インタビュー

発売目前!「オクトパストラベラー」のプロデューサー髙橋氏&ディレクター宮内氏にインタビュー

タイトルに込められた意味、ドット絵グラフィックスのRPGになった理由

7月13日 発売

 6月15日より全キャラクターが使用可能、かつ製品版へのセーブデータ引き継ぎが可能な新たな体験版「プロローグ・デモ」の配信を開始した「オクトパストラベラー」。

 8人の主人公、そしてクラシックなドット表現で描かれるキャラクター、3DCGで美しく描かれる背景など、古き良きRPGを踏襲した本作だが、発売を間近に控え、E3 2018の会場では本作のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックスの髙橋真志氏、ディレクターのアクワイアの宮内継介氏にインタビューをすることができた。

 タイトルに込められた想いやグラフィックスがドットになった理由、体験版で寄せられたフィードバックなどについて聞くことができたので、こちらの模様をお伝えしたい。

インタビューに応じてくれた本作プロデューサー、スクウェア・エニックスの髙橋真志氏(右)とディレクターを務めるアクワイアの宮内継介氏(左)

「オクトパストラベラー」のテーマ、グラフィックス、主人公たち。それぞれに込められた想い

以前はタイトルに「Project」表記が付いていた

――改めて、「OCTOPATH」という言葉に込められた意味を教えてください。

髙橋氏:これは造語で、タコではないんです(笑)。8人の主人公というのが特徴のゲームなので、8人が歩く道、つまり8つの物語というのをタイトルとして表現しようと思って、「オクト・パス」=8つの道という形にしました。

 また、全世界同時発売することは事前に決めていたので、タイトルは英語でつける必要がありました。ただし、日本人にとって馴染みがなく、覚えにくい名前ではいけない。なので、オクトパスといえば「タコのこと?」という感じで覚えやすいと思いまして、綴りを変えた造語を使って「オクトパストラべラー」としました。

――以前はタイトルに"プロジェクト"という表記がついていましたよね。これは何故ですか?

髙橋氏:当初は本当にゲームの内容もまだ作っている途中でしたし、海外や日本での反響がどうなるかもわからなかったので、一旦は仮のタイトルとして、本当のタイトルは改めてゲームができあがったら考えようと思っていました。

 しかし、思っていた以上に日本の皆さんも海外の皆さんもこの名前に馴染んでいただいたので、これから変える必要もないだろうということで、そのまま使うことにしました。

――「オクトパストラベラー」を制作するにあたって、テーマはどんなところに設定しましたか?

髙橋氏:今回は「ブレイブリーデフォルト」、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」、そのどれとも違う新しいゲームを作ろうと考えていて、できるだけストーリーラインに縛られず、自分たちが好きなようにロールプレイを楽しめるようなゲームにしよう、というのが最大のコンセプトでした。

 これを「冒険」とか「物語」と表現することも多いですが、どこに行ってもいいし、風景も楽しめるし、そこに住まう人たちとの出会いもある。これを僕たちは「旅」という形で表現することにしました。

宮内氏:企画を詰めていく途中で主人公が8人ということになって、そこからそれぞれの旅立ちの動機を決めたときに、「あ、このゲームは旅というのをキーワードにしてまとめていくのが良いのかな」とピンと来たところがあったんです。

 1度そう決まると、「旅をしているように感じられる」ために景色や風景がちゃんと変わっていくように作ろうとか、街の人をどう置こうかとか、方針を1つにまとめることができました。

 そのうえで旅っていうのは行った先の景色が楽しめることが重要なので、他の地域にいったらガラッと景色が変わるようにしています。これはこだわったところですね。

――旅、という意味では訪れた街のNPCにも1人1人ちゃんと個性があるのが面白いですね。

宮内氏:そこもそうですね。意識したところです。旅先で出会う人たちがきちんとこの世界に息づいているんだというのを感じられた時に、はじめて旅の実感が得られると思いましたので。

 私自身も今E3に来ていて、現地の人と会ったり話したりするのがとても嬉しいんです。そういう感覚を大事にしたかったんだな、というのがこちらに来て改めて気づけたようなところもあります。


――8人の職業が今のものに定まった経緯を教えてください。

髙橋氏:まずはゲームとしてのまとまりがなければいけないので、8人をアタッカーとヒーラー、サポーターなどの役割と、物理・魔法系などで分類をしてバランスをとっていきました。次にジョブとして適切なものを考えていって、今回は地に足がついた世界観を目指していたので現実にありそうな職業を当てはめていきました。

