レビュー

「ライブアライブ」レビュー

ドット絵と3DCGの融合技術を用いて、あの名作RPGが約30年ぶりに現代に蘇る

【ライブアライブ】

ジャンル:RPG

発売:スクウェア・エニックス

開発元:ヒストリア & SQEX浅野チーム

プラットフォーム:Nintendo Switch

CEROレーティング:B(12才以上対象)

発売日:7月22日

価格:
通常版 7,480円(税込)
コレクターズエディション 22,000円(税込)

 スクウェア・エニックスは7月22日、1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売された「ライブアライブ」のリメイク版をNintendo Switch向けに発売する。

 今作では新たに、グラフィックスを全面高画質化。ドット絵と3DCGを融合させたHD-2D技術を用いて、驚くほどのビジュアルをプレーヤーに見せてくれるだけでなく、フルボイス化も行なわれたことで臨場感も大幅にアップした。開発は、ゲーム開発会社のヒストリアと、「オクトパストラベラー」や「トライアングルストラテジー」を手掛けたスクウェア・エニックス浅野チームが担当している。

 「ライブアライブ」は元々、1994年に当時のスクウェアから発売されたRPGだ。小学館の漫画家とのコラボレーションを行ない、7人の漫画家が1シナリオずつキャラクターデザインとして参加している。収録しているのは、7つ+αのオムニバスストーリーで、世界観がすべて異なっているのが特徴だ。7本の物語はどれから遊び初めても問題ないほか、7つすべてをクリアすると新たなエピソード“中世編”が出現する仕組みとなっている。

 現在配信されている体験版では、そのうちの功夫編、幕末編、SF編を途中までプレイすることができるだけでなく、製品版を購入すればセーブデータを引き継ぐことも可能なので、気になった人はひとまず遊んでみるのがいいだろう。

 今回、発売に先立ち製品版を遊ぶことができたので、その先行レビューをお届けしよう。本稿では主に、体験版でプレイできないシナリオの画像を使っていく。

【『ライブアライブ』発売発表トレーラー】
キャラクターデザインは西部編を石渡治氏、近未来編を島本和彦氏、現代編を皆川亮二氏、SF編を田村由美氏、功夫編を藤原芳秀氏、原始編を小林よしのり氏、幕末編を青山剛昌氏が、それぞれ担当している。ゲーム中はほぼドット絵しか登場しないので、各先生の絵柄が反映されているとはいえわかりづらいかもしれない

迷うことナシ! 完璧なナビゲーションシステム

 ゲームを始めると、最初にシナリオ選択を行なうこととなる。どこから選んでも問題ないのだが、オーソドックスなRPG感がギュッと詰め込まれている近未来編が、初回プレイとしては最適かもしれない。

 基本的には、どのシナリオも物語7:バトル3という割合になっており、ストーリー展開が中心となって話が進んでいく。例外は、ほぼ戦闘シーンのみで進行する現代編と、逆にほぼ会話のみ・映画のような感じで謎が深まり解き明かされていくSF編だ。

どこから始めるのもプレイヤーの自由。ただし、初プレイの時はクセの少ないシナリオがオススメ

 どのストーリーもベースとなるシステムはほぼ同じで、左Joy-Conのアナログスティックもしくは方向ボタンで主人公の移動を、右Joy-ConのXでメニュー表示、Aで決定Bでキャンセルなどとなっている。

 キャラクターをアナログスティックで操作する時は、軽く倒すと歩き、思い切り倒せば走る仕様。一部シナリオでは、操作ミスが即ゲームオーバーに繋がるシーンもあるので、臨機応変にアナログスティックと方向ボタンでの操作を切り替えるのがコツとなる。

SF編の後半では、ベヒーモスに追いかけられるシーンが登場する。ここで操作ミスをして障害物に引っかかり追いつかれるとゲームオーバーになってしまうので、こんな時は方向ボタンのほうが確実

 シナリオはどれも、基本的には人物に話を聞いたり、特定の場所などへ移動することで、次のイベントが発生するようになっている。プレイ中は、画面の右下に常に簡易マップが表示され、ここに表示されたオレンジの旗マーク部分に向かって移動していけば、次のイベントが発生するようになっているのだ。

