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Xbox 360の後方互換を引っさげ、ついに反転攻勢に出たXbox One

豊富な独占タイトル、VRにARも! 「Fallout 4」のMODもサポート!

6月15日 開催(現地時間)



会場:Galen Center

 今年も独占タイトル盛りだくさんだった「Xbox E3 Media Briefing」。E3カンファレンスの先陣を切り、地元米国のプラットフォームというだけあって、「Gears of War」のマーカス・フェニックスが顔を覗かせるだけで、熱狂的な歓声が挙がる。

会場の様子

 「Halo 5 Guardians」、「Forza Motorsport 6」、「Rise of The Tomb Raider」、「Recore」、「GEARS 4」、「Fable Legends」、「GIGANTIC」などなど、次々発表された独占タイトルは、Xboxファンを魅了するに十分なラインナップだった。昨年のE3で話題を集めたプラチナゲームスの「Scalebounds」やRemedy Entertainmentの「Quantum Break」は、8月のGamescomのために取っておくという余裕振りで、Xbox Oneもついに実りの時期を迎えたことを内外にアピールした。

 しかし、今回のXbox E3 Media Briefingでは、ファーストパーティータイトルを始めとしたブロックバスタータイトルの発表だけではなかったところが大きな特徴だ。本稿では、Xbox E3 Media Briefingで見えてきたMicrosoftの新たなプラットフォーム戦略について詳しく紹介していきたい。なお、「Xbox E3 Media Briefing」の映像は特設サイトから視聴することができる。

Xbox 360の後方互換をついにサポート!

 最初の大きな発表は、Head of XboxのPhil Spencer氏が常にユーザーの要望ナンバーワンだったと語る、Xbox 360タイトルの後方互換性のサポートだ。すなわち、Xbox Oneで、Xbox 360タイトルが遊べるようになる。Spencer氏自身が発表を行なうと、来場者の多くは拳を突き上げ、拍手喝采を贈った。

【Xbox 360の後方互換をサポート】
今年の「Xbox E3 Media Briefing」の印象はこの1枚に尽きると思う。Phil Spencer体制になって2年弱、Xboxは再びゲームファンの支持を取り戻しつつある

Xbox 360の後方互換を発表するHead of Xbox Phil Spencer氏
膨大なXbox 360の資産をXbox Oneで活用できる!
Xbox One上で動作するXbox 360版「Mass Effect」

 基本的な内容は手持ちのXbox 360タイトルのディスクをXbox Oneに入れると、ゲームタイトルのオーナーとして認識され、ダウンロード版を落として遊べるというものだ。これにより、Xbox 360ユーザーはその資産をフルに活かしたまま、Xbox Oneへ移行することができる。これまでXbox 360の稼働率が高かったため、Xbox Oneの導入を躊躇していたゲームファンには、これ以上ない乗り換えタイミングとなる。

 デモでは、Electronic Artsの大ヒット作「Mass Effect」が紹介され、Xbox 360版をXbox Oneでプレイするシーンを見ることができた。Xbox 360のゲームを、Xbox Oneでどう動作させているのかは説明がなかったが、パフォーマンスにはゆとりがあるため、スクリーンショットや動画撮影、ゲームDVRの利用など、Xbox One独自の機能を利用することもできるという。一部のユーザー向けのテストはまもなくスタートし、今年のホリデーシーズンには全ユーザーに提供される予定。非常に楽しみな機能だ。

 また、先日、HDDの容量を倍の1TBにし、新型ゲームコントローラーを採用したXbox Oneの新モデルを発表し、まもなく北米で発売が開始されるが、それとは別に“エリートモデル”のゲームコントローラーも今冬登場する。

 「Xbox One Elite Wireless Controller」と名付けられた新型コントローラーは、現行モデルの上位版に相当するもので、ハイグレードのパーツが採用されていることに加え、デジタルパッドが格闘ゲームでの使用を意識したへこみのついた丸形パッドに変わり、背面にはレースゲームでの使用を意識したパドルボタンが4つ新たに付いている。2つのアナログスティックは取り外し可能で、トリガーをロックするボタンや、感度の調整なども可能となっている。今冬発売予定で、価格は未定。タフにゲームを遊び込むXboxファンにはマストバイなアイテムだ。

