レビュー

「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」レビュー

自分で地図を描く冒険感あふれるダンジョンRPG! 初めてでも進めやすい新要素も

【世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER】

6月1日 発売予定

価格:
パッケージ版/DL版 8,980円
単品DL版 4,467円
CEROレーティング:B(12才以上対象)

プレイ人数:1人

 アトラスは、Nintendo Switch/PC用3DダンジョンRPG「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」を6月1日に発売する。

 「世界樹の迷宮」は、職業・外見などを自由に選び組み合わせた5人の冒険者でパーティを組み、莫大な財宝が眠ると言われる未知の迷宮に挑戦する3DダンジョンRPGシリーズ。今作「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」には、ニンテンドーDS用タイトルとしてとして2007年に発売された「世界樹の迷宮」と、2008年に発売された「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」、2010年に発売された「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」のHDリマスター版が収録されている(ダウンロード版では各タイトルごとに購入可能)。

【『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』プロモーション映像】

グラフィックスだけじゃない! 最新機種で遊びやすくなった「世界樹の迷宮」

 「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」では、HD用にグラフィックスが強化され、解像度が1,920×1,080に対応。キャラクターにモンスター、迷宮や施設などが精細化された。それだけではなく、全職業のイラストが1種追加され、キャラメイクの自由度が上がっていたり、初めてシリーズをプレイする人に向けた難易度の追加であったりと、新要素も含まれている。

 追加要素については下記の通り。

・難易度の追加
 従来の難易度「EXPERT」に加え、遠足気分で気軽に楽しめる「PICNIC」、冒険の手応えを楽しみたい「BASIC」が追加されている。難易度はプレイ中でも変更が可能だ。

・セーブスロットの追加
 セーブできるスロット数が9個に増加された。様々なパーティを試してみたり、多くの冒険を楽しむことができる。

・新イラストの追加! キャラメイクの自由度UP
 各職業に新イラストが1種類追加され、3タイトルで合計24種のイラストが追加されている。また、冒険者の見た目は別の職業からも選択可能になり、キャラメイクの自由度が上がっている。

・地図作成モードは現行機にチューニング。オートマッピング機能も
 ニンテンドーDS版のような操作を楽しめる「画面にタッチして地図作成」と、「コントローラー操作で作成」の両方に対応(Steam版ではマウス・キーボード・コントローラーの3つに対応)。また、自身の利き手にあわせてタッチ操作を便利にする「利き手設定」のほか、「マッピングカーソル位置」で指の当たる位置とカーソルの間隔を調整する機能も追加されている。

 さらに、自動で地図を作る「オートマップ」機能も追加。「FULL」モードだと歩いた床と壁が自動で記録できるようになっている。もちろんこの機能はOFFにすることも可能だ。

・戦闘中の便利機能も追加!
 戦闘中の便利機能として、パーティの強化・弱体状態を確認できるようになっている。また、戦闘中に敵の弱点や使用するスキル、ステータスなどを確認できるディクショナリー機能が追加。弱点を覚えなくとも確認できるようになった。

・大航海クエストのオンラインプレイ対応(IIIのみ)
 「世界樹の迷宮III」の大航海クエストや交易はオンラインプレイに対応。1人1キャラクターで参加し、最大5人までのマルチプレイを楽しめる。Nintendo Switch版は日本国内、Steam版は全世界とマッチングが可能だ。

 以下からは、本作の3作の中から大航海クエストが収録されている「世界樹の迷宮III 星海の来訪者 HD REMASTER」をプレイ。本作のレビューをお伝えしながら、HDリマスター版の新要素を紹介していく。

仲間を育てて迷宮へ挑む

 「世界樹の迷宮III」の舞台は海都アーモロード。アーモロードには海底まで続く謎の迷宮が広がっており、「この迷宮を踏破せよ」とのお触れによってさまざまな冒険者が詰め掛けている。プレイヤーはそんな噂を聞きアーモロードへやってきた若き冒険者として、富と名声を得るために最下層を目指す。

