レビュー

「ディアブロ IV」レビュー

カジュアルにも、ハードコアにも遊べる“モダン”になったアクションRPGのレジェンドタイトル

【ディアブロ IV】

6月6日 発売予定

(6月2日8時〜 先行アクセス開始予定)

価格:
通常版 9,800円
デジタルデラックスエディション 12,600円
アルティメットエディション 14,000円
CEROレーティング:Z(18才以上のみ対象)

 Blizzard Entertainmentが手掛けるアクションRPG「ディアブロ IV」の発売が間近に迫っている。ナンバリングタイトルとしては「ディアブロ III」の発売から約11年、ファンにとっては長く待たされたタイトルだ。もちろん「ディアブロ III」は継続的にアップデートされてきたし、「ディアブロ II」のリメイク作品である「ディアブロ II リザレクテッド」が2021年に発売されている。筆者ももちろんこれらの作品はプレイしていたのだが、シリーズファンとしては完全新作の「ディアブロ IV」への期待が抑えられなかった。

 今回はレビュー用に先駆けて本作をプレイできたのだが、率直な感想としては“レビュー用の僅かなプレイ時間で全てを語れるほど浅いゲームではない”ということだ。入口は広く、奥も深い。カジュアルに遊ぶこともできるし、どっぷりと数カ月、数年単位で付き合うこともできる。そんなゲームという印象だ。

 そんな本作の魅力についてご紹介していきたい。

【ディアブロ IV | ゲームプレイローンチトレーラー】

「ディアブロ」シリーズの魅力を受け継ぎつつ、新しいチャレンジをした作品

 そもそも「ディアブロ」シリーズの魅力とは何なのか? まずはそこを紹介したい。

 初代「ディアブロ」は1996年に発売されたアクションRPGだ。シリーズを追う毎に新しい要素が追加されたほか、モバイル版の発売など新しいチャレンジをしてきた。筆者は初代「ディアブロ」には触れたことがないが、海外のゲームを日本で遊ぶということがまだ珍しかった時代に、「海外でとんでもないゲームが発売された!」と日本のパソコン雑誌やゲーム雑誌などで話題になっているのを読んだ記憶がある。特にオンラインで他のプレーヤーとプレイできる点や、敵対するプレーヤーに倒されてアイテムを奪われるという話にワクワクしたものだ。

 そんな憧れとワクワクを持ってナンバリング作品2作目の「ディアブロ II」をプレイしたのだが、その体験は本当に衝撃的だった。

「ディアブロ II」の大型拡張キット「ディアブロ II:Lord of Destruction」のスクリーンショット。この画面にどれだけ神秘的なものを感じたことか

 キャラクターを作成したらいきなり小さな町に放り出される。町の外には闊歩する敵モンスター。恐る恐る敵モンスターを左クリックをするとキャラクターが武器を振るい、敵モンスターは断末魔をあげながらあっけなく倒れる。この体験は筆者がこれまでプレイしたどのゲームにもない独特な感覚。本能に訴えかける気持ちよさを感じた。

 そうして夢中になって敵を倒しているとキャラクターが成長していく。成長に従って新しいスキルを習得できる。ゲーム序盤はそれほど強力なスキルが習得できないため、少し物足りなさを感じたのだが、ある程度キャラクターが育ってくると本当に派手なスキルを覚えた。強力かつ派手なスキルは使っているだけで楽しかったし、たくさんの敵をより早く倒せるようになるとキャラクターの成長を強く感じられた。

「ディアブロ II」のスクリーンショット。キャラクターの成長がとにかく楽しい

 何よりも筆者は本作におかえる「トレハン(トレジャーハンティング)」に魅力を感じた。本作には様々なアイテムや装備が登場する。固有の効果を持った「ユニーク装備」や「セット装備」、特殊な効果がついた「レア装備」などが登場する。その名前の通り相応にレアリティが高く、そう簡単に入手できるものではなかった。

 その上、入手できても自分のクラスや成長方針にあわない装備もあるので、自分が欲しいアイテムのためにひたすらボスモンスターを周回して倒し続けることも少なくなかった。周回というとネガティブな要素にも受け取られかねないが、この周回とにかく中毒的だった。モンスターを倒す気持ちよさはもちろん、「もしかしたらレアな装備が入手できるかもしれない。もし入手できたら自分のキャラクターが飛躍的に強くなるはずだ」という思いが強いモチベーションになり、ひたすらモンスターを倒したり、同じエリアを回ったり、そういったことを繰り返す。