【Xbox One Elite Wireless Controller】
基本はハイグレードなコントローラー。ボタンが増え、キャリブレーションも細かくできるようになっており、レースや格闘ゲームなど、これまで苦手としてきたジャンルでも操作しやすくなっている

「Fallout 4」のMODサポートは、従来のPCに加えてXbox Oneでもサポートされる
昨夜に続いての登壇となったTodd Howard氏
初公開のデモを実施するなどXbox Oneを重視する方針を明確にしている

 ところで、Xboxが得意とするサードパーティーの抱き込み戦略。先行発売やDLC独占配信など、ライバルと差別化をはかることによってマルチプラットフォーム展開するタイトル販売を自社プラットフォームに有利に進める戦略だが、今回はなんと「Fallout 4」の獲得に成功した。昨夜に続いて2日連続で登壇した「Fallout 4」エグゼクティブディレクターのTodd Howard氏は、初代Xbox時代の「Elderscroll IV: Oblivion」からスタートしたMicrosoftとのパートナーシップについて触れ、当時の協力を感謝すると共に、Microsoftの協力がなければこの場に立っていなかったとまで言い切り、繰り返し強い謝意を示した。

 Howard氏は当時の恩に報いるために、Xbox One版「Fallout 4」のMODサポートを行なうことを表明。具体的にどのような形でMODを組み込むかは不明だが、スペックに上限のないPC版を別格とすれば、PS4版に対して、非常に大きなアドバンテージとなる。また、短い登壇時間の中で、昨夜のBethesdaのデモンストレーションでは見せなかったXbox専用のデモ映像を用意するなど、Xboxに対してかなり配慮したステージ内容だった。Xboxユーザーにとってはまさに100万の援軍にも匹敵する頼りがいのあるパートナーだ。

 さらに蜜月関係の続くEAからも、Xbox One独占サービス「EA Access」のサービス拡充が、元XboxエグゼクティブのPeter Moore氏から伝えられた。「EA Access」は月額518円(年額3,002円)を支払うだけで、EAの人気タイトルをダウンロードして無制限で遊べるというサービス。日本でも5月にようやくサービスがスタートしたばかりだが、タイトルラインナップが貧弱なのがウィークポイントだった。今回、新たに「TITANFALL」や「Dragon Age: Inquisition」などが追加されより魅力的なサービスとなる。

【Xbox One独占サービス「EA Access」も拡充!】

もっとも会場を沸かせたのはMicrosoft Studios傘下のゲームスタジオMojangの代表作「Minecraft」だった

 そして今回会場をもっとも沸かせたのが、「Microsoft Hololends」版「Minecraft」だ。発表を行なったのは、Phil Spencer氏の公認としてMicrosoft StudiosのヘッドとなったKudo Tsunoda氏。Tsunoda氏からは、OculusのE3カンファレンスで発表されたOculus RIFTの標準コントローラーとしてXbox Oneワイヤレスコントローラーが採用されたこと、また、Valve VRともパートナーシップを交わし、Windows 10をVRに適したOSとすること、そしてMicrosoftがWindows 10向けに開発している新しいAR(拡張現実)デバイス「Microsoft Hololends」がコンピューターゲームに新境地を切り開くと宣言。

 Microsoft自身が開発している「Microsoft Hololends」は、VR(仮想現実)ではなく、AR(拡張現実)デバイスだ。VRは、OculusやValveと提携することで間接的に取り込みつつ、自身はARで大きな差別化を行なうという戦略だ。

 これらの発表が意味するところは、Xbox OneにもVR/ARゲーミングの道が開かれたということだ。ただし、そのアプローチは、PS4とMorpheusの関係とは少し異なる。Windows 10は、Xbox Oneタイトルをストリーミングでプレイできる機能があり、その機能を介してWindows 10側で、Xbox Oneタイトルをプレイすることで、Windows 10がサポートするVR/AR機能をXbox Oneタイトルでも利用できるようになるという寸法だ。ただ、パフォーマンスや、VR/AR特有の酔いの問題もあり、採用されるというわけではなく、現時点ではあくまで可能性の提示に留まる。

