レビュー
「REYNATIS/レナティス」レビュー
リアルな渋谷とファンタジーの世界が融合する、独創的なアクションRPG
2024年7月24日 00:00
- 【REYNATIS/レナティス】
- 7月25日 発売予定
- 価格
- 8,778円(通常版)
- 13,948円(数量限定リベレーションBOX)
- 9,680円(ダウンロード版特別パック付き通常版)
- 13,860円(ダウンロード版リベレーターズエディション)
フリューは、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Nintendo Switch/PC(Steam)用アクションRPG「REYNATIS/レナティス(以下、レナティス)」を7月25日に発売する。(Steam版はNIS America, Inc. より9月28日発売予定)価格は8,778円より。
本作は、実在する施設や店舗などは実名で登場し、渋谷の街並みをリアルに再現しているのが特徴。物語としては魔法使いたちの戦いを描くストーリーになっており、完全新規IPながらかなりの力の入り具合が見える「レナティス」を今回先行でプレイできる機会をいただいた。
シナリオライターに「ファイナルファンタジー」(スクウェア・エニックス)シリーズでお馴染みの野島一成氏。キャラクターデザインはライトノベルやカードゲーム用イラストを手掛ける鏑木康隆氏、コンポーザーには数々の名曲ゲームサウンドを生み出してきた下村陽子氏と、ゲームファンなら知らない者はいない錚々たる開発陣である。
フリューのRPGといえば「カリギュラ」や「モナーク」、「クライマキナ」など独創的な世界観やゲーム性を持つ作品が多く、本作もその期待を裏切らない内容となっている。他のゲームでは味わえない個性が光る世界観やゲーム性など、本作の気になる内容をお届けしていこう。
渋谷と異界、2つの世界を2人の主人公が駆け巡る
現代の渋谷を舞台にしながらも、一般の人間に紛れて「魔法使い」が存在するというリアルとファンタジーが融合した世界となっている。強大な力を持つ魔法使いは一般の人間からは危険視されており、そのため魔法使いは常に素性を隠すという抑圧された生活を強いられている。
「魔法使い」と「一般人」というわかりやすいシンプルな対立構図ではないのも世界観に深みを出している。渋谷に混乱をもたらす魔法使いの反政府組織「ギルド」。ギルドと敵対関係にあり、渋谷の治安を守る組織「M.E.A.」。どこにも所属しないノラ魔法使いを支援するグループ「オウル」といったように、さまざまな組織の人間が複雑に絡み合っているのだ。
本作は、ダブル主人公システムを採用しており、章ごとに切り替わる2人の主人公、ノラ魔法使いの「霧積真凛」とM.E.A.に所属する「西島佐理」を操作してゲームを進めていく。
それぞれの立ち位置や信念などが全く異なるのも面白いポイント。真凛は大層なお題目も特に無く、抑圧された現状を変えるために“最強の魔法使い”になるため渋谷を探索する。そして佐理は、人間をモンスターに変える違法薬物「ルブルム」を広めるギルドの壊滅を目的に戦っている。
ギルドからの勧誘を防ぐため、M.E.A.はノラ魔法使いも取り締まりの対象としており、真凛と佐理はそれぞれ主人公であるものの事実上敵対関係にある。物語が進み、この2人がどう絡んでいくのかも本作の見所である。
ここからはゲームの流れについて触れていこう。渋谷の街を中心に探索していき、様々な場所で起こる問題の調査や、敵の制圧などのメインクエストをこなしていくことでストーリーが進行する。
本作ならではの特徴として、フィールドで素性を隠して行動する「抑圧モード」と、魔力と使って行動する「解放モード」の2つを切り替えて探索することができる。
探索においては一般市民との会話やクエストの目的であるポイントを調べることが可能な抑圧モードが基本となるが、解放モードでは移動速度の上昇や、抑圧モードでは目視できない隠されたアイテムを発見することができるなどのメリットがある。
一見、抑圧モードよりも解放モードの方がメリットがたくさんありそうに思えるが、実は解放モードには特大のデメリットがある。それは自身が魔法使いということを市民にバレてしまうとSNS上で拡散されてトレンドランキングに載ってしまう。