 上述した通り、ゲームの難易度が新しく追加されており、遠足気分で気軽に楽しみたいプレイヤー向けの「PICNIC」、冒険の手ごたえを楽しみたいプレイヤー向けの「BASIC」、数々の樹海を踏破し死を恐れないプレイヤー向けの「EXPERT」の3つから選ぶことができる。

 なお、「EXPERT」がオリジナル版と同等の難易度となる。難易度が高すぎるな、低すぎるなと思った場合は、街に戻れば変更可能だ。

難易度が選べるので好みの楽しみ方ができる

 「世界樹の迷宮」シリーズは、序盤からパーティメンバーをしっかり構成できるという特徴がある。一般的なRPGであれば、旅をしながら徐々に仲間を増やしていくが、本作ではゲーム序盤にギルドを制作し、そこに20人までギルドメンバーを登録できる。

最初からギルドを組んで仲間をたくさん登録するのはちょっと新鮮だ

 ギルドメンバーはそれぞれ職業も選べる。ゲーム序盤は、味方の強化支援に優れる「プリンス/プリンセス」、強烈な攻撃を得意とした前衛に特化している「ウォリアー」、優れた防御力で味方を守る重騎士「ファランクス」、スピードが優れ連携による追撃を得意とする「パイレーツ」、素早さと敵のかく乱に特化した「シノビ」、気を使って味方を癒す回復役「モンク」、炎・氷・雷の星術を使って攻撃をする「ゾディアック」、樹海の獣たちを召喚して戦闘のサポートをしてもらう「ビーストキング」、弩や砲を使う後衛攻撃を得意とする「バリスタ」、探索のエキスパート「ファーマー」の10つの職業から選択可能だ。

 各職業には、それぞれ5つの容姿が用意されており、そのうち1つが今作からの新イラストだ。容姿ごとにカラーバリエーションも2種類用意されている。また、HDリマスターからの新要素として、他職業からも容姿を選択できるようになった。この職業使いたいけど見た目がなぁ……ということにはならないはずだ。

 ちなみに、キャラクターの見た目は冒険者ギルトで気軽に変更できる。キャラクターを作り直す必要がないのはありがたい。

プリンス/プリンセス
ウォリアー
ファランクス
パイレーツ
シノビ
モンク
ゾディアック
ビーストキング
バリスタ
ファーマー
ファーマーのアナザーカラーはこのような感じだ

 迷宮へは、5人1組のパーティで挑む。パーティは前衛後衛にそれぞれ3人まで選べるので、どの職業を前衛にするか、どの職業を後衛にするかの組み合わせが大事だ。気に入ったパーティは登録し、冒険ギルトで自由に呼び出すことができる。パーティは6パーティ分登録できるので、攻略の仕方や戦い方を変えたいときなどに目当てのパーティを即座に編成できて便利だ。

 ちなみに筆者が気に入ったのは、攻撃特化のウォリアーと、防御特化のファランクスに前衛を任せ、後衛に味方の攻撃に合わせて追撃するパイレーツ、状態異常攻撃など特殊な攻撃を得意とするシノビ、炎や氷といった属性攻撃を得意とするゾディアックを配置した戦闘特化のパーティだ。

 キャラクターを強くするには、より強力な武器や防具を装備するほか、レベルが上げるというオーソドックスなシステムだ。レベルは戦闘で経験値を得ることで上がっていくが、戦闘不能状態のキャラクターは経験値を獲得できない。レベルが低いうちは回復アイテムや回復役のキャラクターがいると安心するだろう。

パーティメンバーは5人。前衛と後衛に割り振っていく

 もちろん職業ごとにスキルも用意されている。ウォリアーには、敵1体めがけて剣を振り下ろす斬攻撃「ブレイク」。ビーストキングには、湿地より大蛇を召喚してそのターン敵1体に壊攻撃&腕封じを行う「大蛇招来」など、職業にちなんだスキルを覚える。スキルはスキルポイントを消費して獲得でき、スキルポイントは初期から3ポイントあるほか、レベルが上がるごとに1ポイントずつ付与される。

