「マリオカート ライブ ホームサーキット」レビュー
アカこうらでクラッシュしたり、風に煽られたり、ゲーム内の出来事がそのままリアルのカートに反映される技術に感動
- 【マリオカート ライブ ホームサーキット】
- ジャンル:
- レースゲーム
- 開発・発売元:
- 任天堂
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 9,980円(税別)
- 発売日:2020年10月16日
2020年10月14日 21:00
任天堂がNintendo Switch向けに10月16日発売予定の新作レースゲーム「マリオカート ライブ ホームサーキット」(以下、「マリオカート ライブ」)。本作は、カメラを搭載したカートとNintendo Switchを連動させて、リアルとゲームが融合した新たな「マリオカート」を楽しめる。
Switch本体からラジコン的にカートの操作が可能で、アイテム「ダッシュキノコ」を使用するとカートがダッシュしたり、対戦相手からアカこうらを食らうとカートがストップしたり、画面内のレースの出来事がカートの動きとリンクするのが特徴だ。
見慣れぬ景色とスクリーンショットではなかなか本作の魅力は伝わらないと思うが、恐らく誰もがこのゲームを起動してSwitchの画面を見た時に、リアルな景色とゲーム画面が重なったその様子に驚愕するのではないだろうか。
今回は編集部の撮影スタジオを使用して本作を試遊した。実際の部屋は殺風景なものだが、画面をのぞき込んだ時には思わず「おお……」と感嘆の声を漏らしてしまったほどだ。
本稿では、実際に「マリオカート ライブ ホームサーキット」を遊んでみたプレイレビューをお届けしよう。
まずはカートの出来に注目
早速、まずは箱の中身を一通り取り出してみた。今回お借りしたサンプルは、「マリオカート ライブ ホームサーキット マリオセット」。箱の中には1番から4番のゲートと、矢印看板が2枚、そしてマリオのカートが収められている。
ゲートは丈夫な紙製で折り畳んだ状態で収納されているが、脚を引き出すだけで簡単に組み立てられる。遊び終わったあとはコンパクトに収納が可能で、「この箱に、よくこれだけ内容物を収められたな」と感じるほどだ。
では、カートの詳細をお届けしよう。
実際に操作することになるカートだが、9,980円の価格で、ゲームソフトとレース用のキット、そしてこのカートがついていることを考えると、破格のお値段では……?と感じるほど、出来が良い。
ゲーム用の周辺機器として使用するだけではもったいないとも言える細部までこだわった作りは、同社から販売されているamiibo(アミーボ)にも近いものがある。(とはいえ現時点ではカートのバラ売りがないため、amiiboのようにお手頃価格でカートだけ買うことは出来ないのだが……)
カート本体のサイズは、実寸で全長約17cm、全幅約11cm、全高はカメラ部分を含め約10cm。手のひらよりも一回り大きいサイズ感となる。カート本体はプラスチック樹脂製で、タイヤ部分は中空のゴム素材。塗装はカートのカウル部分がつや出し仕上げ、フレームや座席部分はつや消し仕上げとなる。マリオのフィギュアはPVC製で、カートから着脱はできないが細部まで造形され、丁寧に塗り分けられている。
カートは、USBでの充電式。電池は必要ないが、遊ぶ前にまずはカートの充電をしておこう。充電ケーブルは付属しているので、付属ケーブルでカートとSwitch本体を接続すれば充電できる。もちろん、USB充電機能付き電源タップを持っている人は、そちらからでも充電可能だ。
このカートはルイージ版もあるので、「我こそはルイージ派!」という人は、そちらの購入も検討してほしい。
現実がコースになる「マリオカート ライブ」を体験
では実際に「マリオカート ライブ」を体験してみよう。
ゲームを開始すると、まずは自分の使用するカートの外見や、マリオのコスチューム、その他カスタマイズ要素などを選択する。これらはゲームを進めると、徐々に種類が追加されていく。
次に、「ひとりであそぶ」か「みんなであそぶ」を選択。ひとりの場合は、4人のNPCが対戦相手として登場する。みんなで遊ぶ場合は、ローカル通信にて最大で4人まで同時に対戦プレイが可能だが、人数分のSwitch本体とカートが必要になる。
今回はカートが1台しかなかったので、必然的にひとりモードでのプレイとなった。
