レビュー
「ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜」レビュー
新要素の鍵&オープンフィールドで遊びやすさと奥深さを両立!調合の楽しさが極まったライザの冒険最終章
2023年3月10日 18:00
- 【ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~】
- 開発・発売元:コーエーテクモゲームス
- ジャンル:錬金術RPG
- プラットフォーム:PS5/PS4/Nintendo Switch/Steam
- CERO:C(15歳以上対象)
- 発売日:3月23日
- ※Steam版は3月24日発売予定
- 価格: 通常版 8,580円(税込)
- プレミアムボックス 11,935円(税込)
- スペシャルコレクションボックス 22,550円(税込)
- Digital Deluxe 10,010円(税込)
- Digital Deluxe with Season Pass 14,520円(税込)
- ※スペシャルコレクションボックスはガストショップ、GAMECITY、Amazon、ソフマップ限定販売です。
- ※「Digital Deluxe」、「Digital Deluxe with Season Pass」、Steam版はダウンロード版のみの販売です。
コーエーテクモゲームスは、2023年3⽉23⽇(Steam版は3月24日)に「アトリエ」シリーズ作品である『ライザのアトリエ3 〜終わりの錬⾦術⼠と秘密の鍵〜』を発売する。前作、前々作から続いた「秘密」シリーズ最新作となる今作の発売に先駆けてPS4版をプレイすることができたので、その先⾏レビューをお届けしよう。
1997年に1作⽬となる『マリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬⾦術⼠〜』が発売されて以来、現在まで続く息の⻑い作品となった「アトリエ」シリーズ。
その「アトリエ」シリーズの25周年記念作品でもあり、「秘密」シリーズ最新作でもある今作でのキャッチコピーは「最後の夏、最後の秘密――」。プロデューサーの細井順三氏⽈く「彼⼥たちの⽴ち位置を今⾵に表現するならば、⼤学最後の年で、就職活動を⾏っているところに近い」とのこと。錬⾦術の根源に関わっていく物語になるので、ライザとしても錬⾦術⼠としてどうありたいのか、というところに向き合っていくストーリーとなっている。
また、「最後の夏」という部分から、⾼校3年や⼤学4年の夏休みを思い出す⼈もいるかもしれない。今作でも、ゲーム中に前作や前々作の印象深いシーンが表⽰され、振り返るモノローグ的な演出が盛り込まれている。シリーズをプレイしてきた⼈たちにとってはライザたちと同じく、きっと懐かしい想い出に違いない。
そんな今作のストーリーはシリーズ1作⽬から続いているものの、既発売の2作品を遊んだことがない⼈でもわかるようにダイジェスト映像が⽤意されているので、いきなりプレイしても問題ないのはありがたい。
『ライザのアトリエ3』の物語は、前作の1年後から始まる。クーケン島で過ごすライザたちのもとに、突如として近くに群島が現れたとの⼀報が届く。カーク群島と名付けられたそれらを調べると、どうやらクーケン島に悪影響を及ぼしていることがわかる。⾃分たちの住む島を救うべく⾏動を開始した彼⼥たちは、徐々に鍵と錬⾦術の根源に近づいていく……。
今作は1作目から数えると4年、前作からも1年が経過しているということもあり、各キャラクターたちはそれぞれ見た目が“より大人っぽく”なっている。もちろん内面的にも成長しており、シリーズをプレイしている人であれば会話時の落ち着いた話し方を見て「みんな大人になったなあ」と、まさに大きくなった子供を見る親心のようなものを感じられることだろう。キャラクター設定が若いとありがちな猪突猛進系イベントが今回プレイした範囲ではほぼないと感じたが、ライザの思い切りの良さは健在で、キャラクターたちの成長した部分と変わらぬ部分を安心して見ていられるのも個人的に高ポイントだった。
