レビュー

「ゼノブレイド3」レビュー

ただ戦うためだけに10年間という限られた時間を生きる命を巡る物語に魅せられる

【Xenoblade3(ゼノブレイド3)】

ジャンル:RPG

発売:任天堂

開発元:モノリスソフト

プラットフォーム:Nintendo Switch

CEROレーティング:C(15才以上対象)

発売日:7月29日

価格:
ダウンロード版:8,700円(税込)
パッケージ版:8,778円(税込)

 7月29日に発売されるNintendo Switch用RPG「ゼノブレイド3」。本作は、開発をモノリスソフトが担当しており、「ゼノブレイド」と「ゼノブレイド2」をつなぐ物語になる。

 「ケヴェス」と「アグヌス」という、敵対するふたつの国家が本作の舞台。この世界に生きる者は生まれた時から戦い、戦争でお互いに命を奪い合い、奪った敵の命で自分たちの寿命を維持している。戦争で命を落とすことなく10年の生を全うすることが出来た者は、「成人の儀」を迎えて女王に見送られて天に還り、それこそがケヴェスとアグヌスに生きる者にとって、最高の栄誉とされている。ケヴェスもアグヌスも、とにかく10年間を”生ききる”ために、命の奪い合いをしているのだ。

成人の儀
女王から生まれた命は女王へと還る

 成人の儀で成人を迎えた者や、戦場で命を落とした仲間たちを演奏で天へ還すのが、「おくりびと」と呼ばれる者たち。本作はケヴェスのおくりびとであるノアと、アグヌスのおくりびとであるミオのふたりを主軸に、ノアの仲間のケヴェス兵であるランツとユーニ、ミオの仲間のアグヌス兵であるセナとタイオンの6名が出会い、戦い、反発しあいながらも共に”真の敵”がいるという大剣の突き立つ大地”シティー”を目指すところから始まってゆく。

おくりびとであるノア

 本稿では物語の序盤をプレイしての、手触り感などを紹介していこう。

【ゼノブレイド3 3rd トレーラー】


前作からがらりと雰囲気が変わったストーリー

 比較的明るいストーリーだった「ゼノブレイド2」に比べ、本作は冒頭にも書いた通り、10年しか寿命のない人たちが戦争で寿命を奪い合うという内容だけに、常に目の前に死があり、非常に重厚なストーリーとなっている。ただ命を奪うためだけに生まれ、命を刈り取りあうこの世界は、根底から何かがおかしい。だが、それしか知らないで生まれ、死んでゆくものたちには、その歪みがわからない。

 彼らを支配するのは、「命の火時計」と呼ばれるもの。この世界で生きる者たちは基本的に「鉄巨神」に属しており、奪った敵の命は鉄巨神に内蔵されている命の火時計に吸収される。そして命の火時計が尽きた時にも彼らは死んでしまうのだ。だから、命の火時計を絶やさないために、彼らはお互いに戦い続け、奪い合い続ける。

命は赤い粒子となり、命の火時計へと格納されてゆく
戦争での死、命の火時計での死、そして成人の儀での死。彼らの世界には、当たり前に死が蔓延している。そういう重苦しい世界が物語の中心にある

 「あと2カ月生きれば、成人の儀を迎えられるんだ」

 彼らは、それを最上の夢であるかのように語る。我々にしてみたら酷く歪なものだが、この世界で生きる人々にはそれこそがある種の”生きる目標”だ。

仲間のムンバは、成人の儀を目前に控えている

 主人公のノアたちは、そういう世界の中で生きている。だが、彼らはとある任務で、ケヴェスにもアグヌスにも属さない謎の強敵と出会い、そしてその最中で力を得る。それをきっかけに彼らの中には変化が起こる。

 ——生きたい。ノアたちを冒険の道へと導くのは、戦うことしか知らなかった自分たちの中にそれまで一片たりともなかった、生への渇望だ。そのために、大剣の突き立つ大地”シティー”を目指していくこととなる。

