レビュー

「ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔」レビュー

いつもとは違うベヨネッタ。セレッサとチェシャが成長する物語に胸を打たれる

【ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔】

発売元:任天堂

開発元:プラチナゲームズ、任天堂

ジャンル:アクション・アドベンチャー

プラットフォーム:Nintendo Switch

CERO:B(12才以上対象)

発売日:3月17日

価格:
パッケージ版 6,578円
DL版 6,500円

 3月17日に発売されるNintendo Switch用アクション・アドベンチャーゲーム「ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔」はクライマックス・アクション「ベヨネッタ」シリーズの最新作。

 今作は主人公ベヨネッタがまだセレッサと名乗っていた幼いころの話となっており、魔女見習いの彼女が一族の掟を破り、投獄されている母親を救うために奮起する物語が描かれている。母親を救う力を手に入れたい一心の彼女が、夢に見た不思議な少年に導かれ、人を襲う妖精たちが住む禁忌の森「アヴァロンの森」へと足を踏み入れる。

 プレーヤーは、これまでの「ベヨネッタ」シリーズで見る完ぺきな魔女ベヨネッタではなく、魔女見習いのセレッサと、彼女が呼び出した悪魔「チェシャ」の両方を操作して様々なギミックが用意された森の奥地へと進んでいく。2人のキャラクターを同時に操作するという一風変わったゲーム性だが、うまく操作できるようになると爽快感がある。

 今回はそんな「ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔」をプレイしたので、その魅力についてお伝えしたい。

【ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔 [Nintendo Direct 2023.2.9]】

絵本で読む感覚。ベヨネッタの幼少期「セレッサ」の物語

 本作でセレッサの相棒として登場するのが、悪魔のチェシャだ。このチェシャは「ベヨネッタ」で登場した小さなセレッサが抱いていたネコのぬいぐるみの名前だが、成長した本作のセレッサもそのぬいぐるみを大事にしている。そのぬいぐるみに憑依した、どこかぶっきらぼうな悪魔にも信頼と愛情をもって接する姿を見ていると、彼女にとってチェシャという存在がどれだけ大きいのかも感じることができる。

主人公のセレッサ
セレッサの相棒となる悪魔のチェシャ

 また、ゲーム全体が絵本に描かれたような色使いとデザインになっており、そのタッチも相まってセレッサの幼さが表現されている。物語もシーンごとにページをめくっていく演出になっており、過去のベヨネッタ(セレッサ)の物語を絵本で読んでいるような感覚に陥る。

 これまでの「ベヨネッタ」のリアルな世界観に比べると、このデフォルメされた世界はよりファンタジーで幻想的な世界という印象で、セレッサのかわいさと未熟さが存分に表現されていると感じられた。

世界は可愛らしくデフォルメされている
襲い掛かってくる敵もかわいらしい姿

 いつもの「ベヨネッタ」シリーズをプレイしていたプレーヤーからすると最初は違和感があるかもしれないが、あくまでも本作はセレッサがベヨネッタになる前の話。セレッサの成長の過程を見守る物語を楽しめる。

戦えないセレッサをチェシャがサポート! 2人で支え合って進む

 これまでの「ベヨネッタ」シリーズと最も異なるところは、主人公のセレッサが全く攻撃をしないというところだ。セレッサはまだ格闘術も拳銃も使えない上に、召喚術もままならない状態で、行動全般が心許ない。

 そんな彼女に代わり、戦う役目を担うのがネコのぬいぐるみに入った悪魔のチェシャだ。チェシャは大きな化け猫のような姿で、鋭い爪で敵を一網打尽にしていく。ただ、チェシャは戦う際に魔力を消費するため、魔力が尽きてしまうとただのぬいぐるみに戻ってしまう。そうなるとセレッサの出番で、魔力をチャージするためにセレッサがぬいぐるみをしばらく抱っこする必要がある。

 また、セレッサは攻撃をすることができないが、茨で敵の動きを一時的に拘束する「イバラバインド」などを使って戦いをサポートすることはできる。攻撃はチェシャ、補助はセレッサと、2人で協力して戦っていく。

セレッサの魔力で植物を成長させて橋を架けることもある
チェシャが戦いやすいよう敵を拘束する「イバラバインド」

 セレッサは左スティックと左手のボタン、チェシャは右スティックと右手のボタンでそれぞれ操作する。それぞれ別の道を進んだり、戦闘など2人で行動する際は、お互いの状況を確認しながら同時に操作する必要がある。2人のキャラクターを同時に操作するとなると、最初のうちは混乱することもあるが、慣れてうまく操作できるようになると爽快感がある。

