レビュー
「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」レビュー
良バランスの戦闘と“時空ギミック”が楽しい! 心地良い「メトロイドヴァニア」がここに誕生
2024年1月12日 14:07
- 【プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠】
- 1月18日 発売予定(1月15日よりアーリーアクセス)
- 価格︓6,600円
- プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション5/4(パッケージ版、デジタル版)、Xbox Series X|S、Xbox One、Windows PC(デジタル版のみ)
- ジャンル︓ アクションアドベンチャー
- プレイ人数:1人
ユービーアイソフトは1月18日、「プリンス・オブ・ペルシャ」シリーズの最新タイトルかつ新たなる「メトロイドヴァニア」作品として「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」の発売を予定している。アーリーアクセスは1月15日より開始予定。
長い歴史を持つ「プリンス オブ ペルシャ」シリーズの中でも「メトロイドヴァニア」と銘打たれて発売されたタイトルは本作が初。1990年に発売された第1作のような2D横スクロールアクションに原点回帰しながらも、近年の作品らしい爽快感の強いスタイリッシュなアクションを存分に楽しめる作品となっているのが大きな特徴だ。
加えて謎解きやバトルの際に「時間」に関連した独自の特殊能力を駆使する事ができたり、美麗グラフィックで描かれたペルシャ神話世界の神秘的な物語を楽しめたりなど、グッとゲーム性を進化させながらもシリーズファンのツボもしっかり抑えるようなゲーム性となっていた。
次元や時空が歪む「カーフ山」を舞台としたメトロイドヴァニア
本作でプレーヤーが操作する事になる主人公は「サルゴン」という青年だ。舞台となる古代「ペルシャ」の中でも指折りの実力者7名で構成された精鋭の戦士集団「不死隊」に所属する「サルゴン」は、部隊で最年少ながらも数々の武勲を立てられるほどの実力者で、隊長の「ヴァラム」を始めとした他の「不死隊」のメンバーや師匠の「アナヒータ」と共に「ペルシャ」の最高戦力の1人として活躍していた。
今作はそんな中でペルシャの王子である「ガッサン」が「アナヒータ」によって誘拐される所から物語が始まる。「アナヒータ」を追って「不死隊」が辿り着いたのは、呪われた神聖なる地「カーフ山」。ここでは次元や時空が歪んでおり、その中で巻き起こる不可思議で神秘的な大冒険がゲームの本筋となる。
「カーフ山」に潜む異形の存在や神話の怪物、さらにはこの地に囚われて狂気に沈んだ人間など様々な脅威が襲ってくる中で、「ガッサン王子」救出の為に各自行動を開始する「不死隊」のメンバー。その先に、どのような展開が待ち受けているのだろうか…‥?
プロローグとチュートリアルを兼ねた最序盤のプレイを終えて、「カーフ山」での探索が開始すると本格的にゲームがスタートする。とんでもない広さの「カーフ山」の中で、敵を蹴散らしながら、時には謎解きのようなギミックを解除しながらストーリーの目的を目指してひたすら探索を行っていくのが本作の基本だ。
そして探索の基準となるのが「ワクワクの木」と「ワープポイント」の存在となる。「ワクワクの木」はゲームオーバーになった際のコンテニューポイントになりつつ、触れる事によって体力回復と回復薬の補充を行ってくれる。他にも「サルゴン」の装備アイテムの交換など特定のエディットは「ワクワクの木」でしか行えないなどの縛りもあるため、探索は主にこの「ワクワクの木」を足がかりにしながら目的地を目指すといった形で進める事になるだろう。
「ワープポイント」は文字通り開通させる事で、すでにオープンしている「ワープポイント」間で瞬時に移動ができるようになる。新しいフロアに入った際にはこのワープポイントを見つけておかないと、次にまた用があって訪れたくなった時に、驚くほど広いマップを頑張って走り抜けなくてはいけなくなるため、可能な限り押さえていきたいポイントとなっていた。
探索の心地よさを下支え。バランスに優れた戦闘アクション
プレーヤーが操作する主人公「サルゴン」は二刀流の剣士で、身の丈ほどある双剣を駆使した豪快な剣術アクションと、パルクールを彷彿とさせるような俊敏な身のこなしを得意としている。沢山走って沢山敵を叩きのめす「メトロイドヴァニア」のゲーム性にピッタリなキャラクターであり、この特徴を活かしたアクロバティックな空中コンボなど、スピーディーなバトルモーションの数々はプレイしていて非常に気持ちが良い。
操作感もアクションゲームに慣れていれば直感的に理解できるようなシンプルかつ洗練されたもので、その上で新しいアクションの際には1つ1つしっかりチュートリアルを挟んでくれるので操作方法で困る事はなかった。豪快かつスタイリッシュな剣技で異形の存在を切り伏せて、広大な「カーフ山」を冒険していくのだ。
