レビュー
「ペルソナ5 タクティカ」レビュー
今度の怪盗団はスタイリッシュにSRPG! 全く新しい操作感なのに「P5」らしさ全開
2023年11月9日 00:00
- 【ペルソナ5 タクティカ】
- 発売日:11月17日
- ジャンル:シミュレーションRPG
- プラットフォーム:PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/PC
- 価格:
- 通常版 7,920円
- デジタルデラックス版 11,770円
アトラスは11月17日、「ペルソナ」シリーズ初となるシミュレーションRPG「ペルソナ5 タクティカ(以下「P5T」)」を発売する。
本作は、今もなお多くの人々を魅了し続けるナンバリング最新作「ペルソナ5(以下「P5」)」の外伝作品。全く新しいゲーム性と操作感の中で再び怪盗団の活躍を楽しむことができるシミュレーションゲームとして、”「P5」らしさ”を存分に表現した他の作品にないシステムが豊富に詰め込まれており、本作ならではのスタイリッシュかつ独自の戦略性が大きな魅力となっている。
今回はそんな本作を一足早くプレイする事ができたので、序盤のストーリーを中心にレポートしたい。
コマンドバトルだった原作から一転して、全く異なるシミュレーションRPGになった本作に懐疑的なファンも多いかもしれないが安心して欲しい。しっかりプレイヤーが望んでる「P5」の世界観を作り込んでくれている事が今回のプレイでしっかりわかったので、1人のシリーズファンとしてその魅力を紹介できれば幸いだ。
怪盗団が帰ってくる! ジョーカーたちに待ち受ける“新たな異世界“の脅威とは…?
まず本作の物語は「P5」本編と地続きで描かれている。様々な困難を乗り越え主人公(ジョーカー)が地元へ帰る日も近くなってきた3学期のとある日、いつものように純喫茶ルブランに集まっていた怪盗団メンバーが謎の衝撃と共に「パレス」とも異なる異世界「キングダム」に飛ばされてしまい、右も左も分からぬまま新たな戦いに巻き込まれていくというストーリーだ。
異世界の人々を力で支配する「マリエ」にジョーカーとモナを除いた怪盗団メンバーが洗脳されてしまうなど、序盤からジェットコースターばりの勢いで急展開が続くストーリーとなっているが、不当な圧政者に虐げられる人々を救う怪盗団の行動理念や根本的な部分は本作のストーリーラインでもしっかり表現されている。
システムや形は違えど新キャラクター「エル」と協力関係を結ぶ”取引”や、もう1人の新キャラクターの政治家である「春日部統志郎」からは怪盗団に対して最初は割と辛口な評価がついているなど、ストーリーの中の言い回しや表現で「P5」らしさを全開にしてくれているのがファンとして非常に嬉しいポイントとなっていた。本編を知っているほど「わかってるな!」と毎回声を出す事になるだろう。
しかしながら「P5」本編を遊んでないとわからない部分が大量にあって困る……という訳ではない印象で、本作だけでも十分にストーリーを楽しめるような作りになっている。
さらに、ストーリー中に出てくる単語や人名の意味や概要をいつでもチェックできる「MEMO」という機能も備わっている事から、「P5」の世界観を初めて知る人でも「MEMO」で重要な要素をしっかり押さえてストーリーを楽しめるように作られていたのは非常にグッドだ。
とはいえ、個人的には「P5」本編のストーリーを知っている方がパーティーメンバーとの会話やキャラクター性にニヤニヤできるし、たまに「MEMO」の中で「P5」本編内の重要な部分がサラっと書かれている事もあるため、時間のあるプレイヤーは是非「P5」を遊ぶかアニメ版を視聴したりするともっと本作を楽しめるだろう。
序盤のストーリーでは「マリエ」によって支配された「キングダム」の中で、「革命軍」のリーダー「エル」に助けられた「ジョーカー」と「モナ」が洗脳された仲間を取り戻すために「革命軍」と強力する展開が描かれる。
「エル」が持つ謎の力の正体は? 「春日部統志郎」の抜け落ちている記憶とは? 「キングダム」や「マリエ」、そもそも怪盗団をこの世界に陥れた黒幕とはとは何なのか?……などなど多くの謎を抱えながら全く新しい世界での怪盗団の活躍を楽しむことができる。「反逆」と「革命」という言葉のイメージが近いようで少し異なる2つが混ざり合った全く新しい「P5」ワールドを味わえるのだ。
シリーズファンとして一切ネタバレの類をしたくないのでストーリー面の紹介はここまでするが、「P5」ファンも初見プレイヤーも両方楽しめる物語となっていたので是非期待して欲しい。
随所に滲み出る「P5」風味! “スタイリッシュ“さを継承した独自システムが光る!
