2020年3月25日 13:25
今回レポートするのは、東京マルイが3月12日に発売した「MTR16 Gエディション」である。アサルトライフル「M4」の民間モデルをイメージした東京マルイ オリジナルM4カスタムのガスブローバックガンである。本商品の最大の特徴は“G(ゴールドエディション)”。金色の銃身や金具によって、実銃を思わせるシリアスな銃に、独特のカッコ良さと遊び心を加えているところに大きな特徴がある。
筆者は今年、サバイバルゲーム歴35周年を迎える。しかし実は「ガスブローバックマシンガン」に若干の不安があった。トイガン歴が長い方は頷いて頂ける感覚だが「ガスブローバック(ガス圧で実銃同様に機関部を動かす)」による連続射撃という響きには苦い思い出がある(原因は後述)。しかし、今回手にした「MTR16 Gエディション」は、予想の遙か上を行く完成度だった。筆者のこれまでのガスブローバックマシンガンに対する考え方や、東京マルイの商品へのこだわりで、様々な発見があった。
筆者が写真撮影をしている間、手の空いた編集部員が入れ替わりやって来て、“初めて触る”エアガンを興奮気味に動かしていた。ゲーム画面でバーチャルに何度も握ってきたアサルトライフル(形状は違うが)を、BB弾を装填していない空撃ちの状態で、1発分トリガーを引いただけなのに、そこから発生する反動と「カシャッ」というメカニカルな作動音を体感し、興奮気味を表情を浮かべた事実が、その完成度を表していた。「MTR16 Gエディション」は初心者にも興奮を与えられる商品だ。本稿ではその魅力を語っていきたい。
見て楽しく、触って楽しい「MTR16 Gエディション」の魅力
ホビーの魅力は、なんと言っても、見て触った第一印象で概ね決まると思う。ツールとして優れていても、見た目で可愛い、カッコイイという感情が湧かなければ欲しいと思わないだろうし、見てくれが良くても、いざ動かして動作が不安定だったらガッカリしてしまう。
「MTR16 Gエディション」は、パッと見てカッコ良く、撃って感動がある優れたホビー、というのが第一印象となる。
前半部のアウターバレル(銃身)は、元になったM4A1(250mm)よりは、その先代のM16(510mm)に近く約400mmに延長された。「ツイスト状の肉抜きとアルミ素材採用」というアウターバレル(銃身)は、Gエディションというネーミングの由来であろう、「窒化チタンコーティングをイメージした」上品なマットゴールドカラーに染められている。
その螺旋状のアウターバレルを、「剛性が高いアルミ切削ハンドガード」が覆っている。これは現代銃器のトレンドであるレールシステム「M-LOK(エム-ロック)」を採用、トップ部には20ミリピカティーニ企画のレイルがアップレシーバーまで繋がっている。
そしてハンドガードを含むレシーバー(機関部)は、実銃のパーカーライジング処理に近いマットな仕上げ。
そこに取り付けられたチャージングハンドル、ボルトストップ、セレクターなどの可動パーツ類が銃身同様に染められてアクセントとなっている。特に、右側のエジェクションポート(拝莢口)から覗くボルトのゴールドはほれぼれする。
また、MTR16のM4A1との違いとして、グリップ部(銃把)がより真っ直ぐな、いわゆるグロックタイプに変更されている。
ストック(銃床)は、M4同様のスライド式で体格や装備に合わせて6ポジションに調整可能。銃全体の印象としてはスリムなハンドガードで握りやすく、フロントヘビーに見えるが重量は軽く、絶妙なバランスで全体を引き締めている。
筆者が所有しているのは20世紀の銃のエアガンが多く、レールシステムが先端から貫く「MTR16 Gエディション」は「おお、未来」という印象を抱いた。一方で、全体が樹脂で作られた銃器が多くなりつつある時代に、アルミのシャープで無骨なハンドガード、昔ながらの20蓮型アルミダイキャストマガジンにはホッとする安心感もある。