アクション部分で忘れてはいけないのが、近年のゲームではお馴染みになりつつある防御兼カウンター要素の「パリィ」だ。本作では「受け流し」と呼ばれるアクションで、相手の攻撃を同じように捌く事ができる。
敵の通常攻撃を上手く「受け流し」する事で攻撃の隙を作るだけでなく盾を持っている敵の防御状態を崩す事ができたり、飛び道具による攻撃を「受け流し」すれば跳ね返す事も可能だ。単純にダメージを減らすだけの「防御」アクションは存在しないので、敵の攻撃は躱すか「受け流す」かのどちらかが基本となるだろう。
また「受け流し」できる攻撃の中には、成功すると特殊なモーションが発生して大ダメージを与えられる「返り討ち」が行える攻撃も存在する。敵が攻撃する際に黄色く光る場合があり、その攻撃を上手く「受け流し」できれば「返り討ち」が発生する。並外れた身体能力を持つ「サルゴン」のおかげで雑魚的であれば一撃で葬る事ができる最高の攻撃だが、失敗するとビックリするくら手痛いダメージを喰らう事が多い。黄色い光が灯ったら、油断せずにしっかり決めるか、囲まれていたり攻撃パターンが分からない相手の時は素直に避ける選択も重要。リターンとデメリットは良いバランスであり、その中で幅広い選択肢があるので、全体として気持ちよくプレイできる印象だ。
また状況を一気に覆せる必殺技「アスラ神技」の存在も攻略においては重要になる。最大で2つまでセットする事ができる「アスラ神業」は、発動時には各技で専用のカットシーンが挟まり、発動中は無敵かつ攻撃の場合はガードされないという正に必殺技な性能をしている。
その種類もかなり豊富で、近距離攻撃で大ダメージを与える技、遠距離から広範囲に攻撃できる技などの超強力な攻撃技もあれば、自身を回復するサポート寄りの技もある。探索を進めることで新たな技が入手でき、選択肢が増えることでプレーヤーがダンジョンや好みに合わせてビルドできるような形になっていた。
「アスラ神業」を発動するには戦闘によってダメージを与えたり受けたりすることで「アスラ」ゲージを溜める必要があるが、「受け流し」に成功すると他のアクションよりも多く「アスラ」が回復する仕様となっている。「アスラ神業」ごとに消費する「アスラ」は異なるため、技の役割や燃費の良し悪しも考慮して採用する必要があるだろう。
「弓矢」と「チャクラム」でプレイ幅がさらに広がる
プレイの序盤はこの3つを主軸として雑魚敵を相手にアクションの感覚を慣らしていく事になる。最初の内は無理にリターンが大きい「受け流し」に挑戦しがちだったが、徐々に徐々に敵によって確実に成功するタイミングを理解し動きが最適化されてくる。敵の攻撃を上手く処理し、ダイレクトに自身の操作が成長している事を実感できるのは「メトロイドヴァニア」の楽しい要素と言える。
そしてある程度敵を倒して物語を進めると、双剣以外の武器として「弓矢」が登場してまた1つ世界が広がる。威力こそ剣の攻撃には及ばないが、空中に飛んでいる敵や離れている敵に遠距離攻撃だけで倒せるアドバンテージが本作の場合だとかなり大きい。
サルゴンのリーチだと届かない位置から敵が攻撃してくることも多く、他にも触れたら爆発するようなフィールドオブジェクトなどもある。矢で誘爆させておいたり、双剣で攻撃している際に弓攻撃を挟む事でコンボが繋がる時があったりなど、戦闘面においてかなりシブい活躍をしてくれる。
自分のやれる選択肢が1つ増えると今まで探索してきた場所の中でも行ける場所が増えていったり、やっかいだと思っていた相手を楽に倒せるようになったりなど、徐々に力をつけている感覚を味わえるのも「メトロイドヴァニア」の良い所だ。
そして、この「弓矢」が全く別の投擲武器「チャクラム」へと変貌するのが本作の面白いギミックの1つ。「弓矢」ボタンを長押しする事でブーメランを投げるように使うのだが、壁に当たるように投げると様々な方向に跳ね返る特殊な挙動で動き回る。
面白いのは、各地のギミックに「チャクラム」投げ入れて作動するものがあること。「チャクラム」を絡めた謎解き要素は、他のゲームにない適度なアクション性と思考要素が混ざっていて、面白く感じる場面が多かった印象だ。もちろん攻撃手段としても使用できるが、ただ投げるだけだと威力が低いため、フィールドに設置されたトラップを起動させたい場合などに使うのが良さそうだ。
バトルの基本を覚え、主要なアイテムを入手し、謎解きも上手くいって基礎は完璧! という場面で出てくるのが最初のボスの「ジャハンダル」! プレーヤーの最初の試練として相応しい難易度の相手となっていた。
ボスというだけあって攻撃力はしっかり高いし慣れないと避けずらい攻撃も多い。さらに「ジャハンダル」の特徴として毒状態にする攻撃を頻繁に繰り出してきたり、自身とは別行動して攻撃してくる雲を召喚したりなどしっかり厄介な攻撃をしてくるのも特徴だ。
ボス戦の基本となるヒット&ウェイ精神、「返り討ち」が可能なタイミングでは絶対に「受け流し」を成功させる、「アスラ神技」はケチらないといった部分を身体に叩き込んでくれるので、突破する頃には操作の上達を実感できるような良ボスだったと言える。
