レビュー

「Scars Above(スカーズ アバブ)」レビュー

様々な武器を使いこなし、環境を活かす。「知識」が重要なSFシューターアクション

【Scars Above】

発売元:PLAION

開発元:Mad Head Games

ジャンル:アクションアドベンチャーシューター

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox One/Steam

CERO:C(15才以上対象)

発売日:2月28日(Steam版は3月1日)

価格:
5,980円(PS5パッケージ版)
5,980円(PS5ダウンロード版、PS4、Xbox One、Steam)

 PLAIONが2月28日にリリースする(Steam版は3月1日)プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Steam用アクションアドベンチャーシューター「Scars Above(スカーズ アバブ)」。セルビアのデベロッパー、Mad Head Gamesが開発した本作は、宇宙に存在する未知の世界を舞台とするSF作品だ。

 本作の主人公は、地球の軌道上に出現した巨大な構造物「メタヘドロン」の調査を目的とした、科学者とエンジニアで構成された「Sentient Contact Assessment and Response Team(SCAR)」の一員であるケイト・ウォード博士。プレーヤーはケイトを操作し、行く手を阻むグロテスクなクリーチャーを退けつつ、メタヘドロンの謎を解き明かすこととなる。

 本稿では、地球より科学が発展した文明の痕跡が残るフィールドの探索や、様々なタイプを有した武器を切り替えての戦闘といった本作の魅力をお伝えする。

【『Scars Above 』: ゲームプレイ概要トレーラー】

未知の世界を舞台に、脅威となるクリーチャーと対峙

 冒頭でも述べた通り、本作は宇宙に浮かぶ未知の世界を舞台としたSF作品だ。地球の軌道に現れた謎の構造物「メタヘドロン」を調査するために送り込まれたケイト達「SCAR」は、メタヘドロンによって太陽系外に位置する未知の惑星に飛ばされてしまう。惑星で目を覚ましたケイトは、離れ離れになったメンバーを探しながら、何が起こったのかを突き止めるべく探索に乗り出すこととなる。

 惑星には湿地帯や凍てつく荒地、エイリアンの遺した施設など様々な環境が存在し、ケイトの行く手を阻むこととなる。また、戦闘や謎解きにおいても、環境は重要な要素となっており、極寒の地ではどうにか暖をとらなければ倒れてしまったり、水場での戦闘では電撃が有効になったりといった風に、様々なロケーションでのプレイを楽しむことができる。

 なお、開発者曰く、本作は多くのSF作品にインスピレーションを受けたとのこと。実際に、グロテスクなクリーチャーや、未知の文明が残したであろうオブジェクトからそれを感じることができる。

本作の舞台は宇宙に存在する未知の世界。主人公であるケイトを操作し、謎を解き明かしていく
湿地帯や極寒の荒野など、様々な環境がケイトを待ち受ける
未知の存在との遭遇や非現実的な体験など、SFの要素も随所に感じられる

 惑星の探索における最大の脅威は、自然環境ではなく突如出現するクリーチャーだ。クリーチャーには、群れを成す巨大な蜘蛛や、沼地から突然現れ、毒液を吐いてくる人型のもの、皮膚が岩石で覆われている巨大な敵など様々な種類が登場し行く手を阻む。クリーチャーには固有の弱点が存在するので、弱点を知り、そこを突くことが必要となってくる。

群体を成す蜘蛛のクリーチャーや、巨大で腹部から触手のようなものが生えたクリーチャーなども登場する

様々なダメージタイプの武器を使いこなすことが攻略のカギ

 主人公であるケイトは科学者ではあるものの、射撃が得意で戦闘アクションも難なくこなす。クリーチャーとの戦闘では電流を射出するブラスター「VERA」を筆頭に、様々な武器を使用することとなる。

 各武器にはダメージタイプが設定されており、電撃で攻撃する「VERA」の他にも、熱ダメージを与え、蓄積すると発火させることができる「ヒートチャージャー」や、凍結ダメージを与え、敵を凍らせることができる「クライオランチャー」等が存在。これらの武器を状況に応じて切り替えていけるかが攻略のカギとなる。

本作の初期装備「VERA」は電撃を放つ扱いやすい武器。電撃は水を伝播し広範囲の敵にダメージを与えることができる
「ヒートチャージャー」は熱を蓄積し、相手を燃やすことのできる武器だ。燃やすことで無防備な状態となる敵も存在する

 ケイトが対峙することとなるクリーチャーの多くは、一体一体が強力な物が多く、撃破するためには弱点となる部位への攻撃が必要となる。弱点部位は色分けされており、水色の部分は電気ダメージ、オレンジ色には熱ダメージといった風に、弱点のダメージタイプでのみ破壊が可能となっている。直感的に弱点を攻撃することができる一方で、多くのクリーチャーはウィークポイントを隠しているため、それを露出させるための行動や、的確に弱点を撃つエイム力も求められる。

