

「逆転検事1&2 御剣セレクション」レビュー

ビジュアル刷新で体験しやすく。西田氏&橋本氏のWプロデューサーインタビューも掲載

【逆転検事1&2 御剣セレクション】

9月6日 発売予定

価格:
ダウンロード版:4,990円
Steamキー版:4,990円
パッケージ版:5,489円

 カプコンから2009年5月28日にニンテンドーDS用にて発売されたゲームソフト「逆転検事」。発売から15周年という節目を迎えてついにHD化され、「逆転検事1&2 御剣セレクション」として9月6日に発売される。対応プラットフォームはNintendo Swtich、プレイステーション 4、Xbox One、Steam。

 本作はカプコンの人気推理アドベンチャー「逆転裁判」シリーズのスピンオフ作品となり、同シリーズのキャラクター・御剣怜侍(みつるぎれいじ)が主人公だ。

【『逆転検事1&2 御剣セレクション』 アナウンストレーラー】

 御剣と言えば、「逆転裁判」シリーズの主人公である成歩堂龍一(なるほどうりゅういち)のライバルである天才検事。弱冠20歳で検事になってからというもの、成歩堂に法廷で再会するまで一度も無罪判決を出したことがなかった。

 「逆転検事」及び「逆転検事2」は「逆転裁判」シリーズでも人気の高い御剣を主役に捜査で犯人を見つけ出す推理アドベンチャーで、「逆転検事1&2 御剣セレクション」はグラフィックスなどが一新されたリニューアル作品となる。

 特に本作に登場するミニキャラクターは、キャラクターデザイナーの岩元辰郎氏が新規に描き下ろし、総勢100人以上の登場キャラクターたちの動きや表情がより繊細に描かれているのが一番の特徴と言えるだろう。

キャラクターは一新された「モダン」と、従来のドット絵の「クラシック」から選ぶことができる。オススメはやはりモダン。本稿は基本的にモダンでプレイしている

 本稿では、「逆転検事」及び「逆転検事2」の見どころや、変更点を紹介していきたい。

 ちなみに御剣という人物については、「逆転検事」の発売15周年を記念した企画記事にて紹介しているので、「逆転」シリーズを未体験というひとは目を通してもらえれば幸いだ。

 また、記事の後半では本作のプロデューサーを務めた西田 峻佑氏と、「逆転」シリーズプロデューサーの橋本 賢一氏へのインタビューを掲載している。そちらにもぜひご覧いただきたい。

グラフィックスの一新で細かい表情まで表現可能に!

 本作で真っ先に目を引くのは、キャラクターグラフィックスの一新である。主人公の御剣をはじめ、登場する全キャラクターの立ち絵がドット絵から美しくリファインされている。

この1枚の絵を見ただけでも「おお……!」となる。キャラクターだけではなく、もちろん背景なども全てリファインされており、御剣の執務室に置かれているトノサマンのフィギュアまで、バッチリ綺麗になっている

 前述の通り、キャラクターイラストは元々「逆転検事」のキャラクターデザイナーを務めていた岩元氏によるもので、違和感などはない。むしろ岩元氏のより繊細な絵が拝めて、感謝の気持ちで満たされる。

御剣のポーズや糸鋸刑事(イトノコ)のポーズまで、全てが美麗なグラフィックで描かれる

 もちろん「どうしても15年前のあのドット絵でプレイしたい!」という人は切り替え機能でクラシックにすればいい。ただ、モダンは本当に細かい表情ひとつまで丁寧に描かれているため、一度はモダンでプレイしてみてほしいところだ。

 基本的に御剣の取るポーズや表情は「逆転裁判」でお馴染みのものだが、「逆転検事」シリーズ特有のミニキャラクターで描かれるのは新鮮味がある。

御剣の細かい動きや表情まで、ミニキャラクターでも伝わってくるのが嬉しい
こちらが「クラシック」の画面。モバイル版のドット絵が使用されているという(後述のインタビュー参照)

 そして各キャラクターの立ち絵にも注目だ。こちらも基本的にリファインされた「逆転裁判」からお馴染みのものが多いが、「逆転検事」でのみ登場するオリジナルキャラクターたちもグラフィックスが美しく描かれ直されている。

御剣やイトノコ刑事のグラフィックは、基本的に「逆転裁判123 成歩堂セレクション」と同様だと思ってくれれば良い
「逆転検事」1話で登場する優木誠人なども、綺麗になって新登場
「逆転検事」の2話で登場する木之路いちる
「逆転」シリーズではお馴染みの狩魔冥

 またゲーム体験という点では、オリジナルをベースにしつつミニキャラクターから立ち絵、背景までくっきりとビジュアルが刷新されており、異変のある箇所がわかりやすくなった。

 15年前にニンテンドーDSで発売されたゲームだということを忘れてしまうほどすんなりと、新たな「逆転検事」の世界に飛び込むことができるようになっており、ミニキャラクターも本作の個性的な登場キャラクターの魅力が引き立てられている。

背景のポスターの文字はもちろんのこと、グラフィックが美しくなったことでおかしなところも見落としにくくなり、捜査しやすい
一画面の中にこれだけキャラクターがいても、とてもすっきりしていて見やすい