スキルはスキルポイントを使って解放

 また、パーティメンバーと協力して発動する強力な技「リミットスキル」も用意されている。リミットスキルは1人用から5人用まであり、ゲーム序盤に手に入る、ターン開始時にその戦闘中HPが0になっても1度だけ1残る効果を自分に付与する1人用のスキル「決死の覚悟」と、ターン開始時に敵1体に強力な斬攻撃を放つ2人用のスキル「クロススラッシュ」、ターン開始時に5ターンの間味方全体の攻撃力が上昇する強化を付与2人用のスキル「突撃陣形」のほか、迷宮内の宝箱から手に入るリミットスキルや、他のクエストで手に入るリミットスキルもある。

 リミットスキルを発動するためには戦闘中に上がるリミットゲージを満タンにする必要がある。リミットゲージはターンごとに攻撃や防御などアクションを起こすと溜まっていくが、モンスターから逃げ出すと減ってしまう。

リミットスキルは1人で発動できるものから複数人で発動できるものも
複数人でのリミットスキルを発動する際は人数分のリミットゲージを消費する

 戦闘はターン制となっており、ターンごとにキャラクターたちに指示を出す。指示を出す順番は前衛の1番左のキャラクターから後衛という順番だが、実際にアクションを起こすのは素早さが高い順になる。

 アクションは通常攻撃や、スキル、リミットスキルのほか、防御や逃げ出すこともできる。逃げ出す際は5人のうち1人が成功すればいいので、どうしても太刀打ち不可能なモンスターに出会ってしまった時は思い切って全力で逃げる選択をするのも大事だ。

戦闘はターン制となっている
強いモンスターと対峙した際は逃げるのも大事な選択だ

 戦闘中にはモンスターの特性などを見ることができる「ディクショナリー機能」がこのHDリマスター版で追加されている。初めて会ったモンスターは名前以外すべて?マークがついているが一度でも倒せば、弱点や対戦が表示されるようになる。

初めて出会ったモンスターは?で覆われている
敵の弱点をその場で確認できるのは便利

 また戦闘中にパーティメンバーの強化内容や状態異常などを一覧で見ることができる「パーティの状態確認機能」も見やすく変更されている。メンバーがどうなっているのか一目でわかる便利機能だ。

パーティメンバーの状態が一目で見れるのはありがたい

 本作ではプレイヤーが作ったギルドに登録したメンバーたちとともに迷宮内を探検していく。明確に主人公キャラクターが位置付けられているわけではないので、プレイヤーはパーティメンバーに指示を出しながら戦い、一緒に迷宮内を進む6人目のキャラクターともいえる。気に入ったキャラクターを主人公と想定してプレイするもの楽しいし、プレイヤーの数だけ楽しみ方があると感じた。

プレイヤーだけのオリジナルの地図を作って迷宮を探検する

 本作の迷宮はいくつもの階層に分かれており、1階層目からどんどん下へと進んでいく構造となっている。

 しかし、そこに到達するためのストーリーミッションは少なく、とにかく己の実力で下を目指していかなければならない。地道にフロアを歩き回り、道を見つけてるのはかなり骨が折れるが、その分未踏の地を攻略しているという感覚は大きい。

クエストは街の酒場「羽ばたく蝶亭」で受注可能。新しいフロアに行く度に確認するのがおすすめだ

 本作の大きな特徴として、プレイヤー自身で地図を作っていくというシステムがある。

 本作では各フロアに降り立ってもマップには何も表示されず、周囲に何があるかわからない。また、迷宮を進んでもマップに道が表示されていくこともない(オプションで変更可能)。何も記載されていない地図を手に、目の前に続く道を調べながら進んでいく。そして、これまでの道のりや重要なものをプレイヤー自身が地図に記していく。何かを見つけても地図に自動的にアイコンが表示されるわけではないので、気になったものはプレイヤーが1つずつアイコンを付けていく。マップに付けられるアイコンは扉や階段、矢印など全部で24種類あり、どこにどのアイコンを使うかは自由だ。