また、モデリング自体も前作から一新されただけでなく、表情周りにもの凄く力を入れているとの話を聞いていた。確かに以前の作品よりも各キャラクターの感情表現が生き生きしているのがわかる。イベントや戦闘シーンなどでも喜怒哀楽が読み取りやすくなっており、キャラクターの気持ちがよりプレーヤーにダイレクトに伝わりやすくなっているのには感心した。
世界が広くなったぶん、採取も走って行なえるなど快適に
「アトリエ」シリーズは基本的に素材の採取と調合、そして戦闘という3要素をメインとして構成されている。フィールドを歩き回り素材を集め、それをもとにアトリエで調合し、新たなアイテムを産み出すのだが、調合に必要な素材は採取するだけでなく敵を倒さなければ入手できないものもあるので、戦闘も欠かせないのだ。
今作でも例外ではなく、錬金術を駆使してクーケン島を救うべく冒険に出かけることになるので、各地で素材を集めて必要なアイテムを調合、それを使ってさまざまな難題を解決していくのだ。
その3要素の一つである採取のためにも必要な探索に関してだが、今作のフィールドは複数のマップがシームレスに繋がったオープンフィールドが導入されている。実際にプレイするまではあまり実感が湧かなかったが、実際に歩き回ってみると「広いようで狭い……ようで、やっぱり広い」ということがよくわかった。
フィールドでは、ライザは歩くだけでなく走って移動することもできるが、各地方内の広さは尋常ではないため、駆け回っても目的地への到着には時間を要する。そこで活用していきたいのが、ランドマークだ。これは、マップ上に点在しているランドマークという目印になりそうな建物などに近づくと自動的にその場所がマップ上に登録され、次からはエリアマップでランドマークを指定するだけでそこへ移動できるファストトラベルという機能が使えるようになる。
これが非常に便利で、最初は実際に移動してランドマークを見つけなければならないが、次からはエリアマップで移動したい場所の近場で発見済みのランドマークを選べば、一瞬で行きたい場所へ行けてしまう。これが、「広いようで狭い」の意味だ。
では、最後の「やっぱり広い」は何を意味するのかというと、採取できる場所としては「広い」ということ。どれだけファストトラベルが便利でも、素材の採取には実際に各地を歩き回らなければならない。もちろん従来のように図鑑が用意されており、それを見れば一度採取した素材が、どのランドマーク付近で採れた素材なのかはわかるようになっている。それでも、“そのランドマーク付近”自体が非常に広範囲を指すため、「あれ、この素材はどこで採ったかな?」となりながら彷徨うこともしばしば。これが、最後の「やっぱり広い」の正体だ。その分、素材の種類も多岐にわたるため集める楽しみも広がっている。ゲームの進行と共に図鑑が埋まっていくのを確認するのは、実に気持ちが良い。
移動に関しては、ファストトラベルのほかに新たにジップラインが導入された。これは一部を除く地方内に設置されていて、少し離れた場所どうしでペアになっているプラットフォームをそれぞれ開放することで、そのプラットフォーム間を高速で移動できるようになるというもの。特に、高低差の激しい場所に設置されたジップラインは、利用することで移動がかなり楽になった。
ほかにも、前作からお馴染みの水中移動や狭い通路の通り抜け、ツタを登るといったアクションは健在だ。それ以外にも、ゲームを進めて、とある道具を装備すると、ライドモンスターを呼び出して背中に乗って移動できるようにもなる。ライドモンスターは複数いてそれぞれに特徴があるようなので、それを踏まえて場所ごとに乗り換えればより快適に移動できるだろう。乗れると言えば、カーク群島付近の湖にいるイルカの存在は東京ゲームショウ2022でプレイしたので知っていたが、まさか前作同様に霊獣にも乗れるとは思っていなかっただけに、プレイしながら「そんなこともできるの!?」と、思わず言ってしまった。
