2019年8月28日 12:00
8月29日に発売された、ロジクールのゲーミングブランド「ロジクールG」の最新ヘッドセット「PRO Xゲーミングヘッドセット」。プロeスポーツアスリートの協力のもと設計された「PRO」シリーズの最新作となる本製品には、ゲーマーだけでなくストリーマーにも嬉しい機能が搭載されている。
それが、20年以上にわたってマイクを開発してきたBlue Microphonesの協力で生まれた「Blue VO!CE」という機能。ロジクールG製品用アプリである「Logicool G HUB」を併用することで使える機能で、複数あるプリセットを利用した「マイクを通したボイスのカスタマイズ」が可能となる。本稿ではそんな新機能も含めて、「PRO Xゲーミングヘッドセット」の魅力を語ろうと思う。
【製品仕様】
・サイズ:94×138×195mm(幅×奥行き×高さ)
・重量:320g
・ケーブル長
コンソール/PCケーブル:2m
パソコンスプリッタ:120mm
・接続インターフェイス:USB/3.5mmステレオミニプラグ
・マイク
集音特性:カーディオイド(単一指向性)
周波数特性:100Hz-10kHz
着脱式6mm大口径ノイズキャンセリングマイク
・ヘッドフォン
ドライバーユニット:ハイブリッドメッシュPRO-G 50mm
感度:91.7db SPL @ 1mW & 1cm
周波数特性:20Hz-20kHz
インピーダンス:35Ω
・使用可能システム:PC、PS4、Nintendo Switch、Xbox One、各種VRデバイス
落ち着いたデザインと快適な装着感
まずは外観から。ブラックをメインカラーに合皮とスチールで構成されたボディは見目麗しいプレミアム感。両のイヤーカップには滑らかな彫刻が施されていて、光を柔らかく反射する。中心にはロジクールGの「G」が映えるデザインで、どこかレコードのような印象もある。
イヤーパッドは合皮のものを外して低反発クロスのものに取り替えられる。合皮製パッドは耳周りにしっかりとフィットし、装着すればヘッドバンドとあわせて統一感が得られる。クロス製パッドの感触は現行の「G」シリーズとは違い「ASTRO Gaming」に使用されているものに近い。
耳周りにフィットする合皮か、モフモフした毛の感触がいいかはユーザーの好みに依る。筆者はフィット感優先で合皮製を選んでいる。ヘッドバンドが柔らかく合皮製なのも高級感があり好感が持てるし、装着すると頭全体をしっかり覆ってくれる感触だ。
安定の50mmドライバー、ゲーム向きのサラウンド
本製品ヘッドフォン部には、音の歪みを軽減するために独自に開発された50mmドライバー「Pro-G」が使用されている。これにより低音をはっきりと捉えることができ、「PUBG」や「レインボーシックス シージ(R6S)」といった足音を重視するゲームで音量を上げすぎることなく足音を捉えられるという。
DTS Headphone:X 2.0サラウンドサウンドは、付属のサウンドカードを併用することで有効化できるバーチャル7.1chサラウンドシステム。Logicool G HUBでのイコライザー設定とあわせて設定すれば、プライベートに楽しめる音響環境が構築できるのだ。
これを使えば対応したゲーム、たとえば「R6S」のようなFPSタイトルで敵の位置をさらに詳しく察知できるし、オーディオを楽しむだけでも重厚感ある低音と音に包まれているような感覚を楽しめる。有効化しない手はない。
「R6S」で本製品を使用したところ、確かに足音が聞きやすい。後述するイコライザー設定で低音を大きくすることで、さらにはっきりと捉えられるようになった。DTS Headphone:X 2.0サラウンドサウンドを併用すると上階にいる敵を捉え、床下から攻撃することもできた。かなり役に立つ。
また「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(隻狼)」の「火吹き筒」を発動した際の炎の轟音であったり、刀を打ち合わせる金属音を風味豊かに味わえる。「DTS」を有効化した際はなにより重低音の強調が強く、銃兵の発砲音であったり、忍殺時のSE、BGMのベースがしっかりとノビをもって聞こえるようになる。
また中音域を大きくすれば人の声がよく聞こえるようになるため、「Marvel's Spider-Man」のように演技派の役者たちのボイスを楽しみたい場合は試してみてほしい。楽曲を聴いた際のボーカルも大きくなる。
