レビュー

「アサシン クリード ミラージュ」レビュー

重厚なストーリーがゲーム全体を支える

 オープンワールドのゲームは、どのエリアでプレイしても構わないという自由さがある一方、複雑に伏線を張り巡らせたり、キャラクターの複雑な関係性が物語を編んでいくようなドラマチックな作劇には向いていない。各地で同じくらいのボリュームのある短めのストーリーを繰りかえすことは、単調さにもつながる。

 「オリジンズ」からの3作は、そういったデメリットを許容しても、冒険の自由さに比重を置いていた。だが今作はオープンワールド的な探索要素を残しつつも、基本的にはメインストーリーに乗って話を進めていくというストーリードリブンのゲーム性へと舵を切りなおした。追加の道具などシステムな要素も、ストーリーを進めることでアンロックしていくので、そういった意味でもストーリーを進めていく必要がある。

バシムとネハルはある場所で、古き結社を目撃する
ある事件がきっかけでバシムは隠れし者たちの一員となることに

 また今作は、第1作の主人公デズモンド・マイルズの父親ウィリアム・マイルズのナレーションでスタートするが、いったい誰の記憶を見ているのかは語られず、序盤では未来編については一切語られず、自分でアニムスから出ることもできないなど、古代のストーリーに集中できるようになっている。

 ストーリーは、「隠れし者」がバグダッドの反乱軍と手を組んで、都市に隠れる悪を追っていくことで進んでいく。ただ、「隠れし者」たちについては、これまでのストーリーでもう十分にその正体はわかっているため、そこは大きな伏線にはならない。

 代わりに、物語がフォーカスするのはバシムの内面だ。ネタバレを避けるため言及しないが、「ヴァルハラ」をプレイした人であれば、バシムが何を考え、どういう選択をしてきたのかが気になるはずだ。本作はバシムの成長を追っていくだけでなく、その心に潜む闇にフォーカスを当てていく。

バシムの師匠ロシャンは、技だけでなくメンタルの部分でもバシムを導く
隠れし者となってバグダッドに戻ってきたバシム。戻ってそうそう観光に行ってしまう幼さも残す

 これまでの「アサシン クリード」シリーズの主人公たちは、あるいは復讐のため、または所属する集団のために刃を奮っていた。バシムは「隠れし者」の一員ではあるが、どちらかというと自分の信じる目的のためにそこに参画しているような状態だ。そして自分が信じる正義のために刃をふるう。

 だが、その信条には歴代の主人公ほど確固とした柱がなく、プレイしているものをどことなく不安にさせるゆらぎがある。普段は真面目で友達思い、仲間からも信頼されているだけに、どうなってしまうんだろうという不安はより大きい。この物語の中でバシムが自らの人生に大してどんな信条を導き出すのか、そしてどんなふうに「ヴァルハラ」に繋がっていくのか。今作の最大の謎は主人公自身の中にある。

悪名システムや支部などが、過去作から復活

 システムやバトルの中には、久しぶりに復活した要素、初期作からの正当進化的な要素、過去作の中で磨かれてきたもの、の3つがある。ファンを喜ばせる初期作からのオマージュとしては、前述した初期作カラーになるフィルターや、隠れし者支部の懐かしいデザイン、久しぶりに復活した悪名システムなどがある。

 支部は、初代「アサシン クリード」と同じ、天井から入るデザインになっている。反対側からジャンプすると、中に入れずすごい距離を飛び越えてしまうのも懐かしい挙動だ。さらに、降りたところには、こちらも懐かしいタイル張りの噴水がある。支部では、サブクエストを受けたり、道具を補充、強化したりすることができる。

天井におなじみのマークがある支部の入口
中では依頼を受けたり、道具を補充強化することができる
出入口にある噴水
サブクエストの依頼を受けることでキドマーコインが手に入る

 街を歩く人に紛れたり、建物の上にある東屋に身を隠したりといった要素も復活している。今作は3人以上の群衆に紛れると自動的にステルス状態になり、兵士たちの目をそらすことができる。

 城壁に囲まれた市場でターゲットを探すクエストでは、人ごみに紛れながら移動することで、城壁の上から監視している兵士や、人ごみの中に転々と紛れている兵士の目を盗むことができた。

人ごみを使ったステルス
家の天井にある隠れる用の東屋。大もある

 ただし、悪名が高く人目に付きやすい状態だったり、むやみに注意をひくようなことをすれば見つかってしまうこともある。特に、悪名が高いままでいると、人々が怖がって衛兵を呼びまくるので、落ち着いて侵入経路を探す余裕すらなくなる。

 悪名システムは、人を殺しているシーンをだれかに見られると、兵士の警戒度が上がるシステム。下げるには、街のあちこちに貼られたポスターをはがすか、布告者に「キドマーコイン」という特別なアイテムを渡して悪評を下げてもらう。

 悪名には3段階あるのだが、1段階目を超えてしまうとそれだけで見つかりやすくなってしまううえに、不用意に暗殺するとすぐに悪名がたまるので、任務中なんども城壁を抜け出しては、ポスターを破るために走り回った。

手配書を破って悪名を減らす

ストーリーやクエストはすべて「調査」ページで管理

 本作の暗殺任務は、初代「アサシン クリード」と同じく、調査と暗殺という2段階に分かれている。調査を進めていくと同時にストーリーが進行し、手がかりがすべて集まるとそこですべき最終目標が提示される。

 クエストの進行は、メニューの中にある「調査」というページにまとまっている。最初は手がかりのヒントしか表示されていないが、そのヒントに従って現地を調査したり、人と話をしているうちに、だんだんと最終的なターゲットが誰なのかが明らかになっていく。この1つ1つがエピソードとしてまとめられており、これを連続して受けることでストーリーが進行する。

調査ページ。人物や見つけた手掛かりを確認することができる

 クエストの目的地は、近くまではマップのマーカーを頼りに、近づいてからはイーグルアイや、鷲のエンキドゥを使って探し出すことができるが、見つけられずにうろうろすることも結構ある。このうろうろを楽しい探索ととらえるか、イライラ要素と捉えるかで「調査」の感触は違ったものになるだろう。

 筆者は飽きっぽい性格なので、さっさと見つかってほしいタイプ。イライラしてつい荒っぽいプレイをしてしまい、兵士に見つかって逃亡、最初から出直しということも多々あった。

エンキドゥで付近を調査する