「HAGANE WORKS マジンカイザー」レビュー

HAGANE WORKS マジンカイザー

悪の帝王のような禍々しい玉座! 何者をもぶった切るポーズがとれる関節!

ジャンル:
  • アクションフィギュア
発売元:
  • グッドスマイルカンパニー
開発元:
  • グッドスマイルカンパニー
価格:
17,500円(税込)
発売日:
2020年8月28日

 グッドスマイルカンパニーから現在受注中のアクションフィギュア「HAGANE WORKS マジンカイザー」のサンプル品が編集部に届いた。本商品は8月発売予定、価格は価格:17,500円(税込)。グッドスマイルカンパニーのページから予約受付中だ

 弊誌は「HAGANE WORKS マジンカイザー」の開発者である田中宏明氏のインタビューを行なっている。インタビューでは金属パーツ、クリアパーツを使うことで素材の楽しさ、「本能に訴える魅力」を持った本商品のポイントが語られた。

 今回、このサンプル品でその魅力やポイントを再確認し、改めて「HAGANE WORKS マジンカイザー」の面白さを見ていきたい。合金アクションフィギュア初心者にもオススメの楽しい商品である。

「HAGANE WORKS マジンカイザー」。8月発売予定、価格は価格:17,500円(税込)。「モデロイド」シリーズでユニークな商品を実現し続ける田中宏明氏が手がける合金フィギュアだ

マテリアル感と幅広い可動、しっかり遊べる合金アクションフィギュア

 「HAGANE WORKS マジンカイザー」は足の側面や太もも、胴体に金属部品を使用したアクションフィギュアだ。手に持つとひんやりした感触があり、重量感を感じる。ただ想像したよりも軽い。他社の合金使用を謳っている商品よりは軽い感じだ。この"重すぎない重量感"は、遊びやすさを考えてのバランスだとも感じた。設計者の求める重量感という意味で、面白いテーマだと思う。

「HAGANE WORKS マジンカイザー」。樹脂部品をメインに、金属パーツ、クリアパーツを要所に使うことで素材の面白さを前面に出す。合金フィギュア初心者も視野に入れた商品とのことで、遊びやすさを重視している

 そしてディテールである。マジンカイザーは非常に線の多いロボットだが、手に持ちディテールを確かめるのは楽しい。特に顔と胸の「ファイヤーブラスター」周辺の情報の密度は凄まじい。ファイヤーブラスターは銀の基盤パーツの上にクリアパーツをかぶせており、非常にカッコイイ、顔の細かい塗装、胸の中心に輝くZマークを含め、魅力がぎゅっと詰まっている。

 可動もかなり優秀だ。足の付け根は腰アーマーを上にスライドさせることで可動範囲を増やし、膝立ちを楽々行なえる。膝部分も脛部分の装甲が内側に畳まれることで正座に近い形まで深く曲げられる。腕も上腕の回転軸、肘の回転軸、上腕、前腕それぞれに曲げられる部分があり、かなり複雑な表情付けが可能だ。

 そして手首部分である。これは元デザインが優秀なのだろうか?手首そのものは回転軸のみで、肘寄りの溝部分がボールジョイントで接続されているので、自然に手首が曲げられ、しかも隙間が生じない。この可動軸のおかげで微妙な表情付けが楽しい。肩の可動範囲も広い。全体的に動かして楽しいフィギュアである。デザインの楽しさ、可動の優秀さをまずは楽しみたい。

情報が集中する上半身。非常にカッコイイ
手首の溝部分が可動ポイント。これにより独特の表情付けが可能だ
膝や肘は深く曲げられ、腹部や胸部、首の可動範囲も広い。肩や肘は細かく動かせ、力のいれ具合まで考えたポージングが楽しめる

 武器は両肩から出るカイザーブレード(ショルダースライサー)2本と、胸から出る大剣・ファイナルカイザーブレードが付属。どちらも同じ握り手で持たせることができる。大剣を両手で構えたり、カイザーブレードを2刀流で持たせたり、優秀なアクション性と合わせて楽しみたい。

 「HAGANE WORKS マジンカイザー」オリジナルギミックとして、2本のカイザーブレードを結合させてナギナタのような形にできる。こういった武器を構えたポーズこそ、アクションフィギュアの最大の遊び方であると言えるだろう。

 もう1つ、田中氏のこだわりのギミックと言えば頭より長いのではないかというカイザーパイルダーがそのまま装着でき、きちんと首が可動できるところ。ここは首の基部までを1パーツにしており、その上で胴体に繋がる部分の可動を広くとることで、見上げたり首を回す自由度の高い動きを可能にしている。

2振りのカイザーブレードと、大剣・ファイナルカイザーブレード。これらを使って豪快なポーズをつけたいところ
機種が長いカイザーパイルダーがそのまま合体できる。田中氏こだわりのギミックだ

 「HAGANE WORKS マジンカイザー」は合金製アクションフィギュア初心者へも配慮した商品だという。触ってみるとそれが納得できる。見た目で関節の位置がわかりやすく、しっかり可動して様々なポーズがとれる。特に肩と腕の関節が多く、馴れることで力の入ったポーズや、手首の先まで気を使った動きのあるポーズがとれるようになる。本商品で遊ぶことでカッコ良く、力強いポーズが追求できるだろう。