 また、1本道やチェシャをぬいぐるみ状態にしないと進めない場合、チェシャの魔力が切れてしまった場合にセレッサがチェシャを抱いて移動する「ハグモード」もある。ハグモードでチェシャを抱きかかえるとチェシャの魔力が回復するが、その間は攻撃らしい攻撃をすることができないので、うまく「イバラバインド」で敵を拘束しながら攻撃をかわしていく必要がある。

時には2人別々の道を進むこともある

 本作はこれまでの「ベヨネッタ」同様チャプター形式になっており、チャプターごとにステージが用意されている。ステージ上には様々なギミックが用意されており、それをどうやって2人で攻略していくかというのも本作の醍醐味だ。時にはセレッサのみで行動することもあるし、チェシャが先導して道を切り開くこともある。誰をどう動かせばいいかを考えて2人を操作するのはパズル要素としても非常におもしろく刺激的だ。

ステージ上にも様々なギミックが用意されている

 また道中では、妖精たちが作り出した「幻影妖域ティルナノーグ」というダンジョンを攻略することもある。出てくる妖精たちを倒すダンジョンや、パズルのようなステージを2人で力を合わせて攻略するダンジョンなど内容は様々だ。

 ティルナノーグをクリアすると、後述するセレッサとチェシャのスキル取得に使えるアイテム「ムーンパール」や「インフェルノフルーツ」を入手できる。クリアしたティルナノーグは何度でも挑戦でき、その時は手に入れられなかった宝箱を回収したり、タイムアタックを楽しめる。

ティルナノーグの入り口はとてもわかりやすい
ティルナノーグの中では様々なギミックを2人で力を合わせて解いていく

 セレッサとチェシャにはそれぞれスキルツリーが用意されている。セレッサが取得できるスキルはイバラバインドで複数の敵を拘束する「マルチバインド」や、ハグモードでチェシャの腕を伸ばすことで敵の飛び道具をはじく「チェシャリフレクト」など。チェシャは力を溜めて突進攻撃を行う「チャージストライク」や、ハグモードで敵をこづき、少しひるませる「チェシャこづき」などが取得できる。

 スキルの取得には、セレッサが「オニキスローズ」、チェシャが「アヴァロンドロップ」というアイテムを使うのだが、より強力なスキルを取得する場合は、それぞれのアイテムにプラスして、セレッサは「ムーンパール」、チェシャは「インフェルノフルーツ」が必要になる。

 スキルツリーは文字通り“木”で表現されており、2人の成長が進むと木も大きくなり身に付けられるスキルも増えていく。多くのゲームタイトルに採用されているスキルツリーだが、2人の成長が目に見える形で表現されているのはおもしろい。

 なお、スキルは森の各所にある「魔女の隠れ家」に設置されている鏡のような岩でのみ取得可能となっている。

スキルツリーで新たにスキルを身に付ける
身に付けたスキルは練習できるものも

 さらにチェシャには、森にある4つの「エレメントコア」を破壊することで手に入る、4種類の特別な能力もある。序盤で手に入れられる「木の力」は、伸びる舌を使ったアクションで敵の盾を取り上げたり、ステージ上のギミックを引っ張って壊したりできるようになる。「石の力」を手に入れると、ストンプしてギミックを破壊できるようになったり、敵を気絶させられたりする。チェシャがさまざまな力を手に入れるたびに、バトルではさらに有利に、ステージ上では新たな道を切り開ける。新たな力でギミックを解き、新たな道に進められるようになる瞬間はカタルシスを感じられる。

木霊チェシャによる木の力
石霊チェシャによるストンプ

 セレッサはチェシャの攻撃力に、チェシャはセレッサの魔力に助けられながら進んでいく様は、まさに2人の物語といえる。セレッサのみならず、チェシャ自身がどういう悪魔なのかも物語が進んでいくと見えてくるので、チェシャにも愛着が沸く。

 セレッサのひたむきさと成長を見届けるのが本作の大きな魅力でもある。これまでの完ぺきな魔女ベヨネッタと異なり、まだ幼いセレッサが恐怖と戦いながらも母親を救いたい一心で一生懸命駆け抜けていく。その懸命な姿はかなり胸打たれるものがある。彼女がこの森の最深部に到達したときに、私たちの知っているベヨネッタに少し近づくと思うとワクワクすらしてくる。セレッサがどうやって成長していくのか是非ともプレイして体感してほしい。