次にゲームシステム部分。本作は「P5」とは全く異なるシステムでゲームが進行していく。
カレンダーを基準に1日1日を自由に生きる「P5」とは異なり、本作ではシステム上は時間の概念がなく、「拠点」と「ミッション」を行き来する形でゲームを進めていく。「拠点」モードではキャラクターの育成や装備の準備などのビルド要素を楽しみながら、ストーリーの進行に合わせたキャラクター同士の「TALK」を見ることができる。そして十分に準備を整えたら「ミッション」に挑む事でストーリーが進行したり、状況によってはバトルが発生したりするといった流れだ。
そして「ミッション」に挑む事で発生するバトル要素が本作のメインコンテンツだ。コマンドバトルの「P5」とは異なり、シミュレーションRPGとなった本作では、キャラクターを用いたマップ攻略がバトルコンテンツとなっており、操作感やゲーム性で全く異なるゲーム体験を味わう事ができる。
システムの近いゲームを取り上げるなら「ファイアーエムブレム」シリーズや「スーパーロボット対戦」シリーズだろう。キャラクターをマップの中で移動させて行動を決定し、敵やギミックなどを考慮した上で様々な戦略を立てるゲームジャンルだ。
「ペルソナ」シリーズでは初となるジャンルだが、本作ではしっかり独自性を開拓しつつ、要素の全てが非常に「P5」らしいというとんでもない完成度となっていた。
まずマップに選出できるのが仲間の中から3名だけという非常に少ない構成なのが大きな特徴だ。操作キャラが少ないので、戦況を把握しやすいだけでなく、シミュレーションゲームながらスピーディーにバトルを進めることができる。
その上で重要となるのが「カバー」というシステム。これはマップ毎に用意された遮蔽物や建物の影に隠れるようにキャラクターを配置することで、敵からのダメージを軽減・無効化したり、有利な状況から攻撃を行えるというシステムだ。
そしてゲーム全体のルールとして「カバー」状態じゃないキャラクターが攻撃を受けるとダウンしてしまい、もう一度行動が行える「1MORE」が発生する。本作ではいかに「カバー」状態でキャラクターを進行しつつ、敵の「カバー」状態を解除して連続行動できるかがゲーム攻略の鍵となっているのだ。
そして「ペルソナ」シリーズと言ったら忘れちゃいけないのが「ペルソナ」を用いた攻撃だ。本作でもシステムは異なりながらもしっかり強力な攻撃手段としてペルソナを行使する事ができる。
「ペルソナ」を用いて発動できるスキルは「アギ」、「ジオ」、「ブフ」、「ガル」などシリーズではお馴染みのモノとなっているが、今作では属性による違いではなくそれぞれが特徴的な効果を持つようになっている。
例えば「ガル」系統のスキルであれば敵を離れた場所に吹き飛ばせる、「ジオ」系統のスキルであれば感電状態を付与して動きを鈍くするなどだ。他にもスキルの系統ごとに攻撃範囲や追加効果が異なっており、本作ならではのスキル運用を楽しむことができる。
また「ペルソナ」シリーズの外伝ではお馴染みとなりつつあるが、今作では主人公が複数のペルソナを入れ替えて戦える「ワイルド」の力を使えない代わりに、パーティーメンバー全員が「サブペルソナ」を装備する事が可能だ。「サブペルソナ」は直接召喚される訳ではなく、装備しているとステータスを強化しながら「サブペルソナ」が所持している2つのスキルを追加で使用できるといったシステムとなっている。
このシステムからか、今作では「サブペルソナ」が「力の結晶」という、マップ毎のクリア報酬アイテムのような扱いとなっている。シリーズお馴染み「ベルベットルーム」での「ペルソナ合体」では、この「サブペルソナ」を合体させて強化させていくといった仕様へと変化していた。
パーティーキャラクターに好きなスキルを覚えさせられる拡張性の高い内容となっているため、プレイヤー毎に攻略の色が出るシステムだと言える。
「ワイルド」の力が使えなくなるのは寂しいが、最初から最後まで通して初期ペルソナの大活躍を見れるのは外伝作品ならではの魅力だろう。
そして本作では各キャラクターが持つペルソナにそれぞれ「P5」本編にはなかったオリジナルの強力な固有技「ユニークスキル」が用意されているのも嬉しいポイントだ。
「ユニークスキル」は戦闘中に溜まっていく「VOLTAGEゲージ」がMAXの時にそれを全て消費する事で放てる強力なスキルで、キャラクター毎に特殊な攻撃ムービーが用意された力の入った演出が入る。その能力も強力かつ独自性の強いモノが多く、盤面をひっくり返す力を秘めた必殺技のような存在なのだ。