レアアイテムを求めて周回するのも「ディアブロ」シリーズのの魅力の1つだ

 この「敵を倒す快感」、「キャラクター成長の実感」、「無限に続くトレジャーハントの魅力」、それらが筆者が考える「ディアブロ」シリーズの根源的な魅力だ。

心地よい戦闘! キャラクターの成長!! それこそが魅力

 それでは「ディアブロ IV」はその根源的な楽しさを内包しているのだろうか。答えはイエスだ。もちろん、これまでの通りの面白さしかないようなつまらない作品ではない。新しいチャレンジもしているし、結果的になくなった要素もある。例えばセミオープンワールド化は新しいチャレンジの1つだ。多くのフィールドは通過するものだったのを、自由に行き来するものにしたのは本作ならではの印象的な要素である。一方で「ノーマル」、「ナイトメア」、「ヘル」のような難易度変更のシステムはなくなり、ワールドTierという新しいシステムに置き換わった。それらが噛み合うことで、“カジュアルにも遊べるし、どっしりと数年単位で遊べそう”と考えるに至った。

 まず「敵を倒す快感」は相変わらず健在だ。プロローグもそこそこにフィールドに投げ出される。辺りを歩いている悪魔を攻撃するとキャラクターは小気味よく武器を振るい、断末魔をあげながら倒れていく悪魔たち。本作は紛れもなく「ディアブロ」シリーズだと始まった瞬間に確信した。この気持ちよさを求めていたのだ。

本作には「バーバリアン」、「ドルイド」、「ネクロマンサー」、「ローグ」、「ソーサレス」という5つのクラスが登場する
バーバリアンは多種多様な近接武器を使い、敵と肉弾戦を繰り広げるクラスだ
ドルイドは動物に変身して戦えるユニークなクラスになっている
ネクロマンサーはスケルトンやゴーレムといったミニオンを召喚し、共に戦うことができる
ローグは弓や罠を使って戦うトリッキーなクラスだ
ソーサレスは遠距離からの魔法攻撃が得意なクラスだ
今回はネクロマンサーを使って多くのミニオンを従えて戦っていた。自分自身で攻撃するのはもちろんだが、ミニオンが敵を攻撃してくれるのも楽しい

 PC版を例にすると、標準のキーバインドであれば最初期に獲得する基本スキルをメインの左クリックに割当て、より強力だがリソースを使用するコアスキルを右クリックに割り当てる。さらに強力なスキルや、バフ/デバフ、その他ミニオンを召喚するスキルなどが1〜4キーに割り当てられる。基本はこの6個のスキルで進める。どのスキルをどのボタンに割り当てるかは変更できるが、同時にセットできるのはこの6個のスキルのみだ。基本スキルで攻撃するとリソースが獲得できるので、コアスキルや1〜4キーに割り当てたスキルを使いながら、リソースが枯渇したら基本スキルで敵を攻撃し、リソースを回復させるというのが基本的な戦闘スタイルになる。

見下ろし型のアクションRPG。多くの敵を薙ぎ払う

 そして「ディアブロ」シリーズの魅力の1つとして「キャラクターの成長の実感」を挙げた。これはもちろん本作にも受け継がれている。レベルを上げ、スキルを習得し、強力な武器を手に入れてさらにキャラクターを強化する。この楽しさは健在である。ただし本作は、「ディアブロ」シリーズ・ハクスラ&トレハンゲームの系譜としてはかなり遊びやすくなっていると感じた。

 その要素の1つがスキルの振り方が簡単なことだ。まずスキル説明に系列が書いてあり、その説明に従ってスキルを取っていけば大きく外すことはない、この辺りはかなり初心者向けの印象だ。またスキルリセットがゲーム内で入手できるゴールドでできるので、ある程度プレイしてみて気が変わったり、入手した装備にあわせて変えたり、簡単に試行錯誤できるのがいい。

 ビルドの種類も多岐にわたりそうだ。大枠の方向性は各クラス毎に数パターンという印象だが、細かいスキルの割り振りや、レジェンダリーアイテムの効果などによって、人それぞれのビルドが生まれることだと思う。

スキルの振り方がわかりやすくなっているのは非常に好印象だ。説明をちゃんと読めばあべこべなビルドにはならないだろう
通常のスキルツリーに加えてネクロマンサーは「死神の書」というシステムでさらにカスタマイズが可能だった。これらの組み合わせでプレーヤーの性格が出たユニークなキャラクターになりそうな印象だ

 今回はもっとトレジャーハンティングに時間をかけたかったが、フィールドを探検しているとユニークなアイテムを入手できることはあった。こういった装備を効率良く狙っていく方法がわかれば、キャラクター強化のために無限にそれを繰り返すだろうということは明らかだ。

 もちろんお馴染みの「セットアイテム」が本作でも登場する。セットアイテムとは同じセットのアイテムを複数個同時に装備すると、強力な効果を発揮するという装備だ。過去のシリーズでも登場しており、お世話になってきたプレーヤーも少なくないと思う。残念ながら今回はお目にかかることはできなかったが、どんなセットアイテムが何種類あり、どんなに強力な効果を持っているか。それらを探すためにひたすら敵と戦い続けたい。

