レビュー

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」レビュー

無駄に見えることにも無駄がなく、何をしていても意味があるゲームデザインに感服

【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(ゼルダの伝説TotK)】

発売元:任天堂

開発元:任天堂

ジャンル:アクション・アドベンチャー

プラットフォーム:Nintendo Switch

CERO:B(12才以上対象)

発売日:5月12日

価格:
7,920円(パッケージ版)
7,900円(ダウンロード版)
14.520円(Collector's Edition)

 5月12日発売のNintendo Switch用アクション・アドベンチャーゲーム「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、「ティアキン」)。本作は、2017年に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、「ブレワイ」)の続編にあたることで、「ブレワイ」ファンの注目を集めている。

 と書くと、「ブレワイ」をやっていないと楽しめないのか? と思われてしまいそうなので、これだけは冒頭に述べておこう。

 確かに、前作のキャラクターたちが随所に出てきて、リンクに親し気に声をかけてくる場面はあるのだが、筆者がプレイをしてきた感覚では「ティアキン」だけでプレイしても全く問題ないと思われる。もちろん「ブレワイ」をやったけれど詳細は忘れてしまった、という人でも安心だ。あくまで個人的な見解になってしまうのだが、「ブレワイ」を知っていれば細かいネタが楽しめるものの、「ブレワイ」の履修は必須ではない、と筆者はそう感じた。

 今回30時間ほどプレイしたのだが、当然ながらこの程度の時間では到底クリアまではたどり着けなかった。しかし、広大なフィールドを探索する楽しさ、新しい能力を駆使しての様々な祠・ダンジョンの突破、アクションバトルなど、レビューを書くにあたって本作の楽しさは充分感じてこれたので本稿でお伝えしていく。

【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム 3rdトレーラー】

気になるストーリーは?

 物語のオープニングでは、ゼルダとリンクがハイラル城の地下に発生している謎の瘴気について調べるところから始まる。

本作のゼルダは髪を切った姿で登場する
城の地下の探索はゼルダも初めてのようだ
この時点では、リンクの体力はMAXの状態からスタートしているが……
城の地下については”禁忌”とされており、ゼルダも詳しいことは知らないようだ
城の地下には、ゼルダの知る古代「ゾナウ文明」らしきものの遺跡があった

 城の地下にあった壁画によれば、今から遥か昔、神話の時代に、人と魔王が世界の覇権を争う大戦争があったようだ。空から降臨したとされる、ゾナウ族。ゾナウ一族とハイリア人が交わり興った国が、ハイラル王国だったが、そこに邪悪なる者が現われ、王国の大いなる力を奪い、魔王が誕生し、戦いが起こった……。という、「封印戦争」の全容が記された壁画を、リンクとゼルダは追っていく。

 先に進むと、ふたりは謎のミイラのようなものを発見する。だが、そこでリンクは力を吸い取られ、マスターソードも朽ちてしまう。

城の最深部には、古の魔王らしきミイラのようなものがあった

 そしてふたりは崩れ行く城の地下で、離れ離れになってしまう。

 ここでリンクの意識は途切れるが、再び目覚めた時、謎の声がリンクに語り掛ける。その声はリンクのことを「ゼルダから聞いて知っている」のだと言った。リンクは先の異変で瀕死の重傷を負ったものの、なんとか一命をとりとめたようだ。だが、リンクの右手は朽ち、それが命に関わったため、助けてくれた人物によって腕を移植されたとのこと。このリンクの新たな腕が、リンクの新たな力となる。

 というのが、本作のOPである。ここから先は、行方不明になったゼルダの足取りを都度探しながら、リンクは旅をしていく。

 前作とのつながりについては現状、「ブレワイ」にも登場したキャラクターが出て来たりする程度(数年後と思われる)。というところで、城の地下に安置されていたミイラについても「魔王」とだけ称されており、その正体ははっきりとしていない。だが、旅をしていく過程で恐らく、魔王や、ゼルダの行方について、段々と判明していくのではないかと思われる。

探索するのが楽しい! オープンワールド型でどこへ行くのも自由

 本作でも広大なフィールドから次の目的地を探索で見つけ出すゲームデザインとなっており、「どこから好きに進んでも良い」という攻略の自由性は「ブレワイ」と共通している。

 だが、安心してほしい。いきなり広大なフィールドに投げ出されるのではなく、序盤はチュートリアル的な要素となっている。まずはクローズドな島の中で本作の遊び方を身に着けていき、様々な能力の使い方を覚えたところで、いざ地上へと戻ることになるのだ。