時間の経過でトレンドランキングはどんどん上昇していき、1位になってしまうとものすごい強さのM.E.A.の精鋭隊員との戦闘に突入する。普通に戦ってもまず勝てない相手なので、SNSに拡散されたらセーフスポットに逃げ込むか他のエリアに移動してランキング上昇をすぐに止めるのが重要になる。解放モードは移動速度も早いためよりスムーズな探索ができたり、アイテムが見つけられたりといったメリットがあるが、それぞれの切り替えが大切だ。
SNSのトレンドランキングの他にも、本作独自の要素として「ストレス」という概念が存在する。
こちらはNPCに話しかけたり、SNSで拡散されることでストレス値が上昇する。ストレス値が高ければ高いほどバトル時の攻撃力が高くなるという恩恵を得られる。しかし、ストレスが最大値に達すると強制的に解放モードにチェンジしてしまうというデメリットもあったりする。
この発想はかなり面白いと感じたのだが、実際にプレイしてみるとストレス値は“わざと上げようとしないとそれほど自然には上がらないゲームバランス”になっており、ストレス上昇の緊張感などがあまり感じられなかったのは少々残念だった。
渋谷には「フォグ」という魔法使いだけが行き来できる空間が数多く点在しており、そこを通ると森や荒野が広がる「アナザー」と呼ばれる異界へ進入することができる。
アナザーは、渋谷では見かけることがないモンスターが出現する危険な場所だが、最強の魔法使いになる条件である“森の最奥にあるすべての門を解放”するため、真凛は渋谷の探索だけでなくアナザーも攻略していくことになる。
冒険の舞台が身近にある渋谷と、非日常的な異世界という、この全く異なるコントラストがプレーヤーをワクワクさせてくれる。
攻めも守りもどちらも爽快! 魔法使いの斬新なアクションバトル
「レナティス」の核ともいえる戦闘部分についても紹介していこう。イベント戦の他に、フィールドに存在する敵と一定距離近づいてしまうと戦闘に突入する。戦闘はアクションとなっているのだが、一般的なアクションとは異なる部分が多く、本作ならではの独特なルールが数多く存在している。
フィールドと同様に、戦闘でも抑圧モードと解放モードを切り替えることができる。これがどちらのモードも重要で、解放モードではMPを消費して通常攻撃やスキルなどを駆使して敵をたたみかけることができるが、防御手段は一切なく常に無防備な状態となっている。
その反面、抑圧モードは一切の攻撃手段が無い代わりに、敵の攻撃が自身にヒットする瞬間スローになりワンボタンで回避することができる。ただ攻撃をかわすだけでなくスロー中の回避に成功するとMPを少量回復できる。攻撃は全てMPを消費するので回避行動でMPを回復していくのはかなり大事になってくる。
バトルの鍵を握る大きな要素として「回避吸収」が存在する。敵との距離が近い状態で攻撃をされたときに、動きがスローになると同時に画面中央に魔法陣が発生する。
このとき回避ボタンを長押ししてゲージが溜まった瞬間にボタンを離すとMPを大量に回復する。ジャストのタイミングで成功すればMPが0の状態から最大まで回復することができるので、MPが尽きるまでガンガン攻めまくり、MPが底をついたら回避吸収を狙っていくというのが有効な戦術になる。
さらに、スロー回避や回避吸収でMPが上限以上に溜まった際に解放モードにチェンジで「バースト解放」が発動する。バースト解放は魔力を爆発させて敵を吹き飛ばし、一定時間動きをスローにすることができる。回避吸収からのバースト解放で敵が一時的に無防備になるので、一気に攻めるチャンスが生まれるのだ。
ここまでサラっと紹介したが、システムが特殊過ぎて初めにチュートリアルで一気に説明されたときは“いろんなシステムがあり過ぎて複雑で難しそう”と感じたのが正直な印象だ。
しかし、実際にプレイしてみると回避関連のアクションは、回避ボタンを押すタイミングでスローになってくれるので、従来のアクションゲームのジャスト回避的なものと比べてかなり簡単に成功できる設計になっている。
慣れない最初のうちは、こっちがある程度攻撃したら抑圧モードにチェンジして敵が攻撃をしてくるのを待ち構えるといった“ヒット&抑圧”スタイルで戦っていた。しかしプレイしているうちに自然と慣れてきて、そんなまどろっこしい戦い方をする必要はなくなる。
常に攻め攻めで戦い、敵の攻撃モーションが見えたら瞬時に抑圧モードに切り替えて回避吸収、そしてバースト解放で動けない敵を一気に叩く――この流れが最高に気持ち良く、まさに“最強の魔法使い感”を肌で感じることができる。