いざプレイするにあたっては、Switch本体とカートをリンクさせる必要があるが、その手順はとても簡単。画面にQRコードが表示されるので、そのQRコードをカートのカメラに読み込ませれば、それだけでリンクが完了する。
操作方法については、これまでの「マリオカート」シリーズと特に変わったところはない。Aボタンがアクセル、Bボタンがブレーキとバック、Xがクラクション、左のアナログステックがハンドル、Lでアイテム、Rでドリフトだ。もちろん今回が初めての「マリオカート」の人でも、すぐに遊べる簡単操作となっている。
次は、いよいよコースの作成に取り掛かる。コースを作るために、まずは1番から4番までのゲートを設置する必要がある。
実際にカートを走らせることになるので、あまり間隔を詰めると曲り切れない。ある程度間隔を作らなければならないが、とりあえずこの日撮影をしたスタジオはおよそ6畳の広さだったので、実際にプレイする際の参考にしてほしい。
なお、6畳ほどの広さでも、ちょっと操作を誤ると壁に衝突したりもしていたので、カートや壁を傷めたくない人は、7~8畳ほどの広さが欲しいところだ。
マンション住まいの場合、リビングと続き部屋をふすまで仕切っているタイプの間取りが多いが、敷居の上を走らせるとカートの動きが詰まったり敷居を傷める可能性があるため、敷居を跨いでのコース作りはあまりオススメできない。
更にコースを作成する際は、【進行方向からゲートの数字が見えなければならない】という条件がある。これはカートのカメラでゲートの番号を認識しているからだ。
今回は何回かコースを組み直してみたものの、広さの問題もあってあまり凝ったコースを作れなかったが、例えばテーブルの下や椅子の下、チェストの下など、カートならば通れるような隙間をコースとして活用することで、もっとバラエティに富んだコースを作ることが可能だろう。
ゲーム内の出来事でカートの速度も変わる、驚きの再現度
コースの作成が終わったら、いよいよレースの開始。レースは8種類のカップにそれぞれ3つのレースがあり、3つのレースの総合順位で競う。最初は50ccと100ccしか選べないが、レースに勝ち進んでいけば150ccなども解放されていく。
そして筆者の手元のSwitchの画面は、先程までただ目の前の現実を映しているだけだったのに、参加するグランプリを選んだ途端、これから走るレースのエフェクトがかけられていた。
さらには、ハテナボックスもきちんとある。中からはコインやダッシュキノコ、スターといったおなじみのアイテムが登場する。
ハテナボックスから手に入れたアイテムを、マリオがきちんと手に持っている!?
ちなみに筆者はSwitchの画面に夢中なので全然気が付いていなかったのだが、撮影に立ち会ってくれた担当編集が見ていた絵面は、これだけである。
「これだけで面白いの?」という感想になりそうだが、率直に述べるならば「充分に面白い」。というのも「マリオカート ライブ」が従来のシリーズと大きく異なるのは、“遊び慣れたコースを走っているわけではない点”にある。
従来の「マリオカート」シリーズならば同じコースを周回するため、必然的にインコースを攻める場所やドリフトダッシュのポイントを覚えてしまうが、この「マリオカート ライブ」は遊ぶたびにコースを自在に作ることが出来る。逆に言うならば、起動するたびに新しいコースを作るため、遊び慣れたコースで最適な位置取りをすることが出来ないのだ。
また、NPC(他のプレイヤー)も当然ながらハテナボックスを取って、こちらに攻撃をしてくるので、相変わらず敵からの攻撃は厄介そのもの。普段ならばアカこうらなどのクラッシュが痛いところだが、今回はゲーム性的にも意外とゲッソーの墨攻撃が痛かった。
これも結局は遊び慣れていないコースを遊んでいるためで、墨で前が見えなくなることで現在地がどこだかわからなくなり、コースを大きく外れてしまい、なかなかレースに復帰できない、ということが多々あった。
もちろん言うまでもなく、アカこうらの攻撃を食らえばカートはクラッシュしてしまう。筆者のSwitchの画面では、見慣れたクラッシュ画面が表示されていたのだが、担当編集の眼からは「突然カートが止まった」という風にしか見えていなかったようだ。他にもダッシュキノコを使えば画面内のカートは加速するが、実際のカートも加速していたという。
更には50ccクラス、100ccクラス、150ccクラスとで、カートの走行速度自体が変わっている。少々シュールな絵面ではあるものの、実際の各クラス操作時の動画を用意したので、ぜひ比べてみてほしい。
様々なコースを紹介!