物語が始まる「始まりの空島」。リンクは防具もほぼ身に着けておらず、マスターソードもボロボロになってしまっている

 「ブレワイ」にもあった、ハイラルの各地にある遺跡で、謎解きが必要なミニダンジョン「破魔の祠」は、もちろん本作でも健在。祠の最深部にたどり着くとクリアとなり、「祝福の光」が手に入る。後述するリンクの新たな力によって、破魔の祠の謎解き要素はより一層深まったように感じられた。

本作の破魔の祠。クリア前の祠には大きな渦巻きのような光が出ており、遠くからでもわかりやすい

 破魔の祠は、クリアせずとも見つけて開放してやれば、ワープポイント(ファストトラベル)先として利用できるようになる。広いハイラルの大地を攻略する拠点となることが多いので、まずは祠探しが本作の中心となるだろう。今作での祠の数はまだわからないものの、「ブレワイ」の時は120カ所もあったため、本作でも同等の数かそれ以上の数の祠が用意されているのではないかと考えられる。

 ちなみに街や、馬宿と呼ばれる街道沿いの宿舎の近くにはほぼ必ず祠があり、一瞬で重要な箇所に行ける配慮がありがたい。

本作のワールドマップのほんの一部。青く光っているのがワープポイント

 また本作では、各エリアにある「鳥望台」という場所から空へと飛ぶことで、マップが開放されるようになっている。そのため、マップのないエリアでは鳥望台を目指すのもひとつの道だ。

 だが、鳥望台は壊れていることもあり、見つけただけではワープポイントとして機能しない。壊れている場合は修理をするなり、何かしらの原因を取り除いてやらねばならない。また、鳥望台で空へと飛ぶこともできるので、パラセールでのんびりと空中散歩を楽しみながら祠や次の目的地を目指すことも可能だ。

鳥望台は、とてもとても巨大な塔で、こちらもまだ開放していない鳥望台はライトアップされてわかりやすくなっている。ただしそこまで辿り着く道のりがたやすいとは限らない
鳥望台から発射されて、空中へとリンクが舞い上がると、「プルアパッド」というリンクが持つ端末に周辺の地形がスキャンされる
鳥望台で打ち上げられると、まず地上の地図がスキャンされ……
続いて空のマップもスキャンされる(※この空の地図は、上記の地上地図とは別の鳥望台でスキャンしたもの)
鳥望台で飛び上がってからの、パラセールでの空中散歩。どこへ進むのも自由だ

 自由であることが本作の最大の特徴と言えるが、「どこへ行くのも自由」と聞いて戸惑う人も多いだろう。そんな人のためにメインチャレンジはきちんと存在している。

現在のクエストの進行方向は右下のマップに黄色くマーカーされ、わかりやすくなっている

 本作では行方不明となったゼルダを探すのが主な目的となるが、ゼルダの情報があった箇所として4つの大きな街がメインチャレンジの目的地として設定されている。「ブレワイ」プレイヤーならピンとくると思うが、それはリトの村、ゾーラの里、ゴロンシティ、ゲルドの街である。この4つのどこから回っても良い。そして、この4つのどこにも行かなくても良い。

 自分なりの遊び方を模索しながら、気になるところがあれば足を踏み入れたり、ミニチャレンジに挑戦したり、祠の謎解きに専念したり、バトルをしたり、そしてメインチャレンジにチャレンジしたり、好きなように遊べば良い。それが本作の魅力である。

バトルの腕を磨くのも良いだろう

本作の自由度を増し増しにするリンクの4つの新能力

 本作ではリンクの4つの新能力をメインとして使うこととなる。

 まずは本作で最も使うことになるであろう「 ウルトラハンド 」。ウルトラハンドは、特定のオブジェクトを持ち上げたり、オブジェクト同士をつなぎ合わせたりすることができる。

 例えば板と板をつなぎあわせてみたり、さらにその板を水に浮かべて扇風機を取り付ければ舟の代わりになったり……と、ウルトラハンドの可能性は無限大。とにかく本作ではウルトラハンドをどれだけ使いこなせるかが、いちばん重要だとも言えるだろう。

ウルトラハンドで鉤爪と板を接着させてみたが……慣れるまではくっつけたり回転させたりと、少々操作が難しい。だが、そのうち慣れてくるのは鈍臭い筆者が証明済だ。本作で一番重要な能力とも言えるので、まずは色々といじってみよう