 Xbox Oneのストリーミング機能は、発表当初、その技術的な難しさの反面、わざわざPCを介するメリットが見いだせず、あまり歓迎する声は大きくなかったが、Microsoftの真の狙いはWindows 10を介することで、VRやARといったXbox One単体ではスペック的に難しいことも実現可能にするところにあったわけだ。

Tsunoda氏からは、Windows 10の登場によるXbox Oneの新たな可能性について語られた
Windows 10とXbox Oneのクロスプラットフォームプレイに対応した「Fable Legends」
Oculusの標準ゲームコントローラはXbox Oneコントローラーに
そして真打ちはMicrosoft Hololends
テーブルの上に、ホログラムでゲーム世界が広がるこの衝撃!
当然のことながら拡張現実に過ぎないので、テーブルには何もない。このギャップが凄い

 さて、「Microsoft Hololends」デモはMojangのBrand Director Lydia Winters氏から説明が行なわれた。「Microsoft Hololends」の発表の際に研究開発していることが伝えられた「Minecraft」。今回はそのHololends版「Minecraft」が初披露された。

 今回は特別に中継するカメラそのものにHololensを埋め込み、会場にいる全員がHololendsがもたらす拡張現実を目の当たりにすることができるようになっていた。最初は、何もない壁に仮想のモニターを表示させ、そこに「Minecraft」のゲーム画面を表示させるというもの。目の前には飛び跳ねる女性キャラ「Lydia」がいる。ここまではごくごく普通の活用だ。

 来場者をあっと驚かせたのは、体験者の前に置かれている平らな四角いテーブルに、「Minecraft」の立体世界そのものをホログラム表示させ、クォータービューの視点から、それを拡大縮小させたり、スクロールさせたり、屋内や地中を覗いてみたり、そこにはまったく異なる「Minecraft」の世界があった。先ほどの「Lydia」は山の上に出来た教会のような施設にいて、Hololends装着者は、それをクォータービューの視点から覗く。まさに神の視点で「Minecraft」の世界を覗き込み、世界に介在していく。

 ビデオカメラを建物に突入させると、建物の中まで見え、そこにLydiaがいた。覗き込む楽しさが素晴らしい。拡大縮小などはすべてボイスで行ない、パッドを持つ必要がない。指を使って操作することもできるようで、これはまさにゲームの革命だ。

 視点を地下まで潜らせると、アリの巣の断面図のように広大な地下世界を覗くことができる。Hololends装着者は、画面中央に白い印を付け、Lydiaはそこに爆弾を積み重ねていく。Hololends装着者が“ライトニングストライク”と発言すると、爆弾に稲妻が落ち、地面が粉々に粉砕されて広大な地下世界が地表から見えるようになった。最後はおまけで、養豚場に稲妻を発生させると、草が燃え上がり、同時に剣を持ったゾンビピッグマンが出現。直接的、間接的に世界に介在できるようだ。

 ここでデモは終わり、本日最大規模の拍手喝采が生まれた。あの遊び尽くされた「Minecraft」がHololensひとつでここまで変わるというインパクト。「Xbox E3 Media Briefing」をまだ見ていない方はぜひ見てみて欲しい。ARによって、またゲームというものが大きく進化する可能性があることを目の当たりにすることができる。

 現世代のゲームコンソールは、PS4がXbox Oneの倍の差を付け、Xbox Oneは苦しい戦いが続いているが、「Xbox E3 Media Briefing」では、Microsoftは“今世代の戦争”をまったく諦めておらず、Windows 10というMicrosoftの伝家の宝刀をフル活用することで、PS4に追いつき追い抜くという意思を明確にしてくれた。前世代のXbox 360の資産を再び活用できるようになるのもゲームファンとしては嬉しいニュースだ。

 明日より開幕するE3では、ファーストパーティータイトルの試遊をはじめ、Xbox 360の後方互換やHololendsなど、様々なデモが実施される予定になっているので、さらに詳しい情報をお伝えしていくつもりだ。

【Hololends版「Minecraft」デモンストレーション】

(中村聖司)