入手できたレジェンダリーアイテム。当然ながらユニークな効果を持っている。例えばクリティカルヒットを出すと、スキルを使うために必要なリソースの回復速度が上がる効果を持っているアイテムを入手できた。スキルの割り振りでクリティカル率を上げると、より多くのスキルを連発できるというわけだ

今作はストーリーに引き込まれる! 美麗なカットシーンも豊富

 それでは“カジュアルに遊べる”というのはどの要素か。本作はこれまでのシリーズ史上で最もストーリーテリングに力を入れている作品だと感じた。ストーリーがきっちり用意されているのはもちろん、ストーリークエストを通して少しずつ本作の世界に入り込めるようになっている。カットシーンは豊富だし、ムービーが差し込まれている部分もある。通常の1人用のRPGのように「1本のストーリーを楽しんで、ストーリーをクリアしたから終わり」という楽しみ方にも応えられそうな印象だ。これは比較的ストーリーの描写が希薄だった「ディアブロ」シリーズとしては、新しいチャレンジとなる。

 「ディアブロ」の世界では天使と悪魔による戦いが行われていたのだが、その戦いに疲弊し作り出されたのが、本作の舞台となる人間界「サンクチュアリ」だ。時系列としては「ディアブロ III」の数十年後が舞台となっており、「ディアブロ III」で魔王「ディアブロ」、そして同じく悪魔陣営の「バール」、「メフィスト」と、大天使「マルサエル」を倒したのだが、サンクチュアリに平和が訪れることはなく暗黒時代に突入する。“古代の邪悪な存在”ーー本作でキーになるメフィストの娘である「リリス」が、サンクチュアリを終わらせるために動き始めた……というのが本作のストーリーの導入だ。

カットシーンも豊富に用意されており、これまでのシリーズ史上でもっともストーリーの描写にこだわった作品だと感じた

ダンジョンとワールドTierでカジュアル勢にもやり込み勢にもマッチ!

 本作には「ダンジョン」というシステムがあり、これも敷居を下げている1つの要素だ。全部で本作には115個あるのだが、それらをクリアすると「力の古文書」というクラフトに使用する効果を獲得できる。これを使って装備を強化することで、その効果を持った装備を作れる。これにより、ほしい装備を狙い続けて、長い時間周回する手間を削減できるようになっている。もちろん全てのユニークな効果をダンジョンだけで獲得できるわけではなく、ドロップでしか入手できないものもある。このバランス感もカジュアルに寄せつつ、やりこみ勢の楽しさを奪わない絶妙なバランスだ。

「力の古文書」である程度狙ったユニークな効果を持った装備を作れるのはかなり便利な要素だ

 もちろんやりこみ要素もある。まず「ワールドTier」という概念があり、これを選べる。ワールドTierを上げるとゲーム全体の難易度が上がるが、獲得経験値が増えたり、ドロップするアイテムのクオリティが良くなったりする。最初はTier 1とTier 2しか選べないが、条件を満たすことでTier 3、Tier 4と上位に挑戦できる。これらに挑戦していくのは本作を進めるうえの楽しみの1つだ。

エリア毎にダンジョンなどをクリアすると名声を獲得できる。上位の名声を獲得するためにはワールドティアを上げなければならない

 また本作では「ディアブロ III」でも採用されていた「シーズン」という概念が引き続き登場する。1年を4期に区切り、シーズンのはじめに大型アップデートが行われ、同時に前シーズンのキャラクターは新シーズンでは使用不能(シーズン落ちキャラクター専用の「永遠の領域」でプレイ可能)となる。この切り替わりのタイミングで既存プレーヤーも含め0からのスタートとなるため、新規プレーヤーも参加しやすいし、既存プレーヤーも新鮮な気持ちでプレイできる。以前の作品ではシーズンごとにランキングがあったため、今作でも同様のシステムがあった場合、上位を目指すプレーヤー同士の熾烈なレースを見ることができるだろう。

 本作のシーズン1は7月中盤から終盤にかけてスタートすることがすでに発表されている。なおこのシーズンに参加するためにはストーリーキャンペーンを終わらせる必要がある。シーズンのスタートダッシュを決めたい方はご留意いただきたい。

 その他、先日行われた「アーリーアクセスβ」などで体験できたワールドボスや、インタビューで存在が語られたPvPなど、今回体験できなかったエンドコンテンツがあることは明らかになっている。それらのエンドコンテンツをプレイしていくと、ストーリーが終わってもじっくりと遊べることは間違いない。バトルパスのようなシステムがあることも既に発表されており、これを進行させるのもやりこみ要素の1つに違いない。

 最初は、シリーズ作品としてはかなりカジュアルに振ったのかという印象だったが、それは杞憂に終わる作品だと感じた。2023年の6月6日からは、ひたすらに悪魔と戦い続ける日々が始まりそうだ