 手首の位置、肩のほんのちょっとの角度、腰と胸、そして首の角度を変えることで変化する目線と力の入れ方。足首を動かすことで変わってくる地面を踏みしめる足の描写。アクションフィギュアは想いを込めれば込めるほど微妙な表現が可能となる。「HAGANE WORKS マジンカイザー」は取らせたいポーズを取らせることができ、そこからとことんまでこだわることができるフィギュアだと言うことが実感できた。

クリアパーツが楽しい紅の翼に、様々な解釈ができる"玉座"

 次に「カイザースクランダー」を装着してみた。内側にクリアパーツ、外縁に赤い樹脂パーツを使っており、そのコントラストが楽しい。巨大な紅の翼は、クリア部分内部のメカ描写が細かく、目が引きつけられる。何より翼を広げたマジンカイザーのケレン味がとても良い。

 前述の通り首も上をきちんと向くので飛行ポーズを取らせても良いかもしれない。今回は付属していないが、飛行ポーズで飾れる台座なども欲しいところだ。このクリアパーツが多く使われたカイザースクランダーはとてもカッコイイ。角度を変えることで生まれる表情の違いも活用し、様々なポーズを取らせたいところだ。

巨大な紅の翼・カイザースクランダー
クリア部分はとても見応えがある

 そして「HAGANE WORKS マジンカイザー」の最大のウリとも言える"玉座"である。本商品はマジンカイザーが座る椅子が用意されている。他の商品では中々見られないオプションパーツと言えるだろう。この玉座だが……非常に悪者っぽいのだ。特にマジンカイザーの背もたれに当たるところに描かれた顔が"悪い顔"をしている。ここにカイザースクランダーや剣を配置すると一層禍々しい。

 この悪役感たっぷりの玉座にマジンカイザーを座らせる。"悪の帝王"と言った雰囲気で、敵組織のボスや、RPGに出てくる悪の大魔王のように見える。マジンガーは、初代のマジンガーZから鉄仮面に黒いボディという"悪役顔"とも言えるロボットだった。元々のマジンガーZから「神にも悪魔にもなれる」という2面性を持つキャラクターなのである。そのディテールを強化され、さらに鋭角的なデザインとなっているマジンカイザーがこの玉座に座ると、とても悪役っぽい。

 どっかり腰を下ろさせるだけでなく、物憂げに肘をつかせることもできる。こうなると幹部達の報告を聞く悪の大首領といった感じも出る。この雰囲気はとても面白い。田中氏はこの玉座に座るマジンカイザーに"封印"という意味も持たせていると語った。マジンカイザーはこの玉座に封印されている、縛り付けられているとしたら?……面白い解釈である。また、ロボットは普段は格納庫に収められている。この玉座がメンテナンス用の設備とイメージしたらどうだろう? ユーザーの創造を刺激するガジェットだ。この仕掛けは、「HAGANE WORKS マジンカイザー」で一番面白い部分だろう。

今回の目玉となる玉座。とても悪役っぽい
座るマジンカイザーは悪の帝王のようだ
封印されているのか、様々な解釈が楽しい。独特の遊びが楽しめる

 「HAGANE WORKS マジンカイザー」は様々な合金玩具が出る中、グッドスマイルカンパニーと、田中氏が世に出す「2020年の合金アクションフィギュア」である。現在の最新の可動、造形技術を、できるだけ遊びやすく、あえてスタンダードに仕上げた。

 本商品の企画の元になった千値練の「RIOBOT マジンカイザー」は、エフェクトパーツや、ミサイルパーツ、豊富な手首パーツなど非常にリッチな商品であり、「HAGANE WORKS マジンカイザー」はそこからディテールや部品、合金使用率を減らして、価格を抑えた商品とみることができる。こういう判断をしたのも「多くの人に手に取って欲しい」という想いがあったからだという。

 そういう視点をわざと度外視し、千値練「RIOBOT」やBANDAI SPIRITSの「METAL BUILD」、「DX超合金」と比べると、正直、「すごいアイテムが目の前にある」という感覚は少し薄い。手にして緊張してしまう迫力はない感じがする。しかしだからこそ、気軽に触れて、たっぷり、しっかり遊べる。触って壊れそうに感じるところはないし、関節の可動カ所もわかりやすく、武器もシンプルなためポージングに集中できる。「遊びやすさ」を最大限に追求した商品であることが実感できる。確かに合金フィギュアの楽しさを実感できる入門商品としてはぴったりかも知れない。

 そしてやはり、玉座が面白い。フィギュアは動かして遊ぶのはもちろんだが、飾って楽しむものでもある。この玉座は飾りの幅を広げてくれるし、他のフィギュアと並んでいても異様な存在感がある。この"悪の玉座"にふてぶてしく座るマジンカイザーは最高だ。ここから自由に想像を広げるのは、これまでのどの商品でもできなかったことだろう。フィギュアファンならばここに他のフィギュアを座らせるのも面白いだろう。

 今や合金フィギュアは高価格化し、その価格に納得をもたらすためにパーツやギミックを増やし、結果として複雑化している。田中氏が提示する遊びやすく、手に取りやすい合金フィギュアをユーザーがどう受け止めるか、あえて合金フィギュアの原点回帰を目指した「HAGANE WORKS マジンカイザー」に注目したいところだ。

千値練が2016年に発売した「RIOBOT マジンカイザー」。価格は32,000円(税別)