敵の弱点はパッと見てわかりやすいが、背中や体内といった撃ち辛い場所にあることが多い

 また、武器のダメージタイプはただ単に弱点を突くだけではなく、様々な用途に活用することが可能となっている。例えば、湿地等での戦闘では敵が濡れており、電撃や凍結攻撃がより強力になったり、氷上での戦闘では足場の氷を「ヒートチャージャー」の熱で溶かし、敵を水に沈めたりといった風に、周囲の環境によって有効な戦略は変わってくる。

濡れた敵には電撃が有効となる。状況に応じて武器を切り替えることで戦闘を有利に進めることが可能だ
敵を凍らせて動けなくしてから背後にある弱点を打ち抜くといったプレイも可能だ
巨大な敵や、章ごとに戦うこととなるボス戦では、タイプを活用したギミックを利用して攻略することとなる
電流を流して扉を開けるなど、武器は謎解きにも活躍する

 また、ストーリーが進行すると、戦闘で役立つガジェットが手に入る。ガジェットには、敵の攻撃を一定量防げる「保護バリア」や、空間内にいるクリーチャーの動きを遅くする「重力トラップ」、燃焼を広範囲に広げる効果を持った「可燃性液体」などが存在。どれも戦闘で役に立ち、危機的な局面もひっくり返すことができる強力なアイテムとなっている。

「ホロルアー」は敵をおびき寄せるデコイ。有利な地形に敵をおびき寄せることが可能だ

 また本作では、スタミナを消費してダッシュや回避といったアクションを行なえる。敵の攻撃を回避しつつスキを見て攻撃する場面が多いが、攻撃の瞬間に弱点を露出させるクリーチャー相手にはリスクをとってカウンターを狙うこともできる。また、周囲の環境によっては、先手必勝でガジェットを使用して一気に畳みかけ、戦闘を終わらせることが可能だ。こうした戦闘スタイルの判断も、攻略には不可欠だ。

極寒の地での巨大なクリーチャーとの戦闘。絶望的に見える場面でも、周囲の環境をよく観察することで活路が開かれる

 水場の戦闘では群れで襲ってくる敵にVERAの電撃で攻撃することで、複数の敵を感電させることで纏めてダメージを与えることができる。また、水中から出てくる敵をクライオランチャーで攻撃すれば敵を凍らせて一方的に攻撃することが可能といった風に、同じ濡れた敵相手でも武器によって出来ることが変わってくる。一見難所に見える場所でも、攻略法が分かってくれば一気に突破できることも少なくなく、パズルを解くような楽しさを感じられる場面もあった。

 また、敵の弱点をつく際も、ホロルアーを使って敵をおびき寄せて無防備になった敵の背中にある弱点を一方的に攻撃するのが有効なこともある。複数の敵をホロルアーで誘い出し、一気に殲滅させるのは痛快だ。本作は、倒した後も毒をまき散らしてくる敵や、一瞬で距離を詰めてくる敵、空中から毒で攻撃してくる物など厄介な敵も多いだけに、そうした敵をうまく倒せるとより一層達成感を味わえる。

 一方で普段はガードをしていて弱点が見えなくなるが、攻撃の瞬間は弱点部位が露出する敵と対峙した際は、弱点が露出した状態で凍らせたり、重力トラップで動きを遅くすれば、エイムに自信がなくとも比較的簡単に大ダメージを与えることが可能。普段は数十ダメージしか与えられなかった硬い敵相手でも、弱点を突くと千単位のダメージを与えられることもあり、そうした時は数字を見るだけでも面白い。

群れに対しては電撃でまとめて倒す以外にも凍らせて一体一体処理していくやり方も可能。小型の敵を凍らせてから近接攻撃で倒せば弾薬の消費も抑えられる
腕を振り上げ弱点が露出した状態の敵を凍らせれば、弱点部位を攻撃し放題になる

 このように、選択肢の多さから本作の戦闘は難易度がやや高く感じる場面もあるが、ダメージタイプ・周囲の環境・ガジェットをフルに活用できるようになればスムーズに敵を排除することが可能になっていく。また、同じ敵であっても、遭遇する状況によって攻略法が変わってくることもあり、毎回新鮮な気持ちで挑めた。どう立ち回れば効率よく敵を倒せるかを考えながらプレイするのは、試行錯誤の面白味も感じられた。

資源の管理が生死を分ける

 ケイトは研究者でありながらエンジニアとしての技量も確かなものであり、未知の世界で手に入れた資源やツールを解析し、回復アイテムを作ったり、戦闘を有利に進められるガジェットを制作することができる。