60年生きているという男との出会いが、彼らの運命を変える
ケヴェスでもアグヌスでもない、本当の敵はシティーにいるのだと男は語る
60年生きたという男が持っていた不思議な何かの力によって、ノア一行とミオ一行は世界の敵となったというが——
敵同士だった彼らの中に芽生えた感情を、ひとことで語るのは難しい。だが、ゲームを通じて、彼らの戸惑いを含めた感情の機微に触れることができるだろう

 「ゼノブレイド1」と「ゼノブレイド2」をつなぐ物語とのことだが、序盤から20時間ほどをプレイした感じとしては少なくとも「ゼノブレイド1」と「ゼノブレイド2」の知識を必要とする場面はなかった(知っていると「もしかして?」と思うような部分はある)。

 今後の展開についてはなんとも言えないが、恐らく「ゼノブレイド3」から入っても充分楽しめる内容になっているのではないかと想定される。逆に言うと、この内容からどのように「ゼノブレイド1」と「ゼノブレイド2」につながってゆくのだろうかという点は気になるところだが、恐らく本作からプレイしてみて「ゼノブレイド1」と「ゼノブレイド2」が気になったら遡ってみる、というような遊び方も可能そうだ。

 一方で、前述の通り、雰囲気は前作からあまりに大きく変わっている。徹頭徹尾、爽快なヒーローとヒロインものだった「ゼノブレイド2」とは全く異なる世界観となっており、単純に「前作が好きだったから」という理由でプレイするのではなく、本作の世界観はしっかり理解した上でそれでも心惹かれるか否かを考えたほうがいいだろう。

 言うまでもないが、これだけ死が当たり前のように転がっている世界だけに、物語では様々な人間が死ぬ。ノアとランツ、ユーニの心に深く刻まれている幼少の頃の仲間の死を含め、物語が少し進む度に何かしらの死を視ると言っても過言ではないだろう。

特にランツは、目の前で失われる命に囚われている感じが強い
物語が進んでいくにつれて、それだけでは終わらないノアたちのもうひとつの目的のようなものも生まれ、そしてそれは世界の人々の救いになるようにも見えるのだが——

 ストーリーは非常に目まぐるしく進んで行くと言っても過言ではないだろう。ひとつの目標を見つけたと思ったらどんでん返しがあり、ノアたちの旅は順風満帆に進んで行くものではない。一方で、次々と起こる展開はプレイする者を飽きさせることがなく、世界観さえ肌にあえばあっという間に引き込まれてしまう。

実際筆者も、今回プレイした内容だけでもかなり先の展開が気になる部分が多く、発売日が楽しみで楽しみで、既にそわそわしているほどだ


バトルシステムは「ゼノブレイド」らしさを残しつつも、プレイしやすくなった

 ここまでストーリーについて語ってきたが、RPGの中心となるのは”物語”だろうか?

 もちろん、物語は大事だ。RPGの中心の一画ではある。だが、ゲーム中で最も触れている時間が長いのは、大抵物語ではない。大概のゲームはバトルをしている時間のほうが長いはずだ。だからこそ、RPGの真の中心となるのはバトルであると考える。

 ……しかし、「ゼノブレイド」シリーズのバトルは、全体的に難易度が高めである。バトルシステムを掴むまでに数十時間かかってしまう、なんていうこともザラにある。バトルシステムの本質を掴み切れないままなんとなくプレイを進めてしまっていることもあるだろう。だが、本作のバトルはそんな「ゼノブレイド」シリーズの中ではかなり難易度が低い。

 今回触れることが出来た部分でのみの話とはなるが、基本的にはオートアタックでの攻撃が主体となり、技となるアーツはX、Y、Bボタンのそれぞれ割り当てられたボタンでリキャストが回るごとに使用できる(「ゼノブレイド2」とほぼ同様)。序盤のうちはほぼ何も考えず、リキャストが回るたびにアーツを使用していけば問題ない。