――言われてみるといわゆる「魔法使い」というクラスはないですよね。

髙橋氏:そうなんです。学者が研究したある呪文を詠唱することで魔法が発動するという設定になっているので、魔法使いというものがこの世界に存在するわけではないんです。

――主人公が8人ということで、選べるルートが多ければ多いほど選択肢が増えてバランスの調整が難しいと思うんですが、バランスはどのように取っていったのでしょうか。

宮内氏:まずマップを大まかなブロックに区切って、進行の順番などを考慮しつつ大まかな難易度調整をしていきました。そのあとに細かな調整を加えていった形です。

髙橋氏:デバッグの前にできるだけ多くの人にプレイしてもらって、フィードバックを受けつつバランス調整をしていったんですね。テストプレイの期間をかなり長く取ったおかげで、なんとかバランスは取れたかなと思います。

――グラフィックスにドット絵ベースのHD-2Dを採用された理由を教えてください。

髙橋氏:1985年生まれの僕と、1984年生まれの宮内さん、開発チームも大体同じくらいの世代の人達が多いんです。みんなちょうどスーパーファミコンの黄金期で育ったような人たちが、「1番好きだったころのゲームを自分たちの手で作りたい!」という情熱で作り上げたというのが大きいと思います。

――ゲームシステムとグラフィックスはどちらが先に決まったのでしょうか?

宮内氏:ドット絵のRPGを3Dでやるということは決まっていて、そこからグラフィックを詰めていくのと同じ段階で長い期間をかけてゲームシステムを一緒に考えていきました。それこそ毎週3回、多い時では12時間くらいミーティングしていたときもありましたね。

――HD-2Dの制作はどのように進みましたか?

宮内氏:基本的なところは、ドットのゲームというよりは3Dのゲームの制作手法に近く、3Dモデルにテクスチャを貼っています。ただ、テクスチャの高解像度を高くしすぎるとフォトリアルすぎるし、荒過ぎるとドットであることを押し付けているような印象になってしまいますので、ちょっとアナログですがリードアーティストや私の"感覚"でバランスを取っているような部分があります。

 例えば水の表現などはフォトリアルに寄せたほうがよかったりして、ドットで作ったときはやりすぎというか"嘘くさい"表現になってしまったりしたんです。なのでフォトリアルにした上で色にも脚色したものを採用していますが、こちらのほうが圧倒的にきれいで、表現として良いものになったと思います。

 また、アニメーションに関してもドット絵のコマ落ち感というか、フォトリアルになりすぎないようにあえて動きを抑えていたりする部分もあります。

――フォトリアルとドット絵、両方の間でバランスを取っているんですね。

髙橋氏:例えばアーフェンの旅立ちの舞台となる川のエリアをドット絵で作っていたとき、あまりうまく行かなかったんです。そんなときにこの手法をアクワイアさんから提案していただいて、初めて見た時に「イケる」という手ごたえがありました。この川のエリアが試金石となって、この調子で全部のエリアを作ろうという流れになったのは覚えています。


プロローグ・デモのオープニングより。水の表現に注目

――フィールドにもそんなこだわりがあるんですね。では、お2人の推しマップと見どころを教えてください。

宮内氏:僕は川のマップが好きです。崖や木、地面、橋、それに水もあって……沢山の色が入っているんです。余談ですが実は川の音楽も好きで、テストプレイで毎回泣きそうになっていました。凄く情緒を刺激する曲なんですよね。いかにもというふるさと感があるというか……。

髙橋氏:わかります(笑)。8地域全部違う曲がかかるので、是非プロローグデモで聞いていただきたいです。

 私が好きなのマップは洞窟の中ですかね。アクワイアさんとタッグを組もうと決断するきっかけになったのが、試しに1番初めに作っていただいた洞窟で、光源が壁に反射する表現を見た時だったんです。これがそのまま実際ゲーム中で使われているので、1番思い出深いというか、推しマップですかね。

新たな体験版「プロローグ・デモ」の配信がスタート!体験版について聞いてみた

――「オルベリク」と「プリムロゼ」、この2人が最初の体験版使用キャラクターとして選ばれた理由を教えてください。

髙橋氏:体験版ではこのゲームの大きな特徴である「フィールドコマンド」を楽しんでいただきたいという前提がありまして、誰に対してもバトルができるコマンドと、静止画では伝わりにくい、NPCを連れ回せるというコマンドのを実際に遊んで欲しかったというのがあります。この2人は8人の中で1番わかりやすくフィールドコマンドの面白さを感じてもらえると思いました。

 さらに言うと8人のキャラクターがどこの出身地かというのも固まっていたので、体験版で仲間を探しに行く、という部分を体験してもらう意味でも隣り合うエリアの2人である必要がありました。

――体験版の2キャラクター間に人気の差はありましたか?