探索や戦闘が一変する「時空を操るスキル」
ボスを倒したり重要なイベントをクリアするとゲットできるのが「シムルグ神の羽」だ。今作を代表するような最強かつ面白いギミックである「時の力」を覚醒させる事ができるアイテムで、この強化によってどんどん「サルゴン」が進めるエリアが広がって行く。
比較的序盤では空中ダッシュを可能にする「シムルグの猛進」、そして中盤に差し掛かると、幻影を作製し、再発動ですぐ幻影の元へテレポートできる「シムルグの幻影」が手に入る。
特に「シムルグの幻影」は特殊で、筆者が一番気に入っているスキルでもある。例えば、普通にスイッチを押そうとすると落ちてしまうような場所でも、安全な場所に幻影を作っておいて、無理やりスイッチを押した瞬間ワープしてスイッチだけ押す事ができる。バトルにおいても、チャージ攻撃の発射直前に幻影を作っておくことで、発射後に発射直前の状態にワープすると2連続でチャージ攻撃を撃てたりなど、メチャメチャ応用が効く力になっている。
本作では、この「時の力」の応用が一番面白い部分だと言っても過言ではない。謎解きやバトルの様々な場面で本作でしかできないようなアクションを「時の力」という捻りが可能にしているのだ。
「ジャハンダル」を倒し最初の「時の力」を入手して、その勢いのままついに裏切者の「アナヒータ」に追いついたサルゴン。刃を交えていると「不死帯」隊長の「ヴァラム」もその場に到着し、ついに「ガッサン王子」の救出に成功する。そして……。
なんと、ここに来て真の裏切り者が誰なのかが判明する。そんなにアッサリ終わる訳がないとは思ってはいたが、また予想と違った展開が待っていた。「ガッサン王子」を「ヴァラム」に殺害され、怒り狂い立ち向かう「サルゴン」だったが、隊長を務める実力者な上に謎の力を手に入れている「ヴァラム」には敵わず、思いっきりボコボコにされてしまう。
そして追い詰められても命乞いなど一切しない「サルゴン」を奈落の底へと突き落として一旦幕が降りる形に。ちなみに、これはまだ序盤から中盤に差し掛かるくらい。……つまり、ここからが本当の物語の始まりだったのだ。
「時の力」をフル活用!恐るべきボス「アジ・ダハーカ」との戦いが面白すぎる!
最後に今回のプレイの中で特に面白いと感じたボス戦について紹介したいと思う。今回相対した最強の敵は、地下深くの「永遠の砂の穴」に潜む蛇の神「アジ・ダハーカ」だ。
その巨体を活かした巻きつき攻撃や叩きつけ攻撃も強力だが、何より厄介なのが口から放たれるチャージビームの存在。攻撃範囲が広くただでさえ躱すだけでも難しいのに同時に地面をダメージ判定のある水晶だらけにしてしまうのは鬼。運良く躱せたとしても下手な場所に着地すればダメージ、そのまま吹っ飛んで運悪くビームの方に戻ったらビームも直撃という地獄のコンボが待ち構えている。
加えてボス戦では特に積極的に狙いたい「返り討ち」が、黄色く光る攻撃の前に素早いジャブ攻撃を挟んでくる事によって隙を生じぬ二段構えとなっていて簡単には成功しないようになっている。着実にボスの難易度が上がってきている事を感じさせる強敵となっていた。
この強敵との戦いで大活躍したのが「時の力」だ。避ける事が困難だったチャージビーム攻撃が来た場合は「シムルグの幻影」をビームの通過点に設置する事でワープをタイミング良く使えば避ける事が可能に。
さらにもう一つの「時の力」である「次元の爪」(敵や物体を次元の裂け目に捉え、好きなタイミングで放出できる力)を使う事で、地面に生えた水晶を収納して発射できることが判明。この2つの「時の力」によって、一番厄介だった相手の攻撃が一気に楽になり、戦いに余裕が生まれたのだ。
行動に余裕が生まれれば他の攻撃アクションに対して気を配れるようになり、最終的には二段構えの黄色攻撃も対応できるようになった事と、「アジ・ダハーカ」の遠距離攻撃を全て「受け流し」する事で「アスラ」を爆速で貯める事に成功して何とか勝つことができた。着実にアクションゲームが上手くなっていると感じられつつも、詰まった際に試行錯誤して有効な攻撃を探す感じが非常に「メトロイドヴァニア」という感じで楽しめた
今回は「アジ・ダハーカ」までしか辿り着けなかったのだが、「時の力」を戦いに応用した戦術がビックリするくらい面白かったので、ここから先のボスにも期待が持てそうだ。
加えて物語の謎もまだまだ残っているし、行けていないマップにも立ち寄りたいし、武器の強化やアクセサリーの強化もしたい……。ゲーム内でやりたい事がどんどん溢れてくる良作である。「メトロイドヴァニア」タイトルとしても非常にやり応えのある作品となっていたので、最速でアーリーアクセスの1月15日よりプレイ可能になるので、気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか。
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