ゴールドカラーがケバケバしいグロスメッキでないところも好印象で、東京マルイらしいバランスの取れた外観だと思う。
「MTR16」とはどんな銃なのか? 連射可能なエアガンならではの楽しさ
エアガンを評価する上で外せないのが、それがどんな銃をモデルにしたか?という点。
やはり『GAME watch』の読者には、アニメ、マンガ、FPSなどのゲームで目にした銃を実際に手にしてみたいという方が多いと思う。
「MTR16Gエディション」はゲームではお馴染み、米軍が使うM4A1のバリエーションに大別できる。なお、現在はM4と言われるが、筆者の様な、20世紀に青春を過ごした世代だと、どうしてもM16系と言ってしまう。
M4A1とその先代の米軍正式採用小銃であるM16は、元はAR10という、天才銃器デザイナー、ユージン・ストーナーがAR(アーマーライト)社在職中の1955年にプロトタイプを完成させたNATO弾(口径7.62mm)仕様のライフルが原型となっている。
AR10を5.56mmの小口径高速弾化したAR15が1967年にM16A1として米軍に正式採用され、1982年にはフルオート⇒3点射などのマイナーチェンジを受けてM16A2となった。
そして1998年にはそれまでM16のカービンタイプに採用されていたスライド式銃床を取り入れ、レシーバー上部をレールシステム化したM4A1が米軍の正式採用銃となり、現在も世界中で使用されている。
予算など、政治的な背景もあるだろうがAR10、AR15の先進性はそれが標準となった65年後も衰えていない。それだけ、AR=M4の基本デザインは人間工学の研究に基づいて設計されており、普遍的であるという事。
現に、北米におけるコルト社(AR社から製造権を取得した)のライバルS&W、ドイツのH&K、スイスのSIG、ベルギーのFNなど、かつて米軍正式採用銃の座を争って様々なコンセプトのデザインを出してきたメーカーがこぞってM4のクローンを出さざるを得ない状況となっている。
その、半世紀以上世界の銃器に君臨し続けたデザインを踏襲した「MTR16 Gエディション」ではあるが、この名称の実銃は無い。ちなみに「MTR16」は、「マルチ タクティカル ライフル 16インチ」の頭文字となる。
しかし2018年に東京マルイは本製品の元となった「MTR16」開発に当たって、プロトタイプを実銃で創ってしまった。東京マルイはその動画を公開している。
エアガンは“玩具”なのでSF的なデザイン・色・形でも表現できていたが、最近は実銃の方が「これで実銃なの?」というような奇抜なデザインのものも出始め、玩具と実銃の境目がなくなりつつある。
M4に関してもカスタムハンドガードやストック等、後付けパーツが様々なメーカーから発売され、「何がオリジナルか」ということがわからなくなってきた。そんな中で「東京マルイがM4のオリジナルを考えたらどうなるか」というテーマで製作されたのが「MTR16」だ。
だからこそ東京マルイならではの「MTR16」をアピールするにあたり、東京マルイのオリジナルで“本物”を作るという誰も考えなかった“逆”の発想で展開したのである。
つい最近まで製造されていたエアコッキング式M16(と、ショートバージョンのXM177E2)はハンドガード下に収納されたオリジナルのレバーを引き出して、ショットガンの様に前後させ(ポンプアクション)手動でスプリングを縮める間隔を短くした画期的な機構を有していた。外見の良さと、BB弾を発射するエアガンとしてのオリジナルの調和は、東京マルイの製品の歴史そのものでもある。
ガスブローバックマシンガンシリーズだからこその面白さ