「マリオカート ライブ」では、リアルな風景が一瞬でマリオカートのサーキットへと変わる。そのサーキットは多彩で、馴染みのある場所が様々なエフェクトで彩られるのも楽しい。
今回試遊した中でも、ダントツに筆者を苦しめたレースは、カメックミラージュ。このコースでは、鏡のようにコースが反転させられてしまうのだ。恐らくこのコースには、結構な数のプレーヤーが苦しめられるのではないだろうか。
特に反転させられた瞬間は訳がわからず、何度もコースを外れてクラッシュしたが、NPCたちはすいすい順応していく。ズルい……。
技術としては圧倒的に面白いが住宅事情が課題か
前述したように、「マリオカート ライブ」を遊ぶには、それなりの広さが必要だ。最低でも6畳ほど、余裕をもって遊ぶのならば床面積で8畳ほどは欲しい。また、これはあくまでカート1台で遊ぶ時であり、複数台のカートで遊ぶならば、更にもう少しの余裕があるといいだろう。
また、ゲートは重いもので抑えるなどして、固定しておいたほうがいい。今回は抑えるものがなかったため、接触したゲートをずるずると引きずったままカートが走る展開も多かった。
ラジコンカートであることには間違いはないが、それをただのラジコンではなくゲームとしてきちんと落とし込んで融合させ、しかもゲーム内で風の煽りを受けるようなところまでをカートの動きに反映させている技術に関しては、ただ唸ることしか出来ない。
カート自体はドリフト走行はしないが、ゲーム内ではドリフト走行が可能で、使い勝手もかなり良い。残念ながら筆者はゲームの画面内とカートの動きを同時に見るのが難しいため、ドリフト中のカートの動きを見ることこそ出来なかったものの、ドリフトからのブーストダッシュも再現されており、実に見事だ。
ただ一方で、かなり無茶なコース作りをした際に、NPCはすぅっと障害物をすり抜けて走行していくような場面もあった。また、こちらはクラッシュしてしまった時には手動でカートをコースに戻さなければ復帰できない、というような出来事もあった。これは出来る限り走りやすい広さを確保するしかない、というのが結論になってしまう。
更に、どんなに広く複雑なコースを作っても、判定としては1番から4番のゲートさえくぐれば「コースを1周した」と判定されてしまうので、ショートカットはいくらでも可能になってしまう。この点については、そういったシステムの穴をついてショートカットをしていくか、作ったコースを走り切るかは、プレーヤー次第だ。
運転についてはアシストモードがあるので、オンにすれば運転が苦手な人でも操作がしやすくなる……とあるが、今回のように狭いコースだと、あまりアシストモードの恩恵は感じられなかった。
これまでにも「マリオカート」のラジコンカーは数種類発売されているが、当然ながらゲームと同期できるようなものはなかったので、「マリオカート」のラジコンが欲しかった、という層にもオススメしたい。
例えばラジコン用のサーキットなどで遊ぶことが可能ならば、相当に楽しいレースが出来上がるだろう。現実のサーキットを利用しながらも、アカこうらで相手をクラッシュさせたり、キラーに変身して一気に他のカートを抜くことも可能なのだから。(※ただしラジコン用のサーキットを利用したい場合、ゲートをコースに置いても良いかなど、必ず店舗に問い合わせてほしい)
また、本作はリアルとの融合ということもあり、アイテムも比較的シンプル。確認できた限りでは、コイン、ダッシュキノコ、アカこうら、キラー、ゲッソー、バナナ、ワンワン、ボムへい、スター、サンダーなどが見られた。筆者は確認できていないが、トリプルダッシュキノコやパワフルダッシュキノコ、トリプルバナナ、トゲゾーこうらなどもあるようだが、数時間プレイをしても一度も見かけていないので、これらのアイテムの出現率は抑えられているか、最下位を走っていないとほぼ出現しないのかもしれない。
「マリオカート」はこういったアイテムによる運用素も絡むゲーム性のため、上手い人が必ずしも1位を独占し続けるわけではないのが、最大の特徴だ。純粋なレースゲームを楽しみたい人にはその点が不満かもしれないが、単純な上手い下手が勝敗を決めるわけではない点を楽しんでいる人たちが多いからこそ、「マリオカート」は今でも多くのファンを持つゲームであり、新規層も楽しめる内容となっており、それは「マリオカート ライブ」でもなんら変わることはない。
なお、屋外で遊ぶことは公式でも推奨していない。カートの破損につながる可能性があるので、必ず屋内で遊ぶようにしてほしい。今回は毛の短いカーペットの上で遊んだが、プレイ後は結構な埃がカートに付着していたため、遊んだ後はカートを軽くエアダスターなどで掃除しておくと良いだろう。
今回は場所の都合もあり、ほぼ携帯モードで遊んでいたのだが、テレビにゲーム画面を映すようにすれば、周囲ともレース画面を共有して共に盛り上がれるのではないだろうか。
200ccクラスを出すところまではやりこめなかったものの、200ccクラスは遊び勝手もかなり変わってくるという。
家族で楽しむにはカートとSwitch本体(Liteでも可)が人数分必要で、かつ発売時点ではカート単体でのバラ売りがないというのは残念なところだが、プレイスペースの広さの確保などの問題が解決するならば、ぜひこの新たな「マリオカート」を楽しんでみてほしい。
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