レビュー
「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」レビュー
2023年5月12日 00:00
バトルの難易度は相変わらず高い
バトルについてだが、基本的な難易度については「ブレワイ」と同等程度だと思ってほしい。つまり、雑魚といえども2〜3体ほどの敵を同時に相手にすると一瞬でハートが溶ける、ということだ。
ただし、覚えておいてほしいのは、本作に於いて バトルは必須ではない という点である。もちろんメインチャレンジなどで戦うボスは別として、雑魚とのバトルで得られるものは素材だけと言っても過言ではない。レベル制ではないので、雑魚とバトルをして死ぬくらいならば、最初から戦わなければ良いだけである。
また、本作では物語冒頭に起こる異変によって、武器が朽ちてしまっているという異常事態が発生。それもあり、手に入る武器はいずれも耐久性が低く、使っては壊れ、壊れては新たに入手し、入手した武器を使って戦い、また壊れる、というループを繰り返す。
それもあり、無駄にバトルをするのは得策ではない。
そんな雑魚やボスとの厳しい戦いで必要となってくるのが防具の存在だ。防具には様々な効果がある。滝登りが可能になる「ゾーラの鎧」の他、暑さをしのぐ防具、寒さをしのぐ防具、濡れた壁がのぼりやすくなる防具などがあり、そしてそういった特徴を持つ防具はそれぞれ防御力も高めに設定されている。
それでも容赦なくハートを削られていくが、雑魚との戦いなどで得られる素材を使って大妖精の元へ行けば、防具を強化してもらえる。雑魚との戦いすらも辛い中、雑魚との戦いで得られる素材で防具を強化していく、というのもなんとも珍妙に思えるかもしれないが、ここで活躍するのが「ティアキン」ならではの戦い方になってくる。
これはあくまで筆者の戦い方なので、ほんの一例として参考にしてほしい。弓矢で敵に気付かれないくらい遠くからヘッドショットを狙う。さらに、弓矢には様々な素材をつけることができるので、「バクダン花」など高火力になる素材を矢につけてブッ放す。これで敵の頭数を減らし、後は普通に武器で殴る、といった戦法。
他には、”武器が壊れやすい”ことを逆手に取った戦法もある。武器が壊れる時、その衝撃で敵にクリティカルダメージを与えるという法則があるので、あえて「壊れそうだ」と赤く点滅している武器を数個用意。雑魚敵の中でも、さらに雑魚とも呼べるボコブリンなどを上記の戦術で倒したあと、群れの中で残った体力高めのモリブリン(敵の群れのボス的存在)に”壊れそう”な武器をかたっぱしから当てていく、という戦法だ。本作では、敵を倒せば敵が装備している武器や盾を拾うことができるので、”壊れそう”な武器を数本使ってしまっても、それで倒した敵から武器を集め直すことができる。
ちなみに群れが寝ている夜のほうが奇襲を仕掛けやすい(ただ当然ながら寝そべっているため、ヘッドショットは狙いにくい)。敵は武器を置いて寝ているので、遠方からウルトラハンドで武器を奪ってしまい、素手にさせてしまえば敵の攻撃力がガクンと下がるところにも注目したい。
また、場所によってはモドレコなどを活用することで、リンク目がけて転がってくる巨石を逆再生で敵に向かって転がるようにすることもできたりする。ほかにも、「投げる」を使って武器を投げたり、集めた素材を投げたりして上手く距離を取って戦えば、比較的安全に敵を倒すことも可能だ。どこに行くか、という自由度だけでなく、戦闘においても非常に自由度が高い。
それでもノーダメージで戦うには、相当なプレイヤースキルが必要となる。そこでまずは祠を回り、祝福の光を集め、ハートの器を確保し、最大ハート数をあげるのが重要となるのだ。
そしてもうひとつ必要になるのがハートを回復する「料理」である。
料理の重要さは「ブレワイ」プレイヤーには既出だと思うが、本当に重要な要素なので改めて触れておきたい。
本作でも空、地上含め、様々な場所で料理の素材を拾うことができる。その素材を使って鍋のある場所で料理ができる。
なお、本作からはゾナウギアで携帯鍋が登場。1回使い切りの鍋だが、咄嗟の時には役に立つ。
素材は素材のままでも回復効果を持つものが多いが、素材のままではハート1/4〜1/2程度しか回復しないものが多い。例え3個食べてもハート1個分も回復できるか怪しいが、鍋で素材を調理することでその効果をハート5個分回復とかに爆増させることができるのだ。
そのため、何はともあれ料理は重要。本作では調理は「体力を回復させるもの」というよりも、 料理の数こそが体力 だと思ったほうが良い。
特に、序盤から手に入りやすいリンゴ、そしてそこらへんにいる動物を矢などで狩って手に入る肉類は、他のキノコなどと合わせて調理すれば一気に回復効果がアップする。さらには、ポカポカダケを入れれば寒さ対策が可能になる料理、ヒンヤリダケを入れれば暑さ対策が可能な料理などができるようになっているので、攻略する場所によっては大量の対策料理が必要になることを覚えておこう。
世界に何が起こったのかを探す旅ではあるが……