右下のマップに表示された旗マークを目指して移動すればイベントが進んでいく。これがあるのとないとでは大違いで、非常に助かった

 旗マークが見えない時は、オレンジの◆マークを目指して移動を重ねることで、最終的には目的地へとたどり着ける。このおかげで、プレイ中に「あれ? この道はどちらに行けば良かったかな?」などという余計な心配をすることがなく、物語をしっかりと追い続けることができた。特にストーリー展開が中心のシナリオの場合、途中で行き先に迷って「どこ行けばいいのか分からなくなったから、とりあえずセーブして続きは明日にでも」としてしまい、次にプレイした時に話を忘れてしまう……という経験を持っている人も多いはず。その点、本作はナビゲーションがほぼ完璧で迷うことがないため、シナリオへのめり込めたのが非常にありがたかった。

マップが特に重宝したのが、SF編。ここは戦闘がなく会話を重ねることでストーリーが進んでいくが、移動できる宇宙船内が若干複雑なため、マップ上のナビがないと迷いがち
一度で目的地へたどり着けない時は、オレンジの◆を目指して移動し続ければOKだ

 会話中やイベントシーンなどを飛ばしたい場合、ZRボタンを押し続けると画面右下のボタン名の部分にラインが引かれていき、それが一定まで延びるとシーンスキップとなる。オリジナル版をプレイ済みでイベントはすべて覚えているという場合や、2周目のプレイ時には便利だが、そうではないという人がこれを使ってしまうと、話の展開がわからなくなるので注意しておこう。

シーンスキップしたいときは、ZRボタンを押し続けるだけ。一度クリアした人には重宝する機能だ

これこそ2.5次元と言えるのではないか。HD-2D技術で描かれた美しいグラフィックス

 本作をプレイしてとにかく驚かされたのが、HD-2D技術によるグラフィックスの美しさ。これまで「オクトパストラベラー」や制作が開始された「HD-2D版 ドラゴンクエスト3」などでも利用されているが、画面手前側にドット絵で描かれた2等身キャラクターたちが配置され、その奥側には3DCGを使用した背景が映し出されるだけでなく、距離感を表すためにボカシがかけられていたり、風が吹いているときは草や葉が舞うなど、空気感までもが描かれているのには恐れ入った。実際に目にしてみると、Webや誌面などで見る静止画とは違うリアルさを感じ取ることができるだろう。

 これまでも数々の描画方法が開発・試されてきたが、3DCGと2Dドット絵と合わせたHD-2Dがリメイク作品に限らず今後新作タイトルでも標準化されれば、3DCGグラフィックスを受け付けないという人にもゲームの間口が広がりそうだ。

西部編では、風が吹くと葉が舞い上がり空気の流れが描かれたり、主人公が馬に乗って走るシーンでも違和感なく3DCGと2Dドット絵が同居しているなど、HD-2D技術の素晴らしさに驚かされた
解像度も上がったことで、各キャラクターの細かな演出もドット絵で描かれるようになり、オリジナル版と比べて没入感が大幅に増したのも特徴のひとつ。原始編でのゴリ(ゴリラ)や村長の表情、近未来編での泣く様子、SF編で主人公のロボットがコーヒーを煎れる仕草など、とにかく芸が細かいのだ

 没入感という点では、キャラクターの台詞がフルボイスになったのも大きいだろう。オリジナル版では、画面に表示されたテキストを自分が脳内で読み上げていたが、本作では声優さんによる声が入ったことで、これまで以上にキャラクターが感情豊かに画面内を動き回るようになったと感じられた。なかでも、熱い展開がプレイヤーの心を打つ近未来編や、台詞がすべて擬音になっている原始編をプレイすると、オリジナル版以上に盛り上がること間違いなしだ。

原始編では、文字の台詞がなく、擬音や絵文字のみで物語が進行していくのだが、ここにも声優さんの演技がしっかりと入っている。言葉とはいえない台詞にもかかわらず、各キャラクターの感情がしっかりとプレイヤーに届くのだから、やはり声優さんの演技は凄い
近未来編もボイスが入ったことで、オリジナル版と比較して熱さ5割増し(?)でプレイが楽しめるだろう

 そのトレードオフというわけではないだろうが、各キャラクターのモーションが細かくなったことで、イベントの展開が若干遅く感じることがあったのが少々残念に思えた。もっとも、筆者がせっかちだからそう感じただけだと思うが、ボタンを押しっぱなしにするとイベントシーンが倍速で進むといった仕様があると、そんなせっかちさんも便利にプレイできるので御一考願えると非常にありがたいのだが……。