 本作は序盤から敵の攻撃が痛く、沼地などから突然出現するため、不意をつかれることも少なくない。また毒などの状態異常も驚異となるため、回復アイテムは活躍する機会が多い。さらに、攻略法が確立していないような敵に対しては多くの弾薬を消費することとなり、弾切れにも悩まされがちだ。消費アイテムを作るために必要な繊維や、植物等から入手できる弾薬など、常に資源を探しながら先に進むこととなる。

繊維はフィールド上の至る所に落ちている。繊維や弾薬はクリーチャーを倒すことでドロップすることも
弾薬はフィールドにある自然物や、エイリアンの残した資源を採取することで補充が可能。また、特定のツールを手に入れれば繊維からも生成できるようになる

 本作には脇道もそれなりにある。脇道では各種資源だけでなく、後述するアビリティの習得に必要となる「知識」や、武器を強化するツールなどが手に入ることがあるので、こまめな探索が攻略を楽にしてくれる。

 探索中は、今いる環境の様子を観察することができ、不気味な植物が生い茂る湿地帯や、科学の進んだエイリアンの施設といったSF的なロケーションを見て楽しむことができ、それがストーリーや世界観の考察にも役立ってくる。また、湿地帯では蔦の裏にアイテムがあったり、洞窟には横道が隠されていたりと、周囲をくまなく探索するのが楽しい。

回復アイテムなどの消費アイテムはホイールで選択できる。どのアイテムも共通して繊維を使用する

 また、前述したガジェットは、バッテリーを用いて使用するのだが、バッテリーの回復にも繊維を使用して消費アイテムの充電器を作る必要がある。また、弾薬の補充も繊維を用いて行なうことが可能となっている。繊維さえあればいつでも弾の補充や充電が可能とはいえ、そのために繊維を使用しすぎると、いざという時に回復アイテムを作れなくなる。弾薬やバッテリーのために繊維を使うか、回復アイテムのために繊維を使うか、ここも考えなくてはならない。

 的確なエイムで弾の消費を抑えてダメージを与えたり、被ダメージを抑えて敵を倒せるようになれば、弾薬や回復アイテムに割いていた繊維を、ガジェットの充電に回すことができる。そのため、ガジェットを使った強力な動きをどんどんと繰り出すことができるようになり、爽快感を味わえる場面も増えていく。こうした上達の楽しみがあるのも本作の魅力だと感じた。

スキャンを通じて知識を得る

 武器を構え、ツールを制作するケイトではあるが、本職はあくまで研究者。本作では倒したクリーチャーや、道中に存在する未知の人工物をスキャンすることで、その特徴や特性、過去にそこで何が起きたのかなどを分析することが可能となっており、研究者らしさも伺える。

未知のオブジェクトの正体をスキャンを通じて解明していく

 初めて遭遇したクリーチャーの死体をスキャンすることで、その敵の情報がログに追加される。ログを後から確認すれば、その特徴や特性を知ることができる他、一部のクリーチャーにおいては攻略のヒントを確認することも可能となっている。

 強力なクリーチャーの死体や、未知の文明の残したオブジェクトをスキャンすれば、武器の強化や新たなガジェットの制作も可能だ。

倒した敵をスキャンすれば、その情報がログに残される
スキャンしたツールを用いて武器の強化やガジェット制作に活用できる

 また、スキャンによって得た知識や、道中にある「知識キューブ」を回収し、“知識”が一定量たまるとアビリティポイントを獲得、これを消費することでアビリティを習得できる。アビリティはライフの最大値を増やすものや、高速リロードを可能にするものといった戦闘で役立つものや、獲得できる資源の量を増加させるといった探索の効率を向上させるものなどが存在する。上述した通り、知識キューブは脇道に多く設置されているため、資源の獲得だけでなく、ケイト本人の強化のためにも、こまめな探索が必要というわけだ。

アビリティはツリー方式。上位のモノほど多くのポイントを必要とする

 今回のプレイで本作は「未知を解き明かす」というテーマを随所に感じられる内容になっていると筆者は感じた。 戦闘でのトライ&エラーや、道中の探索、SFのストーリーを通じて、プレーヤーはケイトと共に、未知を知識に変えていくこととなる。ケイトが謎を明らかにする程に、プレーヤーも攻略のために必要な知識が増えていくという訳だ。

 ダメージタイプや、周囲の環境を活かした戦闘は試行錯誤の可能性を拡げており、知識が増えるほど楽しめる。また、SFの世界観も、同ジャンルが好きな人にはオススメできる内容となっている。気になる方は是非プレイして欲しい。