プレイを見ているだけだとすごく難しいことをしているように見えるが、実際に触れてみると操作はいたってシンプルで、誰でも簡単にスタイリッシュなアクションができるようになっている。
また、本作は3人パーティ編成となっている。基本は1キャラクターを操作し、残りの2人も自動で戦ってくれる――という訳ではなく、基本的には操作キャラクターをチェンジするための控えのような存在となる。
3人パーティなのに戦うのは1人だけかと最初はネガティブな印象を受けたが、本作のバトルシステムを深く理解するとその印象は一変した。
通常のチェンジでは使用しているキャラクターと控えのキャラクターが交代して終わりなのだが、操作キャラクターが攻撃アクションをとっている最中にチェンジをすることで、使用していたキャラクターは一定時間その場に残り自動で戦ってくれるのだ。
どういうことか簡単に説明すると、最初にAのキャラを操作し、攻撃で敵の脚を止めてBのキャラにチェンジ。するとAのキャラは残って戦い続けてくれるので、AとBの2キャラで敵を同時に叩くことができる。そこでさらにCのキャラクターに切り替えれば、3キャラクターによる暴力ともいえる一斉攻撃で敵を袋叩きにできるのだ。めちゃくちゃタフなボスキャラのHPがすごい速度でみるみる減っていく様はドーパミンが出まくりである。
プレーヤーの好きなタイミングで控えのキャラクターを戦わせることができるので、仲間が終始オートで一緒に戦ってくれるよりもプレーヤーが介入する余地があるのが非常に面白い。自分が狙った連携などが決まった瞬間は爽快の一言だ。
戦闘の自由度がとにかく高く、攻撃や回避などでゲージが溜まると使用できる「ラストメナス」という強力な魔法があるのだが、3人で一斉攻撃をするとゲージが一瞬で溜まるので連発して敵を駆逐するなど、プレーヤーの遊び方次第でいろいろな戦い方を楽しめるのが本作最大の魅力である。
サブクエストやウィザート探しなど、やり込みたくなる要素が満載
ストーリーを進めるためのメインクエストの他にやり込み要素も充実している。
魔女狩りアプリという項目からサブクエストを受注することができ、おつかい的なものから特定の敵の討伐など、さまざまな内容のサブクエストに挑戦できる。
サブクエストは渋谷の街を広範囲に駆け回るものが多く、10個程クリアしたときにはその面倒さに少しゲンナリしていた。しかし、途中で「渋谷マップ」からファストトラベルという項目があるのを発見し、そこからはストレスフリーでサクサクサブクエストを消化できるようになった。ゲーム内では何故か一切ファストトラベルの説明が無いので、これはぜひ覚えておいてもらいたい。
サブクエストをクリアした際にもらえる報酬は正直言って大したものではないが、クリアすることで渋谷中を包んでいるマリス(人々の悪意)を減らすことができる。このマリスが減ることで、街中に隠されているウィザートと呼ばれるものに触れられるようになり、そこから経験値やお金、スキルやアビリティなどを手に入れることができるのだ。キャラクターを成長させたいときに積極的にクリアを目指すのが良いかもしれない。
入手したスキルは装備すれば戦闘で多彩な魔法を使うことができ、アビリティを装備すればパラメーターやさまざまな能力が強化される。ウィザートは獲得すればする程キャラクターをどんどん強くできるので、サブクエストでマリス値を下げて、街中を巡ってのウィザート探しはかなり熱が入る。
ストーリーの本筋とは関係のないサブクエストなどは遊び込む人と一切遊ばない人とで結構割れると思われるが、サブクエストはクリア報酬がキャラ強化に直結していることもあって、自然とやり込みたくなる作りになっているのはさすがである。
今回「レナティス」をプレイしたが、筆者個人としてはかなりツボに刺さったゲーム性で、エンディングまでのおよそ20時間ほど、やり込み要素までもほぼクリアするほど夢中になってしまった。
とにかく戦闘がズバ抜けて面白いゲームで、瞬間瞬間で攻撃と防御のモード(抑圧と開放)を的確に切り替えるアクション性と、うまくかみ合ったときの爽快感は本作でしか味わえない唯一無二の体験であった。
粗削りな部分も少々あり、人を選ぶダークな世界観と独特なゲーム性は万人向けすると力強くは言い難いが、ハマる人には骨の髄まで深く突き刺さるようなそんなパワーを感じる作品となっている。ありきたりなゲーム性に飽き、新しいものを求めている人にはぜひプレイしてもらいたい1本だ。
(C) FURYU Corporation.