 ただし、アーツにはエネミーとの位置関係で効果が変わるものがある。アーツに「背面」、「側面」などと書いてある場合は、仲間のディフェンダーキャラクターが敵視を引き付けている間に指定方向に位置取ってからアーツを使うといい。例えば「側面ブレイク」という効果が書かれているアーツなら、側面から撃つことで敵をブレイクすることができる。

ノアのソードストライクは”側面ブレイク”、スラストエッジは”背面特攻”

 アーツにはコンボがあり、ブレイク→ダウン→スタン→バーストと4種類までつなげることができるものの、序盤のうちは自身で出せるのはこのなかのひとつくらいだ。例えば自分がブレイク効果のアーツを持っているならば、ダウン効果のアーツはAIで動いている仲間キャラクターに任せる、というような形になる。逆に仲間がブレイクを持っているのならば、仲間がブレイクさせたら自分はダウンを入れる、なども可能だ。

この時のノアは自身のクラスがディフェンダーなため、主にヘイト管理が主な役割となり、仲間がスタンまで入れてくれている。仲間のAIもなかなか優秀だ

 もっと上級テクニックになってくると、バトル中に操作キャラクターを切り替え、ブレイクを使わせたらダウンのキャラクターに切り替え、ダウンさせたらスタンのキャラクターに切り替える……といったこともできなくもないのだが、これは相当な手練れのテクニックとなるため、序盤ではよほどバトルに自信のある人以外は意識しなくていいように感じた。

 このような様々なバトルテクニックは、ゲームを進めていくと少しずつ解放されていく。できればチュートリアルで示されたことはできるだけきちんと覚えてからストーリーを進めて、次のチュートリアルを見るようにしていくといい。

 というのも、これはバトルのほんの基本の基本であり、まだまだ解放されていく要素はたくさんある。1つのシステムを覚える前に次の項目を詰め込まれていくと、どんどん訳がついていけなくなる可能性があるからだ。

 ただ、それでもシリーズの中ではバトルは簡単なほうである。難しいことをやろうとさえしなければ、これまで「ゼノブレイド」シリーズを全く遊んだことがない人でも、すぐにバトルシステムに慣れるだろう。

アーツコンボはバーストの先、敵を空中に打ち上げる”ライジング”などもある。だが、序盤は「そこまで出ればラッキー」くらいの感覚で充分だ

 他の大きな要素のひとつは、キャラクターがふたりで融合して“ウロボロス”化する「インタリンク」。インタリンク中はウロボロスアーツが無限に使用できるが、時間経過でヒートゲージが上昇し、ヒートゲージが上がり切ると強制的にインタリンクが解除される。インタリンクは一度解除されるとヒートゲージが再び0になるまでインタリンクができなくなるので、どのタイミングでウロボロス化するかというのは非常に重要な要素となる。

ストーリーが進めばインタリンクが解放され、いつでも自由にインタリンクできるようになる。ノアとミオ、ユーニとタイオン、ランツとセナでそれぞれインタリンクが可能で、AIで動いている仲間は放っておいても適当なタイミングでインタリンクして戦ってくれる

 もうひとつの要素はチェインアタック。チェインゲージが満タンになると使える連続攻撃だ。まずは最初にランダムに選ばれた3名からオーダーをするキャラクターを決定する。そしてパーティメンバーを選んでアーツ攻撃をすると、キャラクターごとに異なるタクティカルポイント(TP)を獲得できる。TPを100%以上にするとオーダー成功となり、最初に選んだキャラクターが強力な攻撃を与えて、チェインアタックの1セットが終了。オーダーの評価に応じて行動済みのパーティメンバーが復活し、チェインゲージが残っている限りは次のオーダーを選択して同じようにチェインアタックを繰り返し発動することができるのだ。