移動だけでなく、○ボタンでの素手による採取方法も新しくなった。従来は、素材のある場所で○ボタンを押すと、一度立ち止まって素材を拾っていたが、今作ではなんと“移動しながらの採取”が可能になったのだ。
これは本当に楽で、採取効率が一気に上がったと素直に感じた。□ボタンを押す道具を使った採取も、これまでより速度がアップしているため、さらにきびきびと行なえる。とはいえ、一度走りながらの採取を覚えてしまうと楽しすぎて、止まって行なう□ボタンの採取をおろそかにしてしまうことがしばしばあった。おかげで、一時期は偏った素材しか集まらなかったので、どちらも分け隔てなく行ないたい。
今作で新たに導入されたシステムのうち、最も大きな要素が「鍵」だ。鍵はランドマークもしくは敵から生成することで入手できる。
ゲームを一定以上進めると各地のランドマークで鍵を生成できるようになり、ランドマークごとに違った鍵が入手できる。ランドマークや敵から生成した鍵のうち、“アドベンチャー効果”と書かれている鍵は、使用することで採取時に素材の品質がアップするなどのメリットがあるのだ。
メインクエストを達成していかないとシナリオは先に進まないが、そこまででもやれることが大量にあるので、本当に飽きなかった。筆者は、最初のボスキャラが見えた時点で先に進む前にキャラを鍛えようと思い引き返したのだが、気づけば各地のランドマークまで歩いてファストトラベルができるようにしたり、行ける限りの場所を巡って素材集めに奔走したりと、序盤にも関わらずとんでもなく自由度が高い。こういったところが、本シリーズの良き部分だなと改めて思った。
ちなみに探索中に拾った素材などがストックされる「カゴ」は、デフォルト状態では300個までしか入らない。だが、ワールドマップを表示させて□ボタンを押せば、すぐに現在いる地方の拠点に戻ることができ、カゴの中身が自動的にコンテナに送られる。また鍵の中には、カゴの素材をコンテナへ転送する効果のものもあるため、カゴの容量を気にすることはないだろう。
戦闘システムは前作をより改良し、シンプルかつ派手
前作同様、今作でも新規にゲームを始めると最初のほうにチュートリアルの戦闘シーンがある。バトルシステムの基本は前作ベースなので、シリーズをプレイしている人ならばスキップしても問題ない。初めての人は、簡単ではあるものの軽く目を通しておくのがいいだろう。
基本的には、○ボタンで通常攻撃をしてアクションポイント(AP)を溜めていき、それを消費して大きなダメージを与えるスキル攻撃を行なう。パーティメンバーが4人以上いれば後衛と交代して連携攻撃を加えることもできる。一見すると慌ただしそうだが、慣れれば非常にシンプルだ。システムが追加されていくたびに毎回チュートリアルが入るようになっているので、混乱することもない。
戦闘でも、新たに導入された鍵のシステムが味を出している。敵のHPを80%以下にし、かつタクティクスレベル(T-Lv.)が2以上のときに画面右下に鍵のマークが表示される。このときに「キーメイク」を行なうことで確率で敵から鍵を生成できるようになる。同じく、戦闘中に鍵のマークが表示されている時に「キーチェンジ」をすることで鍵を使うことができ、鍵使用中は連続で攻撃を行なうことができるようになるなど、戦闘を有利に運べるのだ。
通常の戦闘でも連続攻撃が比較的決めやすいために爽快感があるが、鍵を利用した戦闘はそれを上回る快感が待っている。一定時間内ではあるが、文字通り相手をフルボッコ状態で殴りまくれるのだ。一度鍵を使うと、その気持ちよさにヤミツキになってしまうほど。
簡単に行なえる調合システムは健在。奥深さもしっかりあるので、やりこみ派の人も満足
シリーズのメインとなる調合システムは戦闘システムと同様に、基本的な部分は前作を踏襲している。作りたいアイテムごとに表示されるマテリアル環に、材料となるアイテムを選んで投入すればOKだ。非常にシンプルで分かりやすく、今作で始めて調合を経験するという人でも問題なくプレイできるだろう。