やはりファンとしては「ジョーカー」と「アルセーヌ」がカッコよく華麗に攻撃している姿を見たいと思ってしまうので、「ユニークスキル」の存在はファンとしても非常に嬉しかったりする。
他にも各キャラクター毎の特徴として、固有のペルソナが持つスキル以外にも、何も攻撃を行わずにターンを終了した際に発生する「チャージ」状態での能力強化等がある。強化内容がそれぞれ異なっており、例えば「エル」はチャージ状態の際に単純な射撃攻撃で相手の「カバー」状態を無視してダウンさせたり、「モナ」はチャージ状態だと移動距離がプラスされるなど。
他にもパーティーに入っている際に発動する「パーティースキル」や、直近のミッションに参加しなかった際にステータスが上がる「絶好調」状態など、様々な戦術や状況に応じてパーティー編成を楽しむことができる。
3人しか選出できない中でキャラクターの特徴が非常に出ているシステムとなっていたので、どのような構成で戦術を組むのか考えられる要素が大量に用意されているのだ。
そしてここまで来て唯一出てきてない「P5」らしい要素が1つある。そう最高にクールな「総攻撃」のシステムだ。「P5」では弱点を突きまくって敵をダウンさせ、カッコいい専用演出で全体攻撃をするあの「総攻撃」の要素がしっかり本作でも踏襲されている。
シミュレーションRPGとなった本作では「カバー」解除後に攻撃を行って「1MORE」を獲得した時に、マップにいる3人の味方キャラクターで敵を囲むように陣形を組む事で大ダメージを与えられるという、「総攻撃」にかわる特殊攻撃「トライバングル」を発動する事ができる。
このシステムが非常に強力。まずダウン状態の敵が1人でも居れば「トライバングル」を発動できる事に加えて、その1体だけでなく他の敵キャラクターも巻き込むような形で陣形を組めば、「カバー」状態の敵も含めた多くの敵に大ダメージを与えることができるのだ。
さらに本作では自分のターン中であればキャラクターが攻撃を行うまで操作を入れ替えて自由に歩き回る事ができるため、場所を調節して「トライバングル」の効力を引き上げる事もできてしまう。
他にも「ガル」系スキル等と合わせる事で敵を1箇所にまとめてから「トライバングル」したり、「1MORE」を活用してより遠くにキャラクターを移動できるように調整することで特大範囲の「トライバングル」を決めたりなど、「トライバングル」を中心に様々な戦略を取る事が可能だ。
「カバー」システムと「トライバングル」を上手く活用すればほぼダメージを受ける事なく進軍する事が可能で、シミュレーションなのに爽快感のある操作感とも合わさって「P5」らしい華麗にスタイリッシュなバトルを演出することが可能なのである。
他にも、固有ペルソナの強化が本作の場合だと「スキルツリー」システムで自由度の高い内容となっていたり、一度クリアしたステージを何度も遊び直せる「REPLAY」モード、ストーリー中に受けられるサブクエストの数々などゲームジャンルがガラッと変わった事で追加されたやり込みシステムが数多く存在している。シミュレーションゲームとしてしっかり遊びこめるような土台が整っている為、独自性の強いゲーム性と相まって単純に1本の作品として完成度の高い作品になっていたと筆者は感じている。
「P5」らしさがシステムのオリジナリティに繋がる結果に!
今回筆者は「ペルソナ」シリーズのファンかつ、シミュレーションゲーマーの両方の視点で本作を遊んでみたが、総じてどちらの視点から見ても満足できる作品だったと言える。
シリーズファンとしては怪盗団の新しい活躍が見れるだけでも嬉しいが、ゲーム性が違うのにストーリーやシステムの所々に「P5」風味を感じられる事で”シミュレーションゲームなのにどこかスタイリッシュ”という感覚をしっかり味わう事ができた。「P5」がコマンドバトルなのにスタイリッシュというジャンルを開拓したゲームでもあった為、本作でもしっかり既存シミュレーションゲームにはない面白さを開拓できているではないかと感じている。
シミュレーションゲームとして本作を見た場合でも、少人数かつ短いターンでの攻略を狙ったゲームデザイン、「トライバングル」や「カバー」といった独自システムによって今までに無いゲーム体験を味わえた。作風に合わせたシステムを作った事で独自性を開拓できる素晴らしいパターンの作品となっているので、気になっているプレイヤーは本作を遊んでみてはいかがだろうか。
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
※ゲーム内容は開発中のものです