オーダーをするキャラクターによって、一部ロールのヘイトが減少、敵の防御力を一定確率で無視など、様々な効果がある。画面下部は選んだパーティメンバーが得られるTPの最低値。実際にはTPボーナスが乗るため、この値よりも大きなTPが得られる
ボーナスTPは様々な条件で乗っていくので、まずは色々試してみるのがいい。チェインゲージさえ満タンになればボスなどの敵以外でも発動できるので、とにかく試行錯誤の繰り返しだ
TPが100%を超えると、オーダーしたキャラクターが必殺の一撃を繰り出して、チェインアタック1巡目が終了する。この時右下のチェインゲージがまだ2/3ほど余っているので、ノアのブレイブアサルトが終わると2巡目のチェインアタックに入る
ゲームが進行すると、インタリンク中のチェインオーダーも可能になる。インタリンク中だけのチェインオーダーには通常のチェインオーダーとは違う特殊効果があるので、そちらはゲームを進めていきながら確認してほしい

 これら以外にも、ゲームが進行していくにつれて様々な要素が解放されていく。

 なお、バトルの要素はこれでもまだ半分程度しか紹介しきれていないということは伝えておきたい。バトルとは少々異なるが、本作の成長要素やアーツの設定といったことも絡めていったり、仲間への指示なども絡めていくと、本作のバトルでやれることがどれだけ多いか、その片鱗は伝わるだろう。

 シリーズ経験者であれば「相変わらずだな、それでも確かに簡単になっているかな」で済ませられるのだが、シリーズ未経験者であれば頭にハテナマークが浮かんでいても何ら不思議ではない。だが、これが「ゼノブレイド」シリーズである。

ZL+方向キーで仲間に作戦を指示できる。リーダーが攻撃している敵を集中攻撃したり、「集合」、「解散」などもある。回復アーツは効果範囲が限られているため、HPが減っているキャラクターが増えてきたらあえて集合させて回復アーツを使用してから再び解散させて戦わせる、といった戦術も取れる。

 バトルは6名+ヒーローと呼ばれる助っ人的なNPC1名の最大7名でのバトルになるため、どうしても画面がごちゃつきがちだ。敵視もブレやすく、きちんと背面を取ったつもりがアーツを撃とうとしたら敵視がズレて側面になってしまった、ということも多々ある。だが、6名全員がインタリンクをすると実質3名+ヒーロー1名となるので、インタリンクは積極的に使っていくのが良さそうだ。

6名がインタリンク、ヒーローがひとりの状態。
6名がそれぞれ戦いつつ、ヒーローがひとりの状態。敵も複数体いるため、敵視のラインなども含めて大分ゴチャゴチャしている感じがある。

 「ゼノブレイド」シリーズはシンボルエンカウントだが、敵のシンボルの数が“異常に“多い。他のRPGと比較しても、3〜4倍以上のシンボルが配置されているといっていいだろう。しかも敵がいない小休憩的なエリアも、ほぼないと言っていい。慣れていない人ほど「全部を倒そう」としてしまうと思うのだが、「ゼノブレイド」シリーズのバトルは“全てこなすものではない”ということを覚えておいてほしい。

 ならばどの敵と戦うのかというと、まず最初は敵の頭上にあるレベルが書かれているプレートがキラキラしている敵(ラッキー)だ。この敵はレア素材をドロップすることが多いので、倒しておくといい。次はプレートに青い羽根のようなマークがついている敵(エリート)。エリートは同じレベルでも他の敵よりも少々強い。倒すと「撃破」マークが表示されるが、すぐリポップする。経験値稼ぎにはちょうどいいのが、この青い羽根マークの敵だ。

 そして、さらに豪華な黄金のような羽根のマークがついている敵が、固有の名前をもつ”ユニーク”と呼ばれるモンスターだ。同じレベルでもかなりの強敵で、ユニークは倒すとその場に墓石が残り、基本的にフィールドには復活しなくなる。だが、その墓石を調べると再び戦うことができる。

 相手にするのは、基本的にこのラッキー、エリート、ユニークの基本3種類だけでいい。

ラッキー
エリート
ユニーク

 あくまでプレイした所感からではあるが、レベルはこれだけで充分足りるようになっていると想定される。メインストーリー上でどうしても勝てない敵が現われた時は、レベル上げのために手あたり次第に倒していくのもいいが、進行に詰まったり、欲しい素材がある時以外、“ノーマルを相手にする必要はない”と思ってほしい。