材料を入れられる回数はレシピやスキルツリーの習得状況に応じて変わるが、必要最低限の場所に材料が入っていれば投入回数に満たなくてもアイテムは調合できるので、いきなり根を詰める必要がないのも良いところ。もちろん、前作同様にお任せで調合してくれる「おまかせ材料投入」も健在だ。
しかし、品質や特性を突き詰めていくのであれば「どこに」「どの材料を」「いくつ入れるのか」を吟味する必要がある。そして、ここからが本当に面白くなっていくところなのだ。調合画面を開いて、「こっちのマテリアル環にこの材料を3つ入れる」のか、それとも「残り回数を考えて、あちらのマテリアル環にあの材料を入れるか」などなど、各アイテムの調合ごとに脳内の思考ルーチンをフル回転させて悩み、考え込み、そして実行してしまう。今作でも中毒性の高さが健在なのは嬉しいことだ。
新システムの鍵は、調合でも大活躍する。最低限のマテリアル環に材料を投入すると、△ボタンでシンセサイズ効果を持つ秘密の鍵が使用可能になる。このとき、画面のレシピLvと書かれた部分の条件と鍵の特徴が一致するほどに、調合時にさまざまな恩恵が得られるようになっているのだ。
このため、新たなランドマークを発見したり敵などからキーメイクすれば、それを調合に使用することで、それまで使っていたアイテムより強力なアイテムを作れる可能性も出てくる。そのことに気づいてからは、本当にシナリオを先に進めるのを忘れてしまったほど調合にのめり込んだ。もちろん、どのように遊ぶかはプレーヤー次第なので、そういう意味でもこれまで以上にユーザーが好き勝手に楽しめる仕様に仕上がっていると感じられ、感心してしまった。
ほかにも、クエスト達成時や調合時に得られるスキルポイント(SP)を消費して新たなレシピなどを産み出していくスキルツリーや、調合で杖以外の採取道具を作り出して使用し、これまでにない素材を入手するなど、調合に関してもやり込み要素が豊富に用意されているので、いくら時間があっても足りないほどだ。
初心者は取っつきやすくなり、経験者には奥深くへと誘う秀逸な鍵システムと共に、ますますやり込めるタイトルに
基本的なシステムは前作までを踏襲しつつも、プレイの幅を広げる方向での新システムが導入されたことで、これまで以上に遊びやすくなっていると感じられた『ライザのアトリエ3』。今作でライザ達の物語が完結するというシナリオも、どのような形でエンディングを迎えるのかが気になるところだ。
今作では、フィールドが広がったことで採取の回数は増えたものの、その分走りながら採れるなど快適になる要素も盛り込まれ、差し引きでも大きなプラスになったのではないだろうか。戦闘や調合に関しても、前作から洗練された印象を受けただけでなく、より奥深い方向に進化したと感じられた。
新システムの鍵に関しては、さまざまな要素に絡んでくるものの、シンプルに表すならば“バフ”と言えるだろう。つまり、「戦闘時にバフをかけて攻撃しまくる」「調合時にバフをかけて品質向上を狙ったり完成個数を増やす」「採取時に採れる材料の品質を上げる」といったバフ効果が得られると考えれば、最初は複雑に感じるかもしれないが実は非常に分かりやすい要素なのだ。このおかげで、プレーヤーの詰めが甘くてもそれなりの戦果や成果を出せるため、これまで以上に初心者に優しくなったと感じた。そして、わかってしまえば平均+αを産み出すためにも使えるので、より高見を目指してプレイできるようになるのも面白い部分。
「秘密」シリーズでは、ライザの見た目が話題になりがちだが、ビジュアルだけでなくシステム面でもしっかり成長したと感じられたタイトルなので、これまでのシリーズをプレイしてきた人はもちろん、聞いたことのある作品名なので今作から始めてみようかな、と思っていた人がプレイするにもピッタリのタイミングだ。
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※掲載している画面写真は一部開発中のものも含んでいます。