プリセットは自作しても、ダウンロードしても
Logicool G HUBで設定できるイコライザーのプリセットは、デフォルトで用意されているものを使っても、「その他のプリセットを参照」でほかのユーザーが作ったものを使っても、自作してもいい。80、240、750、2,200、6,600Hzの5つのポイントを色々といじって好きなように作り替えていこう。
ドラムやベースなどは80Hz、ストリングスやボーカルが240~2,200Hz、シンバルなどは6,600Hzあたりを大きめに設定するとよく聞こえるようになる。ゲームであれば、足音は6,600Hzと80Hz、銃声は6,600Hzを大きくするとよい。
またイコライザーのプリセットはLogicool G HUB上でオンボードメモリに記憶させられる。これを利用すれば、PS4などでも好みの音響を楽しめる(DTS Headphone:X 2.0サラウンドサウンドはPC専用の機能)。
ところで筆者は「G633s」を使用したのち、同社ブランドの「ASTRO Gaming」、その「A40 TR」を愛用しているが、こちらは周波数帯を細かく設定して音量を上下できるが、てDTS Headphone:X 2.0サラウンドサウンドは搭載されていない。「音質のこだわり」という点では「ASTRO Gaming」製品に軍配が上がるが、「PRO X」には「音の重厚感」という点で強みがある。周波数帯があらかじめ設定されていることは初心者でも容易に設定を楽しめるメリットもある。
声に遊び心を加えるBlue VO!CE、マイクの取り回しは良好
マイクは着脱式で、単一指向性の6mmノイズキャンセリングマイク。全世代の「PRO」が4mmで、少し口径が大型化している。
配信や通話に使用したところ、出力、ループバック音声ともにクリアに聞こえた。友人とSkypeを使用して「A40」、「G633s」、「PRO X」の3パターンで通話したところ、「PRO X」が確かにクリアに聞こえる、との意見を得られた。
また「Blue VO!CE」機能なのだが、これはマイクに適用するイコライザーといえる。「詳細コントロール」をオンにすれば、高周波数をフィルタリングする「高パスフィルター」やノイズの除去などを行なえるようになる。各プリセットにもしっかりと適用されているため、チェックボックスにチェックを入れて確認するといいだろう。
しかしこの機能が面白い。たとえば声が高く金切り声のように聞こえてしまうのを防ぎたいならば高周波部分を弱めればいいし、低い声を大きく聞かせたいなら低音を大きくすればいい。また邪魔な音が多いのであれば、例えば外が強風で騒がしいとかなら、詳細コントロールをオンにして「ノイズリダクション」や「エクスパンダー/ゲート」を大きくすればいい。音質を大きく変えることができ、遊び心のある機能といえる。
音質に関してだが、「A40」は丸みのある音になって声が拾われるのに対して、「PRO X」はとてもクリアに、はっきりと聞こえる。難しい表現ではあるが、音の”尖り”までしっかりと拾ってしまうため、筆者の耳には少々聞き苦しさを感じた。こんな場合にBlue VO!CEを利用して、高周波部分の音を低く設定したり、中音部分を強くしてみるといいかもしれない。
ゲーマーにも、ストリーマーにもオススメ
総じて、本製品は高い音質、Logicool G HUBによる拡張性と重厚なバーチャル7.1chサラウンド、Blue VO!CEを利用した音声の調整力と、使っていてなかなかに楽しい製品だ。オーディオを楽しむことはもちろん、高い音質でゲームに熱中したいゲーマーにも、ゲームや自分の声を配信するストリーマーにもオススメしたい。
なにより価格がそこそこリーズナブル、というのがある。ロジクール製でこれより上位のモデルとなると「G933S」や「A40」、「A50」となってくるが、それでは2~3万円を超える。そういった点で、中間の価格帯ながらも高い性能を持つという意味では非常にリーズナブルなのだ。
このように、ゲームプレイやストリーミングに十分以上の性能を持ちながら、控えめの価格に抑えられた優秀な一品だ。「ASTRO」シリーズに尻込みしていた人や、シックなデザインのゲーミングヘッドセットが欲しかった人にも楽しめる製品だろう。