 また、明らかに現状では敵わない高レベルモンスターがのっしのっしと歩いていたりするが、うっかり引っかけると即死する。注意してほしい。

周りがレベル10の敵なのに、突如現われるレベル80の敵。当然一撃殴られただけで倒されるので、決して近づかないようにしよう

 ちなみに本作は難易度が「イージー」、「ノーマル」、「ハード」と3種類から選べる。イージーでも時には全滅する程度には難しいので、シリーズ未経験であればイージーがオススメだ。

 ノーマルであれば、「側面ブレイク」などの方向指定は必ずきっちり決めていくくらいの必要があるし、当然ながらブレイク→ダウン→スタン→バーストのコンボをきちんと狙っていく必要がある。ハードに至っては本作のバトルシステムの全てを掌握していないクリアは難しいだろう。

難易度はゲーム開始時に選ぶが、ゲーム中いつでも変更可能だ

 ゲーム中はいつでも難易度の変更が可能なので、まずはイージーで初めて、物足りなければノーマルなど難易度を上げていけばいい。逆に腕に覚えのあるプレーヤーならばとりあえずノーマルからはじめて、やはりついていけないと感じたら一度イージーにして慣れてからまた難易度を戻すようなやり方でもいいだろう。


キャラクターも魅力的

 主人公のノアをはじめとしたキャラクターたちは、非常に魅力的に描かれている。おくりびとであるノアは人の死を見続けてきたが故に、10年の寿命もまだ近くないのにどこか遠くを見ているような憂いを帯びたキャラクターでありつつも、主人公らしい熱さも兼ね備えている。

ノア

 そしてそのノアと同じおくりびとであるミオは、あと3カ月で成人の儀を迎えようとしており、迫る自分の死とずっと向き合っている。けれど、それを前面に出すことはほぼなく、己の中で今日が終わって明日を迎えることに葛藤を抱えている。

ミオ
ミオに残された時間は少ない

 そのふたりを支えるのが、ケヴェス側のランツとユーニ、アグヌス側のセナとタイオン。そしてそれぞれの隊に配属されているノポンの、リクとマナナ。彼らにも、それぞれの背景、抱えている想いなどが、深く描かれている。

ランツ。考えるよりも行動に出るタイプ
ユーニ。言葉遣いは雑だが、趣味はフォーチュンクローバー集めという乙女らしさもある
セナ。一番小柄ながら、大きなハンマーを振り回すバカ力が取り柄だと笑う、快活な少女
ケヴェスとアグヌスという互いの立場に一番囚われているのは、タイオン。最初は頑なな態度を崩さないが、インタリンクしたユーニとのつながりを通じて、徐々に心を開いていく

 ただ、パーティキャラクターが魅力に溢れているのは、ある意味で当然とも言えるだろう。これほどの大作で”いてもいなくてもいい”程度のパーティキャラクターなど、存在するわけがない。今回特筆したいのは、パーティメンバーよりもむしろヒーローたちのほうである。

 前項でも少々触れたが、ヒーローは助っ人的なNPCで、「ゼノブレイド2」でいうところのレアブレイドのような存在に近いだろう。大体は「ヒーロークエスト」と呼ばれる特別なクエストをクリアすることで正式加入することが多いようだ。

リクとマナナも、ヒーローとして加入してくれる

 中には、加入することでノアたちが特別な能力を獲得することなどもある。例えばヒーローのルディが加入すると「ウォールクライム」を伝授され、一部の壁を昇り降りすることができるようになる。ヒーローのユズリハからは、「ロープスライド」という、高い場所から張られたロープの上を滑り降りるスキルが伝授される。