 次に「 トーレルーフ 」。トーレルーフは通り抜けられる天井をすり抜けることができる能力だ。

 例えば、トーレルーフを使ってダンジョンの1Fから2Fに移ったり、梯子も何もない塔で上階の床に登ったりすることができる。注意したいのは、登ることしかできない点。つまり1Fから2Fには行けても、2Fから1Fには行けない。しかし、トーレルーフで登った先でリンクはまず頭だけを出し、周囲を見渡せるようになっている。目的の場所とは違う場合「もどる」をすれば、トーレルーフを行った場所に戻ることが可能だ。

「上にあがる」ことだけに特化した力だが、意外と使う場面が多い。”上の床に上がれる”ということ自体を失念しがちなので、この新しい能力はしっかりと頭に刻んでおこう

 そして「 モドレコ 」は、特定のオブジェクトの時間を逆再生できる能力。右回転している歯車にモドレコを使えば左回転をするようになるし、空から降ってきたものの上に乗り、モドレコを使えばそのまま上空にあがれる。

モドレコでどのようなものを逆再生できるのか探すのも、楽しみのひとつ。上手くあやつってリンクを様々なところに連れていこう

 4つ目は「 スクラビルド 」。武器と特定のオブジェクトを合体させて、武器の威力を上げることができる。

 例えば木の棒に岩をくっつければ石塊が先端についた武器になり、ヒビの入った壁なども破壊できるようになる。キラキラ光る岩を破壊すればコハクやオパールといった宝石(換金アイテム)も入手可能だ。他にも、特定のアイテムをスクラビルドでくっつけてあげることによって威力が2倍になるような武器も存在する。

長槍に岩塊をスクラビルドすることで、削岩機のような鈍器武器にできる。スクラビルドで強化される武器は「○○で強化可能」と素材名が書かれているのでわかりやすい
魔物の素材なども、スクラビルドで武器の強化素材に!

 この4つの能力がリンクの基本能力となり、これらを駆使してメインチャレンジのダンジョンや、破魔の祠、様々なミニチャレンジをクリアしていく。逆に言うと、基本的には どこのエリアもこの4つの能力があれば、ほぼ解決できるようになっている

 ちなみに本作には「ゾナウギア」と呼ばれる様々なアイテムが登場する。ゾナウギアには扇風機や浮遊石など、冒険に役立つ様々なものがあるのだが、一番手近なのは「携帯できるゾナウギア」だろう。

 エリアにドスンと構えている巨大なガチャガチャのような「ゾナウギア製造機」という装置に、ゴーレムの角やゾナウエネルギー等のアイテムを入れると「ゾナウカプセル」が精製され、中に入っているゾナウギアを持ち歩くことができる。

ゾナウギア製造機ははじまりの空島はもちろんのこと、ハイラルの大地にもある
ソナウギアの精製に使えるのは、ゴーレムなどが落とす素材が主。いらないアイテムを抱えたらゾナウギア製造機に入れてみよう
すると、コロコロっとカプセルが出てきて……
携帯鍋が手に入った! これでどこでも料理できるが、一度きりの使い捨てなのがポイントだ

 他にも、携帯扇風機、携帯浮遊石、携帯火龍の頭……などなど、そのアイテムは多種多様。

火龍の頭は武器や盾とスクラビルドすると、火を噴く武器や、構えると火を吐く盾などが作れる

 ただ、これら携帯ゾナウギアをたくさん揃えて持っておかなければならないのか? というと答えは「NO」だ。あくまで”持っていれば便利だけれど、攻略上必須のものではない”。破魔の祠でこれら携帯ゾナウギアの使用は強制されないと言っていいだろう。破魔の祠に限らず、攻略に必要と思われるアイテムは基本的にその場にあるものを使えばいいようになっている。

 トロッコで脱出しなければならない場所ならば、どこかにトロッコが転がっている。ウルトラハンドでトロッコを持ち上げて線路に置き、どこかに落ちている扇風機を使ってトロッコに取り付けてトロッコを動かす動力にする……、といった具合だ。そして、その「どこか」は、極端に変なところではないように感じられた。

どうしても風が必要、というような場面では、大抵きちんとどこかに扇風機が落ちている。それらをウルトラハンドなどでどう活用するかは、自身の頭で考えるのだ

 繰り返すが、携帯ゾナウギアはあくまで持っていれば便利、くらいのアイテムであり、攻略上必須なアイテムではない。それを踏まえた上で、不要な資源を活用していこう。