 ここが行き止まりで、ここに通り抜けができる通路があって、というのを適宜描いていくことで、次にこのフロアに来た時の道しるべとなるのだ。

 最初のフロアではある程度地図を作りこむことがミッションとして盛り込まれているが、それ以降は地図を描くか描かないかプレイヤー自身に委ねられる。地図の描き方も決められているわけではない。自分の手で、自分の思う通りに、自分だけの地図を描いていく。地図に愛着が湧くと同時に、本当に冒険をしているという感覚をより強く感じられる。

フロアに到着した当初は地図には何も書かれていない
アイコンは全部で24種類。道の色を変えたり壁を描く機能もある
地図に壁やアイコンを付けていってオリジナルの地図をつくっていく

 本作では通った道は地図の色が変更されるようにデフォルトで設定されている。だた、この機能はオプションから変更可能だ。オートマップ機能をOFFに切り替えると、新しい場所を通っても地図上に変化が起きない。またFULLに設定すると、通った道が記載されるだけでなく、周りの壁も一緒に記される。地図作成を1から楽しみたいというプレイヤーも、さくさくと進めたいプレイヤーもどちらも楽しめる。

オートマップ機能はオプションから変更できる
オートマップをOFFにすると新しい道を歩いてもマップ上に何の変化も起きない
オートマップをFULLにすると道のほかに壁も一緒にマップに記載される

 マップの作成はコントローラーで行うほかに、画面をタッチしながら書き込んでいくこともできる。指でアイコンを置いたり、壁を書くほうが実際に地図を作っている感が大きく、より没入感を求めるならタッチ機能を使うのがいいだろう。なお、タッチパネルで書く際は利き手の方にマップを表示させる「利き手設定」や「マッピングカーソル位置」で指の当たる位置とカーソルの間隔を調整することも可能だ。

利き手機能を左手にするとマップも左側に表示される

 迷宮内での最初のミッションをクリアすると、海への冒険「航海」にも行くことができるようになる。

 「航海」は、100年前の大異変により海都の周辺の地形が激変した結果、海流も変わり全ての交易が止まった状態となっているため、新しい航路を見つけるために海図を製作することが目的となっている。

 「航海」は迷宮と同じく地図を作っていくことになるのだが、出発するには食料=お金が必要で、その食料によって一度の航海で進める距離が変わる。最初は6マスしか進むことができないビスケットから始まるが、その6マスの移動範囲の中で新たな食料や交易品としてアイテムを手に入れられる。また、港で受けたクエストを達成することでリミットスキルを手に入れることができる。航海を繰り返すことでどんどん遠くに行けるようになり、さまざま交易品を手に入れて迷宮を攻略しやすくなる。

 今回は体験できなかったが、本作の大航海クエストではオンラインの仲間と一緒にプレイしたり、オンライン上で交易をすることもできる。

航海に出る際には港から旅立つ
航海は食料によって進める距離が決まる
海の旅は迷宮とは違った刺激がある

プレイヤー自身が主人公! プレイヤーだけの冒険ができる物語

 「世界樹の迷宮」は、ミッションやクエストの指示で動くというより、あくまでもプレイヤーが何をするかで進んでいく。地図を完ぺきに作り上げるもよし、下のフロアを目指してガンガン進むもよし、同じフロアを隅々まで探検しつくしてもよし、プレイヤーによって進み方はさまざまで、自分の好きなスタイルで楽しめられるのがいい。

 パーティもプレイヤーの好みで自由に組み替えられるので、まずはいろいろな職業のキャラクターと迷宮に出てみるのもおもしろい。職業ごとの特性を確かめながら、自分の中で「これだ!」というパーティを見つけられると、自分だけのパーティという感覚になれる。

 自分だけの冒険を楽しみたいプレイヤーや、地図を描きながら進むという、冒険感あふれる一味違った体験をしてみたいプレイヤーにおすすめの作品だと感じたので、興味が出た方はぜひ遊んでみてほしい。