ルディ
ルディが加入すると、紫色の壁を昇り降りすることができるようになる

 こういったスキルを伝授されることで、広大な世界をより移動しやすくなり、探索も捗るのだが、ヒーロークエストはクリア必須のクエストではないところだけが注意すべき点だ。スルーも可能なため、物語の先を急ごうとするとこういった重要なスキルを取り逃してしまうこともあり得る。

 ちなみに本作のヒーローは、立ち位置としては自分では操作できないNPCでありつつも、冒険には同行してくれる、という雰囲気に近い。もちろん戦闘にも普通に参加してくれる。実質1名パーティキャラクターが増えるのにちかいので、ヒーローが加入したら必ず設定を忘れずに同行させるようにしておきたい。

 また、ヒーローが加入することにより、そのヒーローと縁深いキャラクターがそのヒーローのクラスを修得することも可能となり、より戦術に幅を持たせられるようになる。とにかく集められるだけ集めて損をしないというのがヒーローなので、色んなクエストをきちんとクリアしていってほしい。

 ヒーローにまつわるストーリーも、大抵はクエスト周りできちんと描かれており、そのヒーローの人となりをしっかり知れるのも嬉しいところだ。

ヒーローのひとり、ゼノン


広い世界を探索しよう

 本作はオープンワールドでこそないものの、世界は非常に広く作られている。世界のシステムとしてはナンバリングの「ゼノブレイド」シリーズとほぼ同様で、ストーリーの進行と共に行ける地域が増えていく形だ。ただ、マップは非常に広く作られており、オープンワールドほど自由ではないものの探索できる箇所は非常に多い。

 そんな世界を迷わず旅することができるよう、クエストの目的地へはガイドが表示されるのはありがたいのだが、一方でこのガイドに頼っていると、マップを全く覚えないまま、ただガイドをなぞっていくだけのゲームと化してしまう。

 例えば新しいランドマークを発見するとそこがファストトラベルの対象地点となるのだが、あまりに漠然と進んでいるとクエストで他の地域に行こうにもどこへ飛ぶべきか悩んだり、そして現在のメインクエストの場所へ戻ろうにも最寄り地点がどこだかわからない、といったような出来事が起こってしまうのだ。また、オープンワールドではないからこそ、漠然とガイドを辿っているとマップ同士のつながりがわかりにくいというのもあるので、そこもじっくりと確認していくのが良いだろう。もちろんガイドは非常にありがたいのだが、ゆっくりこの世界を楽しみたい人ほど、ガイドに頼らない冒険をおススメしたい。

赤い線がガイド

 また、ヒーローにまつわるスキルが解放されなければ行けない場所もあるため、「これは一体?」と思った時には素直にそれをスルーする勇気も必要だ。例えば筆者はユズリハと出会う前、ロープスライドのためのロープを冒険途中で見つけ、なんとかこの細いロープを徒歩で渡ろうと、必死に何回も落下しながら渡れないかを模索した。つまりこれは全く時間の無駄でしかなかったので、”ヒーロー加入でいつか進めるようになる場所がある”と予め知っておくことは、非常に重要である。また、スキル修得前にそういった場所を見つけた時は、なんとなく「ここらへんにそういったスキルを必要とする場所があった」と覚えておきたい。幸い、それさえ覚えておけばファストトラベルで一瞬で戻れるので、物語進行を大幅に邪魔するようなことはない。

このロープを本気で歩いて渡ろうと錯誤してやがて諦めたのだが、諦める勇気は大事である


音楽もハイクオリティ

 音楽は、「ゼノブレイド2」とほぼ同様で、光田康典氏を始めとした、ACE、平松建治氏、清田愛未氏らが起用されており、戦闘BGMだけでも非常に数が多い。ノーマルな戦闘BGMでも、地域によって曲が変わったりするため、バトルの時間が長い本作でも飽きがこなく聞き続けることができる。もちろんエリートやユニークでバトルBGMが変化するのは、言うまでもない。