本作はオープンワールドというゲームデザインから、何を主目的とするのか考えて進めていきたい。メインチャレンジに勤しむも良し。とにかく世界探索をするために回るも良し。祠をクリアしまくるのも良し。ひたすらバトルの腕を磨くも良し。
嬉しいのは、例え死んでも失うものが少ないところ。オートセーブがかなり頻繁に入るので、ほぼ直前からやり直すことができる。また、「ここから飛び降りてみたいけれど何があるかわからなくてこわいな」という時は、あらかじめ自分でセーブしておいて、目的のものがなければ、セーブデータをロードすることもできる。バトルに挑む前にセーブをしておいて、思ったように戦えなければロードして、敵から逃げることもできる。失うものが少ないからこそ、色んなチャレンジができる。
正直に言って、本作の難易度は決して低くはない。様々なチャレンジも「こんな解法で合っているのだろうか……」と筆者も思い悩みながら無理やりクリアしたような場所もあれば、手も足も出ない場面もあった。
だが、世界をくまなく探索すれば、何かしらの光がある。リンクの防御力を上げてくれる鎧も、その全てがルピーで買うわけではない。謎解きをすることで手に入る鎧もあり、そういった鎧を装備しつつ、プレイヤースキルを磨けば、段々ボコブリンやリザルフォス程度の雑魚敵には勝てるようになってくるだろう。そして第一段階の防具の強化で求められる素材は、幸いそこまで難易度の高くないものが多い。
それでもどうしても倒されてしまう場合は祠を巡りたい。たくさんの祝福の光を得てハートの器を手に入れていけば、いきなり一撃で負けるようなこともなくなるだろう。
筆者は、序盤は祠巡りを中心にしてまずハートの器を増やし、ほぼ全ての雑魚敵の戦いを避け、鳥望台を目指してマップを少しでも埋め、サブクエストに勤しみ、どうしても戦わなければならないボス戦だけ戦ってきた。
バトルのことなど忘れ、時にはのんびりと愛馬の背に揺られて旅を楽しみ、時にはのんびりとイカダに乗って川下りを楽しみ、行ける場所まで行くことを目標に、「メインチャレンジ何それ?」状態で世界を回っていたこともある。
一方で、ボスとの熱いバトルに手持ちの武器が残り1個まで追いつめられ、また始まりの空島まで泣きながら戻り、木の棒を拾っては倒せるゴーレムを少しずつ倒して武器を奪い、少しずつ手持ちの武器をアップデートし直したこともあった。
メインストーリーをひたすら追うのか。探索を中心に進めるのか。本作でやれることは、とてもとても多い。無駄に見えることにも無駄がなく、何をしていても意味があるとすら言えるゲームデザインは、さすがのひとことである。
地上と空の島に起こった異変はどれも絶望的な苦しさがある。だが、その絶望はいつか希望へと変わる旅なのだと感じた。本当の絶望にぶち当たったら、その時はその場を後にしても良い。「その時」になったら戻れば良いだけなのだ。
その世界の片鱗をお見せしよう
世界を巡る間、様々な風景や、様々な戦い、様々な祠が待ち受けている。ここでは、ネタバレに触れない程度に、どのようなでき事がプレイヤーを待ち受けているのか、ほんの一部を紹介しよう。
だが、「ティアキン」の世界はこれだけではない。本稿ではお届けできなかった数々の要素が存在する。
そこそこに長い時間、この世界で色んな出来事に触れてきた。祠ひとつクリアするのに1時間ああだこうだと苦悶したり、そうかと思えば敵の群れに特攻し5秒で瞬殺されたり、泣きながらリスタートしたこともある。この世界でどんな時間を過ごすかは、プレイヤー次第だ。
本作は「行方不明になってしまったゼルダを探す」というひとつの目的に向かう作品でありつつ、そのひとつの目的を完遂しなくても楽しんでしまえるという「ブレワイ」の時にもあったオープンワールドならではの楽しさが満ちている。
鉄製のものが全て異変によって朽ちてしまったという世界観の活かし方も良いし、空の島との行き来も良い。祠の謎解きもそこそこにやさしいものから、相当頭を捻らないとならないものまでバラエティに富んでいる。
前作からの続きものということで、マップなどは「ブレワイ」から大きな変化がある作品ではない。ゾーラの里の位置が変わっていたり、デスマウンテンの位置が変わっていることなどもない。だが、物語冒頭での異変によって様々な変化が起こっており、探索の楽しさは失われていないのが素晴らしい。
また、リンクの新たな能力によってギミックの解き方はもちろんのこと、全てが”新しい遊び”となって生まれ変わっており、むしろベースのマップが同じながらもここまで違う新たな一本にできるのかということに驚きを隠せなかった。
「ブレワイ」が好きだった人ならばもちろん最高に面白い一本となるだろう。しかし「ブレワイ」を知らずとも本作から「ゼルダ」の世界に触れてみても何ら問題はない。「ティアキン」からプレイしはじめ、そこから「ブレワイ」に戻ってもまた全然違う遊びが待っている。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」と同じようで異なる世界が待っている「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」。ぜひ楽しんでほしい。
©Nintendo