X68000用「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」レビュー
イースI&II ~Lost ancient kingdom~
2021年3月8日 00:00
本編は「イース」&「イースII」それぞれを忠実に移植。一部のバグなどは修正したものの、介入は最小限に
「イースI」のディスクをドライブ0にセットし起動させると、懐かしいオープニング曲の「Feena」が流れタイトル画面が表示される。楽曲に関しては、オリジナル版のPC-8801mkIISRではFM音源(YM2203)を、X68000はFM音源(YM2151)というチップを使っているため、そっくりにさせることが大変だったと本作を担当したプログラマーのFu-.氏が生配信時に語っていたが、個人的には違和感ゼロ。BGMに関しては、まったく問題ないと思った。しかも、本作のダルク=ファクト戦では、FM77AV版にしか収録されていなかったため当時のFM77AVユーザーしか聞くことができなかった「FINAL BATTLE」のフル版が演奏されるという、粋な計らいも追加されている。これぞまさに、X68000版だけの特典と言えるだろう。その他、ディスクの入れ替えがないぶん、快適さも増していた。
プレイしていて気づいたX68000版ならではの改良点が、画面スクロール時の描画がスムーズになったことだ。とはいえ、オリジナル版で遊んでいた時もほぼ気にはならなかった部分だったのだが、そのようなプレイにほぼ影響のない箇所にさりげなく手を入れているというところには驚かされた。Fu-.氏によれば、ほかにも下記のような修正点があるとのことだ。
・アイテム取得時に、メッセージとアイテムが同時に表示される(オリジナル版では、メッセージ描画後にアイテムが表示された)。
・オリジナル版では、「I」キーで装備だったが、本作では「I」「E」どちらでも持ち物画面が表示され装備の選択が可能。
・オリジナル版の、武器防具の買い物時に既に所持している装備品でも購入できてしまうという問題をFIX。
・オリジナル版で、ダームの塔・悪魔の回廊にてデータをセーブ/ロードすると、BGMが「DEVIL'S WIND」から「TOWER OF THE SHADOW OF DEATH」に戻ってしまう問題点をFIX。
・オリジナル版にて、倒した敵が点滅中にタイミング良く宝箱を開けると、点滅していた敵がその場で復活することがある問題をFIX。
「イースII」も同様にプレイしてみたが、オリジナル版ではプログラムディスクから起動後にオープニングデモが流れ、終わったところでAディスクへの入れ替えを要求されるところを、X68000版ではそのままランスの村のゲームシーンへと移るため、手間がかからなくて非常に良かった。リターンの魔法を使えるようになると、ディスクを入れ替えることなくあちこちの街へと即座に移動することができるようになるのも良い。こういう、ちょっとした手間が省かれているだけでも、サクサクと遊べる印象が得られた。ゲーム中、3カ所まで別々にセーブができるようになっているのも、ありがたい追加機能だろう。
修正点だが、こちらもアイテム取得時にメッセージとアイテムが同時表示されるようになっていたり、スクロールがスムースになるよう変更されているが、その他に“特定の場面において画面描画がおかしくなるバグを修正している(Fu-.氏提供)”とのこと。筆者は当時、オリジナル版をプレイ中にこの現象には遭遇しなかったが、何人かのプレーヤーは“あそこを修正したんだ!”と反応することだろう。さらに、オープニングデモで浮遊大陸イースが縦スクロールするシーンも「別のルーチンを組んでスピードアップさせた(Fu-.氏)」と生配信で語っていた通り、オリジナル版では約80秒かかるところを、約30秒ほどで頂上まで到着した。
今でも色あせないオリジナル版の感動を、ぜひ体験してほしい!
今回、「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」をプレイして、久しぶりにオリジナル版準拠の「イースI」と「イースII」をジックリと遊んだが、今でもその面白さは色あせていないことを再認識した。攻撃方法は体当たりまたは魔法を撃つだけと単純で、PCエンジン版のようにキャラクターの台詞を有名声優さんが喋るわけでもなく、Windows版のようにオープニングに新海誠氏が手がけたアニメーションが流れるわけでもない。それでも、筆者としては数ある移植作やリメイク作の中でも、オリジナル版がサイコーだと思っている。当時夢中になってプレイしたという、思い入れ補正が大きく作用しているだろうが(笑)。
X68000版ならではの要素が盛り込まれつつも、オリジナル版ほぼそのままに現代に復刻された本作、当時プレイ経験があり現在X68000を所有している人はもちろんのこと、あのときはX68000版しか遊べなかったというユーザーにはぜひ原作を体験してもらいたい。一部には「ベタ移植かよ」という意見もあるようだが、当時それを望んだものの叶えられなかった人への、30年を経ての回答として登場したのが本作なのだから、ベタ移植で大正解なのだ。
Windows版やコンソール機版でしか「イース」シリーズの世界を体験したことがないという人は、この機会に実機とソフトを購入して、原点の作品をプレイしてみるのはどうだろうか? 10万円超えのビデオカードを買うのも良いかもしれないが、その予算でX68000シリーズと本作を手に入れれば、ひょっとするとあなたの人生が大きく変わるかもしれない!?
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