 各エリアで流れる楽曲はもちろんのこと、今回はノアとミオがおくりびととして笛を奏でるという設定からも、笛の旋律を活かしたメロディが多く、イベントシーンでもおくりびとの笛の旋律をアレンジした楽曲が使われることが多いように見受けられた。

ケヴェスの笛の旋律とアグヌスの笛の旋律があわさってひとつの楽曲になるという趣向も、非常に良い。

 鉄巨神など機械的なモチーフがある本作ながらも、アコースティックな音色を活かした楽曲は、一見世界観と合わないようでいて、実は”調和”の役目を果たしていると言っても過言ではない。むしろ音楽がアコースティック中心だからこそ、本作が機械文明的な方面に偏りすぎず、良い塩梅にファンタジー感を維持しているとも言えるだろう。

SFとファンタジーの融合とも言われている「ゼノブレイド」シリーズだが、数々の楽曲がSF感とファンタジー感のちょうど良いところを抑えている。

 これまでも良質な楽曲だらけで評価の高い「ゼノブレイド」シリーズだが、BGMに期待している人の気持ちは決して裏切らない出来となっているので、安心して本作のBGMも楽しんでほしい。


シリーズ経験者から未経験者まで幅広く楽しめる

 スキルツリーなどによる育成要素や色んなキャラクターのクラスをクラスチェンジで育成していく要素、各種装備など、カスタマイズ要素はまだまだ多岐に渡る。この「自分なりのキャラクターを作り上げていく」という要素は今回非常に多く、ひとつひとつをあげていくとキリがないため、ここらはゲーム中で確認してほしいところだが、恐らくは歴代「ゼノブレイド」シリーズ同様、100時間遊んでもまだ楽しめるような内容になっているのではないかと思われる。実際今回は20時間ほどを遊んでいるが、恐らく未だに解放されていないバトル要素もあると思われるし、成長要素ももっとこの先様々な模索ができそうだ。

アクセサリーなども最初はひとつしか装備できず、レベルによって装備数が増えていくようだ。だが、3スロット目も同様なのだろうか……?

 アーツコンボやキャンセルといったバトルテクニックも非常に奥が深く、理解を深めていくにはそれなりの時間を要する反面、難易度をイージーにすればかなり雑に進んでも充分進めていけるのは非常に有り難い。

 こういった様々な要素はゲームの進行にあわせて少しずつ解放されていくので、その都度きちんと覚えていきたい。バトルの項でも記したが、バトルに限った話ではなく、他の要素でも同じである。ひとつひとつは難しいことではないが、何せ量が多い。多い時は何ページ分かのチュートリアルが一気に解放されるため、流し見程度ではすぐに失念してしまうだろう。

ノアの操作だけでも進めるようにはなっているが、難易度が上がれば恐らく必須となるだろうキャラクターの切り替えなども、しっかり覚えておきたい要素。
一時納刀してのクイックムーブなどはそれこそ必須ではないが、覚えておいて損はしない。ロード中に表示されるこういったテクニックも、読み込んでおいて損はしない。

 本作でも昼と夜や天候があり、それ次第で同じ場所も違う色を見せたりするため、探索も飽きが来ない。とにかく密度が濃く、20時間のプレイでもまだまだ先の見えなさを感じるゲーム性は、相変わらずながらも舌を巻く。

 シリーズ上級者であるかシリーズ初心者であるかはもちろんのこと、時間がないのでストーリーだけでもできるだけ簡単に回収したい、という人から、奥深いシステムをじっくり味わい尽くしたい人まで、幅広く楽しめる作品となっている。
 「ゼノブレイド」シリーズファンはもちろんのこと、本作の世界観が気になったから、という人も、ぜひ本作に触れてみてほしい。なお筆者は元々「ゼノブレイド」シリーズのファンでもあるが、本作ならではの世界観の重いゲームが好みということもあり、死が蔓延するこの世界観に、早々に取り込まれてしまったひとりである。

 クセの強さもあるゲーム性だが、switchで遊べるRPGとしてはほぼ間違いなく、最上質のレベルに値するゲームと言えるだろう。