本製品の特徴は、ガスブローバックマシンガンである事。「BB弾を発射する為のツール」として考えれば、総合的にはガス圧よりも空気圧が勝る。これは、スプリングを用いた、シリンダーの前身による空気の圧縮は、気化した液体ガスよりも安定しているという利点があるからだ。そして何よりもランニングコストがかからないという最大のメリットもある。
ガスガンに使用するガス「HFC134a」は気化熱をパワーとするため、外気温、連続発射によるガスの低温化により圧力が低下すると、銃の作動に支障をきたしてくるという特徴がある。ガスを注入するアルミもしくは亜鉛ダイキャスト製マガジンを暖めたり(熱したりするのは危険なのでやってはいけない)、複数用意したりという対応策はあるが、電動ガンのバッテリーに比べて温度による不安定という根本的な原因を無くす事はできない。
電動ガンはバッテリー駆動によるメカで弾を発射するので、気化熱をパワーにしたガスガンに比べ、射撃の感じでリアルさに欠ける。そこで東京マルイはウエイトによる移動で射撃時の反動を表現した「次世代電動ガン」で大きな評価を得る。
これは1980年代~90年代初頭まで圧倒的に市場を支配していた長物(ライフルやサブマシンガンなど)のガスガンが、東京マルイの電動ガンに取って変わられた事で歴史的に証明されている。ではその電動ガンのパイオニアたる東京マルイが、何故ここにきてブローバックガスガンのマシンガンを製造するのか?
それは一言で言えば、「ロマン」と表現できるかもしれない。
先程、「BB弾を発射するツール」としては、と書いたが、では実弾を発射する銃を、BB弾を発射するホビーに置き換えた場合の再現性で評価するならば、これはガスブローバックガンが電動ガンに圧倒的に勝る。
電動ガンは空気を圧縮する為に、モーター、ギア、シリンダーといった部品からなるユニットが不可欠となっている。さらに動力源のバッテリーも本体内部に収納しなくてはならない。それは、火薬と弾頭を詰めたカートリッジの尾部を叩いて爆発させるという実銃の発射機構とは大きく異なるものである。
一方のガスブローバックはどうか。マガジンに付いたバルブのお尻をボルトで叩いてガス圧を解放、BB弾を発射しつつ、ガス圧でボルトを後退させ、再度発射の準備を整える。これは、マガジンから後ろの部分はかなり実銃の発射機構に酷似して造る事が可能なのだ。
「MTR16 Gエディション」内部メカの凄さ
ここからは実際に「MTR16 Gエディション」を撃った感触をレポートしていきたい。銃のコッキングハンドルを引いて戻すとBB弾が発射準備となる。この時、マガジンにBB弾が装填されていないとボルトは後退したところで止まる。
マガジンにBB弾を装填してスライドストップレバー(解除レバー)を押すとボルトが「シャキッ」と音を発てて前進する。この一連の動作は実銃では当たり前だが、東京マルイの電動ガンは、そもそもボルトの代わりにメカBOXがあるため機構が異なる。弾を撃ち尽くしてボルトが解放される動作は、BB弾を撃ち尽くしたときに機械的に作動する「オートストップ機能」で代用することで再現している。
しかしBB弾の発射と一連の動作が実銃のフィーリングに近いのが、ガスブローバックガンの特徴である。また、マガジンを外し、テイクダウンピン(分解用のピン)を押して機関部を折ると見えるボルトやバッファーなどの機構も、まさに実銃のM4シリーズを彷彿とさせる再現度となっている。メカBOXで動作する電動ガンは中身が全く違うため、昨今の東京マルイの電動ガンではテイクダウンできなくなっている。
火薬を使って発車音や煙を楽しむ(弾は出ない)モデルガンも、機構としては同様であるが、素材などの違いからくる強度不足やしなり、ねばりなどの制約があり、「MTR16 Gエディション」程にメカニカルにシャープな動作をみせるエアガンは筆者は初めて見た。