弱点が明示されていたり攻撃範囲が表示されるなど、戦闘シーンも親切設計に

 「ライブアライブ」では、“チェッカーバトル”と呼ばれる戦闘システムが使用されている。7×7のマス目内に敵味方がそれぞれ配置され、行動ゲージが溜まった順にターンが回ってくるという仕組みだ。

 各キャラクターの攻撃範囲は技を選んだ時に自動で表示されるだけでなく、ユニットにカーソルを合わせることで弱点と耐性も判明するため、バトルが大幅にやりやすくなった。また、敵にアタックした時や相手からの攻撃を受けた時には反撃が行なわれることもあるのだが、これを利用した戦法もある。知らないと苦戦する場合もあるので、ぜひとも覚えておきたい。

行動ゲージは他キャラクターの行動ごとに溜まっていき、いっぱいになるとターンが回ってくる
攻撃すると行動ゲージをすべて消費するが、一部の攻撃方法はさらなる“タメ”が必要になるため、即座にはアクションを起こせないものもある
一部のキャラを除き、敵味方共に背後から攻撃する(される)とダメージが大きくなるが、あまり気にしなくても問題なくクリアできたので、面倒な時は何も考えずに行動してもいいかもしれない(笑)
攻撃方法をカーソルで選ぶたびに攻撃範囲が表示される。敵の大きさが1マス以上あれば、相手の範囲内に入る攻撃方法が選択可能だ
敵にカーソルを合わせると弱点属性や耐性が表示されるだけでなく、弱点となる攻撃方法を選んだ時には相手に“WEAK”と出る

 なかには、戦闘を行なわないSF編や、反対に戦闘のみで話が進んでいく現代編があるなど、さまざまな特徴を持つ物語が用意されている。そうなると、プレイしている最中に「うーん、ちょっとこれは合わないかな」と思い、別のシナリオを試してみたくなることがあるかもしれない。そんな場合でも進行状況をセーブしておきさえすれば、Optionの“シナリオ選択に戻る”から即座に別のストーリーへと移ることができるのだ。

 1つの話は平均して約2時間前後でクリアできるので、別の物語をプレイし終えて戻ってくれば、当初は合わないと思ったシナリオでも違った視点で楽しめるだろう。

バトル開始時に、主人公とライバルの顔グラフィックスが格闘ゲームのように表示されるのがユニークな現代編。戦闘では自分のターンで回復を行ない、相手の攻撃に反撃することでダメージを与えていくという戦法が必要とされることも
途中で違うシナリオをプレイしたくなった場合は、Xボタンでメインメニューを表示させた後にOptionから“シナリオ選択に戻る”を選び、新規の物語をチョイスし直すだけ

 「ライブアライブ」を語るのに欠かせないのが、ゲームを盛りあげてくれるBGMだ。本作の楽曲を手がけるのは、オリジナル版も担当した下村陽子さん。アーケード版「ストリートファイターII」や、プレイステーション版「聖剣伝説 Legend of MANA」で楽曲を耳にして以来、すっかりファンになった筆者としては、本作のBGMが非常に気になっていた。

 実際に聞くと、どの曲も場面にマッチした素晴らしい出来映え。ブリキ大王のシーンでは楽曲を聴いて体の芯から熱くなり、西部編をプレイしては荒野にマッチした口笛のBGMが身体に染み入るなど、どれもこれも最高の一言。クリアしたシナリオのBGMは、メニューから選んで聞き放題になるのも嬉しいシステムだった。

クリアしたシナリオであれば、好きなBGMを聞くことができる。同じように、プレイ中に表示されるTipsも、ここから確認することが可能だ

演出面やプレイしやすさといった部分が強化され、オリジナル版以上に遊びやすく

 各シナリオごとに特徴のあるストーリーとなっていて、どれもこれも非常に読み応えがあった。HD-2Dを用いてグラフィックスや演出面が強化されたことで、ある意味ではRPGというよりアドベンチャーがメインで戦闘シーンがスパイス、という解釈もできるかもしれない。それだけに、各イベントシーンが若干のんびりした感じなのが、せっかちな筆者には惜しいと感じた部分。

 また、プレイしながら“どの物語も生と死にまつわるストーリーが描かれており、深読みをすれば本作タイトル前半のLIVEが生、後半の反転したLIVEが死を表している、と取れなくもないのでは?”などと考えたりしていたのだが、そんな物語が好きで、戦闘してレベルアップさせるのはそれほどでも……という人には、まさにうってつけの作品かもしれない。ぜひ7シナリオをクリアして、中世編そして最終編を堪能してほしい。