登場人物は100人以上! 「逆転」シリーズらしいキャラクターたち

 本作は、2作品あわせて100人以上にも及ぶキャラクターが登場する。そのいずれもが、非常に個性豊かだ。

 本作は、これまで「逆転裁判」シリーズの生みの親としてシリーズに関わってきた巧舟氏は制作に関与しておらず、当時カプコンに在籍していた山崎剛氏がシナリオディレクター兼ディレクターを務めているのだが、山崎氏によるシナリオは「巧舟魂」を非常に踏襲しているものとなっている。

 筆者自身、言われなければ巧舟氏が関わっていないことに気付かないのではと思ってしまうほど、シナリオもキャラクターも「巧舟魂」を感じるものに仕上がっている。

 御剣は生真面目な天才検事でありつつ、ちょっと不器用なところもあったり、天然ボケな部分も持っているのだが、御剣というキャラクターをいざ形にしようとしたときに、この「頭脳明晰でありながら天然」というバランスが非常に難しそうだな、と感じる。

 だが、山崎氏は巧舟氏の描いた御剣というキャラクターを、巧舟氏と同等レベルにまで理解をし、「ここは真面目に」「ここはボケる」という絶妙な塩梅で、本作の御剣を書き上げているのだ。

本作に登場する一条美雲(いちじょうみくも)の便利アイテム「ぬすみちゃん」を「ぬすみさん」と呼ぶ御剣。こんなところにも御剣の天然ぶりが現れている

 他に登場するキャラクターも、「逆転」シリーズでお馴染みなイトノコ刑事や狩魔冥検事などなど(ちなみにナルホドくんは登場しない)、どのキャラクターも解像度が高く、非常にファンの心理を押さえたセリフ回しがいい。

御剣との面識はないが、「逆転裁判2」「逆転裁判3」に登場した元警察官の須々木マコ
「逆転裁判2」に登場したタチミ・サーカスの猛獣使いのミリカこと、立見里香(たちみりか)

 一方で、むやみやたらに「逆転裁判」からキャラクターを引っ張ってくるわけではない。この設定を出すからにはどのようなトリックやギミックが良いか、という点を限界まで考え抜かれて作られているのが、ファンとしては嬉しいポイントだ。

 そして、新規に登場するキャラクターたちも、魅力的である。先程もちらりと名前を出した一条美雲は、勝手に御剣の助手の座に居座るのだが、嫌味のないカラリとしたキャラクターで、最初は御剣の助手の座を争っていたイトノコともいつの間にか仲良くなってしまっている。

一条美雲。大ドロボウ「ヤタガラス」の二代目。「ぬすみちゃん」というシミュレーションツールを持っていて、現場の再現などで御剣の役に立っている

 筆者の一押しは、「逆転検事2」で登場する御剣のライバル検事である、一柳弓彦(いちやなぎゆみひこ)。17歳で検事になった、自称天才検事。自称、というのがポイントで、実際は超のつくポンコツキャラクターだ。つまり、御剣のライバル検事のように見えて、ライバルという立ち位置には到底登り詰められていないのだが、根は純粋、という人物だ。

一柳弓彦。「一」という数字にこだわっている、自称「一流」検事である

 弓彦のお目付け役のような、裁判官・水鏡秤(みかがみはかり)が実質御剣の本当にライバルにあたる。水鏡は検事審査会に所属し、御剣の捜査方法は危険だとし、検事バッジの剥奪をちらつかせて何度も御剣の前に立ちはだかる。

水鏡秤。弓彦とよく一緒に行動している

 「逆転検事1」で御剣のライバル役となる狼士龍(ろうしりゅう)は、「西鳳民国」の出身者で、国際警察でナンバーワンの検挙率を誇るエリート捜査官だ。この狼も筆者の一押しキャラクターで、初登場時には「1番!2番!……」と点呼を取る大量の部下に対して「どいつもこいつも、1番だ!」という謎のイケメンセリフを口にし、女子のハートをがっつり掴みにくる。

狼士龍。右から見ても左から見ても正面から見ても背後から見ても、まごう事なきイケメン

 「逆転検事2」で登場する弁護士の信楽盾之(しがらきたてゆき)は、なんと御剣の父である御剣信の助手だった人物。狩魔豪には不正捜査などで煮え湯を飲まされており、豪の弟子になった御剣のことも裏切り者と罵る。

信楽盾之。最初は御剣と対立する立場だが、検事バッジを剥奪されかけている御剣の懇願により、一時的に御剣を助手にする

 何せ2作品分とあって、現在紹介できる主要人物だけでもかなりの量なのだが、ここにサブキャラクターなどを含めていくと膨大な人物が登場するのが「逆転検事」シリーズの特徴だ。

 そしてこれらのキャラクターたちが、見事なまでに「個性被り」をしていない。デザインもそうだが、性格や喋り方までひとりひとり、キャラクターが立っているのだ。

 そのため、非常にたくさんのキャラクターが登場しても、全員深く印象に残るようになっており、新規キャラクターのほうが遥かに多いながらも、すんなりと物語を読めるようになっている。