ガスガンと電動ガンには様々なメリット、デメリットがある。様々な製品が販売され、ユーザーは自分の求める“理想”を叶えるための選択肢が与えられる様になった。この実銃のM4シリーズにより近い感動、すなわち「ロマン」の為に、東京マルイがあえてガスブローバックマシンガンに「MTR16 Gエディション」をラインナップした事は論を待たないだろう。
シューティングレンジで撃つ、「MTR16 Gエディション」の楽しさ
編集部は室内という事で、BB弾を発射できず、いわゆる「空撃ち」のみを行い、編集部員の好評を得た。BB弾の発射は日を改めて、千葉県野田市のサバイバルゲーム場「yaNex(ヤネックス)」へ赴いた。
「yaNex」ではシューティングレンジのみ、30分500円で使用する事が可能。(サバイバルゲームの定例会をやっている日は、予約無しで行っても大丈夫だが、それ以外の日の営業は電話にて要確認とのこと)今回は平日、定例会が無い日に使用させていただいた。3月で外気温は15度ぐらい、暖房の効いていた編集部と違い、ブローバックガスガンにはやや厳しい条件であった事は予めご了承頂きたい。
使用したのは東京マルイ純正のガス「NEWガンパワーHFC134a ガス」と、生分解性BB弾「パーフェクトヒット バイオ0.2gBB」である。
また「MTR16 Gエディション」にはサイト(照準)が付いていないので、私物の東京マルイの旧型プロサイトを載せた(このプロサイトは現在は販売されていない)。プロサイトはスコープと違って物を大きく見る為の物ではなく、筒の中に浮かぶ赤い光点を目標と重ね合わせて素早く狙いを付ける為の物である。
レンジでゴーグルとマスクを着用、アルミダイキャストマガジンの底部にガスを注入、ローダーを使ってBB弾を20発装填する。
チャージングハンドルを引いてボルトを動かし、BB弾をチャンバー(発射位置)に送る。本来であれば、細かく射点を調整したりといった準備をするが、時間も限られているので、ポン付け状態のプロサイトで先ずはセミオートでトリガーを引く。
バスッという発射音と、「シャキッ」というボルトの心地よい金属質の作動音と共に、BB弾が20m先の的に吸い込まれる。レポート用の銃なので、HOP調整積みだと思うが、サイトの調整をせず、雑に狙っただけとは思えない相性の良さは、やはりマルイがエアガン発売時からこだわり続けている命中精度の賜物だと思われる。
続けてトリガーを引くとフラットな弾道で連射でき、全弾撃ち尽くすとボルトが後退して止まった。
マガジンを抜き、ガスとBB弾を補充。ボルトを前進させてセレクターをフルオートに切り替え、トリガーを絞る。
ダダダダッと心地よくBB弾が発射されたが、連続しての射撃でマガジンが冷えていた事もあって、途中で発射サイクルが若干変わった。
その後ガスとBB弾を何度か補充して100発ほど撃ってみたが、セミオートに関しては変わらず快調な動作をみせた。
筆者の考えるガスブローバックによるフルオート射撃は、冬場に外での使用は厳しいものだったが、この実射性能の発展に思わず舌を巻いた。ただ、この日の様に肌寒いぐらいの気候で、電動ガンのフルオート射撃と同様の安定性を求めると、それは無理という事にはなる。
結果、「MTR16 Gエディション」は実に優れたホビーだなと思わされた。
外観、手にした時の手応え、内部機構の再現性、実射性能と、総合的なバランスを考えれば素晴らしい。
見た目が気に入った方ならば、購入しても不満の無い製品である事は、30年以上色々なエアガンを見てきた人間として断言できる。WEB通販で捜せば定価より安く入手できる場合もあるが、一方でオートバイ同様、近くにあるお店で購入した方が、後々メンテナンスの相談に乗ってもらえる、という事もあるし、各自で判断という事にはなる。
この後、筆者としても触手が動かされる「AKM」もラインナップを予定されており、要注目の東京マルイガスブローバックマシンガンシリーズと言えよう。
※撮影に使用したプロサイトは現在販売されていません