【特別企画】

30年以上の歴史を持つ「イース」。旧作の再展開もアツい今、その魅力と歴史を振り返る

 1987年に第1作「イース」がパソコン向けに発売され、昨年発売された最新作「イースIX -Monstrum NOX-」に至るまで、30年以上の歴史を持つ日本ファルコムのアクションRPG「イース」シリーズ。先日「イース」と「イースII」のX68000への移植や「イースVI」のスマホゲーム化が発表されるなど、周辺展開においても新旧問わず根強い人気を感じさせるシリーズだ。

 そこで今回は、作品を越えて受け継がれる「イース」ならではの魅力を紹介しつつ、その歴史を振り返ってみたい。

時代を越えて受け継がれる、イースシリーズの「4つの軸」

 パソコンゲーム黎明期から現代のコンシューマまで続く「イース」シリーズでは、時代と共にゲームデザインも演出面も進化を続けてきた。しかしその中でも、「これがあるからこそイース」と感じられるような「軸」はぶれておらず、シリーズに統一感を与えている。

 あくまで筆者の解釈となるが、この「軸」にあたる4つの要素を語ることでシリーズ全体の魅力の紹介としてみよう。

スピーディで爽快なアクション

 アクションゲームとしてのイースについて語るとき、今でもやはり「半キャラずらし」を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。初代「イース」の攻撃方法はシンプルな体当たりだったが、この際に敵に対して半分キャラをずらした状態で体当たりすれば、こちらはダメージを受けることなく一方的に攻撃できるというもの。フィールドを駆け巡りながら狙いを定め、うまく半キャラずらしが決まればザシュザシュっという気持ちいい効果音と共に敵を押し込みながら一方的に攻撃できるのは爽快だ。

「半キャラずらし」により敵を一方的に攻撃できるのが爽快(画像は初期2作品のリメイク版である「イースI&II クロニクルズ」より)

 その後「イースII」では魔法攻撃が加わり、さらに後の作品では体当たりではなく攻撃ボタンで剣を振るうようになったり、スキルやパーティバトルの追加など時代と共にシステムは進化していくが「フィールドをスピーディに駆け巡りながら敵を次々と薙ぎ払っていく爽快感」は最新作まで一貫している。

多彩で派手なスキルやパーティバトルなど新たな要素も取り入れつつ、スピード感と爽快感は一貫してシリーズのアクションにおける魅力となっている(画像は「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」より)

 一方、ボス戦においては敵の弱点を見極めたり、さまざまなギミックに対応しながら攻撃のチャンスを窺う「ヒット&アウェイ」がポイント。1画面に収まらない巨大ボスなど新たな要素も取り入れつつ、攻略の楽しさを感じさせ続けてくれている。

倒し方を見極め、段階を踏んで攻略していくようなボス戦も醍醐味(画像は「Ys SEVEN」より)

行く先々の文化が生み出す、バラエティに富んだフィールド探索

 イースのゲームデザイン面の魅力について語るにあたり、筆者がバトルと同じくらい重視しているのがフィールド探索だ。冒険家アドル・クリスティンの世界各地での冒険を描く作品として、前後編である初期2作品を除き毎回舞台を変えているイースでは、その土地ごとの文化、そして行く先々で出会う神秘的な存在が作品ごとの世界観を形作る。

 これは冒険の舞台となるフィールドにも影響する。空に浮かぶ島の巨大神殿、巨大な樹海に無人島……などなど、プレーヤーの印象に残るフィールドは多いだろう。1つの作品の中でのフィールドの種類も草原に洞窟に山脈、遺跡に塔などと幅広く、難所を越えて全く違う風景が広がったときの感慨はひとしお。それぞれの場ならではの敵、ギミック、背景美術もプレーヤーを楽しませてくれる。

「イースII」の後半は複雑な構造の巨大神殿が舞台となる(画像は「イースI&II クロニクルズ」より)
無人島が舞台となる「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」では、大自然そのものがダンジョンといった趣も

 とくに昨今の作品では、オートマッピングされる地図の完成率に応じて報酬が得られるなど「フィールドをくまなく探索し、地図を埋める」こと自体がゲームの目的のひとつになっており、“バトル”と“探索”が攻略における両輪と言えるだろう。

最近の作品では、オートマッピングで埋められていく地図を完成させるのもゲームの目標のひとつとなっている(画像は「イース セルセタの樹海」より)

「神秘」と「ヒロイン」が柱となるストーリー

 基本的に1作ごとにそれぞれの舞台での物語が完結するイースでは、アドルが新たな舞台で何らかの事件に巻き込まれ、その過程で神秘的な存在に遭遇し、事件と神秘の真実に迫っていく……というのが定番の流れ。アクションRPGだからといって物語の要素が薄いということはなく、とくに昨今の作品では魅力的なキャラクター達が多数登場し、シナリオ量も充実したものとなっている。

 そしてイースのストーリーを語るのに欠かせないのが、作品ごとのヒロインの存在。アドルを助ける相手として、アドルの導き手として、あるいは敵として対峙することすらあるなど、プレーヤーに強い印象を残す。なんといっても毎回舞台の変わる1作完結型ということで、最後にはヒロインとの別れが宿命付けられているのだ。

 再会を願いつつも今は旅立つ、といったほろ苦くも将来に含みを持たせた別れか、あるいはまさに永遠の別れか……シチュエーションは作品によってさまざまだが、毎回美しい思い出とともに切なさを感じさせるラストが、シリーズ独特の味わいとなっている。

歴代のヒロイン達は作品の象徴として、プレーヤーの思い出に刻まれていく(画像は「イースI&II クロニクルズ」および「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」より)

躍動感のあるフィールド曲をはじめとするサウンド

 イースの魅力としてサウンドを挙げる人は多いだろう。初期2作品ではその楽曲の大半を、現在もゲーム音楽の第一線で活躍されている古代祐三氏が作曲。“ズンダラ節”として知られる躍動感のあるベースラインが癖になるフィールド曲や闇の奥底から迫り来るような雰囲気を持つダンジョン曲など、その後の方向性を決定付けたと言えるだろう。

 もちろん時代と共にサウンドのテイストも移り変わってはいくのだが、とくにフィールド・ダンジョン曲において「背景音楽に徹しきらず、しっかりとした存在感を主張する」ことはブレない軸として一貫しているというのが筆者の印象だ。イースにおいては“フィールド=常在戦場”というゲームデザインがあり、音楽もそれに応じてテンションを上げ続けてくれるものが相応しいというわけだ。

【PS4「イースⅨ-Monstrum NOX-」サントラmini【RED】【BLACK】試聴動画】
参考までに、最新作「イースIX -Monstrum NOX-」の初回特典サントラの試聴動画を。「CLOACA MAXIMA」、「CROSSING A/A」あたりはとくにイースらしいノリのよさを感じさせるフィールド曲だ