髙橋氏:公式でユーザーさんにアンケートを取ったことはないんですが、少なくとも開発チームやそれに近い人たちに好きなキャラクターを聞くと、実はほぼ偏りなく綺麗に分かれるんです。

 特定のキャラクターがメイン主人公で他はサブ、という形には絶対にしたくなかったので、ある意味では意図通りですね(笑)。8人全員に個性があって愛着が持てるようにしていますし、能力的にも全員が活躍できるようになっています。


初期体験版で使用できた「オルベリク(左)」と「プリムロゼ(右)」

――体験版ではゲームの難易度が比較的高いように感じられました。このバランスは意図的なものですか?

髙橋氏:難易度は"難しくしたい"というよりも"簡単にはしたくない"というのがまずありました。決定ボタンを押しているだけのゲームにはしたくないということですね。また、このゲームは最初に選んだキャラクターによって出身地、つまりスタート地点が変わりますので、バランス調整には長い時間をかけました。

宮内氏:テストプレイでは人によって難しいと感じるところが違って、それが作っていたときに大変だったところでもありました。ただ、総じてキチンとフィールドコマンドを使えば使うほど楽になるという作りになっているので、さらっとただ歩いていくだけだと行き詰まった感覚になるかもしれません。

髙橋氏:昨今のRPGと比べると難しいのはその辺りかなと思います。ちゃんと準備をして、レベルも水準に達して、ちゃんと武器防具も買って、フィールドコマンドでアイテムを集めて……というようなことをやると全然難しくないんです。一方そういう手間を惜しんで一気に行くこともできますが、その場合は結構スキルを必要とする難易度になっているのかなと思います。

――体験版に寄せられたフィードバックの内容は、日本と海外で違いがありましたか?

髙橋氏:指摘を受けた個所は日本、海外問わず似ていて、大きくは変わらなかったです。日本と海外の指摘が似ているということは、国を問わずJRPG好きな人たちに同じようにプレイして頂けたということで、逆に全世界同時リリースへの自信にもなったポイントでもありました。

――「プロローグ・デモ」の見どころを教えてください。

宮内氏:まずグラフィックスで言うと、前回の体験版では山と砂漠のエリアしかご覧いただけなかったんですが、他の地方、川や雪のエリアなど、綺麗なところが凄く多いので全部見てもらいたいです。

 バトルも4人パーティが初めて組めるようになりますので、このゲームがバトルで目指した戦略性をようやく体験していただけるのではないかなと思います。

宮内氏一押しの「アーフェン」

――8人の主人公のうち、お2人のイチ押しキャラクターは誰ですか?

宮内氏:私は薬師のアーフェンですかね。すごく真っすぐなキャラクターで決断に間がないので、イベントなどを作っていて楽しかったです。

髙橋氏:僕は剣士のオルベリクが1番ですね。オルベリクは1番最初に生まれて、ストーリーも1番最初に完成したキャラクターですし、ゲーム性を試行錯誤するなかで少しずつ設定が変わりながら今の形に落ち着いてます。そういった色々な過去のオルベリクさんが自分の頭の中にいるので、1番思い入れが深いです。

――最後に、楽しみにしているファンにコメントをお願いします。

宮内氏:プロローグデモでこれまでお見せできていなかった新しい景色がお見せできるようになりましたし、基本的なバトルシステムは全部体験できるようになっています。是非楽しんでいただいて、もっと旅を続けたいと思われた方は製品版もプレイしていただければと思います。

髙橋氏:シナリオも音楽もゲームもグラフィックスも、それぞれのプロフェッショナルが全力を尽くして作ったものなので、もう後悔するところはありません。全てやりきったので、ゲームの評価についてももうユーザーさんの手に委ねられます(笑)。あとは皆さんの感想をお聞きできるのを楽しみにしています。

――本日はありがとうございました。